10時過ぎに南大門前に着く。真直ぐに東院の夢殿へ。救世観音を初めて拝観する。仄暗い堂内の厨子に安置されている観音様は不思議な笑みを浮かべているように思えた。唇には朱色が残っている。 梅原猛さんの「隠された十字架」を心躍らせながら読んだのが20代だった。ようやく太子の分身といわれる秘仏を拝観した。 鎌倉時代以降、白い布に包まれていた秘仏の覆いを半ば強制的に解かせたのは岡倉天心とフェノロサだった。故あっての秘仏ではないか、とは今でも思う。はたして拝観したのが良かったのか、とも。 次へ