Last Up Date 2002.10.01
09月28日(土曜日)
曇天。立教大学で物語研究会。この大学が敷地の西南方面を開発していることは知っていましたが、夕闇に浮かぶその偉容は立派です。本を纏めていることもあって、僕の関心もそちらに集中しつつ耳を傾けました。
津島知明さんより、『ウェイリーと読む枕草子』(鼎書房、2002.09.10.\2000)を頂戴しました。「あとがき」の、国文学業界や出版業界のおかれた厳しい状況下の元、時間を共有した友人達への感謝の言葉に心を打たれました。明日もがんばろう、と励ましてもらえる本です。萬謝。津島さんまた飲みましょうね。
09月29日(日曜日)
余明先生のスタジオ。『梅花三弄』を習うことになり、先生はMDへの録音のために何度も演奏してくださいました。この曲は、『蘭亭集序』の梅花宴でも笛で奏されたもので、異郷にある女性が梅の花の散る見て、化粧台の前で望京の想いに涙を流すのを主題とする古楽府の曲として知られ、我が国でも『万葉集』に、天平二年(730)正月十三日、太宰帥・大伴旅人邸で開かれた「梅花宴」が『蘭亭集序』を模したものとして知られています。くわえて、執筆中の《胡笳》の成立過程についても丁寧に教えてくださいました。謝謝。
09月30日(月曜日)
明治大学。前期試験の結果が50点未満の場合は原則不合格、提出されたレポートによって追加合格者三名、保留三名、その他の該当者は不合格確定として掲示をしました。なのに、先日休んだ理由もなく、「チャンスをください」などど甘えたことを言う学生がいました。困ったもんだ。「論文演習」の「日記」はみんなの消息が知られて楽しい内容ですね。
09月01日(日曜日)
先週は筋力トレーニングを再開したので筋肉痛でしたが、それも癒えて、体調はすっかりよくなりました。要は続けることですね。それ以外は終日自宅で原稿を書く。同時に三本書き進めています。
長野県知事選挙は田中康夫が開票とほぼ同時に当確速報。それにしても、供託金300万円を納めて総得票数千票という、いわゆる泡沫候補の心理が分からない。だれか、分析済みの方があったらその目的を教えてください。
09月02日(月曜日)
青山学院の短大図書館のB2階の片隅にパソコンを持ち込んで原稿を書く。注釈書や気になったところを探すため、階段を上がったり降りたり、四大図書館に出向いて本を借りたりして、移動するだけでよい運動になります。学食は、一時、学内補修工事のいかついおじさん達に占領されていまたしが、ボチボチネクタイ姿の先生や学生も戻ってきた感じでしたね。夕方はやっぱり筋トレ。身体をいじめるのが癖になってきたようです。でも体型の劇的な変貌は期待しないでください。
テレビのニュース番組は田中康夫県知事選挙の特集が真っ盛り。田中陣営のボランティアのギターで歌われたのは、「♪おさかな天国♪」の替え歌でした。「♪田中、田中、田中〜〜、田中が受かると〜、日本、日本、日本〜日本がよくなる〜」。気になって『日本国語大辞典』で「受かる」を引くと「合格する」「及第する」の語義しかなく、「当選する」とは若干ニュアンスがずれているような気もしますが、これは僕もすぐ理解できたのでおそらく信州方言なのでしょう。「朝日新聞」朝刊には、前後援会長・柳沢京子氏の辛口のエールが載せられていました。信州人の「厳しさこそ愛」的な発想がいいですね。
09月03日(火曜日)
厚木で仕事。虫の声はすっかり秋の気配ですね。東名〜環状八号線ともに空いており、01時間20分で帰ってくることが出来ました。ハイウェーの前方に拡がる東京の夜景は、息を呑むような美しさでした。
09月04日(水曜日)
静岡英和女学院の沢田正子先生から『人と思想 紫式部』(清水書院.2002.08. \850)を頂戴しました。式部の生い立ち、『源氏物語』との内的連関、そして美意識と言う風に、コンパクトで巧みな構成となっています。萬謝。
09月05日(木曜日) Special Thanks 102,000 Hits
夜風も涼しくなってきました。週五回のペースで出かけているスポーツジムで、懇意になった父と同年輩の方から「肩から胸が張ってきたね」と声をかけられる。そんなにすぐに成果が出てきたとは思えませんが、素直に喜こんでいます。
