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黒岳東斜面のお花畑(高茎草本群落)



黒岳東斜面のお花畑(高茎草本群落)


 黒岳の東斜面に展開する草原状のお花畑は高山植物の種類の多さでは大雪山屈指のお花畑でしょう。 通常冬季偏西風の風下にあたる斜面では大量の積雪と雪崩などの影響があって、森林が成立できないことがあります。そしてこのような環境の場所では、雪解けとともに大量の水分が間断なく供給され、中性あるいは湿性のお花畑が成立するのです。 黒岳東斜面では斜面が急すぎて地下水が停滞することがなく、また栄養条件がよいため、中性のお花畑が発達しています。
このためトカチフウロ、シナノキンパイ、ハクサンイチゲ、ナガバキタアザミ、オオカサモチ、ウサギギク、ミヤマキンポウゲ、クロユリなど比較的大型の草本(高茎草本)が目立ちます。そしてこの大型草本の下層には、より小型の草本やエゾツツジ、コケモモなどの媛性低木も見られるなど、実に多様な群落構成となっています。また、高茎草本群落をとり囲むように、あるいはモザイク状に、雪崩や雪圧に強いウコンウツギ、チシマヒョウタンボク、ウラジロナナカマド、ミヤマハンノキ、ミネヤナギなどからなるやや大型の低木林も見られます。 一方、湿潤性のお花畑の雲の平、赤石川河畔、裾合乎などで見ることが出来ますが、一般にこの群落は雪田植物群落と呼ばれています。        (中條 良作)


 高山植物とは
 高山植物とは、高山帯に生活の本拠をもつ植物を意味する。すなわち、厳密な意味では、
高山帯で発生し、進化し、そこが本来の生育地となっている植物が高山植物です。しかし
ながら一般的には、単に高山帯で発生した植物のみではなく、周極地植物で、氷河時代に
氷河の南下にともない移動し、現在高山帯に残存している種はもちろんのこと、亜高山帯
や低山帯に本拠地があっても高山帯の環境に適応して本来の高山植物に混生している植物
をも含めて高山植物と呼んでいます。しかし、最近の交通網の発達などにより人為的に高
山帯にまで入り込んだシロツメクサやスズメノカタビラなどの植物は高山植物としては取
り扱われていません。
       参考 植物と自然「高山植物学入門」豊国秀雄 より


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