公開:2004年7月16日

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写真


解説:花見の場所取り

 桜を写しに行ったとき、目にとまった光景です。花見の場所を確保しようと思って青いシートを敷いてる様子ですが、人は誰もいませんでした。その代わりなのでしょうか、飲み終わった紙コップが2つ置いてあります。不思議な光景だと感じたので、そう伝わるように写しました。

 状況が状況だけに、そのまま素直に写せば、不思議さが伝わると思いました。とはいうものの、この「そのまま素直に」が写真では意外に難しいのです。切り取り方、とくに切り取る範囲を失敗すると、雰囲気が伝わりにくい写真になるからです。

 主役は、青いシート上にある紙コップで、青いシートも含まれます。この2つがあれば、それ以外要素は基本的に不要でしょう。ただし、周囲を少しだけ入れて、状況を説明する必要はあります。こうした点を考慮し、写真の下側だけに地面を入れました。当然、面積は少しです。それでも、青いシートの2辺が入ってます。面積を少なくするために、2辺の角は入れてません。

 紙コップの位置が中央だと、決まりすぎる写真に仕上がります。それを避けるために、わざと中央から離れた位置に入れました。左側でなく右側にしたのは、右側の方が下側に地面を入れやすかったからです。

 E-1に付けていたレンズは、50-200mm(35mm版換算で100-400mm相当)の望遠ズームでした。遠近感は少しでも自然な感じにしたいので、50mm側で撮影しました。実際には57mmで撮影してますから、フレーミングの最後にズーミングで微調整したのでしょう。

 以上のように考えながら写してみると、青の面積が広くなって、なかなか良い仕上りとなりました。青一色の写真なので、美しさも持っています。また、青一色の中に小さな白い紙コップがあるため、強く目立ちますし、ぽつんと残されている感じも出ています。

 雰囲気の演出には、被写体自体の細かな要素が役立っています。シート上に落ちている桜の花びらが、花見を感じさせます。シート上にある木の影も、木の下にいると感じさせます。これらのおかげで、表現技術で演出する必要はありませんでした。