石原慎太郎の娘を名乗って、巨額の金を集めていた疑惑の女性が自殺のニュース。三島由紀夫の『青の時代』や『鏡子の家』を思い起こしました。嘘を繕うのには死の選択しかなかったのでしょうか。
09月06日(金曜日)
どしゃぶりの雨が夏を洗い流したかのような一日でした。青山の図書館は僕を含めて四、五人しか利用者がなく、論文執筆の先生の方が多かったのでした。かつての論文を書き改めるのは、女三宮への柏木の恋文を、柏木が自分で見つけて書き改めるのような、そんな気恥ずかしさを感じます。しかも、最大規模の雑誌論文であり、著書にも収め、論文集成にも収められたので、のべ4000部あまりが巷間に流布していることになるのですね。でも新しい文献が出てきてしまったので、改めるほかないのです。昨年、集中して取り組んでいた、『うつほ物語』の引用漢籍に関する本も、来年に向けての出版物としてゴーサイン。この秋は忙しくなってきました。
09月07日(土曜日)
雨。松井公民館で古典に親しむ会。『源氏物語』「玉鬘」巻。「めやすき」がキーワードの女君ですね。夕方は、スポーツジムで二時間。その後、原稿を書く。持久力がついてきたせいか、疲れて眠り込むことがなくなったような気がします。
09月08日(日曜日)
『うつほ物語』のページ、『松浦宮物語』のページの「文献目録」を増補しました。後者の「論文」は森晴彦さんの御教示によって知りました。ありがとうこざいます。
09月09日(月曜日)
昨年施注が完了していたはずの《『うつほ物語』引用漢籍》ですが、『新編全集』が完結したのでデータを採り込みました。さすが最新の研究成果がほぼ網羅的に採り入れられていました。こちらの本は、あと「解説」を書くだけです。 夕方は、神奈川方面へ東名高速道路を往復。雨のハイウエーで東京インターへと向かう一本道を走っていると、自然と来し方行く末に想いが及ぶのはなぜなのだろう。
09月10日(火曜日)
『元輔集』の注釈のため、母校へ。キャンパスは校舎の4/5を建て直す工事が始まっており、講義のための教室確保との兼ね合いでしょう、懐かしい建物が半分しか無かったりという状態でした。よそでは学部学科再編がさかんですが、現時点ではハード優先でソフト部門の改編はまだ先のようです。
09月11日(水曜日)
この七月に書いた兵藤裕己さんの『物語・オーラリティー・共同体 新語り物序説』の書評を掲載した「日本文学」が届きました。関根さん、石井さん、松井さん、井上さん、沼尻さんなど、錚々たる顔ぶれに加えていただき光栄。今月号は、平安文学研究者必携の一冊になったと思います。
09月12日(木曜日)
『うつほ』の本の打ち合わせのため、池袋へ。平安朝の漢籍受容史を見通す作業はかなり力業(ちからわざ)が必要だと感じました。
09月13日(金曜日)
三年ほど前に勉強会で発表したり、講義で読んだりした「琴の譜」についての論文を大幅に改稿しました。なかなか愛着のある論文になってきたので、雑誌にでも載せてもらおうかと思います。夜はまたまた筋トレ。確かに胸と肩が張ってきた感じがするのは気のせいだろうか。
09月14日(土曜日)
白百合で『浜松中納言物語』を読む。さすがに『新編全集』は積年の蘊蓄が傾けられた一書だと感心しました。その後、三鷹で僕の本の打ち合わせ。こちらも順調に進んでおり安心です。
09月15日(日曜日)
夏休み最後の日曜日。原稿を書いたあと、ジム。新学期の準備は明日にしましょう。
09月16日(月曜日) Special Thanks 103,000 Hits
雨。長い休みの終わりにこの天気はいやですね。湿気のために、琴の絃がブレなくなったのだけが救いです。『うつほ物語』の音楽関係の論文を読む。僕の論文も、「胡笳調」については書き直しが必要なようですね。
09月17日(火曜日)
