注射が嫌いだ
令和4年6月Facebookに書き下ろした記事です。

注射が嫌いだ。

情けないのだが注射が怖いのである。

針が刺さる瞬間も、針が奥に進んでいく時も、薬液が投与されている時も、針が抜けていく時も、全てが嫌だ。
テレビで注射のシーンがあるだけで目を背けてしまうほどには嫌いだ。
ここ数年は例のワクチンのニュースでよくテレビにも注射のシーンが映っていたんでよく手で画面を隠していたものだ。
自分のワクチンなんざ怖くて打ちたくないので後回しにしてた。それでも打たなきゃならない、その時には覚悟を決めて気合いで脱力し、運を天に任せた。
一回目のワクチンは、痛くなかった。集団接種で女医さんに打ってもらったけど刺さる瞬間痛くなかった。刺さる瞬間痛くなかったけどどうせ針が奥に進むときにいたいんだろうと思ったし、針が奥に進むときも痛くなかったけどどうせ薬液が投与されているとき痛いんだろうと思ったし、薬液が投与されているときも痛くなかったけどどうせ針が抜けていくとき痛いんだろうと思ったし、針が抜けていく時に痛くなかったけどどうせ次は痛いんだろうと思っていたら、もう終わっていた。すごい、技術も進んでいるんだなぁと思い、二回目のワクチンに挑んだ。

二回目は痛かった。一回目の女医さんがよほどうまかったんだろう。

そんなわけで、出来る限り注射を打ちたくない人生を送ってきたのだ。
だから当然定期健診も受けていない。何とかなるだろうと思っていた。
そんな自分が、胃ガンと診断された。

血を吐いて倒れた。何年か前にもそんなことがあったが、一日寝てたら何とかなった。今回も一晩寝たけど何とかならなかった。
しかたなく病院にいくと、胃カメラをすることになった。今まで胃カメラの経験はないがはキツいとは聞いていたので鎮静剤をお願いした。鎮静剤は注射である。注射嫌いな自分でもやったほうがいいくらいには胃カメラはキツいと聞いていた。我慢して打ってもらって胃カメラをした。鎮静剤は今までにないほどよく眠れた。結果、大きな胃潰瘍が見つかった。
まあ前の年からすごく心悩ませ苦しんだことが続いていて、日々泣いていたのでストレスでそうなったのかもしれない。「あんなことがあったのにのうのうと生きてやがって」とか思われてるんだろうけど、俺だって心痛めてたって証になるかも。

そしてその胃潰瘍のすぐそばにどうにも怪しいものがあると診断された。「これは胃ガンの可能性ありますよ。組織を検査に出しましょう」とのことで、10日ほどで謎の組織から組織の検査が終わったとのことで病院に話を聞きに行った。結果、未だガンとは断定できないとのことだった。
胃潰瘍の検査で二回目の胃カメラの時、潰瘍は小さくなったけど怪しい奴は大きくなっていた。再び組織を検査してみると、今度はガンになっていた。

まあ、両親ともガンである。その家系なのはわかっていた。いつかはその日が来るのかなとは思っていたが来てしまった。しかし、自分が胃ガンになったところで自分で何ができるのか、ぶっちゃけどうしようもない。病院に行ってお医者さんの話を聞いて指示通りに治療を受けるだけだ。
どうにも怪しい敵の奴は胃ガンになる前からこちらはターゲットオンしてるんだ、当然ステージはT、早期発見につき腹腔鏡手術で胃の三分の二胃を切除すればあとは何とかなる。

それよりも注射である。これからはありとあらゆる検査や治療に注射がついて回るのだろう。
実際、これ以降頻繁に注射をすることになる。新たな敵は血液検査、高血圧だ。

胃カメラを飲むときは必ず血圧を測る。その時に自分の血圧が高いのがばれてしまった。 元から高いのだ。おおよそ上が160程度ある。それでも何とかなると思って生きてきたが、何ともならないそうで。これからは薬を飲んで、自己管理もしていかなきゃならない。なにより高血圧で病院に通う以上、血液検査との縁は切っても切れない。病院に行くたびに採血され、その度に強く覚悟を決めてから採血してもらうことになる。手に力を入れて、見ないようにして、チクリとする感覚があっても気を抜かず、看護師さんの指示を聞いて手の力を無理やり抜き、終わりの合図が出るまでじっと我慢する。恐怖を乗り越え覚悟を決めてから注射するので、一回注射するだけで疲れてしまう。が、注射さえ終わればこっちのもの、あとは怖いものはない。

さあ何度も注射と戦い、いよいよラスボス、胃ガンの腹腔鏡手術である。と思ったら、入院前に高血圧で倒れてしまった。このままでは手術ができなくなる可能性もあるとのことで、手術の入院の前に血圧で予備入院だ。血圧で入院なんだから点滴もある血液検査もある注射もあるのフルコースだ。何度も採血や点滴の注射を繰り返した。

でもまあそれも乗り越えた。いよいよ本当のラスボス、胃ガンの腹腔鏡手術だ。しかしまあ、背中の麻酔と腕からの点滴くらいでなんとかなった。

その後も点滴と、二日に一度くらいの早朝採血を乗り越えて何とか退院した。
退院祝いに寿司でも食おうと思ったら、退院当日の栄養指導で「寿司は2〜3か月後ですよ」と言われてがっかりもしたが、とにかく退院だ。

ただし、これからは転移のための検査とか血圧のための血液検査、定期的に注射をしていくことになるんだろう。

やだなあ。やっぱり注射は嫌いだ。

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