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RUBINAR 300mm F4.5をE-1で試す

F4.5と明るいミラー式300mmなら幅広く使えそう

 ロシア製のM42マウントのミラー式望遠レンズ、MC RUBINAR 300mm F4.5 MACROを購入しました。フォーサーズ用のM42マウントアダプタを使うと、E-1に装着して使えます。

 レビュー結果を早目に公開しようと、簡易レビューの感じでまとめてみました。要点だけ、大まかに説明したいと思います。

 35mm版の300mm F4.5レンズをE-1に付けると、35mm版として換算すれば、焦点距離が2倍で同じ明るさの600mm F4.5相当となります。ミラー式としては、他にタムロンSP 500mm F8を持っていて、こちらもアダプタでE-1に付けて使っています。同換算で1000mm F8です。

 これに比べて300mmは、超望遠の度合いが弱くなって利用範囲が広がります。また、約2段分も明るくなって、より暗いところでも撮影できます。さらには、手持ちで写す場合、500mmより300mmの方が遅いシャッター速度で済むため、実質的には2段以上の差になります。つまり、300mmは500mmより、2段以上暗い場所でも手持ちで使えるのです。

 以上のようなことを考えて、300mmの購入を決断したわけです。しかし、ロシア製のレンズって、写りは大丈夫なのでしょうか。根拠のない勝手な予想ですが、ミラー式なので色収差は大丈夫そうです。レンズの名称から分かるように、マルチコートもしてあります。最後は、セール中の税込み1万4700円という値段に負けて、もし悪くても少し遊べればいいやと考え、購入を決断しました。

ファインダーを覗いて明るさを実感

 ミラー式のレンズというのは、自分が所有しているもの以外でも、何種類か使ったことがあります。たとえば、知人が持っているのを触らせてもらったとか。それらのレンズに共通するのは、焦点距離が500ミリ以上で、F値が8以上という点です。そのため、ファインダーを覗くと暗く感じます。

 ところが、このミラー式300mmはF4.5です。300mmとしては、屈折式(普通のレンズのこと)で一般的な明るさになってます。レンズを付けてファインダーを覗くと、その明るさを実感できました。いくらミラー式といえど、やっぱりレンズは明るい方が良いと、改めて思いました。

 ミラー式なので、絞りはありません。常に開放のまま使い、露出はシャッター速度だけで調整します(レンズのマウント側にフィルター挿入部があり、NDフィルターで露出を調節できますが、使わない私にとっては、ないも同然)。絞り優先自動露出かマニュアルのどちらかで使います。

 使い始めてみると、銀塩カメラに付けたミラー式500mmに近いと感じました。E-1に付けた300mmは600mm相当で、35mm版の500mmにかなり近いなります。大きさや重さも、かなり似ています。

 唯一違うのは、レンズの明るさ(F値)です。前述のように、約2段分も明るいし、焦点距離も短いので、利用範囲はかなり広がります。いろいろと面白い用途で活躍できそうです。

 偶然でしょうが、両レンズともマクロをうたっていて、最短撮影距離が短いのです。超望遠レンズにマクロ機能があると、近づけない被写体を大きく撮れるので、かなり重宝します。どちらのレンズでも、嬉しい点です。

ピント合わせはまあまあ

 ミラー式レンズの場合、絞りを絞って被写界深度を深くすることができないので、浅いままで使わなければなりません。ミラー式レンズの宿命ですね。

 E-1で使うときは、ファインダーのマット面を見ながら、ピントを合わせます。ピントリングを回しながら「ここらへんだろうな」と思う箇所を探します。合わせやすいかどうかは、被写体によって異なります。明暗差が大きくて輪郭がハッキリしていれば合わせやすく、そうでないと合わせにくいです。マット面でのピント合わせに関しては、まあまあという感じでした。

 実際の撮影では、合わせにくい被写体のときだけ、同じカットを数枚撮るしかないでしょう。1枚ごとにピントを合わせ直しながら。そうすれば、ピントが正確にあったショットが1枚ぐらいは手に入ります。何枚写すかは、ピント合わせのやりにくさで決めています。やりにくいほど、撮る枚数が増えるというわけです。

 使ってみて一番驚いたのは、購入前に予想していたより、被写界深度が浅いことです。300mm F4.5のレンズをE-1に付けると、35mm版換算で600mm F4.5相当となります。ただし、フォーサーズシステムでは、換算焦点距離が同じレンズで35mmフルサイズ版と比べたとき、2段分だけ被写界深度が深くなります。つまり、300mm F4.5のレンズをE-1に付けときの被写界深度は、600mmのF9相当になるわけです。明るさはF4.5でも、被写界深度だけはF9相当ということです。

 600mmのレンズなんて持っていませんし、レンズを覗いたことすらありません。F9の被写界深度がどの程度か、まったく分かりませんでした。それでも、フォーサーズシステム用として使うので2段分だけ深いはずだから、被写界深度は浅くないだろうと考え、レンズの購入を決めました。少し甘かったです。やはり、F4.5という明るさが効いたのでしょう。

 こうなったら、浅い被写界深度を積極的に利用するしかありません。前も後ろも積極的にぼかして、面白い表現を狙いのが一番でしょう。独特のぼけ味を積極的に生かしながら。

手持ちの撮影では、1/400秒以上が安全

 600mm相当の超望遠レンズですが、筐体があまり大きくないし、F4.5と明るいので、どうしても手持ちで撮影したくなります。シャッター速度がどれぐらいなら手持ちでぶれないのか、実際の撮影で調べてみました。

