top page   stories   illusts   BBS



「官能小説研究室へようこそ! ここでは、DOORの中に広がる様々な世界、すなわちエロ小説の真髄について考察していこう。私はここの館長のTだ。そしてこちらが助手のY」
「なんか唐突な出だしですね。大体ここってどこですか。それにTとかYって変な名前」
「ここといったら、Forbidden DOORの中に決まっている。ドアがある以上内部があるのが当然だろう? TもYも便宜上の名前だが、作者の扉の名が出てきたら架空世界の雰囲気が壊れてしまう。私は扉ではない、きみも行広ではない」
「でも味気ないです。じゃあ、別の名前にしましょう。館長は環さん。わたしは由梨絵」
「うむ、そのほうがキャラが立って好都合だな。キャラ立てついでに舞台装置も用意しよう。ここは薄暗い研究室で、ベッドと手術台が置かれている。壁際にはマッドな香りのする小道具が山のごとしだ。私は白衣をまとい眼鏡をかけ、『サディスティック19』の医者か『ペケ』の保健医のような姿をしているものとする」
「するとわたしはやっぱり看護婦……」
「にするかメイドにするか難しいところだが、とりあえず白衣でかまわん。ああ、ナースキャップを忘れずにな。肝心の性別だが、今回きみは女だ」
「今回って……それじゃ」
「うむ、想像通りだ。必要に応じて変化してもらう。性別だけではないぞ、年も性格も変わるし、服装は言わずもがなだし、アンドロイドや宇宙人や妖精になるかもしれんし、場合によっては大けがをしてもらう」
「大けが……! ひどいじゃありませんか!」
「なあに気にするな、次の回では何事もなかったかのように完治しているのだ」
「……ふえー」
「設定はこれぐらいにして、そろそろ本論に入ろう。見たまえ、第一回のテーマはこれだ」
「……これって、わたしを実験台にするんですよね」
「無論」
「……どうせなら、もっと必然性のあるエッチがしたいんですけど……」


 テーマ1 「中出し」 〜 その実際と効果 〜


「ではまず聞こう。中出しとは何かね」
「女の子のあそこの中で、男の人が出すこと、ですか」
「あそことは何か、出すとは何をか、それを定義してほしいところだが、この場合はその答えのほうがむしろ適当だろう。エロ小説の場合、膣内ではなく、そして精液でもないことが往々にしてある。由梨絵くん、きみは何をどこに出されるのが好みかね」
「そ、そんなの普通が好きに決まって……何を言わせるんですか!」
「分析的考察の参考にする。隠さず述べたまえ」
「……あそこの中に、男の人のを出されるのが……」
「定義」
「膣内に精液をです!」
「よろしい、最大公約数的な答えだな。しかしせっかくだが、いま考察しているのは、主に男性にとって中出しとはどんな意味を持つのかという点なので、きみの意見はそれほど重要ではない」
「だったらなんで言わせたんですか!」
「参考だと言っただろう。それとまあ、盛り上げるためだ」
「うー……」
「さて、まず私としては、男性が中出しを好むという前提のもとに話を進めたい。これについてはどなたも異存がないと思う」
「……じゃあ、次はその理由ですか」
「いや、その前に中出しではないもののことを話さねばならない」
「中出しでないもの?」
「いわゆる外出し、顔面シャワー、多人数ぶっかけ等だな」
「ぶっかけ……」
「AVなどでは非常に多い。これは今ひとつ不可解だ。確かに、このように美しい女を汚すことには……」
「あ、何するんですか! やめて、これなに?」
「カルピスの原液だ」
「……あ、ほんとだ。甘い」
「このように、粘液をかけられた女が喜んでそれをなめる、という構図には、確かに何がしかのエロチシズムはあるように思われる」
「そんなもの感じないで下さい!」
「だが、本質的に外出しというのは、妊娠を避けるための対策として発生したものだからして、そればかりを喜んでいるのはマニアックであるのみならず、逆に手ぬるいと思うのだ」
「……はあ?」
「外出しとはつまり、きれいな女を汚すことで優越感に浸る行為だ」
「はあ」
「だがその時汚されるのは、女の肌の上だけ、表面だけだ。表面だけなら、このようにぺろぺろと……」
「うひゃ! か、館長!」
「動いてはいけない」
「は、はい……あ、やめ、やめて! 首吸わないで!」
