Last Up Date 2001.08.01          

日記を物語る 2001年07月INDEXホームに戻る              


07月30日(月曜日)

『元輔集』の注釈作業。注釈こそ文学研究のみならず、文化研究なのだと実感する。屏風歌で、貫之、素性の歌が『元輔集』に混入したとも、編纂ノートとも目されるところ。先行の注釈書(こちらは20年以上続いているが活字は後発になってしまった)の口語訳の巧みさに舌を巻くこともしばしばありました。

『世界の文学/中国/陶淵明その他』(朝日新聞社.2001.05)を何気なく見ていたら、陶淵明=五柳先生の図の解説に「背後に見える冊子本は十世紀以降にできたのもの」とありました。僕の知り合いで平安時代の仏典に冊子本があると公言している方がありますが如何に。やはり平安時代は巻子本しかなかったというのが実態なのでしょう。

07月31日(火曜日)

『古典文学作中人物辞典』のキャスティングを監修者の先生宛てに投函。次は春に書いた『うつほ物語』の漢籍解説の見直しをお盆頃までに。


07月01日(日曜日)

07:45、羽田発の全日空機で大阪伊丹空港へ。すべて時間通りに三宮経由で神戸大学に辿りつく。途中、今回古代部門のトリを務めた星山健さんと御一緒する。僕的には「五節舞姫」の説話と『本朝文粋』の願文に関する発表に関心を持ちました。星山さんの『とりかへばや』には久保朝孝さんの厳しくも愛情の溢れる質問に感銘を受ける。昼休み後、『御堂関白記』輪読会の御縁からか、吉海直人さんたちと福長進研究室を訪問して歓談。九年間神戸大に在籍された高田祐彦さんにも声をかけていただき、みなさんの好意のなか日帰りの旅を終えました。感謝。またみなさんご苦労様でした。

07月02日(月曜日)

明治大学 。「国語」は市川崑監督『細雪』を見終える。映像美に感動してもういちど見たいとの申し出もありましたが、視聴覚棟にレーザーディスクもビデオもあるし、最新鋭のシステムで視聴できることを案内しておきました。「論文演習」は「エッセイ」を読む。夏休みの課題も「日記と言う物語を書く」に決めました。フィクションでもノンフィクションでもよいから、「十日間の日記」を書いて頂きます。公開前提で三年半書いてきた、この日記もワイドスクリーンに映し出すにはお粗末過ぎるところもあるようで、慙愧の念に襲われもしました。履修者のほとんどが女子学生のこの演習のみなさんは、 1999年11月 の、青学のクリスマス・ツリー点火祭に興味を持ったようです。今年は明治の演習のみんなを連れて青山通りのおしゃれな店でコンパでもしましょうか。

07月03日(火曜日)

國學院の「『うつほ物語』の会」「国譲」上巻は実忠の「千両の黄金」を「仏舎利」に喩える話。レポーターの精査も相俟って、僕の《知》の蓄積になっていること、言うまでもありません。

本日の「朝日新聞」の「ひと」欄にはジュンク堂池袋店の副店長の田口さん。行くたびに『源氏物語』の本の並べ替えをしていた方だ。「よく見かけるなあ」と思っていたら、1997年までは「リブロ西武」にいたとのこと。僕の自著もお世話になったし、陰に陽に「本のこと」を教えていただいていたことになります。

「ものけん」で活躍の佐藤正彦さんが『栄華物語』のページを立ち上げられていた。物語の紹介、物語諸本、注釈書解説、物語年表、道長年表、ときどき思ったこと、リンク集など。充実した内容です。

07月04日(水曜日)

明治大学 。期末テストの手配などを完了。講義もまとめにかからなければなりません。森鴎外の作品を、手許にある、稲垣達郎先生編『森鴎外』(学燈文庫.1955)を道案内に予習しはじめました。凡例によれば、本書は若き日の久保田芳太郎・紅野敏郎・竹盛天勇各氏の執筆になるもののようです。

07月05日(木曜日)

午後、いつもはメールでのやりとりが多い 明治大学 教務部より直接お電話を頂戴する。なぜ僕が家にいることが分かったのかなあ、まあそんなことはどうでもよいが、試験問題をひとつしか提出しなかったため、四クラス分作るか、一斉テストにしないと問題が確実に漏れるおそれがあることのこと。とんだうっかりミスをするところでした。テストは25日(水)10:30よりの一斉試験に決めました。僕の履修者二百人が一同に会することになります。