テストの採点。忘れかけていたみなさんの顔を徐々に思い起こすにはこの時期に採点するのがペストです。講義内容の復習にもなりますから。それにしても、小泉訪朝によって拉致被害者の消息が分かったことにも驚きましたが、もっと驚愕したのはその死亡率の高さ。僕よりもう一世代上の人たちとは言え、2/3 が死亡とは。相当深刻な人権侵害があるように思われてなりません。国策によって信じがたい犠牲者となったのは、王昭君もまた同じ。これではあたかも戦国時代だ。。。
田中仁先生が兵庫教育大在籍中の門下生による『三条右大臣集注釈稿』(古典文学論注の会.2002年05月)を頂戴しました。藤原兼輔に近い藤原定方の歌集に現役の高校の先生方が詳細な注釈をつけたもの。ありがとうございます。
09月18日(水曜日)
久しぶりの快晴。先月、暴行事件に巻き込まれたご近所さんのお母様が亡くなり、しんみりと供養のお清め。いつも車で出かける僕が、週末になると自転車で出かけようとするので、「今日はお酒飲み過ぎないでよ」と笑っていた、明るいおばあちゃんでした。この地に引っ越して以来丸十年、「大家滅びて小家となる。また人もこれに同じ。」ほんとうに寂しくなりました。
09月19日(木曜日)
お通夜は僕が受け付け。近所の人がたくさん見えました。
今日で夏休みも終わり。今年は高速道路を走行ることが多かった夏でした。入道雲が鰯雲に変わる中を駆け抜け、星空が澄んで見える中を家路に急ぐのは、あたかも別世界にいるような違和感があります。そして、この夏のいつの間にか、僕の人生観も180度変わっていました。車のスピードに、古いしがらみがまとわりついていられなくなったのかもしれません。
09月20日(金曜日)
本日から満を持していよいよ始動。明治に立ち寄り明日の準備の後、青山学院女子短期大学。テスト、レポートを返却しつつ、夏休みの課題を受け取る。みなさん元気そうな笑顔で迎えてくれたうえに、最高19枚の力作レポートもあってうれしいかぎりです。「古典講読」は前期のメンバーに加え、若干新しい履修者も増えたので、まず概説、そして「早蕨」の巻を冒頭から。またがんばりましょう。日の暮れるのが早くなったことを実感しつつ、慶応で『小右記』の会。忙しくも充実した一日でした。
09月21日(土曜日)
明治大学。月曜日の振り替え。こちらもテスト、レポートを返却しつつ、夏休みの課題を受け取る。「論文演習」の「日記」も力作揃いで、次週が楽しみです。
09月22日(日曜日)
また雨。今月は雨が多いですね。
09月23日(月曜日)
かつての論文を書き改める作業。恩師のひとりである中村義雄先生の名著『絵巻物詞書の研究』(角川書店、1982年、角川源義賞)の場合は、各章の論述本文はいじらず、補注のみ大幅に増補するという方法でしたが、僕の場合、前著からの再録論文に限っては、それも無理な話。もちろん、その時点では推敲を重ねたことは確かですが。
09月24日(火曜日)
夕方、國學院で『うつほ物語』の会。この会に参加して14年目になります。本日は、来月の中古文学会で発表予定の太田敦子さんのプレ発表を聞かせていただく。「氷を持つ女一宮」というタイトルから折口信夫の「水の女」を理論媒介としていることは予想できましたが。。あとは聞いてのお楽しみに。終了後、室伏先生から会を勇退したいとの申し出があり、みな動揺する。僕個人としてはあと数年は続けていただきたいと思っています。帰宅すると、これまた驚愕の内容の電話を頂戴する。人生とは何なのだろう。
09月26日(木曜日)
茨城県石岡市の高校へ。静かに僕の話に耳を傾けてくれました。ところが、体育館で開かれた常磐線沿線の大学・短大が参加した学校説明会で、生徒さんがひとりも質問に来なかった学校があって、控え室は重苦しい雰囲気に。事前にアンケートを採り、希望のない学校はエントリーをお断りしていたはずですが、対象が二年生だったため、心変わりしてしまったようです。でもこれが学校を取り巻く現実なのです。
09月27日(金曜日) Special Thanks 104,000 Hits
明治大学、青山学院女子短期大学ともに始まりました。 夕方、芝公園のABCホールで行われた古箏の伍芳さんのコンサートへ。もちろん、最高の感動でした。MCもお茶目でかわいかったし。おまけにCDにサイン、そして握手までしていただきました。心はすっかり少年の日に戻りました。