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大きなてのひら あつい息


「香坂ァ……」
 屋上を囲むフェンスにもたれて座った妙義陸人が、ぼんやり手を動かして言った。
「なに、妙義……?」
 陸人の足に頭を乗せた香坂涼が、うっすら目を開けて見上げた。
 二人は西原中1−Cのクラスメイト。陸人は学年四位の秀才でスポーツ万能な人気者、涼は髪型も顔だちも女の子みたいなちびっ子だけれど、幼稚園のころからの親友だった。
 学校でも家でも仲良しで、みんなといるときはもちろん、他人と離れたいときでも、この相手とだけはいっしょだった。
 昼休みの屋上にいる今みたいに。
 陸人は雲を見上げながら、涼の頭をなでて言う。
「足痛ェ。どけ」
「イヤなら自分でどけたら」
「めんどい。疲れる」
「じゃあ、どかない」
 涼は顔を横にして陸人の太ももにほっぺたを乗せている。おかっぱの猫っ毛がさらさらと目にかかる。顔を傾けて、制服にうれしそうにすりすりした。
 陸人がへの字口で見下ろす。
「おまえさァ……オトコにひざ枕してもらって、楽しいの」
「楽しいよ」
 涼は目を細めてくんくんする。かすかに葉っぱくさい汗の匂い。
「妙義の匂いかぐと、ほっとする」
「匂いフェチか」
「頭なでてもらうのも好き。ほややーってする」
「ふうん……」
 言われる最中も陸人は涼の頭をなでている。あまり興味のなさそうな目付きで、涼の子犬っぽいかわいい横顔を眺めている。
 そのうち、ぽつりと言った。
「おまえって、オレのこと好き?」
「好きだよー」
「じゃあ、こういうことしてもいい?」
 陸人が手を伸ばした。ブレザーを着た涼の胸にあてる。んー♪ と涼は目を細める。涼は頭だけでなくて体をなでられるのも大好きだ。
 でもしばらくして、ん? と変な顔になった。
 陸人の手が涼のネクタイをよけて、シャツのボタンを外した。素肌に滑りこんで胸をなでた。
 ぴったり当たる。心臓の音を聞くみたいに。
「んふぁ……」
 涼は小さく震える。くすぐったい。くすぐったいというか、ぞわぞわする。なんとなくシャレにならない感じがする。 
 涼はちょっと焦って陸人を見る。陸人の顔は逆光になっていて、すだれみたいに揃った前髪だけシルエットで見える。
「み、妙義……これ、やらしくない?」
「やらしいよ」
 陸人が平然と言ったから、涼はぴしっと固まる。指先で乳首をころころしながら、陸人がぶっきらぼうに言う。
「オレもおまえが好きだ。今まで親友だったけど、最近変わった。――彼女にしたい」
「か、彼女……? ぼくオトコだけど?」
 冷や汗をかきながら涼は言う。むっとした感じで陸人が言い返す。
「オレが好きなんだろ。なでられたりひざ枕されたりは好きなんだろ」
「す、好きだけど、それとこれとは違う……」
「そうか?」
 するっと陸人が手を引き抜いた。涼がほっとする間もなく、冷たい声で陸人は言った。
「本当に、オレはただの親友で、恋人になれない?」
「当たり前――」
「これでも?」
 いきなり涼はぐいっと持ち上げられた。陸人が両肩をつかんでいた。そのまま陸人が真横に倒れた。引き抜かれるみたいな形で、涼は陸人の胸の上へ。
 仰向けになった陸人の上で、涼はぎゅっと抱きしめられた。
「く・うう〜っ!?」
 心臓が一気に三倍ぐらいの速さで鳴って、涼はあわてた。こんな風にすっぽり抱かれるのは初めてだった。しかも、ズボンにこりこりしたものが当たっていた。その正体に気づいて真っ赤になった。
 おちんちんだった。陸人は、硬くなったおちんちんを涼におしつけていた。何も言わなかったけれど、抱きたい、という気持ちが目いっぱい伝わってきた。
 それなのに、涼は動けなかった。真っ赤になったままじっとしていた。
 陸人のしっかり筋肉のついた胸が、とても頼もしかったから。このまますりすり甘えたい、と思ってしまったから。
 今までずっと、小突いたり引っぱったり抱きついたりしてきた相手だから、ぎゅっとされても気持ち悪いなんて思わなかった。
