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お姫様といっしょ

 馬が寝られそうなだだっ広いベッドをほとんど使いきらずに、俺たちはセックスしていた。
「くん……は……はあ……」
 横たわった俺の腰にまたがった真弓ちゃんが、いつもみたいに控えめなあえぎ声を漏らして、小さな尻を上下させる。きゅぷっきゅぷっと泡がはじけるような音がするのは、真弓ちゃんのあそこがものすごく狭いから、それに、シーツに染みこむほど愛液が多いから、その両方だ。
「ショーヤ……さん……ショーヤさぁん」
 真弓ちゃんは上着を脱がない。ショーツだけ脱いで俺にまたがる。これもいつものことだ。そしていったん本番に入ったら、俺に一切動かせない。これもいつものことだ。
「そ、そろそろ……出し……て……」
 マシュマロみたいなふわふわの頬を真っ赤に染めて、真弓ちゃんがほんの少し、俺に体重をかけた。肉に埋まったチンポの先がくりっくりっと何かにこすられるけど、棒の下の方がまだ出ている。真弓ちゃんは全部受け入れられず、俺のを半分くわえこむだけなのだ。
 それもいつものことだ。何しろ真弓ちゃんはまだ初潮も来てないんだから。
「おねが……い……」
 俺を見下ろしながら、真弓ちゃんが精一杯、子宮口をおれの先に押しつけた。刺激としてはまるで物足りなかったけど、股全体を濡らすほどの愛液と、真弓ちゃんへの愛しさで、俺はイった。
「真弓ちゃんっ!」
「く、んあ……っ」
 どくんどくんどくんとほとばしる汁が、真弓ちゃんの腹の中にはじける。真弓ちゃんが遠くのささやき声を聞くように硬直している。この瞬間は声をかけちゃいけないし、無理にねじ込んでもいけない。ただ、真弓ちゃんがふるふる腹を震わせて射精を味わうのを、じっと待たなければいけないのだ。
 これも、いつものこと。
 だけど、一つだけいつもと違うことがあって、それが俺は気になっていた。
「は……あああ……」
 思う存分吸い取ってから真弓ちゃんが離れ、とさっと俺の隣に横になった。こちらを向いて目を閉じている。これは、「中に染み渡るのを楽しんでいる」らしい。
 それから目を開いた。
「ショーヤさん……ありがとうございます」
「気持ち良かった?」
「ええ……あったかいのが、わたしの中でたぷたぷしてますわ」
 そう言って微笑む。悪魔でもアイスを買ってやりそうな無垢の笑みだ。
 でも、全然嬉しそうな笑顔じゃなかった。いつもとまったく違う。
「真弓ちゃん……」
 寂しげに笑う真弓ちゃんの小さな体を、俺は腕を伸ばして抱きしめた。

   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

 十八回目の失恋で、ついに雄司に恥がばれた。
「短小?」
「……ああ」
「ぶはははははははははははははははははははははははははは!」
 記録的な馬鹿笑いでコーラを噴き出すと、なおもばんばん学食のテーブルを叩きながら、雄司はおれの顔を覗き込んだ。
「お、おまえ、とっかえひっかえ女と付き合っちゃあふってると思ったら、何? 全部ふられてたの?」
「……ああ」
「それだけタッパあって成績よくて顔憎たらしくて、まあ憎たらしいほどいいってことだが、かつ車持ってて性格良くてスポーツもできそうで、ちょっとロリ入っちゃいるがなんら差し支えなさそうなおまえが、何、
短小だって?」
「……ああ」
「それが振られた原因だってはっきりしてんの? はっきりしてる? 直接聞いた? ははあ、何回かセックスするまでは向こうも黙ってるのね。当然だわな、おまえみたいな上玉。でも耐え切れなくなって、途中で言い出してくる、と。なんて言われるんだ、奥まで届かないとかか。え?
 入ってるのかどうか分かんない? ひーははははははははは!」
「……刺すぞテメェ」
 恥を忍んで打ち明けたというのにこの仕打ち、俺はブチ切れそうになったが、ひとしきり笑ったあとで、雄司は真面目に取り合ってくれた。やっぱり持つべきものは友人だ。
 二、三日たってから、雄司はにやにや笑いながら俺に一枚のメモを渡した。
「見つけたぜ、おまえにぴったりの彼女」
「ほんとか?」
「ああ。絶対ハマる。帰って来れんかもしれん」
 バイト経験三百種を豪語するだけあって、雄司はとんでもなく顔が広い。その雄司が保証するんだから間違いないと俺は思った。
 帰って来れん、の意味までは分かっていなかったが。
 メモにあった待ち合わせ場所は凄かった。スイートで一泊十万円以上しそうな、都心の有名なホテルだ。相手の名前も凄い。千弦院真弓、せんげんいんまゆみ? どこの華族様だ。聞いたことがあるような気もするが、まあ、名前なんて今日びあてにならないし……
 指定された日にホテルに出向いて、ロビーに入った。ざっと見まわして真弓を探す。英字新聞を読んでいるビジネスマンと、なんだかおっかない黒服の一団と、年食った和服の夫婦と、ちょっとめかしこんだ三人組の女の子たちがいる。それらしい子はいない。
 約束の時間の二分ほど前になって、エントランスからスーツ姿の女が一人、入ってきた。二十代後半で、すらっとしたショートカットの美人だ。あれだな、と俺は目星をつけた。
「あの……」
 俺が近寄って声をかけようとすると、女は和服の夫婦のそばに行って、お父さん待った? と聞いた。それから俺に気付いて、怪訝そうな目を向けた。
「なんですか?」
「いえ、別に」
 違うのか。すると残るのは、きゃぴきゃぴしゃべっている女子大生っぽい三人組だが、あれはどうみても、結婚式の帰りみたいな感じだし……
 ロビーの大時計が、ボーン、と時報を鳴らし始めた。
 その途端、背後からがっしりと肩をつかまれた。
「赤月章也さんですね」
「え?」
 振り返ると、スパイものの映画に出てきそうなサングラスの大男だった。さっきの黒服連中の一人だ。
「は、はあ。赤月は俺ですが、何か……」
「埼玉に製材所の実家があって父と母が住んでいて、弟は商船高校の機関科過程に入ってますね」
「え? そ、その通りだけど」
「好きな食べ物は海鮮チゲで、クラブ活動はスキー部で、しかし夏のトレーニングにはほとんど参加せず冬だけ参加する幽霊部員で、趣味思想は特になく、一年二ヵ月前に友人に買わされた「我が闘争」と「毛沢東語録」は、五ページ読んだきり机の横に置きっぱなしで、カップラーメンを作る時フタのおもしにしているだけですね?」
「なんで知ってるんだ?」
「間違いありませんね」
 悲鳴のように言った俺の顔を、黒服はぐっと覗き込んだ。胃が痛くなるような圧迫感を覚えながら、俺は必死に答えた。
「い、いや、好物はみたらしだけど……」
 それを聞くと黒服は襟につけたマイクのスイッチを押して、目標A確認、いや間違いない、とかなんとか言った。
「こちらへどうぞ」
「どうぞって、あんたは?」
「横峰雄司さんからあなたの紹介を受けました」
 おれははっとなった。まさかあいつ、帰って来れんかもしれんって……こういう意味か! ヤクザの組長の娘かなんか紹介しやがったな?
