草模様

氷河期の生き証人 ギンザンマシコ

大雪山を代表する鳥を一つあげて下さいと言われたらギンザンマシコをあげることができると思います。ハイマツの梢でバラ色の衣装をまとい、高らかにさえづる風格のある姿を見ると、正に大雪山の鳥の王様と呼ぶにふさわしいと思います。 また、ギンザンマシコは、日本では、北海道の高山だけで繁殖し、その繁殖もこの大雪山で最初に発見されています。さて、このギンザンマシコ、どうして北海道の高山にしか住んでいないのでしょう?その謎を解く鍵は、その世界分布にあります。世界分布を見るとユーラシア大陸から北米大陸にかけての高緯度地方に広く分布しているのがわかります。ちょうど北極を囲むように周極的な分布をしています。そして、ユーラシア大陸では北海道が最も南の分布地となっています。このように、日本以外に大きな分布地があって日本の高山帯にだけかけ離れて分布しているものを遺存個体群と言います。遺存とは氷河期が去った後も取り残され、そこに住んでいるという意味です。氷河期には、今よりずっと南まで寒冷な気候で、高山帯も山麓まで広がっていました。この時期にギンザンマシコは北方から北海道へ渡ってきたのです。やがて、氷河期も終わり暖かくなるとほとんどのギンザンマシコは北方へ去りましたが、その一部が寒冷な高山帯に取り残されたのです。 ギンザンマシコは、過去に氷河期があったことの生きた証人と言えるでしょう。
                                     (磯 清志)


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