Last Up Date 2000.07.01          

日記を物語る 2000年06月INDEXホームに戻る             


06月29日(木曜日)

ふたたび本日の『朝日新聞』。「この1000年「日本の文学者」読者人気投票」という記事がでていました。第1位:夏目漱石 第2位:紫式部 第3位:司馬遼太郎……。僕がお世話になっている方のコメントもチラホラ見えていました。

東京成徳大学。国語科教育法、時間が延びて二人しか出来なかったけれども内容は濃かった。「中世文学」では『無名草子』の「清少納言」評へ。いよいよクライマックスです。

06月30日(金曜日)

明治大学。論文演習は各自パソコンのデスプレイを眺めながら、先週のレポートを僕が読みあげ、批評し、添削を施す。「国語」は森鴎外の「航西日記」を読みました。。青短では、文学史が『伊勢物語』の斎宮章段、演習は「柏木」巻の輪読に加えて薫の出生を光源氏がどのように受け止めたかの分析レポート。僕にはちっともそう読めないのですが、彼女たちの感想を見ると光源氏のナルシストぶりに関心が集中していました。感覚がずれてきていると言うのは僕が年をとったということなのでしょうか。

最後にみたび『朝日新聞』夕刊の記事によれば、「ルポ『源氏物語』」。なんと我が長谷川政春教授が『源氏物語』ブームを分析して{ただし、僕は紫式部より清少納言贔屓の『枕草子』派なので、長谷川さんのブームの分析はちょっとムッとしましたが……、まあ、記事を読んでください}、清泉女子大学『源氏物語』サークルを紹介しているではありませんか。僕の概論で前に陣取っているみなさんがそのサークルのメンバーなのでしょうか。月曜日は頑張るぞ。


06月1日(木曜日)

東京成徳大学。国語科教育法は模擬授業のテクニックも、クラスの雰囲気も良好、良い方向に進んできました。「中世文学」は「小野小町伝承」の伝播について。こんなところです。

06月02日(金曜日)  34000カウント

明治大学。「国語」は欠席が目立ち始めましたが、「春馬車」を読み終える。それなりに関心を持ってくれたようです。青短では、文学史が『古今集』「仮名序」、演習は「柏木」巻の輪読が始まりました。僕が教室に出向いた時には発表者がおらず、寸前までレジュメ作りに奮闘していたようでした。感想に「知り合ってはじめて尊敬できる○○を見た」なんていうのもありました!!。

06月03日(土曜日)

所沢の松井公民館で古典に親しむ会。「薄雲」の巻。この際、会員の高橋芙美さんから、お嬢さんが記念行事の司会を務められたということで、『御生誕百五十年記念昭憲皇太后さま』{明治神宮編.2000.05.28}を頂戴しました。あまり知られていない皇太后の発言や事蹟が一望でき、また、大正天皇の生母の柳原愛子の名も、明治天皇の尊像作成の責任者としてその名を見つけることが出来ました。なお、付されていた年譜は藤井貞文編というものでした。

06月04日(日曜日)

渋谷の國學院へ、全国大学国語国文学会大会の聴講に向かいました。「『源氏物語』須磨・明石の音楽表現」と「琴曲・「「広陵散」と『源氏物語』」の発表を聴くためです。僕はこの学会、会員ではありませんが、司会の長谷川政春さんや田中隆昭先生の丁重なリードで質問することになりました。特に「広陵散」の僕の論は発表以来特に賛否が寄せられておらず、批判的に取り上げられたせよ、論議の対象に載せられたことに意義があると思います。発表者の林嵐さんに御礼申し上げます。無事に中国への帰路に就かれたのでしょうか。

06月05日(月曜日)

清泉女子大学。古典演習は『うつほ物語』ばかりに片寄ってもいけません。思っ切って『あさきゆめみし〜源氏物語』を見ることにしました。長いので続きは次回あたりに。だんだん学生さんもひきこまれていたようですね。中古文学概論は『源氏物語』の梗概と概説をようやく終えて来週から各論に入ります。そろそろ、トップページの各大学のページも更新しないと行けませんね。