「いや、その、すみません、バイト入ってるの忘れてました。今日はちょっと……」
「来てください」
 遅かった。黒服は俺の腕をつかんで、ぐいぐい引きずっていった。なんとなく、単なる仕事だというだけではないような乱暴さを感じた。
 このままじゃヤバい。おれはなりふり構わず謝って、なんとかこの場を逃れようとした。
「すみませんすみません、雄司が何言ったか知らないけど、俺は別におたくの真弓さんにちょっかいかける気はないんです! 二度と顔を見せませんから、どうか見逃して……」
「いや、我々もあなたが最適だと判断したんです」
 そう言って黒服は俺を見下ろした。ヤクザにしては変だとおれは気づいた。素人の俺にもその道のプロだとわかる人なのに、異様に態度が丁寧だ。
 変なのはそれだけじゃなかった。サングラス越しに、黒服はなんとも奇妙な表情を浮かべていた。馬鹿にするような、うらやむような顔。
 黒服は仲間に合流して五人ほどの黒服集団となると、おれを振り返って言った。
「赤月章也さん、あなたに、当家の真弓お嬢様と付き合っていただきます」
「ど、どこにつれてく気だ!」
「どこにも。お嬢様はこちらに」
 黒服がすっと脇に退くと、おずおずと小さな人影が現れた。
「は……」
 おれは馬鹿みたいに口を開けた。千弦院真弓お嬢様は、ランドセルをしょっていらっしゃった。

 逮捕された連続殺人犯みたいに見張られたまま、エレベーターに乗せられ、廊下を歩かされ、一トンぐらいありそうな木彫りのドアを開けられて、王様が泊まるような豪勢な部屋に押し込められた。
 背後でバタンと音がし、振り向くとドアがしまっていて、真弓ちゃんがちょこんと立っていた。なんの説明もなく、いきなり二人きりなのだった。
 いや、二人きりのはずがない。きっと隠しカメラやマイクで黒服たちが見張っているに違いないと思ったが、少なくとも目に入るのはこの子だけになった。俺は少し安心して、聞いてみることにした。
「えーと……真弓ちゃん、だよね。これ、どういうことなの?」
 真弓ちゃんは何も答えず、じっと俺を見上げた。それから、ニコッと無邪気な笑みを浮かべた。
 思わずどきっとしてしまった。ものすごく可愛い。
 服装は黒いセイラージャケットと白いプリーツスカート。頭にはベレー帽。光沢の揃ったつややかな黒髪が腰のあたりまで流れている。一文字に切りそろえられた前髪の下で、大きくて優しそうな瞳が見つめている。鼻は小さめで、ほっぺたの線はまだ伸びきっていない。そして肌は、ミルクでできているように白く滑らかだった。
 モネとかルノワールとか、あの辺の印象派の画家の少女絵を連想した。それも博物館級の名画だ。彼らが日本人の女の子を描いたらこんな感じに違いない。
 雄司に言われた通り、俺は子供が好きだ。好きって言ってもじゃれるのが好きなだけで、今まで妙なことを考えたことは一度もなかった。普通は性欲って、ムチムチの太ももとかぽわぽわの胸とかに向くもので、ガリガリぺったんこの子供なんか意識しないものだろう。
 でもこの子の可愛さはそういう次元じゃなかった。十年後に出来上がる未完成品じゃなくて、この姿で美しく完成していた。もちろん十年後はさらに想像も出来ない美人になるに違いない。でも今でも、この姿になるために育ってきたように、愛くるしく、可愛らしかった。
 もちろん、こういった感想は後から湧いて来たもので、その時は冷静に考えるどころじゃなかった。ただ、なんだか別の生き物みたいに可愛い、そう感じただけだ。そんな柄じゃないのに、おそれ多いような気がして、下らない質問なんか出来なくなった。
 俺が黙りこんだのをどう受け取ったのか、真弓ちゃんは両手を伸ばして、俺の胸をぐいっと押した。うん、と口をへの字にする。
「お、おい?」
 力は弱いが、一生懸命押していることは分かる。押されるまま、俺は後ろに下がった。どんどんどんどん下がって、続きの寝室まで入ってしまった。
 ベッドにぼすっと尻もちをついた。
「なんなの?」
「あの……赤月章也さんておっしゃるんですよね」
 初めて聞く声は、小鳥が鳴いたような澄んだソプラノだった。
「ショーヤさんって呼んで、いいですか?」
「う、うん……」
「わたしのことは、真弓って呼んでくださいね」
 そう言うと、真弓ちゃんはなおも俺の胸を押した。横たわれ、ということなんだろうか。危険を感じる相手でもないから、おれは言われた通りに横になった。
 真弓ちゃんはランドセルとベレーを横に置くと、靴を脱いでベッドに上がって来た。何をするつもりなのかと、少し緊張する。
 とんでもないことを始めた。
「今日は学校で体育があったから、少し恥ずかしいんですけど……」
 片手で頬を押さえて言いながら、おれの顔にまたがった。
 ――え?
