 |
このあたりを石切峠というのだろうか。よく知られた「峠の茶屋」だ。春日神社の杜を抜けて飛鳥中学のあたりから能登川の「柳生みち」を石仏群を見ながら遡った。昼間とはいえ春日原生林と高円山に挟まれた谷間は薄暗い。夜来の豪雨に濡れた石畳の道を小さな蛇が横切った。ようやく峠に着くとこの家の犬が喜んで寄ってきた。縁台に腰掛けてビールを飲む。後で「名物草団子」をたのまなかったことを少し後悔した。犬がはしゃいで縁台に上り、その度にご主人に叱られていた。汗が引いて、さて円成寺に行こうと茶屋を発つ時には、犬は不意の訪問者への興味が失せたとみえて姿は見えなかった。 次へ
|