 そんな感じで、ちょっと驚いただけでじっとしてしまった涼だけど、陸人に言われてはっと我に返った。
「抵抗しねェし。……それじゃ、食っていいんだな」
「だっ! だめだめだめ食っちゃだめ!」
 あわてて涼ははね起きた。あったかい陸人の体から離れて、無理してにらみつける。
「好きだけど、好きだけどさ! オトコノコ同士はやっぱりだめだって!」
「へェ……」
 涼をじっと見ると、陸人は馬鹿にしたみたいに笑った。陸人は顔がきれいだから、そういう憎たらしい表情をしても様になる。――そんなところも、実は涼はあこがれていた。
 憎たらしい笑顔で、陸人はぼそっと言った。
「そんじゃ、思い知らせてやるよ」
「なにを?」
「オレがおまえの、友達なのか恋人なのか」
 片手を挙げて陸人は屋上から降りていった。涼はぺったり女の子座りでぼうぜんとしていた。

 陸人が次の日に、速攻で行動にでた。
「よう、香坂」
「みょう……ぎ?」
 登校途中で声をかけられて、涼は振り向いた。そのとたん目を疑った。
 陸人の隣に女の子がいた。ショートカットで明るい感じ。名前は覚えていないけどB組かA組の同級生だ。
 陸人がその子の肩に手を回して、涼を挑発するみたいに言った。
「こいつと付き合うことにしたから」
「……女の子と?」
「変か?」
「え、別に……」
 陸人の横から、女の子が元気に言った。
「香坂くんごめんね、妙義もらうから♪」
「なんでぼくに謝るの」
「だっていつも一緒じゃない? 妙義って香坂くんの保護者みたいだった。正直、昨日返事をもらった時はびっくりしたよー」
「返事って?」
「手紙、ずっと前に渡したの。もう忘れられてると思ってた」
「ラブレターもらってたんだ」
 涼が目を向けると、陸人はあっけらかんと指を折って数える。
「四、五、六……中学入ってから六通かな」
「聞いてないよ」
「言ってねェから。聞かせたくなくて」
 聞いていないけど、よく考えたら当たり前だった。陸人は小学校のころも何人もの女の子に告白されていたから。
 複雑な顔をしている涼を、二人が手を振って追い越した。
「さき行くな」
「ほんとごめんね、香坂くん」
「う、うん。お幸せに〜」
 ひらひらっと手を振って涼は見送った。
 友達に彼女ができたんだからいいことだ、と自分に言い聞かせた。

 すぐにぼろが出た。
 一日目。廊下で後ろから陸人に飛びついたら、あの子と話している最中で、陸人ににらまれた。
 二日目。休み時間に陸人の机に行ったけど、陸人はあの子をなでていて、涼はなでてもらえなかった。
 三日目。昼休みにお弁当を一緒に食べようとしたら、陸人はあの子が作ってきたお弁当を食べてて、涼はわけてもらえなかった。
 四日目。日曜日。家に行ったらデートに出てた。
 五日目。全然関係ない女子から、香坂くんってお邪魔虫やってると言われた。
 六日目。そもそも親友ってものは、「彼女」が陸人と一緒にいるときには、まったくもって出番なんかないんだという、衝撃の事実を友達から教えられた。

 ぜんぜん知らなかった。妙義陸人のそばには、ずっと自分の居場所があると思っていた。

 七日目の放課後、教室。机にてれーんとへばりついた物体を、数人のクラスメイトが囲んでいる。
「これ、大丈夫かよ」
「餓死寸前って感じ」
「ていうか酸欠状態?」
 物体は頭をごっとり横に倒して目を真っ赤に充血させて、ひゅー、ひゅー、と肩で息をしていた。唇がぱくぱくして何か言った。クラスメイトの一人が耳に手を当てる。
「は、なに?」
「……みょーぎ……みょーぎぃ……」
 香坂涼は蚊の鳴くみたいな声で言った。
 みんなは顔を見合わせてため息をついた。
「妙義欠状態だ」
「今まで、べったべたになついてたもんねえ」
「どうする。妙義つれてきて押し付ければいいかな」
「でもいつかは乳離れしなきゃいけないでしょう」
「乳離れってママかよ。とりあえず妙義呼ぼう」
 一人が呼びに行って、陸人をつれてきた。陸人は机の前でポケットに手を突っこんだまま、無愛想に涼を見下ろした。
