涼と陸人ははっきり告白をやってそうなったわけじゃなかった。二人は幼稚園から親友で、涼は陸人にあこがれていて、陸人は涼をかわいがっていた。どこへ行くにも何をするにもたいていいっしょで、いつもおしゃべりしたり、軽く叩いたり、飛びついたり、つかんでひっぱったりしていた。  それがいつの間にかああなったわけだけど、特別なことじゃないかもしれない。なぜって、親友ってものはたいてい、おしゃべりしたり、軽く叩いたり、飛びついたり、つかんでひっぱったりするものだから。  そういうことと、二人がしていたことの間には、誰が見たって違いなんかなかったんだから。  妙義陸人の家は広くないけれど、西原中1−Cの男子の半分はそこを溜まり場にしている。陸人はC組の級長で、頭がよくて運動もできるくせに優しくて人気のあるやつなのだ。  今日も陸人の家には八人もの男子が集まって、プレステしたりカードゲームをやっていた。たった六畳でしかもベッドがあるのに。  香坂涼も、もちろんいっしょだった。涼は陸人が大好きだからいないわけがないのだ。陸人も涼を気に入っているから、来ればぜったい入れてやる。  ただ、だからといって居場所があるとは限らないのが陸人の部屋の悲しいところで、今日の涼の場所は、ベッドに腰かけた陸人と六甲の後ろの、細長いすきまだった。  プレステをやりながら、陸人が振りかえって、すまなさそうな顔で言う。 「わりいな、香坂。順番来たら場所かわってやるよ」  ぎょうぎ悪く跳ねた前髪から天井の蛍光灯が透けてみえる。涼は目を細めて陸人の顔を見上げる。 「いいよ、みょーぎ。ぼく漫画読んでるから」  髪の長い涼は女の子みたいにかわいく笑う。陸人は手を出して頭をなでてくれる。よしよしよし。涼がにへーととろけると、陸人は背を向けてゲームを始める。  涼は漫画を読む。読みながらたまに顔を傾けて、そばにある陸人の背中にほっぺたをすりすりする。ふわふわのパーカーから陸人の葉っぱくさい汗の匂いがする。胸いっぱいにすーすー吸う。その匂いをかぐと、つまり陸人のそばにいると、涼はとてもほっとする。  部屋には他に六人もいる。プレステの順番待ちが一人。ちゃぶ台を囲んでカードゲームをしてるのが四人。漫画を読んでるのがもう一人。これは一番小さい柚木で、かわいそうに勉強机の下に入っている。それぐらい場所がなくてぎゅうぎゅう詰め。  そこへもう一人来たってだけでも大変なことなのに、それがエロ隊長の野沢だったからよけい大変なことになった。 「ゲットだぜ、無修正DVD!」 「むしゅーせー!?」  部屋にいた七人が、入ってきた野沢の紙袋を見てさけんだ。二人だけさけんでない。陸人はわけしり顔でにやにやしているし、涼はきょとんと目をまるくしている。 「……みょーぎ、むしゅーせーってなに」 「無修正ってな、女のアソコが丸見えってこと」 「え、それってえろびでおってこと?」 「エロビデオのすごいやつかな」 「プレステ2、使っていいだろ?」  野沢がそばに来て言う。まわりの仲間たちが全員、いいだろ? と目で陸人に聞いている。陸人は振りかえって涼の目を覗く。 「どうする。香坂、見たい?」 「み……見たいかも」 「オッケ。野沢、いいよ」  っしゃ泣くなよおまーら、とわけのわからない気合を入れて、野沢がプレステにかがみこむ。陸人はテレビをみんなのほうに向けてから、ベッドに戻って、涼に言う。 「前に来る? おまえのが座高低いだろ」 「……いい、みょーぎの後ろで見る」 「なんで。怖い?」 「こわいってかはずかしー。僕、えろびでお見んの初めて……」 「はは、そっか」  陸人は笑って涼の髪をくしゃってしてから、テレビを向いて腰を下ろす。その後ろで涼が膝立ちになる。  いつの間にか誰かが気を利かせて、窓を閉めたうえにカーテンまで閉めている。部屋はオレンジ色に薄暗くなる。 「いいか、始めるぞー」  野沢が言ってDVDを始めた。みんながごくっとつばを飲んだ。  外人のDVDだった。金髪の女の子とマッチョの兄さんが出てきた。二人は最初服を着て外を歩いていたけど、ホテルに入るとすぐに脱いだ。それから先がすごかった。  女の子がパンツを脱いだ。ピンクのびらびらが見えてみんながふおー! とほえた。マッチョの兄さんがパンツを脱いだ。べろんとすごいちんちんが出てきてみんながすげー! とほえた。  そこから先はもっとすごかった。  女の子と兄さんがいろいろやった。おおう、おおう! はおおう、おうのう! ってものすごい声を上げて女の子がうねうね動いた。マッチョの兄さんもぐりぐりべろべろがんがん動いた。二人とも汗まみれになっててかてか光った。  陸人の部屋の中もなんだかすごい雰囲気になっていた。