インド四大聖地
平成30年円通誌69号に掲載されました。

お釈迦様についてはいくつかの聖地があります。そのうち誕生の地ルンビニ、悟りの地ブッダガヤ、初転法輪の地サールナート、涅槃の地クシナガラの四つの聖地は特に「四大聖地」と言われます。他の聖地と合わせて六大聖地や八大聖地という場合もあります。聖地は全て北インド地方になります。今回はその四大聖地について簡単な案内をいたします。

誕生の地ルンビニは現在のネパールの、インドとの国境にほど近いところにあります。釈迦族の王様に嫁いだお釈迦様のお母様、マヤ夫人が里帰り出産の折に花の美しいルンビニ園で休息しているときにお釈迦様がお生まれになりました。お釈迦様はお生まれになられるとすぐに7歩歩き、右手を上に左手を下にして「天上天下唯我独尊」を言われると甘露の法雨が降ってきたとされており、その様子は現在でも「花まつり」として毎年四月八日に見ることができます。ルンビニは聖地では唯一インドではなくネパール南部の小さな村ですが、お釈迦様の生誕の地であることから一九九七年に世界文化遺産に指定されています。遺跡としてマヤ堂やアショカ王柱、お釈迦様が産湯に浸かった池などがあります。

悟りの地ブッダガヤは現在のインドのビハール州にあります。お釈迦様が苦行を止め、尼蓮禅河で沐浴されたのち村長の娘スジャータの捧げる乳粥をいただかれ、心静かに菩提樹の木の下で禅定に入られました。そして七日七晩坐禅をし、八日目の明けの明星とともにお悟りを開かれた地であります。禅宗では現在でも一二月一日から八日まで臘八大接心という厳しい坐禅の期間を設けておりますのはこの故に依ります。ブッダガヤには聖地の中心となる世界遺産の大菩薩寺があり、その本堂である大塔は高さが52mあります。大塔のそばにはお釈迦様が悟りを開かれたときに坐っておられた金剛宝座や沐浴された池などが整備されています。大菩薩寺に現存する菩提樹は当時の物ではありませんが子孫に当たり、その周りで世界各地の仏教徒が五体投地をしたりお経を唱えたりしたりと賑やかです。

初転法輪の地サールナートは現在のインドのウッタル・プラデーシュ州にあります。ヒンズー教の聖地であるバナラシ(ヴァーナーラシー、ベナレスともいわれる)から北におよそ10キロ、鹿の多い地で鹿野宛(ろくやおん)とも呼ばれ、悟りを開いたお釈迦様が苦行を止めるまで一緒に修行をしてきた5人の仲間に最初に説法をされました場所です。5人はすぐにお釈迦様に帰依され、ここに仏教教団が誕生しました。一説には元の仲間よりも鹿の方が熱心に説法を聞いていたそうです。現在は遺跡公園になっており、初転法輪の地にはダメーク・ストゥーパという塔が建っています。また近在のサールナート博物館には遺跡から出土した仏像が多数収蔵されています。

入滅の地クシナガラも現在のインドのウッタル・プラデーシュ州にあります。バナラシから北におよそ150キロの地です。お釈迦様はふるまわれたキノコの食中毒で入滅されたのですが、その際右手を下に頭を北に西を向いておられたのだそうです。その様子は涅槃図に詳しく描かれ、いろんな寺で見ることができます。クシナガラの遺跡は涅槃堂と言われるお堂が中心で、その周囲には僧院跡があり、また涅槃堂から2キロほど離れた場所にはお釈迦様のご遺体を荼毘に付した荼毘塚もあります。

和尚が「インドに行く」というとたいていこの聖地めぐりです。いずれもインドの田舎町で、物乞いがいたり未舗装路をバスで走ったりしますし大変な旅なのですが、やはり和尚にとっては憧れの聖地なのです。
追記:文章掲載の翌年、実際にインド四大聖地に行ってまいりました。その様子はDVDにしておりますので本堂で見ることができます。

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