雲とシュプール

万年雪


万年雪

  真夏に黒岳の山頂に初めて立った登山者は、白鳥千鳥の雪渓に大きな歓声をあげます。そして、「あれは万年雪ですか。」などと質問してきます。残念ながら、万年雪ではありません。白鳥や千鳥は段々と痩せ細って、黒岳に初雪の来る頃までに一度はその姿をなくしてしまうのです。では、万年雪とはどんな雪のことでしょうか。
 万年雪とは、見かけ上は消え去ることのない積雪層のことです。実際には表面近くでは、外気や放射の熱によって融解あるいは昇華が起こっていますし、地熱で底部からも溶け去っているのです。しかし、次の降雪まで一部が残るため年々代謝して永久に消えないように見えるのです。ですから、南極の氷のように、何万年も前の空気などが閉じ込められているというようなことはありません。
 万年雪は、その存在する地形によって「雪渓」「雪田」などと呼ばれています。表面も春先には雨の流れた後の縞模様になり、夏に近付くと灼子でえぐったような凸凹ができます。黒岳近くにある万年雪では、北海沢の万年雪と白雲平の雪ノ沢の万年雪が特に有名です。                             (志賀 義彦)


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