「……とこのように、唾液をなすりつけるのと変わらない。女を見るときに外側だけしか見ない、想像力の乏しいものが、この手の方法を好む」
「……はああ……」
「ここで言いきろう。外出しは、前戯で終わるセックスだ」
「……な、なんか館長の趣味が入ってません?」
「それは仕方ない。私はあくまで、ここに収められた作品の方法論について語っている」
「つまり好きなように言いたい放題言うってことですね」
「話の腰を折ってはいかん。続けると、外出しはやはりぬるい。エロ小説は、やはり中出しを扱わねばならんのだ」
「……そーですか」
「そうだ。さて、ここでまた中出しについての話に戻る。まずはその分類だ」
「ぶんるいー?」
「こっちへ来たまえ。……よし、そこでいい。えー、中出しには大別して四種類ある。一、膣内。二、肛門内……」
「あ、あの、いちいちスティックでつつかないで下さい」
「うむ、そうやって報告してくれるとありがたい。それから、三、口内。四、それ以外」
「それ以外って、他にあるんですか?」
「ごくノーマルなところでは、目や耳、鼻だな」
「全然ノーマルじゃないんですけど」
「そうでもない。私の調べたところでは、腹の中や乳房の中、脳内というものまであった。小説ではないのだが」
「の、脳内!」
「残虐趣味のある男性がそういうのを好むのだな。ナイフで裂いてそこに陰茎を挿入する……」
「やだやだ、聞きたくないです!」
「こら、逃げるな。今回は残虐方面は本論ではないから、実践したりはしない」
「他のことは実践するんですか」
「最初からそう言っている。心の準備をしておきたまえ」
「くすん……」
「話を続けると、男性の性欲の中には、程度の差はあれ、女の体内にどうにかして精液を注ぎたいという欲求があるようだ。由梨絵くん、それはなぜだと思うかね」
「……やっぱり、本能じゃないんですか。男は女を妊娠させたいんでしょう」
「もとは本能だったろう。だが口や肛門などは、本能では説明がつかん。脳内射精など最たるものだ。柔らかいところならどこでもいいらしい。見たことはないが、ひょっとしたらふくらはぎや二の腕を裂いてその中に陰茎を押しこむものまであるかもしれない。これなど、どう見ても子造りの本能に反している」
「……なんか、気持ち悪くなってきました」
「悪いが我慢してくれたまえ。今回は男性の欲望を扱っているので、女性的には不愉快な面があるのも仕方ない」
「……はい」
「それでだ、ではここまで肥大化した女性体内射精願望は、一体なにを指し示しているのか」
「……さあ」
「答えはもう言っているのだが」
「え?」
「つまり中出し願望とは、きれいな女を汚す欲望が、さらに強まったものなのだな」
「ははあ」
「外側だけを汚したのでは、いくらでもふき取られてしまう。しかし中を汚せば、洗いようがない。きっちり完全に汚すことができる。その時に男性は、高貴な存在を自分と同じレベルまでひきずりおろしたことになり、征服感を覚える」
「……」
「この考えをおしすすめると、さしずめ動脈の中に精液を流しこんで体中にいきわたらせる、などという犯し方がもっとも興奮をそそるのではないかと思うのだが」
「よくそんなひどいこと考えつきますね……」
「いや、これはただの思考実験だ。大幅に残虐方面に流れてしまうので、おそらくここで扱われることはないだろう」
「……それで、結論はそれなんですか。女性の体を汚すことが中出しの目的だと」
「いいや、まだ話は終わらない。きみ、脱ぎたまえ」
「は?」
「下着だけでいい」
「……こ、これでいいですか? あちょっと、それ!」
「こっちに置くだけだ。ふむ、シルクか」
「じろじろ見ないで下さい! で、どうするんですか?」
「私とセックスしなさい」
「セックスしなさいって……そんな、煙草買いに行かせるみたいに」
「そこにローションがあるだろう。私はもう勃起しているから、塗ってくれたまえ」
「はいはい……」
「塗ったらセックスだ。ほら。……ああ、そう、またいで」
「騎乗位でいいんですか」
「これは対面座位というのだ。私は椅子に座っている」
「わかりましたよ。……んんっ」
「肩をつかみたまえ。そう、体重をかけて……どんな気持ちだね」
「別に。館長のが入ってきただけです」
「そうだろうな。何しろ気分的な盛りあがりというものがまったくない。不快かね」
