戦場ヶ原でクロスカントリースキーを楽しむ

  日光は片手間で訪れることが多い。特に予定のない日曜日急遽でかけてみるというパターンである。 日帰りで戦場ヶ原まで訪れるとなれば、東京に住む私は朝4時代に起きなければならなくなる。 冬にはこれがつらい。だから、この時期になると休日のたびに出かけようかどうか迷った末取りやめになることが多い。 戦場ヶ原の積雪はそれほど多いとはいえないから、3月に入ってしまうとまだかろうじて雪が残っているといった感 じである。行っても滑れないかもしれないと思うとますます出かけるのをためらってしまうのである。
 今日は必ず出かけるつもりで、昨夜は少しだけ早く寝た。東京駅6時4分発の新幹線を乗るためである。 夏場であれば日光へは東武線を使っていくのだが、冬は少しでも家を出る時間を遅くしたいのと、スキーを抱えていくから 新幹線を利用することにしている。
 新幹線は4分遅れて東京駅を出発した。宇都宮までは1時間弱の旅である。 階段をかけ降りて、7時3分発の日光線に乗りこんだ。12月1から3月31日車内保温のためドアは手 で開けてくださいの表示がある。今日これを見てふと思い出したのは、この表示のある鉄道に初めて乗ったのは小学校 の就学旅行の時であったことだ。温暖な静岡県で育った私は、わざわざドアを手で開け閉めする必要のある電車 など見ることはなかった。修学旅行の行き先は日光であったから、この線路を走ったはずである。それから何回日光線 に乗ったのだろう、これまで気にすることはなかった。
 最初の駅、鶴田駅に着いた。例の戸が開けられると、外からは冷たい空気が吹き込んできた。ホームには、 この駅の海抜が125メートルであることが書かれている。よく利用してはいるJR日光線であるのだが、いつも半分 寝ているのであろうか、けっこう覚えていないものが多くておどろく。途中下野大沢駅は海抜304メートルであった。 着々と標高を稼いでいるともいえるが、しょせん300メートルである。これから行く戦場ヶ原の海抜は1400メートル。 ここから1000メートルも高い場所にあって、そこそこの山の山頂に匹敵する高さである。
 今日は目覚めが良かったからなのか、小さな発見は続いた。東武線がJR線の上をまたいでいった。 今乗っている日光線は宇都宮から来るのに対して、東武の始点はいうまでもなく東京の浅草である。 東武日光駅はJRよりわずか北にある。どこかで交差しているはずであるのはよくわかっているのだ けれど、その場所が今市の手前であることを初めて確認した。
 7時50分日光駅に着いた。私の知る限りJR日光駅はいつも閑散としている。暖房の入った駅の待ち合い室でバスを待つ。 電車を待つ地元の人のほかにはデイパックを背負った日帰りハイカーが少しいるぐらいであるから、ここにいると日光は観光地といった 感じがしない。中禅寺温泉行きのバスが入ってきたけれど、乗客はなさそうだ。次の8時30分発の湯元行きのバスをまってい るようだ。
 夏場なら、ハイキング客が乗り込み満席で出発する東武日光駅からも今日はだれ一人乗ってこなかった。 神橋のあたりでも外に観光客らしき人はまったく見かけない。  バスは第2いろは坂を登り始める。路脇には雪が残っているが泥混じりであった。それでもこの季節にしては少し多い感じだ。 カーブを繰り返すたびに、高度も上っていくから残雪も少しづつ厚くなっていった。これなら、今日は期待できるだろう。 少なくともまったく板を使わずに帰らなければならなくなることはなさそうである。
 長い明智第2トンネルを抜けるといよいよ中禅寺温泉だ。いつものようにバスターミナルに入ると時間調整。 思い出してみれば、何年か前にここは建てかえられてきれいになったが、それまでは、私が就学旅行で来たときと同じ コンクリート色の寒々しい建物であった。今日の中禅寺湖は格段に美しい。暗い寒々とした湖面と背景となる薄く雪の積もった山々は墨 絵をみているようである。走り始めたバスは湖畔に出る。休止中の遊覧船乗り場にはもの悲しさが漂っている。湖岸を進み、 菖蒲ヶ原に着く。竜頭の滝では乗客が降りていった。
 どこで降りるかそろそろ決めなければならない。今日はまったく予定を立てていなかったからである。 候補はここから先、滝上、赤沼、三本松、光徳沼入口、湯滝入口の5か所である。三本松をのぞくと、いずれも戦場ヶ原の自然 歩道の入口となっている。
 南ほど雪が減っていき、この時期だと赤沼入口あたりでは木道がもう露出していることが、私の経験から予測できる。 最初から雪のない木道をスキー板を担いで歩くのもいやだから、光徳沼から入ることに決めた。そしてバスを降りるのは三本松がいい。 ここは駐車場もあってクロスカントリースキーをする人々の拠点になっている場所である。光徳沼入口のバス停まではコースが通じてい るから、ウォーミングアップに一滑りしてから雪原の散策を始められる。スキーを着け光徳沼入口までまっすぐ北上した。
2000年3月6日訪問  執筆中(3月25日)
泉門池 泉門池 戦場ヶ原を縦断する歩道のほぼ中間地点にある湧水。水量の減った池が雪の間に現れる。
倒木 歩道から一歩林中に入ると、まだ雪は厚く一足一足が深く沈む。
男体山 小田代ヶ原の分岐をすぎ、岡の南面に出ると湯川を渡る橋がある。見通しがよければ、 日光の主峰男体山を左手に見ることができる。
湯川 赤沼に向けての最後は湯川に沿って進む。雪は薄くなり木道が露出している場所も多かった。
backcountry skiing 私がXCスキーで歩いたところ
麦草峠 積丹 裏磐梯 白馬 栂池
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