【Windows にはポリシーがあるよ】

更新日 1997年3月10日


マイクロソフト社がほぼ10年以上前に、Windows の開発に着手して目指したものは非常にたくさんありますが、中でも特筆すべきは、「アプリケーション・プログラムの機種依存性を無くそう」としたことです。これがほぼ実現されたことは非常に喜ばしいことです。何のことかよく分からない方のために、少し説明する必要がありますね。

Windows が今日のように普及する前は、MS−DOS全盛でした。その頃からパソコンを利用していた方はよくご存知ですが、ワープロソフトにしても表計算ソフトにしても、購入する場合には自分が所有するパソコン専用のものを買う必要がありました。つまり、パソコンメーカー別・機種別にソフトを買わなければならなかったのです。例えば、NECのパソコンと東芝のパソコンがあって、「一太郎」を使いたかった場合、NECパソコン用の一太郎と、東芝パソコン用の一太郎は全く別物ですから、機種に合った一太郎を買わなければならなかったのです。

ところが、Windows 用のソフトの場合は、NECのパソコンであろうが、東芝のパソコンであろうが、それらのパソコンで Windows が動作してさえいれば、Windows 用のソフトを買ってくればいいのです。どちらのパソコンでもちゃんと動作するからです。なぜそんなことが可能になったのか、これも少しだけ説明してみましょう。理解できなくても大丈夫ですよ、少し難しいですから。

MS−DOSというOSは、比較的コンパクトであったためにあまり多くの仕事をしてくれませんでした。それに、その頃はまだまだ機械も遅いものが大半でした。そこで、MS−DOS上で動くプログラムを作成する場合、どうしても速度を優先させるために、MS−DOSが備えている能力に頼らず、機械が持っている能力を直接利用する傾向がありました。プログラムが、仕事の依頼をOSを通さないでしてしまっていたのです。ところが Windows のプログラムは、そのようなことを全面的に禁止して、必ずOSを通して仕事の依頼をするようにしたのです。プログラムの実行内容を、全てOSを仲介した実行に切り替えたため、Windows はもの凄くたくさんの仕事をこなせるように作られ、機械の能力を直接使わせないようにしたのです。メーカーや機種が違っても、その機種固有の機械制御部分は Windows が全部担当するため、Windows を機種別に用意するだけで、アプリケーションを機種別に作る必要がなくなったのです。

これは、プログラムを開発する側にとっても、それを利用する側にとっても非常に有り難いことです。機種別にプログラムを作らなければならなかったのが、一つ作るだけでどの機種でも動くのですから、より時間をかけてより良いものに仕上げることができます。利用する側は、何種類のパソコンがあろうとプログラムを一つ買うだけで、どれでも入れたいパソコンに入れられます。

MS−DOS全盛の頃のプログラムは、ソフト会社が違ったりプログラムが違ったりするだけで、そのプログラム固有の操作体系をマスターしなければなりませんでした。でも Windows では、どんなにプログラムが違っていても、同じような処理は同じような操作方法で実現できることを目指しました。ですから、Windows に最初から標準で備わっているプログラムだけでも、あれこれちゃんと使えるように練習しておけば、どんなアプリケーションを購入してきても、マニュアルなんて読まなくたってある程度使えちゃうのです。

例えばアプリケーションの殆どが、データの編集ができてそれを補助記憶装置に書いたり読んだりしますね。どんなアプリケーションでも何らかのデータを扱う限り、このような操作は必ず付いて回ります。そこで一度メニューの ファイル( を覗いてみて下さい。

  1. 新規作成()...
  2. 開く()...
  3. 閉じる(
  4. 上書き保存(
  5. 名前を付けて保存()...

どのアプリケーションにもおよそこのようなメニュー項目が用意されていて、表現もほぼ統一されています。それだけではありませんよ。メニュー項目名の後ろに括弧で囲まれたアルファベットがくっついていますが、これらもほぼ統一されています。ところでこのアルファベットは何だか知ってますか? これはキーボードでメニューを選択する場合のガイドなんです。それに、その後ろに...があるのとないのがありますが、これにもちゃんと意味がありますよ。 ...がある所は、選択してもさらにダイアログボックスが現れることを示しています。だから、選択するのを怖がらなくても大丈夫!!

今度はメニューの 編集( を覗いてみて下さい。どのアプリケーションにも切り取り、コピー、貼り付け、などがありますね。このように、同じような処理は同じような表現で同じメニューの中に用意されています。明らかに一貫性がありますね。マイクロソフト社はソフト会社に対して、Windows 用のソフトは操作体系に一貫性を持たせましょうと提唱したのです。それをソフト会社が可能な限り守ることで、利用者が同じ操作で同じような処理を実現できるようになりました。それに、この一貫性は他国語の Windows を利用した場合でも同じですから、世界中のどこへ行っても Windows を同じように操作することができます。

またそのおかげで、新しいソフトを買う度に、そのソフトのマニュアルを全て読む必要がなくなりました。マニュアルを読む必要があるのは、そのソフト固有の機能についてだけでいいのです。これも社会に大きく貢献した点と言えます。従来はソフト別に再勉強の必要があったため、社員教育などに膨大な時間と経費が必要でしたが、それが大幅に削減できるようになったのです。

Windows を使うようになるとマウスを使うことが当たり前のように思われがちですが、実は、基本的にはマウスを使わなくても、殆どのことをキーボードだけで実行できるように設計されているんです。人間は色々なことに慣れるに従って、より合理的な手段を常に探し求めていきます。マウスによる操作は、初期段階でいかにたやすく操作できるようにするかを見事に達成し、容易な操作性を提供してくれました。でも、突然マウスが壊れてしまったらあなたはどうしますか? 新しいマウスを買い求めてくるまでコンピュータを使わないでいますか?

そんな必要はないんですよ。勿論、フリーハンドで絵を描くような、マウスでなければできないこともあるのですが、それ以外の基本的な操作は全てキーボードでもできるんです。また、同じ一つのことをするにしても、マウスを使った方法もキーボードでの方法も、殆どの場合、それぞれに方法はたった一つだけではありません。例えば、プログラムを終了する方法をいくつか示してみましょう。

マウスによる終了方法

  1. コントロールボタンをダブルクリック
  2. 終了ボタンをクリック
  3. メニューのファイルから終了をクリック

キーボードによる終了方法

  1. [Alt]キーを押しながらファンクションキー[F4]
  2. [Alt]キーを押してから[F]を押して[C]

    または[Alt]キーを押してから[↓]、[↑]、[Enter]
  3. [Alt]キーを押してから[↓]、[←]、[C]

プログラムの終了だけでもこんなにたくさん(まだ他にもある)の方法が用意されています。でもそんなもの全部覚える必要なんてありませんよ。自分が一番やり易い方法だけ覚えればいいんです。普段はマウスで殆どの操作をしている人でも、マウスが壊れた時には、[他にも方法があったはずだ]ということを思い出して下さい。そして、その方法を探って下さい。必ず別の方法が見つかるはずです。Windows はそのように設計されているんですから。

一つのことを行うのに、みんなが同じ操作方法で実現する必要なんてありません。どうか、それぞれの人がそれぞれの一番好きな方法でやって下さい。マウスが好きな人はマウスでどうぞ。キーボードが好きな人はキーボードでどうぞ。マイクロソフト社はそんな理念を持って Windows を開発しているんですよ。操作性の一貫性からすると、何だか矛盾するように思われるかも知れませんが、決してそうではありません。使い込めば使い込むほどに、その価値が分かってくることと思います。