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7月の尾根を歩いていると、何かに驚いたかのように足元か急に飛び立つ灰褐色の蝶をよく目にします。しかし、再び静止し場所を探しても、その姿を発見することは難しいでしょう。その蝶のもつ色彩があまりにも周囲の自然に溶け込んでしまうからです。ある人は、この蝶を“ハイマツ仙人”と呼びましたが、その地味で枯淡な姿からは、やはり氷河時代の末裔としての風貌が感じられます。華やかな同じ高地族の仲間とは異なり、すべてが地にできています。ダイセッタカネヒカゲは小泉岳や北海平のような荒涼とした礫原地に生息しており、ダイセツイワスゲやミヤマクロスゲを食草としています。成虫は6月下旬に出現し、7月上旬〜下旬が最盛期となります。食草や近くの地衣類などに産みつけられた卵は、その年にふ化しますが、本種は幼虫状態(若齢と終齢幼虫)で2度の冬を越します。そして、3年目の春に蛹となり再び羽化して現れてくるのです。 この蝶には面白い習性が観察されます。それは静止したとき、羽をぴたりと閉じたまま横倒しになることです。これは高山特有の強風への適応からくる習性かもしれません。 (保田 信紀) |
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