 ミラー式500mm(1000mm相当)での経験から、1/500秒ならまず大丈夫との自信があります。そこで、1/500秒より少し遅いシャッター速度で、何十枚も撮影してみました。1/400秒と1/320秒を中心に、1/250秒を少し混ぜながら。ぶれているかの検査は、撮影した画像をピクセル等倍で表示して調べます。ピクセル等倍でぶれていないときだけ、手ぶれしてないと判断しました(なお、手ぶれを見分けるには、微妙な手ぶれの画像を知っている必要があります。少しのピンぼけと区別できるように)。

 その結果、1/400秒なら通常は大丈夫だと分かりました。1/320秒では、ちょっと注意しながら撮影しないと、手ぶれすることがありました。でも、じっくりと撮影するなら、1/320秒も使えます。1/250秒になると、手ぶれしないこともありますが、ぶれることもあります。安心して使えないシャッター速度と判断しました。

 というわけで、できるだけ1/400秒以上で使い、仕方ないときだけ1/320秒で落ち着いて撮影することにしました。晴天時の日中なら、十分に可能な速度でした。ミラー式レンズなので、絞ることは不可能ですし。

 以上の結果は、あくまで私だけのものです。こうした値は、人によって異なります。カメラ本体の違い、カメラやレンズの持ち方、シャッターを押すときの癖などが総合的に働き、手持ちで撮影可能なシャッター速度が決まってきます。誰もが自分で調べるしかないでしょう。

ぼけの形状が、ドーナツ状でなくリング状

 ミラー式のレンズでは、ぼけの形状がドーナツ状になります。リング状と表現する人もいますが、ドーナツ状の方が雰囲気を正しく表しています。このレンズを使うまで、そう思っていました。タムロンSP 500mmのぼけの形状が、ドーナツ状だったのですから。

 ところが、この300mmのぼけの形状は、ドーナツ状ではなくて、リング状という表現がピッタリです。円の太さが、500mmより明らかに細いのです。次の写真のように。

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 正直なところ、最初にファインダーを覗いたときは驚きました。ぼけ方が、タムロンの500mmとかなり違うと。でも、実際に使ってみると、これも面白い味だなと思うように変わりました。ぼけ味の異なる2本のミラーレンズを持っていることになり、上手に使い分ければ表現の幅が広がりますから。

 点光源でない被写体がぼけたとき、どのように違うかも興味ある点です。まだそれほど使い込んでいませんが、大まかな傾向は分かってきました。リング状にぼける300mmの方が、より醜く崩れる感じがします。ドーナツ状よりもリング状の方が、普通の円形ぼけから離れているためだと思われます。逆に、ぼけがリング状であるために、ドーナツ状より美しくぼける被写体もあります。この辺のパターンは、使い続けていくうちに分かってくるでしょう。

タムロンSP 500mmより少し劣る画質

 ピントが合った箇所の画質も、タムロンの500mmと比べてみました。この500mmは、なかなか優秀なレンズで、画質も良い方です。絞り込んで画質を向上できませんが、安心して使えるレンズといえます。

 それに比べて、この300mmは、画質が少し劣っています。コントラストはやや低め、解像感も少し悪かったです。

 ピントが合ってないために画質が悪くなったことも考えられるので、ピント合わせをやり直しながら、10枚以上も同じカットを撮影し、一番良いカットで評価しました。それでも、タムロンの500mmより劣っていました。

 比較対象が良いレンズなので、それより劣っているからといって、悪いレンズとはなりません。ましてや、かなり安い値段で入手できたわけですから、価格まで考慮すると、十分の得したレンズとなります。

 もう1つ、大事な点があります。ミラー式の300mm F4.5なんて、他に知りません。相当に貴重な存在のレンズといえます。実際使ってみても、なかなか面白いと感じました。おまけに、ぼけ味がリング状とユニークです。存在価値は非常に大きいと思っています。結論としては、買って良かったレンズの1本となりました。

明るいミラー式レンズをどんな表現に利用するか

 では、このように面白いレンズを、どのように利用したらよいのでしょうか。何といっても、ユニークなぼけ味を生かすことでしょう。複雑な被写体の場合は、ぼけることで醜くなることが多いでしょう。でも、実際に使ってみると分かりますが、ぼけることで美しくなる被写体もあります。この300mmに限らす、ミラー式レンズに共通する特徴として。

 また、ぼけが気にならない被写体(平坦な被写体や、ピントの合った箇所以外は大きくぼける被写体)では、普通の超望遠レンズとして使えます。筐体サイズが小さいので、持ち運びにも便利ですし、手持ちの撮影も容易です。600mmでF4.5と、かなり明るい超望遠レンズとなります。

 以上をまとめると、次のとおりです。普通の超望遠レンズとして使うときの詳細は、とくに変わった点がないので省略しました。

・ユニークなぼけ味を生かす
  ・ぼけて被写体が醜くなるのを生かす
    ・醜いや怖いなどマイナス印象を持つ写真に仕上げる
    ・不思議な印象の写真に仕上げる
  ・ぼけて被写体が美しくなるのを生かす
    ・点光源をリング状にぼかして美しく
    ・ぼかして美しくなるパターンを見付けて使う
・普通の超望遠レンズとして使う(詳細は省略)

 ミラー式レンズの上手な利用方法は、特徴あるぼけ味を生かすことです。この300mmの場合、ドーナツ状でなくリング状のぼけ味を持っています。通常の被写体はより醜くぼけますが、より美しくぼける被写体もあります。こうした特徴を生かすのが、面白い使い方となるでしょう。

(作成:2004年6月10日)
(更新:2004年7月4日:レンズの写真を追加)
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