十人が熱中してはーはー言ってるせいで蒸し暑くなって、頭をくらくらさせるみたいだった。  涼も目が回るぐらい興奮した。最初は陸人の肩につかまって後ろからこそこそ見ていたけど、夢中になってつい体重をかけたせいで、重いからこっちに来い、と陸人の横にひっぱりだされた。壁と陸人の間でつぶれそうに狭かったけど、かえってそのほうがよかった。女の子のあそこが見えたあたりから涼は興奮しすぎてふらふらになってて、後ろへひっくり返りそうになったから。  ひっくり返る代わりに陸人の腕にしっかりしがみついて、ふえええー、と感心しまくりながらじーっとテレビを見た。  すごいと思ったのはマッチョの兄さんだった。涼の腰ぐらいある太い腕で女の子をだきしめて、筋肉をもりもりうごかしながら動かした。なんて強そうなんだろ、と涼はうっとりした。ぐいぐい動かされている女の子の顔が、とても幸せそうに見えた。  その気持ちは、陸人に感じるのと似た気持ちみたいだった。陸人も涼より力があってかっこいい人だった。現に、腕に抱きついていても、しっかり筋肉がついててとても頼もしかった。涼はテレビを見ながらぎゅーっと陸人の腕を抱きしめた。  陸人はもぞもぞ動いていた。ジーンズの腰のところをつまんで引っ張って直したり、何度も脚を組み換えたり、涼が腕に抱きつくと軽く引っこめようとして、すぐに力を抜いたりした。そのうち、涼の気のせいかもしれないけど、ほんの少し肩を寄せてくれた。  涼がちらりと陸人の顔を見上げると、ほっぺたが赤くなっていた。女子と女の先生に大人気の、ちょっと皮肉っぽいきれいな顔を、おかしいぐらいくそ真面目にしかめていた。  目はまっすぐテレビを見ていた。涼のほうなんかこれっぽっちも見なかった。  マッチョの兄さんはがんがんがんがん動いて、なんだかもうやばいんじゃないかってぐらい盛り上がってきた。六甲か串田か誰かが、やべマジ抜きてーって本気か冗談かわからない声で言った。それよりも真剣くさい声で、抜いとく? って別の誰かが言った。  涼はぎんぎんになったちんちんが半ズボンの中で抑えつけられて、痛かった。みんなぎんぎんだろーなと思った。ちらっと横を見ると陸人のジーンズもむっくりしていて、すごく恥ずかしくなってあわてて目をそらした。  そしたら陸人が耳のそばで、涼にしか聞こえない小さな声で言った。 「香坂、抜きたい?」 「……抜くってなに?」  どうしてだかわからないけど、そう答えた途端、陸人がぶるるっと小さく震えた。  その時、家の前でぶるるーぷすんと車が止まる音がして、陸人がうあっと叫んだ。 「やばい、母さん帰ってきた! 野沢DVD止めろ串田電気つけろ、つーかみんなちんこなんとかしろ!」 「で、できるかばかやろー!」  みんなはドタバタの大騒ぎになった。涼はすってんころりと振りはらわれて、陸人はお母さんを止めに出ていった。  結局その日はそれでおしまい。暗くなったからみんなは自転車で帰っていった。エロ見物の残り四分の一はお預けになった。DVDは陸人の部屋の預かりで、次から来た人間が勝手に見ることになった。 「じゃあな、妙義、香坂」 「ああ、またなー」「ばいばいー!」  手を振って友達を見送ると、家に入らずに二人は歩き出した。涼の家は陸人の家の近所なのだ。でも街灯がないから陸人が送っていく。  用水路沿いの道を歩きながら、スタジャン姿の涼が笑う。 「DVD、えろかったねー」 「ああ」 「また今度見せてね」 「これから見ないか」 「ふぇ?」  涼が振り返ると、陸人はパーカーのおなかのポケットからDVDをちらちら出した。あー、と涼は指差す。 「持ってきたの?」 「置いといて母さんにバレたらやばい」 「じゃ、見ようか」 「今度は落ち着いて見られるな」 「うん、二人で――」  そう言って、しばらく陸人を見つめて、涼はそーっと目をそらした。  なんか今、変じゃなかった? と思った。どこがどうとは言えないけれど、なんとなくいけないことを言ったような気がした。  けれども歩いているうちにそんなことはすぐ忘れて、うちに着いたらいつもの無邪気な涼になっていた。  涼の家は大きい。涼の部屋だけでも八畳が二つある。勉強遊び部屋と、寝る部屋。お金持ちなのだ。でもお金を稼ぐために父さんと母さんはいつも仕事をしている。涼は大きな家に一人でいることが多いから、陸人が来ることは大歓迎だ。  涼のテレビは勉強遊び部屋にあった。プレステじゃないDVDプレーヤーがついてる。部屋に入ると二人は早速DVDを見始めた。十分たつともう熱中していた。 「えろいねー……」「ああ」  涼の勉強遊び部屋には床ソファーがあって、テレビと向かい合わせになってる。