「何か用か?」
 うわぁ……と周りのみんなに冷や汗タテ線が入った。涼が顔を上げて手を伸ばす。
「妙義ぃ……ち、ちょっとだけさわらせて……」
「ヤだね」
 すっと陸人が身をかわす。はうー、と涼が絶望的にうめく。女子が二人ほど泣きが入った。陸人も人気があるけど、可愛い涼もまた別の人気がある。
「ちょっと、妙義! 少しぐらい甘えさせてあげたら?」
「そうだよ、彼女できたからって冷たすぎ!」
 陸人は振り向いて、女子をにらむ。陸人は優等生だけど品行方正じゃない。どっちかというとすっぱりアクだ。
「黙  れ」
 一瞬で女子が凍った。冷凍光線並みの視線だった。
 陸人はしばらく涼を見ていた。何かを待っているみたいだった。でも涼は何を待たれているのかわからなくて、すがるみたいに見上げるだけだった。
 陸人がはーっとため息をついて離れようとした。
「妙義、いる?」
 その時、彼女のあの子が教室に顔を出した。誰かが止めるひまもなく陸人のそばに来て、片腕に抱きついた。
「忙しいかな? 今日はなるべく早く帰りたいんだけど〜」
「だっ」
 涼の動きは海に放り出されたタイタニック号の乗客みたいだった。
「だめっ……! これ、ぼくの……!」
 陸人の反対の腕にしがみついて、必死の顔で引っぱった。
 すると、クスッと笑いが起こった。
「クク……オレの勝ち」
「え?」
 陸人が笑っていた。目を細めて嬉しそうにクスクス言うと、涼を見下ろして不思議なやわらかさで言った。
「妬いたな?」
「え」
「妬いた。今ジェラっただろう。ただの友達がオレに独占欲か」
「だ、ちが、あわ、ううんと」
「ほら、よく考えてみて」
 陸人が身をかがめて、涼のほっぺたに手を当てた。
 いつも涼をからかう楽しそうな瞳が見ていた。手のひらからあったかさが伝わって胸がじーんとなった。
 涼は何も考えられなくなって、陸人の手を自分の手でおもいっきりほっぺたに押し当てた。
「んふー♪」
 すりすりすりすり。
 陸人が彼女の子を振り向いた。
「そういうわけで、ごめん。オレやっぱり、こいつほっとけない」
「えーっ、そんなあ! ふらなくってもいいじゃない、二人とも仲良くしてくれれば」
「だめ、こいつが妬く。香坂がオレの彼女なんだ」
「彼女?」
 しーんとなった。みんな目が点だった。涼もはわわ状態だった。陸人だけ余裕でにやにやしていた。
 涼を立ち上がらせながら、陸人はもういっぺんきっぱり言った。
「オレの彼女。みんなよろしく」
「み、妙義っ!」
 ようやく気力をとりもどした涼が、精一杯叫んだ。
 けれど、陸人に見つめられてすぐに黙った。
「最後のチャンス、蹴る?」
 負けだった。イヤだと言えなかった。
 赤くなってうつむいた涼を、陸人がナイトみたいに丁寧にエスコートして教室から出ていった。あんまり丁寧すぎて、誰も口を挟めなかった。

 帰り道、まだ恥ずかしくて涼は黙っていた。陸人は五歩先を歩いていた。
 でもそれが次第に四歩になって、三歩になって、二歩になったところで陸人が振り向いた。すっきりした眉を思いきり持ち上げて涼をにらんだ。
「香坂」
「え、なにっ!?」
「なにじゃねェよ」
 わかんないのか、と言いたげに陸人が吐き捨てる。ぼくまだ何か失敗してるのかな、と涼は震え上がったけど、陸人が差しだした片手を見て、きょとんとした。
「ほら……来いよ。みょーぎーって」
「……あ……♪」
 ぱあああ、と涼の顔が明るくなる。次の瞬間ダッシュした。ラグビー部も顔負けのタックルをかける。
「みょーぎぃ!」
「うてっ! こら、骨当たる強すぎ!」
 苦笑してる陸人にかまわず、涼はぎゅーっと抱きついた。陸人の肩に背中から。おんぶしてほしくなるようなしっかりした背中。男の子っぽいグラウンドの匂い。
 ほんの一週間のお預けだったのに、ものすごくなつかしかった。幸せになってすりすりしていると、肩越しに陸人がぼそっと言った。
「その代わり……わかってんな?」
「ふぇ?」