07月06日(金曜日)

明治大学 。「論文演習」は「エッセイを読む」。それぞれの感性が文章にきらめいているのがいいですね。夏の日差しの表参道を抜けて、 青山学院 。なんと本日、前期最終回。三時限目の「音楽論」はテキストを中心に「光源氏と楽の相承」をまとめました。僕の本を読んで下さい。四時限目は「早蕨」巻を中心に宇治の姉妹の人物論の研究史を概観する。これも指定した本を読んでみてくださいね。レポートは近日中に添削して返却します。

07月07日(土曜日)

七夕。所沢の松井公民館で古典に親しむ会『源氏物語』「少女」巻。夕方は吉祥寺で暑気払い。夜はここ二、三日よりちょっと涼しくなった感じがしますね。

07月08日(日曜日)

ルーテル市谷で、余明先生の中央音楽院時代の恩師、陳澤民先生の「中国琵琶音楽会」に出かけました。一番前の席をゲットできたと喜んでいたら、僕の横には余明先生のお弟子さんがずらっと並び、固唾を飲んでその奏法を研究なさっていました。前半は講演、後半は演奏会で、陳先生の琵琶は従来のスチール絃ではなく、絹絃を張ってありました。僕の注目の「昭君出塞」は現代曲でした。余明先生の独奏の「十面埋伏」は、項羽と劉邦の戦いで漢軍が用いた戦法を曲としたもので、戦いの激しさをリズムに写したメロデーが印象的でした。余明先生が古琴を独奏するオリジナルCD『古韻新聲−中国の美音』(ソニーレコード/1998/\2584)もゲットできたしね。

07月09日(月曜日)  Thanks 67000 Hits !!

明治大学 。「国語」は森鴎外の「航西日記」「独逸日記」を読む。ベダンテックな漢語表現に習熟してください。「論文演習」は「構成を読む」。漱石の『こころ』を例に、構成をどのように分析するかを考えました。あと二週間。早いものですね。

07月10日(火曜日)

國學院の「『うつほ物語』の会」「国譲」上巻輪読の前期最終回。後期再開の初回は一年ぶりに僕の担当。次回のレポーターが司会をするので、予習もかねて丁寧に聞かせていただきました。

07月11日(水曜日)

明治大学 。森鴎外の『航西日記』『独逸日記』を読み、篠田正浩監督の『舞姫−ベルリン1888』を見ることにしました。明治大帝に森林太郎が拝謁した日が日記と映画ではずれているのはなぜなんでしょう?

NHK朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」の今週は「古酒(くぅす)で勝負」。沖縄で「古酒=くぅす」というのに対し、中国語では「古酒=ぐちゅう」。かなり発音が近いことに気付きました。ちなみに、僕の琴は中国語で「古琴=ぐちん」、「琵琶」は「ぴーぱぁ」。それにしても「一気飲み」は危険だなんて、わざわざ申し入れなくてもねぇ。

07月12日(木曜日)

徐々に仕事が片付き始めました。六月、まともな原稿は一枚も書かずじまい。意識的に抜いていたのだけれども、これだけ忙しいと納得できるものは書けるわけないですからね。

07月13日(金曜日)

明治大学 。暑さのためか「論文演習」は欠席多し。欠席過多の学生の処遇を明瞭化せよと迫られる。なんたって少人数ですからカドは立てたくないが、まじめに出席している人から見たらバカみたいだからですね。来週は海の日のため、本日最終回。近日、了解のとれたテキストはアップします。教員室で、神鷹先生に、昨今の『白氏文集』研究で、僕が気になっている論考について先生の評価をお尋ねする。炎暑の中、井の頭線で渋谷へ。宮益坂で足をひねる。やはりこの夏は身体をすべて鍛えなおさないといけないな、と自覚する。二軒のみになってしまった古本屋に両方立ち寄り、 青山学院 正門にようやく到着。本日は定期試験。教科書持ち込みで、試験問題もあらかじめ知らされているのでこれで単位を落すような人はいないでしょう。

「国文学特講」問題「次の設問から二題選んで論述せよ。@光源氏の音楽的才能/琴/舞踏家としてA光源氏と楽の相承B物語における楽器とその機能」

「古典講読」問題「次の設問から二題選んで論述せよ。@八の宮と宇治の姉妹の親子関係A薫と弁の昔物語B俗聖としての宇治八の宮C大君の結婚拒否の論理D中の君の人生について考える」 みなさん、よく出来ていましたよ。