06月06日(火曜日)

國學院で『うつほ物語』の会。移り詞の読み方が話題となりました。

06月07日(水曜日)

特に書くことのない一日でした。

06月08日(木曜日)

東京成徳大学。国語科教育法の模擬授業はどれもよく練った内容でした。満足。「中世文学」は『無名草子』の「紫式部」評に。来週にご期待ください。

06月09日(金曜日)

明治大学。もう夏休みまでカウントダウンですね。情報実習室はテスト前で、場所を確保するのに苦労しました。「国語」は一気に谷崎潤一郎「刺青」を読む。来週は映画版にしましょう。雨の表参道・青山通りは交通渋滞でした。

青山。教職員食堂に行ったら、なぜか食券が買えず。よく見ると、つり銭のおつりが取り忘れてあったのでした。お札が九枚。テーブルを見まわして該当の先生にそれを渡したら何度も頭を下げられてこちらも恐縮してしまいました。文学史は「かなの成立」板書の字もなにげなくうつくし目に書きました。それにしてもリクルートスーツ姿多し。「先生、○○さん、シュウカツ{=「就」職「活」動の略}でお休みです」「シュウカツ、なんだそれ?わかりました。頑張るように伝えてください」。演習は「柏木」の輪読。それにしても柏木は気の毒な思いこみの男ですね。

06月10日(土曜日)

他に研究会の予定もありましたが、キャンセルして、僕の田舎の隣の隣の町にある望月町で町おこしの目的で行われた{町と教育委員会が後援}の、「伊勢正三弾き語りLIVE 2000 in もちづき」に参戦しました。確かめずに実家に着くと、開場がなんと14:30。あわてて町立の駒の里ふれあいセンターへ向かいました。開場には遅刻したものの、全席自由のこの会場、慎み深く、教養が邪魔をしてか、後ろはぎっしり。でも、前列が若干空いていたので、なんと三列目をゲットできました。コンサートのレポートは、最近、とみに親しくしていただいている、この関係のあるサイトに報告してありますので省きます。コンサートのMCで、正やんが町名の由来を話題にしていましたので、紹介ついでに由来を書くと、「古今和歌 集」の編者、紀貫之の歌に、「逢坂の関の清水に影見えて今や曳くらむ望月の駒」と見えるとおり、このあたりで平安の宮廷に献上する馬を養育していたのでこの名があるようです。ちなみにうちの母は「「御牧{みまき}」尋常小学校」の卒業だったと思います。

06月11日(日曜日)

たまに帰省するとあれことれやることがあり、母の買い物にも付き合い、夜、二時間かかって帰宅しました。ちょっと高速は混んでいましたね。いい気分転換になりました。

06月12日(月曜日)

清泉女子大学。古典演習は発表が始まりました。『うつほ物語』「楼の上」下巻に現代語訳をつける作業と自由発表の二本立てです。初回は四年生・三年生の発表だったため、高水準。感想にも「現代語訳すごい!」「先生みたい{スムーズでよく練れているいう意味で}」といった感想が寄せられていました。中古文学概論は各論に入り、今回は「もののけ」。『大鏡』の道真怨霊譚や、『枕草子』の「すさまじきもの」さらには『源氏物語』の「夕顔」と「葵」巻の「もののけ」までたどって見ました。来週は「出家作法」の予定です。なお、概論で課したレポートの中に、ワープロ原稿なのですが、「*先生によるきんの演奏:何だか心に響いてくるような音色だと思いました。また聞かせてください!」と書き添えたものがありました。うれしかったのでコピーして永久保存させていただきます。

06月13日(火曜日)

今日も梅雨空。洗濯物が乾かなくて困ったものです。夜、渋谷の國學院で『うつほ物語』の会。「国譲」の冒頭だから、物語全体の復習になるのは助かります。

06月14日(水曜日)   35000カウント

青学会館で国文学科の懇親会。なんと言っても、当代一流のスタッフを誇る国文学科のみなさんとお会いすることはなんだか身の引き締まるような感じがしますね。

06月15日(木曜日)

