経済のあれこれ

まだまだ入門書を読んでいる最中なのだ。

  • 目次 おたより

    コンパラブルワースの話

    ワシントン州で、州の職員の賃金体系が変わりました。 それまで、世間の賃金相場に従った賃金体系だったのが、 専門知識や責任、負荷などから割り出された賃金に変わったのです。 女性の多い職の賃金は、大幅に上がりました。
    やがて、男性の多い職種から、民間へ大量の人材流出が起きました。 世間並みの給料相場より、大幅に安かったからです。 これらの職種の賃金は、引き上げざるを得ませんでした。
    一方、女性はかえって「女性の職」に甘んじることになりました。 男性の多い職種の高賃金は、女性にとって「女性の職に就かない」ためのエサだったわけですが、 今やそのエサがなくなってしまったからです。
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    オルドマン・テンプルの三原則の謎

    「オルドマン・テンプルの三原則」とは、現在もっとも公平な世帯への課税の基準 と言われている方法です。

  • 同じ所得の片働き世帯と共働き世帯では、前者の方が多くの税金を払うべきだ。
    片働きの方が稼ぎの効率がよい。共働きは働くためのコストが二重にかかる。
  • 共働き世帯は、独身時代より多く税金を払うべきだ。
    一緒に暮らせばその分生活費が安上がりになる。
  • 同じ所得の夫婦世帯と独身者世帯では、独身者の方が多く税金を払うべきだ。
    ひとりものの生活費の方が、家族より安い。
    しかしどうも、この基準はわたしには納得できません。 この基準を満たす税制が実現不可能である、というのが一点目。
    なぜ、夫婦だけが特別扱いされるかわからない、というのが二点目。 例えば次のような場合を考えてみます。 田中太郎・花子兄妹と、鈴木一郎・幸子兄妹がいたとしましょう。 彼らは兄妹いっしょに住んでいます。 さて、彼らが結婚したとします。 すると、田中太郎・幸子夫妻と、鈴木一郎・花子夫妻は、 いきなり税金が安くなるわけです。
    うまい説明を求む。
    また、この原則によれば、異性愛カップルは同居すれば税金が安くなるけど、 同性愛カップルだと同居しても税金が安くならない。 これは同性愛者への差別的税制ではないか。(現実の税制もそうだが)
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    飴と鞭について

    経済学の入門書を買ってきたが、 なかなか進まない。特にマクロ経済学の本を読んでいると、あっと言う間に 眠くなってしまう。ケイジアン、新古典、マネタリスト、実物景気循環論、 いろんな流儀の主張が頭の中で整理できずにこんがらかってしまうのだ。
    唯一眠気をささずに読めるのが、第16章「経済体制」である。 ソ連の失敗とその後の市場経済体制への移行の話題である。 これが抱腹絶倒ものなのである。
    共産圏では、せっせと働いてもいいことはない。
    だからみんなさぼる。
    いいものを作ってもいいことはない。
    だからみんなさぼる。
    会社の業績が悪くなっても、誰も困らない。
    国が穴埋めしてくれるのだから。
    事業は国営だから、ライバル会社はない。
    かくて競争は起きない。
    過剰人員が発生しても、くびにはしない。
    赤字になっても困るわけではないのだから、人件費が浮くより労働争議の方が問題となる。
    商品の価格はべらぼうに安い。
    だから過剰な需要が発生し、手に入れるには行列が必要となる。
    食糧危機や公害などの問題が起きても、報道の自由がないが故に、対策が取られない。
    長雨が続くと、市場経済では野菜の値段が上がる。 すると、主婦が野菜を買い控えたり、豊作の地域から高く売りつけようと、 野菜が運ばれてきたりする。 しかしソ連では、野菜の値段は上がらない。 主婦は野菜を買い控えないし、他の地域から野菜を運ぼうとする動機もないから 他の地域から野菜を持ってくることもない。
    どうも世の中世知辛いとぼやきたくなることはある。 しかし、世知辛いからこそキャベツを買うのに行列をする必要がないのだ。
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    呉ポートピアランド見学記

    「第三セクター」という経営形態がある。 必要な事業に官が資金を供給し、民の能力でうまく儲けられる、というはずだった。 が、実際には、無責任経営で赤字出し放題だと報じられている。
    ここの所、だんなの休日出勤が相次いでいる。今日もそうだ。 そこで、「だんなの獣計画」じゃなかった「だんなのけもの計画」と称して、 子供二人を連れて、女房子供だけで呉ポートピアランドに出かけることにした。 「呉ポートピアランド」は、五年半ほど前に開業した、 第三セクターが運営する遊園地である。 呉線の呉ポートピアランド駅の真正面にあり、 幹線道路にも面しており、交通の便は良い。
    ずらりと並んだチケット売り場。しかし、半分以上が閉まっている。 中に入っても、人影は少ない。高校生の姿がぱらぱらと見えるだけだ。 ミニ四駆大会の会場(水を抜いたプール)に、コース研究に余念のない若者がうろうろしていた。 うち以外に見かけた幼児連れは、片手で数えるほどだった。
    やがて高校生は、アナウンスがあって帰っていった。 どうも修学旅行だったらしい。 よけいヒトケがなくなった。 来る前は迷子にならないか心配をしていたのだが、杞憂であった。 ここまで客が少なくては、見失うことはあるまい。
    ジェットコースターは、一番前か一番後ろにしか客が乗っていない。 確実にいちばんいい席に乗れるわけだ。 観覧車に乗って驚いた。下を見ても、ほとんど乗り物が動いていない。 たまに客が乗り物のところに来て初めて、乗り物が動き出すのだ。
    お昼を食べたついでに、心配になって店の人に聞いてしまった。
    「あのー、こんなに客が少なくて大丈夫ですか? いや、わたしも五年ぶりくらいなんでなんなんですけど」
    「そのかわり、どの乗り物にもすぐ乗れますよ」
    五年前に来た時は平日だったけど、今日よりはだいぶ人が多かったように思う。 行楽日和の土曜日(しかも、週休二日の人にとっては三連休初日)でこんなにがらがらでは、 大赤字間違いなしだ。 事実、大赤字だと聞く。
    で、どうしてこれが、「官が金を出すべき必要な事業」だというのだろう。 呉ポートピアが開業してしばらくして、「広島ナタリー」という、 もともとあった遊園地が潰れた。 広島県にはそもそも、二つも遊園地を成り立たせるほどの娯楽需要がないのだ。 だから、民間の広島ナタリーはとっとと潰れた。 しかし、呉ポートピアランドは、広島ナタリーに比べて魅力のない施設なのだ。 官を背負っているだけ、真剣に儲けようというインセンティブにも乏しいのだろう。 だから、広島ナタリーが潰れても、呉ポートピアランドには客はこない。 呉ポートピアランドができていいことなんて、あったのだろうか。 この事業のどこに、官が金を出すべき必要があるというのだろうか。
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    大新聞の嘘