「お願いしますね」
 ふにょり、と柔らかいものが鼻にかぶさった。
「……んんん!?」
 俺は跳ね起きようとした。だが鼻がぐいっと食いこむと、「あん!」とうめいて真弓ちゃんが頭を手で押さえた。
「最初から強くしないで下さいな。痛いです……」
 言いながら俺の髪をぎゅっとつかんで、腰をグラインドさせ始める。
 俺の鼻を、薄いショーツ越しに、くにゃりとしたひだや、小さな小さな突起や、頼りなくへこんだ溝がこすり回した。体育があった、という真弓ちゃんの言葉のとおり、甘ったるい汗の匂いがした。
 髪を強く握られて動けない。それを言いわけにして、俺はわけもわからないまま、真弓ちゃんのそこを味わい始めた。手の平にすっぽり収まってしまうぐらい小さな真弓ちゃんの尻を、両手で支えてやって、徐々にこっちのペースで顔に押しつけさせていく。
「ん……。支えてくださいね」
 安心したのか、真弓ちゃんは手を離して、より細かく腰を回した。ここをこすれ、という意思がはっきり分かるようになる。
 目が覚めているという気がしなかった。絵に描いたようにしとやかな、多分ものすごい名家の美少女が、会ったばかりの俺にパンツの中を押しつけている。
 あまり非現実的すぎたので、開き直るのも楽だった。どう考えたって俺の意思で逃げ出せる状況じゃない。だったら楽しむまでだ。
 俺は積極的に、真弓ちゃんのあそこを味わった。
 クンニは初めてじゃないし、その相手はどれも真弓ちゃんより俗っぽい娘ばかりだった。真弓ちゃんは箱入りで清潔に育てられただろうから、その体にもなんの抵抗もなかった。
 鼻だけじゃとても物足りない。舌と唇ではわはわと柔らかいひだを挟みまくってやる。ショーツと太ももの境目に溜まった汗も舐める。甘い塩味、そうとしかいいようのない味がした。
「あ……ショーヤさん、そんな、ぺろぺろしなくても……」
「だって真弓ちゃん、おいしいよ」
「そ、そうですか?」
 スカートに覆われて顔は見えない。でも恥じらいの声ははっきり分かる。恥じらいながら真弓ちゃんはさらにとんでもないことを言った。
「おいしいなら……味わってほしいです。わたし、おつゆがいっぱい出ちゃうんです。ショーヤさん、飲んで……」
 おしっこを漏らしたのかと思った。ショーツのクロッチ部分が菱形に変色したかと思うと、みるみるうちにとろとろの液が布目を越えてあふれ出してきた。
「待って、脱ぎます……」
 いったんどくかと思ったら、真弓ちゃんはスカートをめくり上げて腰に手をやった。そこだけ紐になっていた。結び目をほどいて前に引っ張り出す。俺の鼻の上を、濡れた布がぬるぬるっと通っていった。
 それから再び、真弓ちゃんはあそこを俺の唇に押しつけた。
「さあ、いっぱい飲んで下さいな」
 見つめるひまもなく押しつけられた。真弓ちゃんは俺を、道具か何かのように使う気らしかった。男として情けないことだが、この子が相手ならそれでもいい、と思ってしまった。
 俺は操られるようにして、真弓ちゃんのそこをすすり始めた。舌で挟むと溶けてなくなってしまいそうな柔らかいひだの間から、とろとろと際限なく蜜が出てくる。この年の子にしては信じられないような濡れ方だった。
 くん、くんん、と切なげに真弓ちゃんが鼻を鳴らす。彼女の体温の蜜が口元を濡らし、鼻にかかる。口に溜めて、すぐに溜め切れなくなって、俺は喉を鳴らして飲んだ。ほうっ、とため息が聞こえる。
「おいしいですか?」
「おいしいよ」
「よかった。多すぎて届かなかったらどうしようかと思ったんです……」
「届く?」
「ええ。わたしの奥に」
 そう言うと、真弓ちゃんは少しだけ腰を上げた。
「み……見て下さいな」
 初めて俺は、真弓ちゃんのそこをまじまじと見た。
 ヨーグルトを固めたような真っ白な丘の間に細い切れ込みが入って、その間に子猫の舌のような小さなひだと、白桃色に光るクリトリスがあった。ひだは澄んだいちご色に充血していて、ほんのわずかに開き、糸をひく蜜をくぷくぷとあふれさせて、俺の顔に垂らしていた。
 どんな綺麗な女でもそこだけはたいていグロテスクなものなのに、真弓ちゃんのそこはデザートのように清浄でおいしそうに見えた。こんなにそそられるあそこは初めてだった。
「開いてますか……?」
 苦しい胸から絞り出すように、小声で真弓ちゃんがささやいた。ひだの中心が、真弓ちゃんの意思で、くっぽりと口を開けていた。
 真弓ちゃんは凄いほどいやらしいことを言う。
「わたし……その一番奥が、気持ちいいんです。奥をこりこりしてもらうのが一番嬉しいんです。それをして下さる男の人を探していたの」
「俺……?」
「ええ。ショーヤさんならいいって、甲月が……」
 コウゲツってのがあの黒服なのかそれとも別の人間なのか、そんなことはどうでもよかった。誰だろうと、俺がこの子に手を出していいと保障してくれたなら、文句を言う筋合いじゃない。
「こりこりしてあげるよ、真弓ちゃん」
「嬉しいですわ……」
 俺は真弓ちゃんのお尻をつかんで、口元に引き寄せた。顔を少し斜めにして、ゼリーみたいなひだの間にぬるりと舌を伸ばす。
 ぷるぷるっ、と真弓ちゃんが震えた。
「あむ……き、気持ちいい……」
 小さな体の真弓ちゃんは、そこの造りも小さかった。膣は本当に細くて、舌も通らないほどひだが重なり合っていた。それでも舌を尖らせて奥へと伸ばすと、一番奥のところに、くりりと硬いゴムのようなものがあった。舌で届くんだから、慎ましいほど浅い。
 そこに触れた途端、真弓ちゃんが深々とため息をついた。
「すてき……ショーヤさん、そこ、そこですわ。お願い、そこをいじめて……」
 言われるまでもなかった。俺は真弓ちゃんの体の奥に隠された大事なところを、思い切り舌を伸ばしてちろちろとあぶってやった。そこの快感は特別らしく、真弓ちゃんは病気のように断続的に大きく体を震わせて、ぎゅうっと膝で俺の頭を挟み込んだ。
「て、手でしっかり押さえて下さい。背中が寒くなるんです。逃げたくなるんです。お願い、逃がさないで……」