なんだか家をでるべきタイミングを逸してしまったので、無謀にも車で八千代市の東京成徳大学に向かいました。どこか集中力が欠けていたせいか、柏インターを飛ばしてしまい、利根川を超えて茨城県に立ちよりUターン。全行程二時間弱。おかげで、模擬授業も楽しい内容になりました。帰りはもっとスムーズで六時前には帰宅できました。電車ならまだ池袋付近にいる時間です。

06月16日(金曜日)

なんとも忙{せわ}しない一日。明治では和泉祭が学内セクト問題で中止になっていました。論文演習は情報実習室で社会的事象をリサーチして論文を書いていただきました。「国語」は若尾文子主演の『刺青』を観る。なかなか面白い内容でした。移動して青山の文学史は『伊勢物語』を。古典演習も、発表者には「面白かった」との感想がたくさん寄せられていました。「『源氏物語』の女性たち」に関するものでした。

06月17日(土曜日)

余明先生の古琴の師匠が来日して演奏会をなさるということで銀座に行きました。琴は唐代のものだそうで、「広陵散」や「大胡笳」の演奏はまさに、平安の『源氏物語』の楽の音そのものでした。先日、学会で話題となった「広陵散」は、45節の標題からして、やはり、「聶政韓王を刺せる曲」が主題の曲でよいようです。でも「大胡笳」は、蔡文姫の悲劇の人生の曲だとのこと。僕は王昭君の人生を描いたものだと思うけれども、これは今度聞いてみましょう。そんなわけでものけんは二次会から。語り物研究で著名なHさんから、「上原君はものけん事務局失脚した訳?」などという、ぶっとび質問もありましたが、もちろんこれはジョークですよ。

06月18日(日曜日)

水泳をした以外は何もせずテレビを見て休む。こういう日も必要です。

06月19日(月曜日)

清泉女子大学。『あさきゆめみし〜源氏物語』の二回目。葵の上、出産のシーンのもののけと藤壺出家のデティールを解説しながら。でもこれでは本質的なものは見えてこないとは思います。中古文学概論は藤壺・浮舟と出家場面と『出家作法』とを読み比べる。かなり興味を持ってくれたようですね。

06月20日(火曜日)

國學院で『うつほ物語』の会。「国譲・上」巻の冒頭に、太政大臣・藤原季明が、死を自覚して殿舎や荘園を処分するための文書の解釈に議論が集中。解釈はいくつかあろうけれども、所有する三つの殿舎はそれぞれ、季明の屋敷は宮の君{季明の大君、東宮妃}、ついで広い殿舎は、大きな荘園や宝とともに源宰相{実忠}に、さらに「女の使ひたまふべき調度加へて」もうひとつの殿舎を源宰相があて宮求婚に際して捨てた妻との間の子、袖君に与え、残りの荘園を中将の君{実頼}と、民部卿{実正}にそれぞれ与えたと言う解釈に落着くようです。歴史学の成果を参観することが必要だろうということになり、家に帰って調べて見ると、この時代は、相続権に男女の差別は無かったようで{ただし、国家管理のもとの平等なので「総体的奴隷制の社会」という。以上、『家族と結婚の歴史』森話社.1998、関口裕子論文参照}、これは世界史的にも珍しい女性の財産保有権の平等主義が慣例だったことがわかり{ただし、10世紀初頭以降、貴族社会でも家父長制成立とともに男性絶対優位の財産管理体制へと移行したとのこと}、なんとも言えぬ充実感を覚えた夜でした。

06月21日(水曜日)

