公開:2005年6月22日

 前へ 次へ
写真


解説:神が舞い降りた木

 この作品は、レンズが持っている欠点を積極的に利用し、かなり変わった感じに仕上げたものです。レタッチなどの後処理なしで、このような写真が撮れました。

 使用したのは、Zuiko Digitalの7-14mm。ワイド端の7mmでは、35mm版換算で14mm相当の超広角となります。そんな領域まで含んでいるにもかかわらず、歪曲収差がかなり小さくて、ヌケが非常に良いため、安心して使えるレンズです。

 もちろん、欠点もあります。1つは、ピント位置をかなり手前にしたとき、遠景の像が放射状に流れることです。このレンズのように、前玉が出っ張ってる超広角レンズでは、当たり前の現象だそうです。もう1つの欠点は、ゴーストが出やすいことです(ただし、フレアーがほとんどでないので助かっています)。さらに、光源を中心に配置すると、画面一杯に大きなゴーストが現れます。

 この作品では、これら2つの欠点を積極的に利用しました。画面全体に入れた木を逆光で撮りながら、ピント位置を近景に設定して、太陽を中央に配置しました。すると、まるで神が舞い降りたかのような雰囲気になります。

 撮影時に考えたことは、他にもあります。まずは、木の選択です。空へ一直線に伸びている木なら、太陽を中央に配置するとき、木を中央からずらさなければなりません。そうならないように、上部の中央が空いている木を見付けました。

 画面全体に木を入れて、放射状に流れる状態を写す必要もあります。この点は、木との距離で調整できますから、ファインダーを覗きながら、放射状の雰囲気が狙いどおりの距離を探しました。

 以上のような点を考慮して撮影したのが、約20枚。自宅に戻ってから、仕上がった写真を見比べて、この作品に不可欠な考慮点を1つ発見しました。約20枚の中でたった2枚だけが、この考慮点を満たしていたからです。その考慮点を満たしているか満たしてないかで、雰囲気がある程度変わります。どんな考慮点なのかは、皆さんの宿題としましょう。すべて教えてしまうと、自分で考える癖が付かないですから。この作品は考慮点を満たしています、というのがヒントです。

 今回のように大事な考慮点に気付かないとこもあります。でも、条件を変えながら10枚以上を撮影したため、気付いてない考慮点を満たした写真が、たった2枚ですが得られました。この作品のように、変わった表現を狙うときは、条件を変えて数多く撮ることが大切ですね。

 もう1つ、大事な点を。今回の作品は、レンズの欠点を積極的に利用しました。私の場合、理想のレンズとは違う特性を持っていたとき、レンズの欠点とは考えずに、レンズの味としてと捉えています。そうしたレンズの味が大好きですし、それを生かすことで、面白い作品が作れます。つまり、今回の作品は、レンズの欠点ではなく、レンズの味を利用した写真なのです。