「おまえはもう彼女だからな。オレの好きなようにするからな?」
 嬉しそうな目に見つめられて、涼はぷるっと小さく震えた。
 震えた後で、目を伏せた。
「……うん」

 陸人の家に行った。何百回も通った道なのに、初めてみたいにものすごくどきどきした。
 手をつないでいたから。陸人の手はあったかくて、少し汗ばんでいた。
 家の人はまだ仕事で、二人だけで陸人の部屋に入った。その部屋だって何百回も来た部屋だ。陸人は電気をつけて、カバンを放り出して、緑のブレザーを脱いで、いつも通り帰った始末をした。涼もどきどきしながら、つい習慣で、いつも通りに陸人のベッドに飛びこんだ。
 ばうーん、とスプリングで跳ねてから、陸人の枕に顔を押しつけてすんすんする。妙義のにおいー、と左右にごろごろして、顔だけ振り向いた。
「ねえ妙義、好きなようにってどんなことするの」
「どんなことされると思ってんだ、おまえ」
「……わかんない」
 涼が鼻の頭にしわを寄せると、陸人がどさっとそばに腰かけて、涼の頭をわしわし撫でた。
「オレもわかんねェ。でもまあ、今まで遠慮してたことをだんだんやってくから」
「どんなこと?」
「こんなこと」
 陸人が手を伸ばして、涼のおしりをつむっとつついた。へ、とつぶやいた涼が、膝から下をぱたぱたさせる。
「お、おしりって……妙義、今までそんなこと我慢してたの?」
「うん」
「妙義ってえろかったんだぁ……」
 陸人の手が、涼の小さなお尻をきゅむきゅむもみ始めた。涼はいつかと同じ、ぞわぞわくすぐったさを感じて、赤くなる。
 しばらくズボンごともみもみしていた陸人が、涼の顔を覗いて言った。
「続けていい?」
「ん……うん」
「もっとえろいぞ」
「…………うんっ」
 手がするっと進む。涼はぴくっと目を閉じる。
「あ……!」
 手はおしりから足の間にもぐりこんだ。五本の指がスコップみたいに揃って、もぞもぞと体の下に入ってくる。そこにあるのは涼のおちんちん。パンツの中のおちんちんが手のひらでもにゅもにゅされる。
 涼は胸がばくばくして息が苦しくなる。さわられるのがとても恥ずかしい。振り向くと陸人がじっと顔を見ている。それでもっと恥ずかしくなる。やめさせて逃げ出したくなる。
 そしたら、陸人が真剣な顔で言った。
「逃げるな……もっとやらせて。オレ、ずっと涼にさわりたかった」
「……ひん」
 涼はじっとする。陸人の手はもともと大好きだ。逃げないほうが楽なぐらい。
 そのうち、おちんちんが硬くなってきた。ズボンを持ち上げてこちこちになる。涼は唇をきゅーっと閉じて黙っている。おちんちんのことが恥ずかしくて何も言えない。
 陸人が顔を寄せて楽しそうに言った。
「大きくなった♪」
「……」
「このままイかせたい。いいか?」
「……ぼ、ぼくがイっちゃうのがいいの?」
「だって、好きな彼女の体にさわりたいのはあたりまえだろう」
 そうかもしれない、と涼は思った。涼自身は陸人しか好きになったことがないからわからなかったけど。
 陸人は涼の股をもみもみしながら、耳元に顔を近づけて、細い声で言った。
「おまえをうんと気持ちよくしたい。……どうしてほしい?」
 涼が初めて聞く声だった。とても嬉しそうで優しくて、そのくせものすごくエッチな声。耳から入って涼の心をくすぐるみたいな声。ぞくぞくっ! と涼は背中を丸める。
「ほっこり……」
「ん?」
「ほっこりして……後ろから抱っこして。妙義に包まれるの好き」
 涼の声も陸人をぞくぞくさせたみたいだった。涼を見つめて目元を赤くした陸人が、股から手を引き抜いて、隣に横になった。
「ほら」
「ん……」
 肩を引き起こされて、涼はおとなしく横向きになった。背中を後ろに押しつける。
 そうすると、陸人が胸で支えてくれた。
 肩も背中も腰もおしりも、ぜんぶ陸人にもたれて、ほっこり。
「……はうう〜♪」
 腕枕になった陸人の左腕に、涼はうれしさいっぱいで頬ずりする。
「あったかぁい……これなら安心できるよぉ」
「オレも最高かも」
 くん、と頭の上で音がした。陸人が涼のおかっぱの髪をくんくんかいでいた。