本日、夕方の一時期を除いて勉強三昧。昨日の、古代女性の財産権に関しては、江守五夫『物語にみる婚姻と女性』{日本エデイタースクール出版部.1990}113頁に当該本文の解釈が示されてあり、また栗原弘『平安時代の離婚の研究』{弘文堂.1999}にも、離婚と財産に関する詳細な考証が見られる事がわかりました。また、来月締め切りの三谷栄一先生の『狭衣物語』の伝本研究の書評の方もかなり勉強が進みました。とくにこの研究に関しては、北海道勢が優勢です。荻野敦子さんの巻四に関する研究や、跋文の論文、後藤康文さんの脱文の研究が有益だと思いました。

06月22日(木曜日)

東京成徳大学。東京外環自動車道〜常磐道で我が家から柏まで一時間弱ということで、車での通勤が癖になってきました。国語科教育法はほぼ来年度の教育実習先も決まっていたようで、僕が手配する必要はないようです。「中世文学」は「紫式部」まで。帰宅して水泳。身体がなまってはいけませんからね。

06月23日(金曜日)

明治は和泉校舎休講のためお休み。青山の文学史『伊勢物語』。なぜか落着きなくお喋り多し。古典演習の「柏木」巻輪読はようやく僕の意図が明確に伝わってきたレポートでした。自由テーマの「夢」も分析的だったし。でも発表者が遅刻するのはやめてください。あわてて、教務の方に御迷惑をおかけしました。来年度から学生の携帯電話の番号も把握しておいて頂きましょう。

06月24日(土曜日)

ネタ切れなのでマイブームを披露。ザ・グレート・ムタの顔で米WCWに長期参戦する新日本プロレスの武藤が22日渡米しました。彼と元・全日本の三沢光晴は同世代なので現在のマット界は60年代がリードしているということになります。それにしてもこの光景は美しい。今の僕には、武藤の薄くなった髪の毛{ただし彼は自分のプロレスに悩んだ時の円形脱毛症とのことですが}以外に彼を凌ぐことは出来ていないようですなあ。

もうひとつ話題を提供。 より。宇多田ヒカルの好きな作家は 中上健次『異族』『紀州弁』、芥川龍之介『羅生門』『河童』、川端康成『感情装飾』、森鴎外『高瀬舟』、夏目漱石『こころ』、宮沢賢治(詩集)、Roald Dahl "Tales of the Unexpected", Shel Silverstein "Where the Sidewalk Ends""A Light in the Attic",Edgar Allan Poe, Elie Wiesel "Night", John Berendt "Midnight in the Garden of Good and Evil", F. Scott Fitzgerald "The Great Gatsby" 。さあ、あなたは何冊読んだことがあるでしょう?

06月25日(日曜日)

放送大学の「国文学入門U」の二日目の出講で、四回目、5回目の講義。まず、「紫式部と『源氏物語』」と題して『紫式部日記』の消息体評論篇を読み、ついで「『源氏物語』の女性たち」では、例の出家する女人たちの話をしました。どのように受けとめていただけたのでしょうか。

06月26日(月曜日)  36000カウント

清泉女子大学。古典演習は「陰陽道」と「琴」についての発表。前者は『うつほ物語』と『源氏物語』の陰陽道関連記事を考察したもので、たいへんな力作。僕も勉強になりました。満足。中古文学概論は『源氏物語絵巻』の話。以上。

06月27日(火曜日)

『元輔集』の注釈作業。僕が担当した十年近く前の手書き時代の考証の再チェック。あの頃はついてゆくのがやっとだった。いや、今もそうなのかもしれません。

06月28日(水曜日)

本日の『朝日新聞』朝刊の記事によれば、「大学の三割が定員割れ」。定員の五割以上の学生を集められなかった学部学科には補助金が交付されないのだけれども、これでは国家予算が余ってしまうためでしょうか、大学全体で五割であることと、あるいは、五割以下でも教育研究条件に特色があれば交付の対象になるように変更されるとのこと。これから大学はどうなってしまうんでしょう。ちなみに僕がお世話になっている大学は、どこも若干定員超過気味{ただし1.3倍まで可}なので御心配なさらぬように。


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