再び井の頭線で吉祥寺に折り返し、再来年出版予定の事典の打ち合わせ。平安・鎌倉時代の作品の執筆者は、僕がキャスティングするのです。名の通った大家だと原稿が取れないと言うことで仕事ができる若い人で、という条件。僕の友人は真面目な人が多いのでこういうことには困りません。

吉祥寺からバスで帰ろうとしたところ、終点の僕の住むところまで行くバスが30分以上待っても来ず、となりのオジさんが激怒し始めて、途中止まりのバスの運転手さんに抗議する。するとあっさり「私の責任でこのバスは終点まで運転します。」だって。実質間引き運転を認めたようなものではないか、、、呆れ返る。終点まで乗っていたお客さんは延べ二十人以上。「この炎暑に何考えてんだよ、ボケ \(´@`)/ 」ちなみにこの会社の保有する球団は、すっかり悪役になってしまった松×投手の熱闘で、勝利を収めた模様。まあ、どうでもええわ。。。それにしても疲れた一日でした。

07月14日(土曜日)

たまにはバーゲンでも覗こうかと思っていましたが、あの人並みの中に入って行く勇気はついぞおこらず。日本文学協会の委員会に顔を出す。神田パンセは取り壊しにつき、委員会としての利用は今回が最後とのこと。

07月15日(日曜日)

車では、古琴奏者、呉文光のCDを流して「陽関三畳」のメロディーを暗譜します。若干、打譜(琴譜を釈譜すること)の関係で、僕の持つ譜面と異なっているようです。なぜか夕方のプールは空いていました。

リンクフリーの会 の準備を進めていますが、メンバーに急用が入ったのと冷房が利かない関係で日程を再調整中です。参加予定の方がいらっしゃいましたらご一報下さい。

07月16日(月曜日)

明治大学 。「国語」は篠田正浩監督『舞姫−ベルリン1888』。「論文演習」はかつて僕も観劇した三島由紀夫の『近代能楽集/道成寺』のビデオを見ながら、ストーリーを整理しつつ、登場人物のキャラクターや物語の主題をまとめよう!!という試み。視聴し終わった後、この難解な物語について、僕とディスカッションしながら得られた知見をもとに各自批評をまとめていただきます。

07月17日(火曜日)

渋谷の奥座敷で『うつほ物語』の会の打ち上げ。いろいろな話が聞けて楽しかったですよ。教訓。「学会での質問には要注意。。。(爆)」

リンクフリーの会 は26日の木曜日になりました。どうぞ御参加ください。

07月18日(水曜日)

明治大学 『舞姫−ベルリン1888』最終回。学年末なのに欠席が多いのが気になりました。午後は高速道道路を飛ばして伯母の住む横須賀へ。ほぼ三十年ぶりくらいのはずで、道にも迷ったけれども無事辿り着く事が出来ました。

07月19日(木曜日)

神田龍身さんから頂戴した『源氏物語=性の迷宮へ』(講談社選書メチィエ.2001.07.\1500)を読む。昨年の講義をまとめられたもののようだ。僕も宇治十帖論を扱っていますが、まとめると言うより自分が学んでいる段階。神田さんからも多くのことを学ばせていただけそうです。

07月20日(金曜日/海の日)  Thanks 68000 Hits !!

海の日。終日、家で過ごす。採点、採点また採点。

07月21日(土曜日)

清泉女子大学で物語研究会。「さるは」と言説、口承伝承と物語の二本立て。研究方法を切磋琢磨することがこの研究会の生命線であり原点であることを再確認する。

07月22日(日曜日)

余明先生のスタジオで琴のレッスン。徐々に進歩はしている模様。午後は茗荷谷で勉強会。しばし自身の研究活動を回顧する。メンバーはみなそれぞれ生活も激変しつつあるようですが、誰しも大切にしたい場所をとっておきたいという気持ちは伝わってきました。

07月23日(月曜日)

教員室も閑散とした 明治大学 。文学部の日向先生など親しくお付き合いくださった先生方にも御挨拶。月曜クラスの「国語」は篠田正浩監督『舞姫−ベルリン1888』をノーカットで。さすがに四回も連続しての視聴となると、激しい睡魔との戦いでもありました。ごめんな、エリス(!±!)「論文演習」はレポート提出のみ。狭い視聴覚教室で出し終わった後の雑談になんとなしに付き合わされる。どうもこのクラスの男どもはダメなのばかり、と言うのが結論らしい。。。

