草模様

高山帯の鳥

高山帯の鳥
 

一般に高山帯と言えば、森林が途切れる森林限界線より上をさします。本州中部の山岳地帯では海抜2,500m以上が高山帯で、北に行くにつれ下降し、この大雪山ではおよそ1,500m以上、知床半島では700m以上となります。この高山帯の気象は、寒冷で、風が強く、非常に厳しい環境なのです。ですから、そこには特殊な生物しか住むことができません。いわゆる高山植物や高山蝶などが、高山帯でしか見られないのもそのためです。 一方、鳥は恒温動物ですから。厳しい高山の冬を過ごすより、翼という優れた移動器官を利用して、低地や南方に移動し、冬を乗り切ります。そのため、高山蝶のように一生を高山帯で送る種類はほとんどいないのです。しかし、この高山帯にも春になると様々な鳥たちが繁殖のためにやってきます。この大雪山の高山帯では、まだ雪のどっさりある5月上旬、気の早いカヤクグリのチリリッ、チリリッという鈴をころがすようなさえずりを聞くことができます。高山帯で繁殖する鳥が全て出そろう6月には、鳥たちのさえずりがあふれんばかりです。しかし、これらの鳥のうち、高山帯にだけ住む種類は、この大雪山では、カヤクグリ、ハギマシコ、ギンザンマシコの3種類だけです。他は、高山帯より下の亜高山帯を主な住み家とし、一部が高山帯に入り込んでいるだけなのです。このことは、高山帯が鳥にとっても厳しい環境だと言うことを示しているのでしょう。 

(磯 清志)



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