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大雪山の昆虫



北海道の昆虫は、大陸と大変密接な関連があります。過去の氷期には、北海道が大陸の一部でしたので当然かもしれませんが、特に北米大陸との共通種が多いことが注目されます。たとえば、北海道の高山蝶5種(大雪山には全種が分布している。)のうち、真正高山種(全ステージを高山帯で過ごす種。)であるウスバキチョウ、アサヒヒョウモン、ダイセッタカネヒカゲの3種は、本州の高山には分布していないのに比べて、北米大陸にはすべての共通種が分布していることなどです。 このことは地球が温暖期へと向かった時、北海道が津軽海峡によって本州と分離されたあとも長く大陸の一部であり、大陸との生物の交流が続いていたことを物語っています。 大雪山の昆虫は、上記のような地史的背景をもとに、日本で最も高山性(寒地性)の種が豊かなことが大きな特微でしょう。これは北海道が大陸と分離し、さらに温暖期に入ったとき、日高山系のような細い稜線を持つ山脈や孤立した高山でば、高山種の分布域の縮小、分断、あるいは消失が起ったためでしょう。しかし、比較的標高も高く、連続する広大な高山帯を有する大雪山系では、多くの高山種の生残りが可能だったのです。                            
                              (保田 信紀)


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