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天女ヶ原(湿原植生)



天女ヶ原(湿原植生)

 

この湿原は沼の平、沼の原同様、溶岩台地上に発達した山地高層湿原(山地貧養湿原)です。溶岩台地上に堆積した火山灰が不透水層となった湿地に初期の頃から他の湿原植物とともに直接ミズゴケ類が侵入して形成されたのです。ミズゴケなどの遺体は、寒さと過湿のため完全に分解されず、これが徐々に積み重なって湿原が発達してきたものです。泥炭は一様に厚くなって行くわけでなく、その成長には凸凹があり、泥炭の成長の遅い所などに水がたまって小さな池塘(湿原の水たまり)が形成されるのです。しかもこれらの成長はミズゴケと水位との関連で循環的にくり返され、やがては泥炭の厚く堆積した湿原へと発達していくのです。
 湿原内にはミズゴケ類のほかヤチヤナギ、ミツバオウレン、ヒメシヤクナゲ、ホロムイツツジ、ツルコケモモ、ミカズキグサ、ヤチスゲ、ホロムイスゲ、ワタスゲ、トキソウ、ハクサンチドリ、タチギボウシ、エゾキスゲなどが見られます。また、湿原の周辺には矮性化したアカエゾマツが散生して湿原に独特の美を与えています。
 しかし、この天女ヶ原は人為の影響もあり乾燥地化が進んでいるようで、周囲からチシマザサ、エゾマツ、オガラバナ、などが侵入してきています。湿原の破壊は単なる泥炭の踏付からも発生しますので、湿原内には立入らないようにしましょう。 (中條 良作)

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