大鐘
Big Bell

鐘楼は山門正面に向かって右手の、小高い尾根の上にある。弁天堂と茶屋があり、やや見晴らしが利く。生前父が上京した折に、鎌倉に遊び、この鐘楼に登ったことがある。父が長い石段の途中で二度休んだのが気になったが、心臓の病気だったことは後になって知った。
国宝の鐘の銘文には「風調雨順」とある。全ての物事がうまく行くという意味だ。国の存亡の危機の元寇を辛うじて凌いだ頃、この鐘は鋳られた。「風調雨順 国泰民安」とは切実な祈りの言葉でもあった。父とこの鐘を見た後、茶屋で甘酒を飲んだことを思い出した。      次へ