 俺のあごに途切れのない滝が出来るほど、真弓ちゃんはあふれ切っていた。息が出来なくなりそうで、俺は少し顔を離しかけた。途端に真弓ちゃんが凶暴に俺の頭を押さえて股をこすりつけてくる。多すぎて届かなかったら、とはこのことだと分かった。愛液に溺れて逃げてしまうことを言っていたのだ。
 溺れて死ねというような仕草だった。知ったことかと思った。
 俺はしゃにむに顔を押し付けて真弓ちゃんの奥をねぶり上げた。真弓ちゃんが嬉しそうにがくがくと体を震わせた。
「んう、いい、いいですショーヤさん。このまま飛ばせて……」
 腰が砕けて、ついに真弓ちゃんはベッドに倒れこんだ。俺は逃がさずに追いかけて、横向きになった真弓ちゃんの、スカートのかかったくるんと丸いお尻の間に顔を突っ込んで、一番奥を思うさま責め立てた。
「と、飛ぶ、飛んじゃいます、ん・くん……っ」
 胎児のように体を丸め、足の甲をきゅーっと伸ばして、真弓ちゃんは肌をぴりぴりと細かく震わせた。ほとばしるように蜜が出てきて、体の奥まで快感に焼かれていることがよく分かった。
 俺はようやく顔を離して、足りない酸素をはあはあと補給した。真弓ちゃんはひくん、ひくん、と全身が心臓になったように手足を脈動させている。
 じきに顔を上げて俺を見ると、はにかむように微笑んだ。元の肌が純白だったせいで、いった後の顔も夕焼けのような透明な紅色だった。
「すてきでしたわ。……ああ、やっと本当に飛べた……」
「そうか。いけたんだ、真弓ちゃん」
「おかげさまで……でも、ショーヤさんはまだなのですよね?」
 真弓ちゃんは体を起こし、朝露のような汗で額に張り付いた髪を払って、俺を見上げた。
「心配いりませんわ。ショーヤさんもちゃんと満足させて差し上げます」
「え?」
「男の人って、お……その、そこのしっぽから出したいのでしょう?」
 真弓ちゃんは、軽く顔をそむけながら、ちょい、と人差し指で俺のズボンを指差した。
 もちろんそこはギンギンのテントになっていた。中は先汁でべとべとだ。
 真弓ちゃんはたとえようもなく色っぽい横目でささやいた。
「わたしの中に、出してほしいんです……」
「い、いいの?」
「ええ。だって、ショーヤさんのそこがわたしに入りそうだから、お呼びしたんですもの……」
 ガン、と来た。知ってたのか。いや、あの黒服たちならそれぐらい調べてるだろう。
 そうか、俺が貧弱だから…… さてはそれが一番の理由だな。
 顔にタテ線落とした俺に、真弓ちゃんが気掛かりそうに近づいた。
「あの……して下さいませんか?」
 俺は真弓ちゃんを見た。情けなさは一発で吹っ飛んだ。いいじゃないか短小でも。この子と出来るんなら。
「いいや、してあげるよ。させてほしい。俺でよければね」
「わあ、よかった」
 真弓ちゃんは両手を合わせて、部屋の明るさまで変わるような笑顔になった。
「では、そこに寝て下さいな」
「また?」
「ええ。だっていくらショーヤさんでも、男の人は怖いんですもの……」
 言われるままに俺は横になった。真弓ちゃんが楽しそうにズボンのファスナーを下げて、トランクスの中からおれのものを取り出した。
 ぴょん、と立ったそれは、俺の親指程度の大きさだった。分かっていても、それをこんな可愛い女の子に見られるのは、我ながら屈辱だった。
 真弓ちゃんは喜んでくれた。
「まあ……すばらしいですわ。ちっとも怖そうじゃなくて……可愛い」
 目を細めてそれを見つめると、真弓ちゃんは体を近づけた。「ごめんあそばせ……」と腰にまたがる。白いプリーツスカートが肝心の場所を見えなくする。
「入れていい?」
「あん、動かないで下さい。わたしが全部しますわ」
 真弓ちゃんは俺の胸に手をついて、すうっと息を吸った。それから、ゆっくり腰を落とした。
 俺は自分の感覚を疑った。今までのどの女でも感じなかった強い締め付けが、おれのものをぬるぬると上から飲み込んでいった。しかも、いくらも入らないうちに先端がきゅっと受け止められてしまった。
 真弓ちゃんの体は、本当に未熟だった。
「ん……くふ……思った通り、ぴったり……」
 真弓ちゃんはのどをさらして、くふくふとあえいでいた。目尻に薄く涙が浮いていた。俺まで感動してしまうほど、嬉しそうな顔だった。
「は、始めますね……」
 真弓ちゃんは膝を使って体を上下させ始めた。胸に置かれた手にかかる重さは痛々しいほど軽かった。ぎゅむ、ぎゅむ、としぼりあげられる。真弓ちゃんのあの凄い濡れ方がなければとても入らないようなきつさだった。
 そんなに激しく包まれた経験はなかった。腰が溶けそうな、腰どころか下半身全体が溶けてしまいそうな気持ちよさだった。チンポが勝手にびくびく痙攣する。自分から腰を突き上げて、思い切りねじこんで発射したかった。
「ま、真弓ちゃん、あんまりすると出ちまうよ。いいの?」
「ふ、震えてますね……」
 くいくいと腰をひねって俺のものを味わいながら、真弓ちゃんが申し訳なさそうに言った。
「分かりますわ。ショーヤさん、わたしの奥に思い切りぐりぐりしたいのでしょう?」
「う、うん」
「だめ、それだけは。我慢して、絶対動かないで下さい」
「そんな……」
「痛いんですもの。たとえショーヤさんでも、思い切りされたらわたし、壊れてしまいます。だからだめ、お願いです」
 真弓ちゃんの体が俺の胸に倒れてくる。上半身を乗せて下半身だけを卑猥に上下させながら、真弓ちゃんが哀願した。
「わたしの好きなようにさせて」
「な、生殺しだよ、」
「いいえ、中で出してもいいんです。わたしはまだ大丈夫ですから、中でいっぱい出してください」
「え?」
「わたし、そのためにショーヤさんを呼んだんです……」
 真弓ちゃんはむき卵みたいにつるつるのほっぺたを俺の顔に押し付けて、ささやく。
「わたし、おなかの中にあの白いのが当たるのが好きなんです」
「真弓ちゃん……」
「いいえ、好きなんじゃありません。いるんです。それがないといられないの」
 くくうっ、とあの奥が押し付けられた。当たっているのはこの子の幼い子宮だ。俺にとっては柔らかくて物足りないけれど、彼女の感覚では限界までそれを押し付けて味わっている状態だ。
