千足沢 (東京都:檜原村)
Senzoku sawa


天狗滝 綾滝
天狗滝 綾滝



 秋川は檜原村の役場のある本宿で、南北の2つの流れに分かれています。街道もここで、各支流に沿う2つに分かれ ていきます。北側の支流、北秋川に沿って進むと、名瀑払沢の滝入口のバス停があります。探勝に訪れる人も多く、ここまではバスも多く運行されています。バス停のすぐ先には北秋川 橋があります。橋に立つと北秋川の流れはずっと下にあり、このあたりが深い渓谷であることを知ることができます。橋を越えて、次の檜原小学校前のバス停のあたりからは、前方の山中 に白い一筋の流れが走っているのを見ることができます。これが千足沢の天狗滝です。この滝のさらに上流には、もうひとつ綾滝という滝もありますが、ここからは見ることができません。 これら2つの滝を訪れる散策は、歩く距離もさほどないので、半日程度を潰したい休日には最適な選択です。

2つの滝を訪れる

 払沢の滝入口でバスを下車し歩き始め、北秋川橋から下の流れを見ると昨日の雨でかなり増水していて、少し濁っていた。学校の前を通りすぎ、前方に見えてくる滝の流れは、 増水を反映していつもよりはっきりと見えている。これから訪れる滝がある千足沢の一つ手前の沢に架けられた茅倉橋という橋をわたった。 沢の流れがずいぶんにぎやかなので、のぞき込んでみると橋のすぐ上には滝がおちている。
 街道は、集落の中に入っていき千石のバス停につく。バス停の前の東屋という雑貨屋の少し先を右折し、正面に神社のあるコンクリートの車道に入った。 かなり急な道が谷に沿って建つ家々の間を登っていき沢を渡った。右岸に沿ってつけられた道は再び左岸にもどった。このあたりで民家はなくなり山中の林道となった。 道路脇の標識には天狗滝に500mと書かれていて、もう滝までの道程の半分を歩いたことを知った。
 林道は再び沢をまたぐ。以前来た時はこのあたりで終わっていたはずですが、少し先まで延びたようだ。その先では木を伐採して延長工事をしていた。今後この調子で工事が進 むと、天狗滝も林道から見なければならない時がくるのかもしれない。滝が予定されている林道のコースから外れていることを願うかぎりだ。倒された木々の枝の上を歩いていくと 径が見つかった。バスを降りてからここまでちょうど30分が過ぎていた。水嵩の増えた沢を渡る。踏み台になるような石は水面下にかくれてしまったが小さな沢なので難なく渡る。 はっきりした道が現れ、綾滝からつづら岩に向かう歩道と分かれていく。
 直進すると沢を渡り、天狗滝のすぐ下で落ちている滝の下に出た。滝を眺めていると、曇り空に日が出てくる。この滝の左側についた巻道を登っていけば、天狗滝に出た。 天狗滝は高さ15mぐらいあり、上にはここからは見えない段もある。それらと合わせて高さ30mぐらいの滝とみられている。 ふたたび空は曇ってきたが、滝の周りは十分に明るい。そこだけ林がきれて窓を開けているのである。この窓を通して下の集落からもこの滝を見ることができるのだろう。 遠くから見えるといえば、これが滝とわかるのが難しいくらい小さいけれども、払沢の滝の入口あたりからも見えていたことを思い出す。
 滝を後にして、石段の積まれた急勾配の歩道を駆け登った。植林の中に出ると、歩道の入口で分岐していた綾滝に向かう径と合流する。枝沢と本流をわたり、沢の右岸に沿って歩道が続いて いる。天狗滝から0.6Km、約20分で、植林中にベンチのある休憩点に出た。すぐ脇に落下している滝が綾滝である。手前には、不動尊が祀られている。この沢は住む人々にとって大事な水源 だったのだろう。15mぐらいの高さでほぼ垂直に近い角度で落下しているこの滝は、天狗滝が無骨さに比べて、普段は薄く細い水の流れが繊細な感じを与える。ただ、水量が少ないのが、 訪れても今ひとつの感を拭えないところではあったのだが、その水量も今日は十分すぎるほどあった。 この滝には、