    ほとんどの物の値段は、小売店が決めていいことになっている。 ところが、いくつか例外の品がある。これを「再販制度」と言っている。 その一つが新聞である。
    最近の規制緩和の流れで、矛先が新聞再版制に向くと、新聞は口を揃えて 「新聞は公器だ、社会の木鐸だ、文化を守るには再版制が絶対必要」と、 キャンペーンを張る。 あまりに見事に足並みが揃いすぎて、うさんくささ爆発(笑)。 その一方で、 新聞再版制反対の意見は、 マスコミからしめだされているらしい。
    さてさて前置きが長くなったが、新聞社サイドが主張している 「再版制で全国一律料金だからこそ、質の高い報道が全国津々浦々に届けられる」 という主張は

  • 真っ赤な嘘!
  • 沖縄では全国紙は、「本土新聞販売協会」なるところが販売している。 「本土」というのは、沖縄では他県を指す言葉である。(北海道出身者は面食らうだろう) 次の表は、いくつかの新聞の一ヶ月の購読料である。

    本土沖縄
    朝日3007円東京版5158円、西部版3925円
    日経3568円4383円
    日スポ3260円3260円

    沖縄が外国だった頃なら、多少割高な料金で全国紙を売っても構わない。 しかし、沖縄が1972年から日本の領土になったというのに、 1997年の今でも相変わらず割高な料金で、全国紙を売っているのだ。
    「再版制で全国一律料金」だなんていう嘘を平気で言うメディアが、 言論の自由だの沖縄の心だのいくらきれいごとを言ったって、 誰が信じるものですか。
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    リバースモーゲージローンと借家借地法

    「家は買った方が得か借りた方が得か」
    という話を友人としていた。 借りようが買おうが、一長一短である。 「でも、年寄りには家を貸してくれないらしいから、年を取る前には家があった方がいいのかな」
    と友人が言うので、せめてわたしが年を取る前には欲しい制度として、持ち家派のためのリバースモーゲージローンと、 借家派のための借家借地法の改正をあげた。 その友人はどっちも知らなかったので、このページに説明を書くことで返事にかえる。

    リバースモーゲージローンとは、読んで字のごとく、 「住宅ローン」の逆である。持ち家を借金の担保にして、 月々少しずつ借金をして生活費や介護費用に充てる。 そしてお迎えが来ると、家を売って借金を清算する。武蔵野市などの一部の自治体でやっている。 歳を取って退職した時に、持ち家と貯金がある程度あったとしよう。 貯金は崩して使うことができるが、持ち家は資産としての価値があってもまったく使いようがない。 家賃よりは安いとはいえ、固定資産税やメンテナンスコストだって馬鹿にならない。 リバースモーゲージローンがあれば、持ち家を資産として、目の黒いうちに使うことができるのだ。

    現在の日本では、退職する頃には八割の人が持ち家を持っている。リバースモーゲージローンがあれば、 多くの人の老後の生活費や介護費用の工面が楽になる。厚生年金の支給額も削減されそうなことだし、 ぜひリバースモーゲージローンを導入してほしい。

    次に、借家借地法の改正の話。 日本の借家借地法では、借家人/借地人の権利は非常に強いものとなっている。 家賃や地代をなかなか上げられないし、追い出すこともできない。これは昭和16年、言わずと知れた戦争中、 「戦争に行っている兵隊の家族が、家から追い出されるようなことがあっては、兵士の士気にもかかわる」という理由からこの規制ができた。 で、戦争に負けてもう半世紀以上もたったというのに同じ規制が残っている。

    この結果、日本の住宅事情はどうなったか。

    現在のところ、経済学な人が改正賛成派、法学な人が改正反対派にまわっている。 例えば日弁連のホームページには、改正反対アピールが載っている。 しかし内容を読むと、「本当にこの人たち、経済学な人の主張を読んだの?」と首をかしげざるを得ない。 例えば法学な人は、「お年寄りが追い出されたらどうなるの」という。 しかし経済学な人の主張を読めば、「法が改正されれば、追い出されても次の家をすぐ見つけることができる。 現状では、お年寄りは部屋を借りることすらできない」ということがわかるはずなのだ。 なんか頭から、経済学的な主張に偏見を持っていてハナから聞き入れていないような印象を受ける。

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