 もっとめちゃくちゃに刺したい。でも、それをしたら真弓ちゃんのおなかが壊れてしまう。
「だから、出していいです。思いっきり出してください。でも動かないで。何もしないで。わたしを刺さないで。わたしに、あの熱いのだけ、たくさんたくさん味わわせて下さい……」
 恐ろしく甘美で贅沢で、死ぬほど苦しい拷問だった。その通りに出来るかどうか自信がないまま、俺は一気に上り詰めてしまった。
「で、出るよ!」
「出るんですか? はい、出して! 来て下さいびゅうって!」
 びゅうっ、真弓ちゃんの言葉に従うようにして、俺はめちゃくちゃな量の精液をぶっ放した。チンポが白い光の槍になったみたいで、それでこの子の内臓を貫きたいという気持ちが怒涛のように襲った。
「ダメーッ!」
 途端に真弓ちゃんが、首を振って涙を飛ばし、羽根みたいに軽い体で精一杯俺の腹を押さえつけた。あまりにも可愛らしいその姿に、俺は気力をふりしぼって痙攣する全筋肉を抑えつけた。
「あ、来てる、来てます……」
 浅く速いストロークでくちゅくちゅと俺のものを絞りながら、真弓ちゃんがうっとりと言った。
「わたしのおなかに……どくどくって……いっぱい、いっぱあい……」
 神経がどうにかなってしまいそうな抑制の果てに、俺はようやくすべてを出し尽くして、どっとベッドに体を沈めた。最後に子宮口を押し付けてふるふると天井を仰いでから、くはあっ、と真弓ちゃんは大きなため息をついた。
「あったかあい……ショーヤさんの、わたしの中に染みて来ますわ……」
「真弓ちゃん……」
「ありがとうございます、ショーヤさん」
 ぬぽっ、と音をたてて腰を離して、ころりと真弓ちゃんは俺の隣に横たわった。こちらを向いて混じりけのない感謝の微笑を見せる。
「最後の最後まで、言うことを聞いてくださいましたね……」
「真弓ちゃんが……可愛かったから」
「甲月の眼鏡に曇りはありませんでしたわ。ショーヤさん、最高。……ね、わたしと付き合っていただけますか?」
 その前に聞かなければいけないことが山ほどあるのは、よく分かっていた。
 でも、何をおいてもこの子を手に入れたいと、俺は心底から思った。
「いいよ。付き合って、真弓ちゃん」
「嬉しい……」
 ニコッと笑うと、子供特有の唐突さで、真弓ちゃんはうとうとと眠り始めてしまった。
 その無防備な寝顔を見ていると、自分は間違ってない、と確信できた。

 それから俺は、真弓ちゃんと風変わりな付き合いを始めた。
 最初に分かったのは、彼女の素性だった。千弦院、どこかで聞いた名前だと思っていたが、ある日テレビを見ていていきなり気が付いた。千弦院といったら、トヨタホンダと並ぶミツヤ自動車の所属するグループ名じゃないか。
 調べたらものすごい事が分かった。
 千弦院家は「弦」の字から想像できる通り弓道の名家で、鎌倉時代からある家だった。戦国時代に弓から火縄銃にも手を広げ、江戸時代には徳川幕府の砲術指南に収まった。明治維新の時にうまく官軍側について、今度は明治政府御用達の兵器会社になり、大砲造りの冶金ノウハウで大正昭和と会社を大きくしていって、平成の今では鉛筆から戦車まで作る超巨大企業になっている。
 その千弦院家の、「真弓」ちゃんだ。総帥本家の直系に違いない。
 おそるおそる聞いたらあっさり肯定された。ミツヤ自動車の社長は毎年正月に裃つけて頭を下げに来るそうだった。
 それに比べたら、真弓ちゃん自身のことを知るのはずっと難しかった。
 彼女はいつも、ところ構わず時知らずに俺を呼び出した。俺が大学で講義を受けていようがバイトでレジに立っていようが便所で踏ん張っていようが、お構いなしに携帯にかけてきて、三十分以内に例のホテルに来ることを要求した。いや、そんな高圧的に命令してきたわけじゃないが、あの笑顔を見に来いといってるんだから、法律並みの強制力があるのも同然だ。
 でも彼女に悪意があるわけじゃなかった。金持ちのわがままを振りかざしているわけでもない。ただ彼女は、時々どうしても、「体の奥に触ってほしく」なるだけなのだ。
 どうしてそんな体なのか、聞くのは骨が折れた。
 付き合い出して二ヶ月目にそれを聞いたとき、聞かなきゃよかったと思った。
 真弓ちゃんは以前、誘拐されてレイプされていた。
 身代金目当ての犯人だったが、真弓ちゃんの神々しいほどの可愛らしさに目がくらんだ。金も忘れて三人がかりで輪姦して、警察よりも恐ろしい千弦院家の隠密私兵に抹殺された。
 その時に、真弓ちゃんは心の一部が壊れてしまった。
 普段はなんともない。だが時々恐怖を思い出す。すると、気が狂いそうな真っ黒な記憶を封じるために、それらすべてをあの時感じてしまった快感の中に押し込める。あれは気持ちよかったこと、と無理やり自分をだましてしまうのだ。
 それは幼い一途な心の働きだけに、千弦院家が動員した世界最高の医師団でも解き明かせない、強固な回路として彼女の心に焼き付いていた。
 それが「体の奥を触ってほしく」なる気持ちとして現れる。もっとも恥ずかしいその行為の最中でも、自分が征服されない、自分の思い通りに相手を無力に出来る、そういう安心を求めてしまうのだ。
 絶対にそれを思い出してはいけない真弓ちゃんの代わりに、あの甲月という黒服からそれを聞いたとき、俺はぞっとした。俺が最初の交わりの時に、欲望に負けて少しでも無理をしていたら、彼女はその場で狂って、絶叫しながらのたうち回っていたに違いないと言うのだ。あの子の信じられないほどの無垢さは、穢れをすべて心の底に封じたためのものだった。だからあれほどあどけなく、愛らしかったのだ。
 俺をあてがったのは甲月たちにとっても賭けだった。いや、それまでも賭けをしていたが、すべての男が途中で我を忘れ、獣と化して真弓ちゃんを押し倒そうとしたので、そのたび厳重に拘禁されて、真弓ちゃんに「使われて」いたらしい。これも凄い話だ。
