高良神社
Kora-jinja Shrine

見晴台からは京都と宇治が見渡せ、足下には3つの川が合流した淀川が白く横たわっている。傍らに谷崎潤一郎の「蘆刈」の一文を刻んだ碑文がある。
「私の乗った船が洲に漕ぎ寄せたとき男山はあだかもその絵にあるようにまんまるな月を背中にして鬱蒼とした木々の繁みがびろうどのようなつやを含み、まだ何処やらに夕ばえの色が残っている中空に暗く濃く黒ずみわたっていた。」
物語の序章の叙景で、かつて後鳥羽院の水無瀬離宮のあったあたりの淀川の中州から見た宵の情景だ。
当時は水無瀬と橋本の間に中洲を中継にした渡し舟があり、橋本に遊郭があったことから、夜遅くまで川を往来できたようだ。
9月の満月の日の宵に、水無瀬付近を新幹線で通ることがあれば、この「蘆刈」の幻影のような景色を思い浮かべてみたい。高良神社まで歩いて山を下りた。