蜻蛉の滝 [奈良県吉野郡川上村]

Seirei no taki



蜻蛉の滝 蜻蛉の滝

訪問記
 大和上市で電車をおり、駅前のバス停に急いだ。それというのも、今回訪れるれことにした蜻蛉の滝に向かうためには、何時に、どこ行きのバスに乗ればよいのか まったく調べてなかったからである。もし、着くのが一歩遅く、バスを逃してしまうようなことがあれば、このような路線では、次の便がすぐくることは少ない。下手をすると、午後のバスは一本きりで、今日の予定すべてをあきらめなければならない という事態も、滝訪の旅では十分起こりえるからだ。
 改札口を走り抜けると、前にはバス乗場が2つあった。幸いまだバスは止まっていない。1番乗り場は大台ヶ原行きがでているようで、こちらは明日利用する予定の路線だ。 2番乗場をみると、行先を示す系統の異なるバスがいくつか出ているのであるが、そのうちのどれに乗ったらよいのかまったく見当がつかない。確認しようと切符売り場に行ってみたが、だれもいない。
蜻蛉の滝  この時、ちょうど湯盛温泉杉の湯行きというバスが入ってきた。運転手にたずねてみれば、このバスに乗っていき西河口というバス停でおりればいいとのことである。 滝の入口にある西河バス停を通るバスは1時間待たなければこないから、これで行って少し歩けば良いと言う。 空をみれば、天気がいつまでもつかわからなそうだし、少しでも早く着くほうがよいだろう。出発間際のこのバスに慌てて乗った。心配していた雨も、今のところはやんだままだ。
 川が狭い山間を縫ってながれている。駅を出たバスはこの吉野川 にそって進んだ。両岸の山肌という山肌は見事なまでに杉の植林で覆われていた。普段山を歩いているときには単調さから苦痛の種となる植林ではあるが、ここまで完全になってしまうと、これも風景のうちになってしまうようだ。 吉野は林業の山である。はるばる吉野川までやってきたことを実感した。バスの窓に現れる町並みも、製材所やら木材の加工場といったものがやたらと多い。家々の閉められた雨戸は杉板製のものである。私の故郷では、木製の雨戸を見なくなって久しいが、ここは本場ゆ えに今でも現役のようだ。
 これから、天気は良くなっていくのだろうか日が差しこんできた。集落ごとに段々乗客は降りていき、バスの座席はほとんど空になった。駅を出てからもう40分ほどが過ぎている。次が降りるバス停であることを運転手は教えてくれた。 バスを降り、まず帰りのバスの時刻を確認した。1時間に1本の割合であるようで、帰りの心配をしながら滝を鑑賞しなくてもよさそうだ。バス停の脇で合流している音無川の上流に今日訪れる蜻蛉の滝がある。川にそって道を歩き始めた。 10分ほど歩いた時、西河バス停にさしかかった。時刻表を確認すると、ここを通るバスはほとんどない。
 さらに車道を歩いていけば、学校でもあるのだろうか。こんな山間の地に歩道橋がかかっている。すぐ先で歩いてきた車道はトンネルに入ってしまうし、川は南に折れていくので、ここを左折すればよいことがわかる。 角には川上村の観光案内所や、みやげ物屋が並び、その少し先には、蜻蛉の滝0.8kmの標識が立っていた。
 5分ほど舗装された道路を歩いていくと道は分かれていた。河原に向かっている右側の道を降りていく。川のあたりは公園のようによく整備されている。川の流れまで人工の護岸をつくってあるのは少し残念である。 完全を追求された工事をみるたびに、ここまでする必要があったのだろうかと考えたくなる。公園に入る立派な木製の橋が架けられていて、わたると、細かい砂利を敷いた歩道が続く。庭園を歩いているようだ。 奥に鳥居がたっていて、ここから杉の植林中をコンクリートの階段が設けられていた。雨後、多湿だからだろうか、いくらも登らないのにびしょぬれになってきた。木陰で少し涼しさを感じたころ、水の轟く音が聴こえてきた。 滝の前には、鑑賞用のあずまやも立てられていた。この辺の感じは観光地として整備された滝にはありがちのものであるが、聴こえてくる水音が信じられないほど大きかった。久しぶりに聞く音だ。今日は大雨のあとで増水してい るからだろうか。それとも普段でもこの滝の水量が多いのかはわからない。
 まもなく分厚い水の帯びが、岩面に沿って滑り落ちていくのが見えてきた。この姿は、ここ着くまで私が抱いていた予想とまったく反していた。 こんな公園のように整備された場所にあるのだから、無理して観光地として開発された滝の多くがそうであるように、か細く流れ落ちている姿が、もう頭の中にできあががっていたのだ。 ところが、今、現実に見えた姿は、まったく異ってかなり荒々しいものであった。
訪問のために
高さ約50m。紀伊半島の自然100選(朝日新聞社、財団法人森林文化協会)に選ばれている。 滝壺附近に観賞用の橋がかけられ、滝の脇の東屋より螺旋階段で降りれる。橋に立つと、勢いのよい 水しぶきと、叩きつけられた水の爆音で恐ろしさを感じるほどである。
<地形図> 吉野山(5万分の1)
<交通機関>近畿鉄道吉野線大和上市駅下車。奈良交通湯盛温泉杉の湯行きに乗り 西河口下車。国道沿いを10分ほど歩き、さらに音無川に沿って5分ほど歩く。 観光地として歩道が整備されていて、滝に至るのは非常に容易。


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