 甲月たち自身が真弓ちゃんを満足させられれば一番よかった。彼らは誰よりも真弓ちゃんを大切に思っているんだから。しかし彼らは皮肉にも、俺のような(ここは笑ってくれ)体じゃなかった。だから俺を頼るしかなかった。俺が彼女を救ったことは彼らにとっても喜びだった。同時に殺意も覚えていることは、顔を見ていればよく分かるんだが。
 俺にとって都合のいい話かどうかは微妙だ。何しろ俺は、真弓ちゃんのせいで単位も落としたしバイトも首になったし、事欠かなかった女友達にも全員逃げられたし、下世話な話だがトイレに携帯を持ち込むようになった。
 それでも後悔はしていない。
 俺は携帯が鳴るたびに、マッハでホテルにすっ飛んでいく。

   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

 そこまでして愛した子なのに、今日の真弓ちゃんは笑顔を曇らせているのだった。
「真弓ちゃん……どうしたの?」
 一泊二十八万の――十万どころじゃないのだ――ロイヤルスイートのベッドにあぐらをかいて、俺は真弓ちゃんの頬に手を当てた。
「元気ないじゃないか。言ってみてよ。俺には金も力もないけれど、出来ることがあればなんでもするよ。棚の上のお菓子の缶ぐらいなら取れるぞ」
 身長だけはある。俺が背伸びして両手をひらひらさせると、あらそんなの甲月にやらせますわ、と真弓ちゃんは真面目に言った。
 それからさらさらの黒髪を傾けて、ことりと俺の膝に頭を乗せた。
「ショーヤさんって、優しいんですのね……」
「当たり前じゃないか。俺は真弓ちゃんのために命を賭けた男だよ」
 自分でも歯が浮くような台詞だと思ったけど、この子が相手だと自然に出る。あながち嘘でもないところが怖いが、それも誇りだ。
 真弓ちゃんは俺の顔を見上げて、すねたように言った。
「優しいショーヤさん……でも鈍感なショーヤさん……」
「鈍感ってなんだよ」
「鈍感ですわ。ちっともわたしの気持ちに気付いてくれないんだから……」
「なに、真弓ちゃんの気持ちって」
 真弓ちゃんはかったるそうに手足を投げ出したまま、ぽつりと言った。
「わたし、心苦しいんです」
「なにが」
「わたし、ショーヤさんに何もしてあげられてない。ショーヤさんはわたしのわがままを聞いて、なんでもしてくださるのに……」
「そんなことないよ。真弓ちゃんと仲良くできるのがどれだけ嬉しいか、分かってる?」
「でも、それはわたしがわたしのために頼んでいることですわ」
 真弓ちゃんは体を起こして、責めるように俺をにらんだ。
「わたしは今まで、甲月が連れてきた何人もの男の人と、え……エッチなことをしました。そのせいでその人たちの暮らしを壊してしまったことぐらい、知ってます。……ショーヤさんもそうやって使われてるだけなのに、それを分かっていてわたしのそばにいてくれる。……なのにわたしたちって、純粋にショーヤさんのためだけのお礼を、何もしてないんです」
「真弓ちゃん……」
 胸の中で心臓が躍りだしそうだった。
 使われているのは承知している。いずれは用済みで捨てられるだろう。真弓ちゃんもそのつもりで俺に接しているんだと思って、それも納得していた。でも、真弓ちゃんは俺を人間として認めて気遣ってくれたのだ。こんなに嬉しいことはなかった。
「気持ちだけで十分だよ」
 俺は真弓ちゃんの小魚のような指を握ろうとしたが、真弓ちゃんはそれを振り払った。
「いいえ、それじゃダメです。言って下さい、どうすればいいんですか? お金? 大学の成績? どこか行きたいところや、食べたいものってありません?」
「真弓ちゃん」
 俺は嬉しいながらもちょっと腹が立って、腕を組んだ。
「真弓ちゃんは俺を、お金目当てで君に近づく薄汚い人間みたいに扱うわけ?」
「そ……そんなつもりじゃ……」
 真弓ちゃんは両手で口を押さえて、涙を浮かべた。
「……ごめんなさい。そうですわね、ショーヤさんは一度だって、そんな話をしたことはありませんでしたわね……」
「……悪かったよ、好意で言ってくれたのに」
「いいえ……」
 真弓ちゃんはうつむいて、しばらく何かを考えていた。
 それから顔を上げて言った。
「ショーヤさん。わたしが……わたし自身の好意だってはっきりわかることをしたら、受け止めてくれますか?」
「どんなこと?」
「考えたんですけど……」
 真弓ちゃんは泣き笑いのような顔をした。
「お父様の、千弦院家の力を借りないでわたしができることって、ほんとに何もないんです。あるのはお金ぐらい、でもそれじゃショーヤさんに失礼。だから……わたしが、この体でお礼するしかないと思うんです」
「体って……」
 なんだかとてつもなく重大なことを言われたような気がして、俺は身構えた。すると真弓ちゃんは両手をついて、さくら色に染まった頬で、俺の腹のあたりをじっと見詰めた。
 それからおずおずと手を伸ばして、さっき着たばかりの俺のズボンのベルトを、外し始めた。
「真弓ちゃん、何をする気? またさせてくれるの?」
「違います。え、エッチなことをしただけじゃ、わたしの気持ちが証明できませんもの……」
 真弓ちゃんは――俺の、トランクスに、顔を、あの芸術品みたいに整った可愛い顔を、押し付けてしまった。
「だから……お口で……」
「だめだ、そんなことしたら!」
 それは毒ガスの箱を開けるような行為のはずだ。真弓ちゃんを窒息させる真っ黒な記憶が目覚めてしまう。
 なのに真弓ちゃんは、細かい汗をびっしり浮かべた顔で俺を見上げて、ニコッと笑ったのだ。
「させて下さいな。わたし、一生懸命やってみます……」
「真弓ちゃん……」
 きらめく汗が、精一杯の幼い意思の表れだった。そんな強い決心から逃げることなんて、俺には出来なかった。
「分かった……でも無理だったらすぐやめていいからね」
「やめませんわ、絶対……」
 真弓ちゃんのロウのように白い指が、俺の赤黒いものを取り出した。

 いつも犯されながら、この子に中出しできるほど心地いいことなんかない、と思っていた。
 でもそれは間違っていた。今まで俺が触れられたのは、この子の体だけだった。今触れているのは、この子の心だ。
