頼朝のめいれいをうけて、笹目忠太(ささめのちゅうた)が、
おおぜいの軍兵をひきつれ義経をさがしています。

「おお!こんなところに静御前がいたぞ、」
「きっと義経もちかくにいるはずだ」ととりかこんだところ、
ドッガーン!と天もわれんばかりの雷鳴がとどろき、風がふきあれ、
「まてーい!」かみのけをさかだて、
いかりにもえた佐藤忠信(さとうただのぶ)があらわれました。

あっというまに軍兵をけちらし、
鼓をもってにげようとする、笹目忠太をとりおさえました。
神社のかげからみていた義経は、
「よくぞ、あぶないところをすくってくれた。」と、
しんらいしていた忠信がきてくれたことを、たいへんよろこびました。

そして、 義経たちは静御前を忠信にあずけて、
みかたのいる九州へと、たびだっていきました。

しかし、忠信からは、なにやらにんげんとはおもえぬ妖気が
ただよっています。
そうです、さっき木のかげからのぞいていたきつねがばけた、
狐忠信だったのです。



狐忠信の丈の短い衣裳は四天(よてん)といいます。
両脇にスリットが入っていて動きやすくしてあり、
鎧をデフォルメしたともいわれています。

かつらは荒事に用いる菱皮(ひしかわ)、顔は火焔隈、手足も隈取りをした
肉襦袢を着込んでいます。

軍兵たちが着ている衣裳も、唐草模様の四天です。



もどる

すすむ