だから二人は床ソファーに並んで座っている。でも最初と今では少し姿勢が違ってきた。  最初 → 涼:体育すわり   陸人:両足投げ出し両腕背もたれ  十分後→     涼:横座りしがみつき 陸人:片足立てて顔そっぽ向け 「はー……はー……すごいね、みょーぎぃ……」 「う、ああ」  なんかみょーぎ変だなあ、と思いながら涼は陸人の腕をぎゅーしている。ちんちんがびんびんなのが恥ずかしいけど、みょーぎもびんびんだからおあいこだ、と無理やり理屈づけした。  陸人がびんびんなわけと、あっち向いているわけはまだわからない。  そのうちに、陸人がはあっと大きなため息をついて、くるりと振りむいた。 「香坂、聞くけど」 「ふにゃ?」 「おまえって、オレにさわってたいよな」  うん、と涼は真顔でうなずく。おかっぱの髪がさわりと揺れる。  うなずいてから、少し首をかしげた。 「ってゆーか、みょーぎにさわっててほしい」 「そう。こんな感じ?」  陸人がするりと涼の後ろに入りこんで、両腕をわきに入れた。シートベルトみたいに涼の体を抱き寄せる。陸人のしっかりした胸が背中に当たって、ほわ、と涼は目を細める。 「うんっ、こんな感じ〜」 「じゃあ、そのままこうするといい?」  ぐいっと涼は抱き寄せられた。すっぽりという感じで陸人のひざの間に落っこちる。うわあ、と涼は目をみはる。指定席、って言葉がぽんと浮かんだ。 「これこれー♪ みょーぎい、これいいよう」  涼は子犬よろしく手をばたばたさせて、うりうりうりーと後ろへのけぞる。ぎううう、と陸人がシートベルトをきつくする。あっ、あばれたから怒られた、と涼は反省しておとなしくする。そうすると陸人の腕もゆるくなったけど、放してはくれなかった。胸とおなかをぴったり押さえられた。  あったかい座椅子みたいな陸人の胸と足。涼はすっかりくったりしてもたれかかる。そうするとお尻にぐいっと硬いものが当たって、あ、と気づいた。顔を赤くして振り向いた。 「みょーぎ、ちんちん当たる」 「う……いや、これは」 「あ、でも……こんなの見てたら収まんないか」  陸人の顔とテレビを涼はみくらべる。そうじゃなくて、とか陸人が言ったけど、涼はふふっと笑って陸人のももを叩いた。 「しょーがないから、座り心地悪くってもがまんする」 「座り心地……かよ」 「みょーぎも当たって痛いでしょ。ちょっと避けとくね」  んしょ、と涼は五センチずれる。  そしたら、う゛ーとすごく悔しそうにうなってから、陸人が手のひらをすべらせた。――涼のおなかから、ふとももの間へ。 「ふきゃう!?」  半ズボンをぱんぱんにしたちんちんが、手のひらですっぽり覆われた。ぞくっととても気持ちのいい感じがして、涼は小さく悲鳴をあげた。 「な、なに今の?」 「やっぱりおまえ、抜くってわかんないんだな……」  ため息をついた陸人が、くいっ、くいっ、とちんちんを揉む。そのたびにじいん、じいん、と涼のちんちんが強くしびれる。すごく気持ちよくて、体の奥から何かがちんちんのほうへじゅうじゅう集まっていく。  ちんちんがはれつしそうに硬くなって、涼は少しこわくなった。 「みょーぎ、ぱんぱんだよ。ちんちんがびんびんで飛び出そうだよぉ!」 「それ、オナニ」 「おなっ?」 「抜くっつーこと。男はみんなやるんだよ。おまえ、知らないと馬鹿にされるよ」 「ほ、ほへ……」 「気持ちいいから。こわくないから」  ついっ、ついっ、と陸人の指がちんちんの裏をこする。ぞうぅっ、とすごい震えがちんちんをのぼって、おしっこが漏れそうな感じになる。  漏らしちゃダメ、と思っていても、漏らしたい気持ちのほうが強かった。涼は陸人の手が大好きになって、ぱんぱんのちんちんを思い切り押しつける。 「みょーぎっ! して、もっとして、きもちぃっ!」 「わ……わかるだろ。ちんちんぐりぐりすんの……気持ちぃ……っ」  くむっ、とお尻に陸人のちんちんが当たる。肩の上で陸人が息をかける。 「だから……オレもぐりぐり……するぞ?」 「ん、んっ! いいよっ、だから僕のぉ……!」 「いい、のな」  フッ、と陸人があきらめたみたいに笑った。ぐりぐりっ、とお尻にちんちんが食いこんできた。  それといっしょに涼のちんちんもぐいぐい揉まれた。びくびく、ぶるるぅっ! とちんちんの中で何かがあばれた。おしっこみたいで、おしっこより百倍も強くて濃いものが、ちんちんからびゅーびゅー飛び出した。気持ちよさの塊が涼をふっとばして、わけがわかんなくなった。 「ひゃうぅーっっ♪」  ぎゅうう、ぎゅうう、と陸人の手に押しつけて、涼はそれを出しまくった。  お尻で陸人のちんちんが、同じようにびくびくしていた。