 アイスを食べる時にも小さなスプーンを選ばなければいけないような唇が、俺のものをちゅうちゅうと吸っている。あそこと同じように口も小作りで、俺が並みの大きさだったらとても入らなかったところだ。
 舌が健気に動いていた。とろとろ、ちゅぷちゅぷ、と気後れするほど丁寧に、舌や唇が俺をくすぐった。あそことはわけが違う。この筋に触ろう、この表面を味わおう、そういう意思がくっきりと伝わってくる。
 黒髪の妖精のような少女が俺を喜ばせようとしている、それがはっきり分かる。
「真弓ちゃん……嬉しいよ……」
「そうですか? くふ、よかった……」
 そういう真弓ちゃんの顔は、笑いながらも、土気色に歪んでいる。
 男に汚されているという気持ちを必死に抑え込んでいるんだろう。見ていられない。このまま快感を受け続けるなんて、男として最低だ。
 俺は体を倒し、真弓ちゃんのスカートをめくって、ショーツに顔を押しつけた。
「あ……何を?」
「真弓ちゃんも気持ちよくなりなよ。奥に触ってあげる。真弓ちゃんは無理やりやらされてるんじゃない。俺が触ってあげるお礼として、やってくれるんだ。――それを忘れないで」
「……はい!」
 ショーツの隙間から俺は舌を突き入れる。何度もセックスしているのにそこはまったくつやを失っていない。あくまで白くほの赤いそこにぐりぐりとねじ込むと、すぐに底が触れた。ぴくっ! と目の前のお尻の穴が震えて、条件反射のように蜜が奥から湧いてきた。
「ショーヤさぁん……届いてます……」
「真弓ちゃんも頑張って」
「は、はい……」
 真弓ちゃんの真っ白な太ももに頬を挟んで、俺はいつにも増して強く舌を動かしまくった。一刻も早く真弓ちゃんを気持ちよくさせてやりたい。柔らかく煮えた肉の底の、つぷつぷ湧き立つような表面をつつく。この子をおなかの奥から熱くしてやりたい。
「し、ショーヤさん、いつもより……くんん!」
 真弓ちゃんがうめき、だが我を忘れたりしなかった。気持ちをすべて舌に乗せて俺に返してくれた。温かく包み優しく舐められ、ちゅうちゅうと招くように吸いたてられて、俺も限界に達した。
「真弓ちゃんッ!」
 体を丸めて、思いきり顔を真弓ちゃんのあそこにつっこんだ。ぐりっと子宮口を弾いたことが真弓ちゃんを飛ばしたらしく、「ひゃんんッ!」と叫んで俺のものを取り落とした。
 その瞬間射精した。
 とぷっとぷっと噴き出す精液を頬に浴びて、「ま、待って!」と焦ったように真弓ちゃんが叫んだ。そう言われてもどうしようもない。俺は真弓ちゃんの整った顔を汚し続ける。
「そんな、ああ……えい!」
 暴れる俺のものを口に含むことができずに、真弓ちゃんは手で捕まえて亀頭だけを唇に押し当てた。つるつるの先っぽをちょうど吸盤のような形で迎える。
 そのまま真弓ちゃんは強く吸った。
「ん! ん! んく!」
 抱きしめたお尻がぶるぶる震え、ちゅるっ、ちゅるっ、と飲みこむ真弓ちゃんの喉の動きがはっきりと伝わってきた。
 吸いこまれる気持ちよさに、俺はしばらく体を硬くしていた。
 けれど、落ちついてくると、じわじわと恐ろしさが湧いてきた。体を回して真弓ちゃんの顔を覗きこむ。
「真弓ちゃん! 平気か? 大丈夫だった?」
「ん……」
 口元を押さえていた真弓ちゃんは、シーツで顔の汚れを拭うと、こっちを向いた。
「大丈夫じゃ……ありませんでしたわ」
「え? そ、それじゃ」
「あわてないで」
 真弓ちゃんは俺の手を押さえると、花が開くような晴れ晴れしい笑みを浮かべた。
「ショーヤさんが出してくれたとき、わたし……ぼうっとなってしまったんです」
「真弓ちゃん……」
「イヤじゃなかったんです。気持ちよかったですわ。きっと……ショーヤさんが治してくれたんです」
「……よかったね、真弓ちゃん」
 俺は彼女を抱きしめた。真弓ちゃんも、そっと俺の胸にもたれてくれた。
 分かっていたんだ。それは、もう千弦院家が俺を必要としなくなったってことだって。
「さよなら……」


 それから二週間がたった。
 俺は大学の授業に出るようになった。一年留年するだろうが、卒業はできそうだった。
 バイトにも復帰した。頭を下げて頼んだら、店長も同情してもう一度雇ってくれた。
 女の子たちとの仲を修復するのはそれより難しかったが、昨日、あの出来事以来はじめて、再びコンパに誘われた。元のように仲良くなるのも、もうじきだろう。
 でも――
 携帯は、鳴らなくなった。
 昼も夜もなく突然鳴って俺を呼びつけた、真弓ちゃん専用の着メロは、もう死んだ。雄司に連絡を取ってもらおうとしたが、頼んだ翌日真っ青な顔でやってきて、口にしてもいけないと俺に言い渡した。俺があの子に会うことは、金輪際不可能になったんだろう。
 それでもいい。
 日曜日の夕方、アパートの窓に腰掛けてビールを飲みながら、おれはぼんやり思う。
 二度と見ることができなくても、思い出すだけで十分なほど、あれはすてきな夢だった。
 俺は、それだけを支えにして生きていく。
 そう言い聞かせながらもどこか空虚な心のまま、俺は暮れていく夕日を見つめ続けた。
 ピンポーン、とチャイムが鳴った。
「はいよー……」
 ビール片手に俺は部屋を横切って、ドアを開けた。
 落っことした。
「お久しぶりです、ショーヤさん!」
 真弓ちゃんが立っていた。
 それもただの真弓ちゃんじゃなかった。靴墨か何かで顔を真っ黒に塗って、絹糸みたいな髪にわらくずを盛大にまとわりつかせて、首から膝まで段ボール箱に収まって、おまけに全身びっしょりと濡れた、とてつもない格好の真弓ちゃんだった。
「ど……どうしたの」
 ビールと一緒に心の何かも落っことしたらしくて、俺が出したのは物凄く平板な声だった。しっ、と言って背後を見てから、部屋に入ってドアを閉めて、真弓ちゃんはにっこり笑った。
「来ちゃいました♪」
「来ちゃいましたって……その格好……」
