不退寺
Futai-ji Temple

1月の終わりに不退寺を訪ねた。寺は平城京跡の東北にあり、佐保川の北側に広がるなだらかな丘陵の裾にあたる。不退寺は正式には「不退転法輪寺」といい、平城天皇の孫の在原業平が父君の菩提を弔うために発願した寺だ。寺名は法の教えを広めて決して退かない、という意味だろう。藤原薬子の乱で藤原式家に替わり北家の冬嗣が権力を握ると、業平の父が皇位を継承する可能性は消えた。才能溢れる貴公子業平は恋と歌に生きるしかあるまい。それはさておき、「不退転」とは年の初めにふさわしい言葉ではないか。退転ばかりしているわが身と心の弱さを省みる機会でもある。