草模様

高山帯の造林家 ホシガラス


ふつうの松のマツボックリは熟すと開いて翼のついた種が自然に落ち、風のカで遠くに運ばれます。しかし、高山に分布するハイマツのマツボックリは熟しても開かず、種は自然に落下しません。また、マツポックリのまま地上に落ちても種は正常に発芽できません。 ですから、動物によってマツボックリの中から種が取り出され、土中に埋められる必要があるのです。このような種のまかれ方を動物散布と呼びます。 ホシガラスは高山に住むカラスの仲間でカケスぐらいの大きさです。全身チョコレート色の地に、顔から背、腰にかけて白い斑点が星のようにちりばめられたシックで美しい鳥です。ホシガラスは秋、ハイマツのマツボックリが熟すとハイマツ帯に現れ、マツボックリから種を取り出し、冬に備えて土中に埋めて貯えます。この貯えられた種の一部が忘れさられ、新しいハイマツとなるのです。このハイマツの種の貯蔵場所の一つに高山の風衝地があります。風衝地は風当たりが強く、冬でも積雪がなく、貯えた種を掘り出すのに都合が良い訳です。私たち人間から見ると、植物もほとんど生えず、全く不毛に見えるこの土地もホシガラスにとっては、冬の貯蔵庫としてかけがえのない土地と言えるでしょう。 これは、ほんの一例にすぎませんが、私たちが自然を見るとき、私たちの価値基準だけでみてはいけないよい例だと思います。                (礁 清志)

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