PHS・ケータイのもたらすもの

1997年9月


PHSの安さの効果

標題にある、PHS。私も買いました。契約したのは、NTT Personal。 世間ではDDI Pocket が多いですね、。きっと、ちょっとでもエリアが広い方が 安心なんでしょうね。
私は電話は好きでないし、通話よりデータ通信が重要だから、 携帯電話でなくPHSにしたんですが、いざ使ってみると けっこう便利。だいたい、公衆電話を使う帰宅時などは、 公衆電話自体が混雑していますが、まったく気にせず かけられる。

んで、それで思ったこと。通話料が安く済み、バイト代でも なんとかまかなえそうとなると、高校生や大学生が持つように なる。というよりも、彼ら/彼女らが主力ユーザーになって くる。
特に、高校生が、親の力に頼らずに、自分の 電話を持てるようになる。しかも、自宅にいなくても 連絡が取れる。

これって、けっこう画期的かもしれない。

高校生が持つ自分の電話

というのは、自分の電話を持つというのは、私のようなおじさんの 育った頃には、親元にいるときには文字通りの「親子電話」で、 いざとなると子供の会話を親が聞くこともできたし、 なんといっても、親の経済力がないと加入電話などを持つ のも難しかったわけです(自宅に新たに電話線を引き込むのだって、 親の許可が必要でしょう)。NTTでなく、電々公社だったしさ。
これが何を意味するかというと、人との連絡に関して、 親がある程度、力を握ってしまっているということ。 自宅にいないと連絡がつきにくいし、ちょっと親に 聞かれたくない話はひそひそとしなければならない (冬や夏の公衆電話は地獄だしね)。 また、親が電話を受ける可能性があるので、連絡に親が 仲介が入るとなると、「いまの電話はどこの誰?」と いった話が始まらないとも限らない。
ところが、PHSで自分の電話を持つと、そういうことがない。 初期料金も安いし、通話料金もバイトをしていれば支払える から、気軽に始められる。使ってみれば、場所に拘束されないし、 かかってくるものの選別も可能だし(スイッチ切っちゃってた、 という言い訳も可能)、親に聞かれたくない話は、 どっか自宅の外でしてくればいい。相手が誰かの 詮索も受けないで済む。
もちろん、より深い関係になりたければ、自宅の住所と 電話番号、となるのは、今でも同じでしょうけど(笑)。

つまるところ、親が子のインフラを握っていたのが、 子の方で独自で開拓できるようになる。結果的に、 それまで横のつながり(自分の知人)によく介入して きた縦のつながり(親などの年長者との関係)を、 切ることができるようになる。
さらに、親も「誰のおかげで…」という項目が1つ 減ってしまう。電話による連絡は重要なのに、それを 子供が独自に持っちゃうわけだから。
バイトをする高校生は、昔よりずっと増えているわけで、 それも「親のおかげでお前らはやっていけているのに…」 と思わせる部分が、減る。さらに、バイトじゃ割にあわない から、大人の下心を利用して援助交際、となる。 こういうことをする子はたいてい、親にお金をかけ させちゃ悪いから、などといっていたりするそうですが、 官僚がまったく同じ発想をしているから、 「子は親に習い…」を地でいっているのかもしれん。

近しい関係の変化…?

女子高生の独自の文化というのは、私らの頃にもありました。 ところが、PHSやポケベルに代表される独自連絡網のおかげで、 それが加速されて、よそからの影響を受けにくい、純粋培養的な ものになっていってるんでしょうね。経済的な自由度が高まって いることもある。
こういった状態が今後のベースになってくると、 友人には甘えられるけど、親には甘えられない、という 人々が増えてくるかもしれません。すでに、親に甘えると 悪いから、という子がエンコーしたりするわけですが、 これは遠慮する相手が他人でなく、親になってきている、 ということです。元々、子供は早く親から独立したくて ウズウズしているものですが、独立が以前より楽になる 分、親には迷惑をかけられないと考えてしまうのですね。
なぜ、迷惑と感じるのか?親が「たいへんだ、たいへんだ、 お金がかかってたいへんだ」と言うからなのかな。

これは、日本が明治より 続けてきた家族制度が、かなり変わっていくことの端所に なるかもしれません。(そのことの善し悪しがどうのこうの、 というのではないです。)
近しい人々は、親以外の誰かであっても珍しくなく、それは各自で選びとる ものだ…という生活は、方向に進んでいくんでしょうね?

 


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