「いい匂い……おまえの髪ってすげェそそる」
「妙義も匂い好きなの? ぼくも好きだよ」
「おまえもう、歯止めなくなったね?」
 言った陸人がズボンの前に手を伸ばしてきた。涼はぽーっとした顔でそれを見下ろす。
 ベルトが外される。ボタンが外される。ファスナーが下げられる。
 もぐりこんだ陸人の右手が、きゅっとおちんちんを握った。
 ただしまだ、パンツの上からだった。それでも、怖いぐらい気持ちよかった。
「んわぁぁ……」
 ぞぞぞっ! とおちんちんがしびれる。腰の辺りがふわーんと軽くなる。びくっ、びくっ、と根元が震えて、すぐにお漏らししそうになった。
 なんとか我慢したけど、あまりもたなさそうだった。きゅむっ、きゅむっ、と陸人がしごく。それがとてもうまい。それだけで何も考えたくなくなるぐらい。
 陸人が耳元でこそこそ言う。
「……おまえ、オナニーしてる? ていうかオナニーってわかる?」
「わ、わかるよう……したことないけど……」
「おい、精通まだなんて言うなよ」
「それは……してると思う。でも、寝てる時だけ……」
「手でしねェの? したことないってこと?」
「……うん……」
 うなずくと、ぐぐぅっとおしりに硬いとがったものが当たった。涼はちょっとだけあわてる。
「それ、妙義のおちんちん!?」
「ん。初めてなんて言うから、すげェ立った……」
「待ってよ、まだ入れないでよ?」
「大丈夫だって、おまえイかせるだけ。……にしても、「まだ」?」
 涼は口を押さえたけど、取り消さなかった。時が来たらしてもいいや、ぐらいの気持ちになっていた。妙義になら……妙義になら……。
 陸人の右手が、もっともっと強く速くなった。涼はどんどんうっとりしていく。
「妙義ぃ……ぼく、溶けちゃうぅ……」
 陸人は答えずに涼の首にキスする。陸人も見た目よりずっと興奮している。涼の肌はさわるとくっつきそうなぐらいすべすべで、いつも陸人をそそっていた。それに好きなだけさわってキスできるんだから、興奮しないわけがない。
 涼のおちんちんもそそりまくりだった。パンツ(もちろんブリーフ)の中で大きくなった涼のしっぽ。普通のところも硬くなったところもお風呂で見たことがあるけれど、じっくりさわるのはこれが初めて。じっくりさわるとほんとに可愛かった。陸人の親指より少し大きいぐらいで、まだ先に皮がかかってる。たいして大きくもない代わりに、指でえぐったらこりこり音がしそうなぐらい硬くなった。
 そんなことをしたら痛がるに決まっているから、しないけれど。
 いじめる代わりに、思いっきり可愛がった。自分がオナニーするのと同じように、つぶさない限界まで押さえてしぼりあげた。涼がどんどんのけぞって、腰ごとびくびく動き出した。言葉が出ないぐらい興奮した。
「ひっ、ひぃっ、ぃぃっ!」
 涼ももうしゃべらない。目を細めてなんにも見ずに、はぁはぁ息をして震えるだけ。しゃべれないぐらい夢中になっている。それでも陸人はタイミングがわかる。涼のパンツの先がまるーくぬるぬるしてきたから。
 もうほんの少し、と陸人はわかった。あいてる左手でティッシュをたくさんとって、涼のパンツの中につっこんだ。耳に舌が入りそうなぐらい近くでいう。
「香坂、いつでもいいぜ……!」
「んっ、みょうっ、いっ、ねっ!」
「ああ、わかる。イくんだな? イっていいぞ!」
「うんんっ、あっ、ありっっありがとっ!」
 ものも見られないほど夢中になってるのに、涼はいっしょうけんめいお礼を言った。それぐらい気持ちよかったからだけど、そんなことを言われた陸人だって感激した。
 指先でおしりの穴のほうからおちんちんの裏をぞわぁっとなで上げて、とびきり気持ちよくさせてやった。
「ほら、香坂っ!」
「んふぁぁっ!!」
 窓ガラスが震えるぐらい高い声で叫んで、涼がイった。陸人の指の間で、びゅくーっ! びゅくーっ! とおちんちんがとても元気よくはねた。
 ――トロトロ出てる、いっぱい出てる、みょーぎの手でめちゃめちゃ出てるぅっ!