『懐風藻』之頁を更新。『懐風藻研究』八号を刊行する見通しがついたようです。誰ですか、「今度は書きます」と言っておきながらまたパスした人は。。。本日、これにて。

07月24日(火曜日)

冷房のためか琴の絃が緩みがち。絃を止めて調絃をする軫がくるくる回る状態になっていました。軫池に若干の水を差す。しばらくするとぎゅっと締まった感じになりました。それにしても絶対に狂わぬ音感が欲しい。。。

07月25日(水曜日)

明治大学 補講の日に掟破りの一斉定期テスト。履修者ものべ200名を越えると、掲示板のチェックミスなどの遅刻者もありますね。次からははずさないように。夏休み前、別れを惜しむ姿があちこちで見うけられました。 青山学院 へは成績提出をしました。なかなか高得点でしたよ。ではお元気でまた秋にお会いしましょう。

『讃岐典侍日記』をこよなく愛する、若き研究者NAKAMURAさんの『ぶんがく座』をリンクしました。九月には御発表が聞けるようです。

07月26日(木曜日)

共立女子短大でリンクフリーの会 。本日の琴の出来は40点。どうもすんません。

07月27日(金曜日)

夕方、大東文化会館で行なわれている言語学の研究会に参加する。古代日本語(『源氏物語』)のはだか格の用法に関するもので、例えば、「君帰りたまひて」「文渡す」のように、《の》や《を》の除かれた構文を「桐壷」から「若紫」まで対象としたものでした。たいへんな蓄積になりました。来日中の旧友で、上海外語大の呉先生を駅まで送って帰宅する。

源氏大学.com をリンクしました。近日、リンク集が作られるようで相互リンクとなります。 

07月28日(土曜日)

午後、池袋・目白あたりで掟破りの裏道(=近道)走行をしていたら、ゆっくりと歩くダンディーな紳士が前方に。やはり王朝文学研究の泰斗、某先生ではありませんか。あまりの低速走行のためか後ろを振り向かれ、車の中の僕に気付かれた御様子。あわててサングラスをはずして黙礼したものの、黄色のアロハをひっかけたあんちゃんルックは情けなや。。。。夜は夜でまた。。。。どこで誰にあうかもわからず、こんどからどこで出かけるにもちゃんとした格好をしてでかけなくちゃ。三枝和子の福武文庫を探しに行ったのです。『香子の恋−紫式部』(福武文庫.1994/\550)のみはジュンク堂でゲットできました。『諾子の恋−清少納言』を古書店で見かけた方は教えてください。

角川書店から、角川ミニ文庫を角川文庫ソフィアにリメークした『枕草子』『奥の細道』を頂戴する。文学を専門としない大学生、高校生をターゲットとした企画のようですが、今の国文学専攻の一年生には、これをテキストにしても良いくらいの出来。来年月曜日に二クラス担当する事になっている「日本古典文学基礎演習(必修)」のテキストもこのレベルのテキストを使いましょうかね。こういう学校好きな人の辛辣な意見にも耳を傾けて。謙虚。謙虚。

夏の甲子園、長野代表は佐久長聖(僕の恩師が大勢天下りされています)を破った塚原星雲高校。一昨年の夏は廃校か存続かで揺れたあの高校ですよね。生徒数は100人とのこと。普通科に調理科があると言うことは1クラス25人くらいということなんでしょうかね。昔は塚原天竜高校だったはずだから、星雲高校なる校名は、あの『巨人の星』の星飛雄馬(作中年齢を試算したら現在、48〜49歳となる)と伴宙太の母校から取ったんでしょうかね。「ああ、青春は君に耀く」を聞くとグッとくるようになった昨今(年かな)、『熱闘甲子園』は録画して永久保存ですね。先日、僕の頃には野球部もなかった母校の同窓会から「同窓会報」執筆用原稿用紙が届きました(事前に母に根回しするなんて、田舎くさ)。パソコンで作文するOB・OGは前代未聞なのでしょうか(もちろん、冗談)。

07月29日(日曜日)

本日も余明先生のスタジオで琴のレッスン。スローテンポこそリズムをとるのは難しい。


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