神奈川MR UMT 検証-鎖骨下動脈の非造影MRA
03/27.06

前回の神奈川 MR UMTで,川崎幸病院の中さんが,日本医大の土橋先生が考案された(フィリップス装置にて)鎖骨下動脈の描出を,GEの装置でも描出に成功しました.その撮影条件は右の図にあります.神奈川 MR UMTのなかでは検証というコーナがあります.それは他のユーザでも同様な方法を真似てやってみようということです.主旨は良い方法であれば,セカンドオピニオンではないが,なにがしらの追加意見,コメントが得られ,その方法の実現性の要素がますからです.ということで今回は北里大学病院の秦さんと私で検証をしてみました.
中さんの検証 

鎖骨下動脈綺麗.

北里大学病院 秦さん検証 -文責 秦 博文 上から図1,2,3
3DTOFによる鎖骨下動脈描出の検証

この手法は、昨年の磁気共鳴学会で日本医科大学の土橋先生がフィリップスのMRI装置を用いて行われたもので、川崎幸病院の中さんがGEの装置でもということで至適条件の検証をUMTでされました。早速私たちの施設でもやってみました。
 まず、ボランティアですが、なるべく「なで肩」ではない人を選択しました。理由は、鎖骨下動脈がスライスと並行な走行になりそう場合、描出が困難になると考えたからです。このような人でも描出が可能であれば、臨床でもかなり使えると考え、わざとそうしました。そのボランティアを最初に中さんのプレゼンを参考に撮像してみました。ところが全然血管が描出されませんでした。これは、IN-FOVのSATの位置に問題がありました。鎖骨下動脈をできるだけ長く描出してみようしてしまい、IN-FOVのSATを上腕に斜めにセットしたところ、心臓にかぶってしまい、動脈信号がsaturateしてしまったのが原因でした。欲張ってはいけませんね。そこで、気を取り直してIN FOVのSATを腕のみにセットしてもう一度チャレンジしてみました。
撮像条件は、1.5TですのでTEは6.9ms(opposed phase)。Ramp pulseは使いませんでした。MTCも脂肪信号の上昇を考えて用いていません。スラブ数は5。1mmのZIP2、FOVは400mm(phase FOV使用)です。そのような条件で撮像した画像が図の1(原画像)、図2(処理をしていないMIP)です。何も処理していないと脂肪の信号がかなり存在するので、IVI(GEのMRI装置に備わっているすばらしい機能)を用いて、脂肪除去処理をしました。カットと差分を繰り返し出来上がった(約5〜10分程度)のが図3です。多少動脈信号にムラがありますが、鎖骨下動脈は良好に描出できているのがわかります。ほぼ水平に走行している血管でもこれぐらい描出できているので問題なしだと思います。また、内胸動脈も明瞭に描出できています。以前は、この領域は造影剤の使用が必須と思われていた領域だけに、非造影でもここまで描出できると臨床でも使えそうだと思います。臨床での評価も考えていきたいと思います。
今回はちょっと検証する時間が少なくて、いろいろな条件で試すことはできませんでしたが、今後はもっといろいろな条件で試してみようと思います。
左から図1, 2, 3
横浜栄共済病院 高橋光幸 検証
日本医大 土橋さんの方法は昨年のMR学会で,知ったわけですがこの画像を見たときは本当に驚きました.昨年SIGNA甲子園予選会で川崎幸病院の中さんが本方法SIGNAで施行したのですが,こちらのほうも初めて見たときは驚きました.というのも大した検証もせず,いく通りか自分なりに臨床で試みたのですが,全く描出できなかった.というより周囲組織の信号がうるさく,処理が大変だったからです.したがって非造影では2D gated TOFを用い,造影できる方は造影MRAを施行していました.今回,IVIを用いた脂肪抑制処理の検証として,題材に鎖骨下動脈の検証をおこなってみました.まだまだ継続して検証しなくてはならないのでここでは大きなことは言えませんが,腕の左右にかけるSATパルスはかなり縦ないと描出能が悪い印象がありました.上記の秦さんの検証では心臓にという話がありましたが,この時は心臓にはかかっていない記憶があります.動脈,静脈ともに描出してしまい,原画像を見てもこれはMIPしても無駄であると判断しました.最後に腕のSATパルスを縦てかなりスラブに接近させるとかなり動脈が白くなりました.(背景信号が落ちている)つまりクロストーク,MTCの影響で対象スラブ自体の信号が落ち,TOF効果が大きくなったのでは....と推測しました.ここが落ちであればこういった方法もありなのかと大変興味深く今考えています.これには再々検証が必要で,今から楽しみにしています.さて中さんは厚みが1.0mmで撮影していましたが,4slabで1mm撮影ですと大動脈からの3分枝の描出,鎖骨下動脈の肩の部分までの撮影は困難であるので厚みを1.2mmで撮影してみました.またランプパルスをS-Iで施行されていましたので,今回は我々はI-Sで撮影し比較検討をしてみました.図4はランプパルスがI-Sの場合です.そもそもランプパルスはI-Sだろうという固定観念がありましたのでこれでやっていました.そうすると動脈系はI-Sにながれるので段々になるアーチファクトは存在していません.それとは逆に静脈や鎖骨下動脈の肩部ではS-Iに血流が流れているので,段々アーチファクトが描出しています.図2は中さんの方法でS-Iにランプパルスを印加しています.今度は動脈が逆に段々アーチファクトが描出していますが,静脈,鎖骨下動脈はでていません.なるほど.これで納得しました.秦さんらはランプパルスそのものを使用せず撮影していたということですが,こちらのON, OFFは撮影していないのでわかりません.さてTRが当院では52msecになってしまいました.中さんらの方法ではTR41msecということでした.GEアプリの太田さんからは左右のSAT パルスの幅を揃えてということでした.左右を広めにしておけば印加時間は短くなるので今後また検討していきたいと思っています.この部位も至適なTRは存在すると思うので,また検証できればと思っています.最後にIVIを用いた背景信号抑制を行った鎖骨下動脈の画像を提示します.内胸動脈まではちょっと描出できませんでした.臨床でもこれくらいでれば使えるというメドは立ちましたので,今後が楽しみです.
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