 涼の頭の中は、せーしのきもちよさでビリビリするおちんちんと、しっかり持ってくれる二本の手と、体中をあっためてくれる陸人の胸でいっぱいになった。こんなにきもちいいことは生まれて初めてで、きもちいいとか好きとかありがとうとかを一瞬のうちに山ほど叫びたくなった。
「んっ! んむっ! んむぅっ!」
 陸人の手が何度も何度も動いてくれたから、涼はがんばってしっかりせーしを出した。最初はまっしろで何もわからなかったけど、最後のほうは出ていくとろとろの量がきちんとわかった。スプーン何杯分も出したような気がした。
「はあぁ……♪」
 なんにも出なくなると、ようやく涼は力を抜いてぐったりした。おちんちんが柔らかくなったから陸人も手を止めてくれた。そのまましばらくじっとして、陸人の胸でほっこりしていたかった。
 でも陸人がまだ動いていた。手じゃなくて、腰を涼のおしりに押し付けて、ぐいぐいしていた。抱えた涼の体をぎゅーっとまるめこんで、夢中で髪をすーはーしていた。
 今出したばっかりだから、涼もその意味がわかった。力を抜いておしりをふにふにに柔らかくして、そっと言ってあげた。
「妙義、いっぱいぐりぐりして。押すだけなら好きなだけしていいから……ね?」
「……ふふ」
 陸人は小さく笑ったみたいだった。それと一緒にすごいぐりぐりが来た。
 硬い硬いおちんちんが、ズボンをやぶって涼のお肉に刺さってきそうなぐらい。大きさを感じ取って、涼はすごくどきどきする。ぼくのよりだいぶ大きい。大きいっていうか強そう。こんなのをぼくに入れたいんだ……。
 陸人は声を出さなかった。涼の頭にキスしながらイった。
「ふわ!」
 叫んだのは涼。ぐりぐりが膨らんだから。ぎゅっ! ぎゅっ! っていう感じでとても硬くなった。しゃせーしてる、って少したってから気づいた。おちんちんがとてもきもちよさそうにぶるぶる震えていた。
 しばらくして、それも収まった。涼の腰をがっちり押さえていた手も、離れていった。ころんと陸人が離れて、はあ、はあ、とすごい息をした。
 とても嬉しそうな声。
「あー、イったぁ……香坂でぇ……」
「……満足した?」
「した」
 後ろを振り向くと、いきなりおでこにキスされた。あう、男なのに、と思ったけど、今さらって感じだった。
「……エッチしちゃったし、もっとされるんだよね」
「そう」
 細めたきれいな目でじーっと見つめて、陸人がクスリと笑った。
「まだ第一段階。もっともっと染めてやるからな」
「は……はふっ!」
 悲鳴をあげたのは、陸人におちんちんを握られたから。せーしの染みたティッシュでじゅくじゅくだった。
 なのに陸人はそれをずるっと引っ張り出して……ぺろっとなめた!
 平気な顔でひとこと。
「次はフェラかな……ま、もともと精子ってまずくないしな」
「み、み、妙義……」
「だって、男と女ならふつーになめるだろ?」
 ティッシュをゴミ箱に投げると、固まってる涼にむかってにやっと笑う。
「最初はオレな。でも、次はもちろんおまえ」
「あううー……」
「大丈夫、よく洗ってからにする♪」
 そう言って、陸人はまたぎゅっと抱っこしてくれた。
 
 朝の学校、1−C。
 机で読書している妙義陸人に、背中からすっぽり香坂涼がかぶさって、一緒に本を読んでいる。
 周りのみんなはあまり気づかない。ああ元に戻った、と思うだけ。たまたまその瞬間を見た女子だけが気づいた。
 もたれた涼に、陸人が顔を向けて、んむ、とふつーにキスしていた。
 びっくりした女子がそばにきてひそひそ言う。
「ちょっと、二人とも! あ、あんたたちやっぱりそうなの?」
「まだぜんぜん」
 ポーカーフェイスで陸人が言う。その横で涼はうれしく困った顔。
「この先、キスどころじゃないんだって……」


―― おわり ――



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