「はっきり言って。わたし、こういうのいやです」
「そうかね。では動いてみたまえ。私も手伝おう」
「んん……こうですか」
「そうだ。……なかなかいいな、きみの性器は適度に締まって快適だぞ」
「快適っ……て……もっとましなほめ言葉は……ないんですか……」
「濡れてきたようだね」
「……仕方……ないでしょ……男だって……んっ! ……こすれば出るくせに」
「胸も刺激してあげよう。おや、乳房も大きめだな。そういう設定か」
「知りません! ……ん……は……」
「いっそう濡れてきたな。愛液が垂れている。乳首もいい硬さだ」
「やあ……つままないでくだっ、ひっ!」
「さてそこで、いきなりこのように抜いてしまう」
「……ええっ?」
「どうかしたかね」
「だ、だって……そんな、途中で……」
「いやだと言っていたじゃないか」
「そりゃいやですけど……いったんスイッチ入れといてそんな意地悪な……あっ!」
「ここに、私のペニスがほしいのかね?」
「あっ、ああああ、ゆ、指っ! やめて! ……そんな、ずるいです。早く、お尻おろしてえ……」
「ふむ、じゃあ入れてあげよう」
「ひんっ! ……あはあ……」
「ほら、動きたまえ」
「は、はい……いや、押さえないで、動かさせて」
「そうだ、いい調子だね」
「腰引かないでっ! ……どうして? どうしてそんな意地悪するんですか!」
「そろそろいきそうかね」
「は……はいっ!」
「きみは、膣内で精液を出されるのが好きと言っていたね」
「そ……いやっ! 止めないでこのままいかせて!」
「言っていたね。返事は」
「言いました、出してほしいです出されるの好きお願いこのまま」
「具体的には?」
「子宮に精液かけてほしいですっ! いいから早く、はやくはやくわたしもういっちゃう!」
「では……ほら!」
「あはぁッ!」
「出しているぞ、きみの膣内に精液が出ているぞ」
「す……て……」
「……由梨絵くん?」
「……」
「由梨絵くん? 返事は?」
「……ま、待って……もうちょっとひたらせて……」
「と、このように」
「え?」
「中出しで真に重要なのは、女がみずからそれを求めてくるということだ。つまり、女の心まで卑しく汚してしまうこと、それが男が中出しに求める理想なのだな」
「……」
「ここでは、最初に女に嫌悪されていなければいけない。最初から求めている女は、高貴でもなんでもないからだ。セックスの過程におけるこの変化が、エロ小説の核心的要素のひとつだといえよう」
「……館長、あの、そんな淡々と」
「そうでない逆のパターンもある。女が最後までいやがる話だ。そういう強姦ものの需要はかなり多いようだが、私としては疑義を挟みたい。単に肉体的に汚しただけでは、一見男が勝利したように見えても、女にさげすまれ、貶められてしまっている。これは不愉快なことだ。女の精神まで屈服させるのでなくては、中出しの意味はないのではないか」
「……鬼畜……」
「そんな顔をしてはいけない。前にも言ったが、今回は男の立場に偏った意見を述べている。女性的視点からの意見や、征服と被虐ではないセックスについては、また次回にでも考察しようじゃないか。それはそうと、もうどいてもいいぞ」
「……どきません!」
「なに?」
「いつわたしが館長を嫌いって言ったの! わたしがいやなのは、こんな風に事務的にエッチすることなんです! もっとちゃんとしてくれるまで、どかないから!」
「ほう。しかし残念だな。ここはForbidden DOORの中でも特異な地点なのだ。いわゆるラブラブ的な終わり方をするような設定は、されていない」
「え?」
「きみが満足するかどうかはわからないということだ。次からもきみは、こんな具合に意に染まないセックスをさせられることになるだろう」
「……そんなあ」
「まあ、あきらめたまえ」
「……どうせなら他の話のキャラに生まれたかったです。友菜ちゃんとか優水ちゃんとか……」
「さて、今回は『中出し』をテーマに、ここの作品の指向について考察した。Forbidden DOORに、中出しに重点を置いた小説が多いのは、こういう根拠からなのだ。それではこれで、第一回の研究を終わることにしよう。皆さん、さようなら」
「パンツはいて下さいッ!」

 
top page   stories   illusts   BBS