つづら岩から馬頭刈山

 滝を見終わると、そのまま下山してしまおうか迷った。馬図刈山まで登ってから下山するつもりでここへ来たのだが、雨こそ降っていないが、 林の中では霧がかかっていたから、山頂までいっても眺望は期待できなかった。結局、今日はまだ2kmほどしか歩いていないから、帰るにはまだ早すぎるというのが結論である。馬図刈山はわざわざ来て登る ほどの山でもないからこういう時にでも登っておくべきだというのも続けることにした理由の一つである。
 馬頭刈尾根は大岳山の下山に利用されている。奥多摩から縦走してくるとかなり気合いをいれないと 最後まで歩くのは厳しくなる。先週大岳山に登ったときは、ひとつ手前の白倉で早々里に降りてしまったし、よくてこの千足沢で下ることになるのであるから、ここから先は歩かずじまいになりそうである。
 そうと決まれば、自然と登る方向に歩き初めてしまった。綾滝を後にすると歩道は急な登りになって沢から離れていく。たちまち、沢ははるか下の方で水音をたてている存在になってしまう。 植林の中に大木が混ざるようになってきたからそろそろ稜線にでそうな気がしてくる。
 途中で15分ほど休み、つづら岩の下で縦走路に出ると、滝を出てから40分ほどたっていた。もう1時になっているから弁当を食べようかと思って座りこむが、もう少し歩くことにした。 つづら岩をみてから東に向けて歩き始めた。日ごろは岩登りのゲレンデとしてにぎわっているのだろう。いたるところにボルトが残っているが、台風あけの今日はだれもいなかった。
 そういえば、林道の工事現場以来、私はまだだれにもあっていない。払沢行きのバスも駅から終点まで私以外に乗客はなかった。今日は集落におりるまでだれにもあわないですむかもしれないという 期待が沸いてきた。訪れる人の多いこのあたりでそんな経験をした人は希有であろう。
分岐には十里木までの6.5kmと書かれていた。この区間は、多少の上下はあるにしても、基本は下り一直線でだらだらと歩き続けるだけで困難はない。視界のない平地に出た。たぶん地形図上の916mのピークであろう。 少し先に千石沢の方に突き出した岩があって展望がよかったから、ここで昼飯をたべることにした。登ってきた千足沢を足元に、千足の集落あたりから道路にそっていくと、先には払沢の滝入口あたりの建物が見えている。 その西側上方にある小高い山が時坂峠のすぐ横にあるピークであろう。その奥は松生山から浅間嶺の尾根である。 東側を見るとこれから向かう馬頭刈山とその手前の鶴脚山と思われる2つのピークが見え、その先には家並みが広がっている。これから奥多摩山塊の東端に向かっていくのである。
 径の脇にNTTの中継施設が建っていて、その先には、茅倉・千足バス停の分岐があった。916mの鶴脚山に登り、下りの階段を駆け降りていくと檜原、泉沢の分岐があった。さらにその先には泉沢・和田向の分岐と 下り路は次々に現れる。明るい広場の中の三角点の標石のある馬頭刈山の山頂にあっけなく出た。南側の展望はあるが、今日はっきり見えているのは、秋川を挟んだ向かい正面の臼杵山である。ここからはひたすら下り、 見るものももうないから速度をあげて駆け出す。高明神社に出たが、礎石と小さな祠が残されているだけで社は崩されて放置されている。
 前の鳥井を越えて再び走り始めると、水の乗った粘土の路は、ちょっとの油断でも、 すべりそうでなる。その上異様なまでに歩道を跨いだ倒木が多いから、まったく気を抜けなかった。里に近いこのあたりが、どうしてこれほどまでに荒れ果てているのか不思議なほどである。
 砂利の車道に出たが、さらに歩道を降りていくと、再び林道に出た。ここから沢沿いに下っていくと、舗装道に出た。バス停への道標にしたがって急な歩道を下っていくとあきるの市立小宮小学校の脇に出る。 向かいの商店の横が軍道のバス停であったが、時刻票を見るとちょうど出たばかりである。ここで1時間ほど後に来るバスを待つこともないので、十里木まで歩くことにした。

1999年9月23日訪問.
訪問のために

<地形図> 五日市(2万5千分の1)
<交通機関>JR五日市線武蔵五日市下車.駅前から西東京バスの藤倉行きか、払沢の滝入口行きに乗り、 払沢の滝入口か千足で下車する.
<所要時間の目安> 武蔵五日市駅 >>20分(バス)>> 払沢の滝入口 >>15分>> 千足集落 >>15分>> 林道終点 >>10分>> 天狗滝 >>20分>> 綾滝 >>30分>> 縦走道分岐 >>20分>> 展望の良い岩 >>15分>> 茅倉・千足分岐 >>5分>> 鶴脚山 >>5分>> 檜原・泉沢分岐 >>10分>> 馬頭刈山山頂 >>15分>> 高明神社跡 >>40分>> 林道 >>20分>> 舗装道 >>20分>> 軍道バス停 >>15分>> 十里木バス停



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