「たいしたことはありませんわ。昨日の夜に全身黒ずくめでお屋敷を抜け出そうとしたら警備犬のセバスチャンたちに見つかって、川に入ってやり過ごしたら甲月たちもやってきて、堤防を通ったトラックに飛び乗ったら牛さんの飼料の車で、町で降りたらお巡りさんたちが非常配備をしていて、見つかりそうになるたびに手足を引っ込めて箱のふりをしてやり過ごしてきただけのことですわ」
「な、なんでそんなこと……」
「だって、お父様ったらショーヤさんを処分するなんて言うんですもの」
「しょ!」
「二週間説得したけどこれ以上引き延ばせなくなったから、助けに来てあげたんです。――あらっ?」
 俺は真弓ちゃんを抱き上げて風呂に入り、有無を言わせず箱を破って頭からシャワーをかけた。それから服を全部脱がせて外に出し、ヘアバンドからつま先までバスタオルでごしごし拭いて、ついでに俺のシャツを出してすっぽりかぶせた。
「ちょっと、ショーヤさん、こんなことしてる場合じゃ……」
 戸惑う真弓ちゃんをすとんと立たせると、膝を付いて正面から見つめて、やっと俺は事実を呑み込むことに成功した。
「真弓ちゃんだ……本物の真弓ちゃんだ」
「まあ、偽物がいたのですか?」
「そうじゃないけど……よく来てくれたね」
 俺はそっと真弓ちゃんを抱きしめた。すると真弓ちゃんも、俺の背中に手を回してきゅっと抱きしめてくれた。
「会いたかった」
「わたしもですわ……」
 俺は顔を離して、真弓ちゃんの生き生きとした目を見つめた。
「きみが本気だってことをこうやって示せば、お父さんは認めてくれるってこと?」
「いいえ。お父様はそんな方じゃありません。わたしを連れ帰って、ショーヤさんも処分しようとすると思います」
「そんな無茶な……」
「本当です。でも安心なさって」
 真弓ちゃんは俺の顔を両手で挟んで、母親のように言った。
「言ったでしょ、助けに来たって。一緒に逃げましょう。わたし、ショーヤさんと一緒なら千弦院家を離れても生きていけます。ショーヤさんは……来てくれますか?」
「もちろん!」
 俺は音速でうなずいた。ふわあっ、と真弓ちゃんは安心したように微笑んだ。
「わたし、着の身着のままで来ましたから、ろくにお金も持ってなくて、この先貧乏すると思いますけど……それでもいいですか?」
「当たり前だよ。俺は生身の真弓ちゃんが好きなんだから」
 うなずくと、俺は勢いよく立ちあがって、部屋の中のなけなしの貴重品を集め始めた。
「急いで逃げよう。家なんかとっくにばれてるんだから、一秒でも早くここを出ないと。車――はナンバー割れてるから電車だな。それもできるだけ遠く。真弓ちゃんの残りはいくら?」
「二十億しかなくて」
「………………は?」
 俺は手を止め、拳銃を付きつけられたようにゆっくり振り返った。真弓ちゃんは濡れた服からカード入れを出して枚数を数えていた。
「それ、円?」
「大きな飛行機を買ったらなくなっちゃいます。海外には逃げられませんわ」
「か、買うって……チケットなら数万、いや、チャーターしたってせいぜい数十万だよ」
「え? 飛行機って買うものじゃないんですか?」
 びっくりしたように口を開ける。
 俺は、真弓ちゃんとデートをしたことはないし、普通の会話をしたこともない。エッチだけじゃなくてあらゆる方面で彼女が常識はずれだということに、ようやく気付き始めた。
「それだけあれば……そうだ雄司! あいつなら税関通らず高飛びできる知りあいぐらい……」 
「海外に行けるんですか? それならスイスにしましょう! インターラーケンのキャロリーンならかくまってくれますわ」
「スイス、スイスね……」
 俺は携帯をかけて雄司を呼び出し、泣きごと言うあいつをおどしたりすかしたりして、わずか三分で別の電話番号を聞き出した。
「行こう! なんとか逃げられそうだ」
 そう言って真弓ちゃんとドアに向かった時。
 バン! と扉が開いて、拳銃を構えた男が入ってきた。甲月だった。
「動くな。さ、お嬢様」
 俺は絶望しかけた。せっかく希望が見つかったのに――俺の前に、真弓ちゃんが両手を広げて立ちはだかる。
「撃っちゃダメ! 甲月、撃ったら一生あなたをうらみますわよ!」
 その時、サングラス越しに、甲月の表情が微妙に変化した。
 アパートの前に車が止まる音がして、甲月さんのバイクだ、と声が聞こえた。数人の足音が階段を上ってくる。その間、甲月はじっと俺を見詰めていた。
 それから奇妙なことをつぶやいた。
「まだ一台だ。二台目は八十秒後に来る」
「え?」
 パン! と甲月は発砲した。弾丸が俺の頬をかすめて窓ガラスを破る。
「入るな、こいつ抵抗するぞ!」
 そう叫んで、甲月は手当たり次第にそこらのものを蹴飛ばし始めた。アパートを揺るがす破壊音の中で、俺は悟った。
「きゃ!」
 真弓ちゃんの胴を横抱きにして、窓に走る。飛び出す寸前、言い残した。
「一生感謝するよ」
 チュン、ともう一発の弾丸が俺の目の前を飛び去った。
 隣の家の軒に移り、その隣に、さらに隣に、屋根伝いに走りながら俺は聞いた。
「スイスから先のあては?」
「スイスならわたしの個人口座があります。お父様も知らないと思いますわ。それがおろせれば――」
「大きな飛行機が買える?」
「ええ!」
 俺と真弓ちゃんは顔を見合わせて笑った。
 ささやかながら金もある。物騒だけど祝福してくれた奴もいる。申し分のない門出じゃないか。
「逃げるぞ、真弓ちゃん!」
「一生ご一緒しますわ!」
 近づくサイレンとヘリコプターの爆音を聞きながら、俺たちは世界中を巡ることになる逃走劇の幕を切って落とした。



――了――



読了後お読みください。


























※低年齢少女への性的行為は、善意があろうが同意があろうが相手を傷つけます。
 また、子供は無垢ゆえに邪悪であり、しばしば大人は逆に攻撃されます。
 現実において子供に性的行為を行うのは避けて下さい。
 溜まったら一発抜いて山にでも登り、邪気を忘れること。

 失礼しました。
 この手のネタではこういう警告を入れることにしています。




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