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新学期の大冒険


「UFOビデオ屋に行かね?」
 って石川島が言ったのは、ぼくと佐村がいらいらし始めた九月の真ん中ぐらいだった。


 二学期が始まって三日目の昼休みに、ぼくは決心して、佐村一美の机の横を通りながら、くしゃくしゃに丸めた紙をぽんと投げつけた。
「それ、捨てといて」
「はあ? なんであたしが。自分で捨てなよ!」
 佐村はそう言ってぼくをにらんだ。大きな目の上のくっきりしたまゆがキッとあがって、下級生なら泣き出してしまうぐらいこわい顔だ。でもぼくは、だれにも言わないけどそんな佐村の顔が大好きだ。
「頼むから」
 ちょっとだけ長く見つめると、佐村はぱちぱち瞬きして、はっと口を開けた。
「う、うん」
「じゃ。おーい、待ってよ石川島」
 ぼくは後ろも見ずに走って、運動場に行く石川島に追いついた。
 午後の五時間目と帰りの会は、ほんとにばかみたいにうわの空だった。ランドセルに荷物を入れるときに、あせって教科書をそこらにばらまいてしまうぐらいだった。体重がなくなったみたいにふらふらした歩き方で職員室に行って、どきどきしながら担任の青木先生に頼んだ。
「すみません、一時間目に図工準備室にノート忘れたんですけど、取りにいっていいですか」
 テストのプリントをつくっていた青木先生は、ああそっちの鍵板な、とあっさり言ってくれた。ぼくは職員室の壁の、鍵が五十個ぐらいぶら下がっている鍵板から、準備室の鍵を取った。出口を出るとき青木先生に声をかけられて、心臓が止まりそうになった。
「砂戸ー」
「は、はい!?」
「ちゃんと返して、先生に報告な」
「はいっ」
 廊下に出たら、喉がからからだった。先生にうそをついたのは、これが初めてだった。
 図工準備室は、部活動で使ってない部屋だ。そこに入って、ぼくは部屋の中を見回した。ノコギリとかトンカチとかドリルを入れた棚と、でっかくて重い木工用の作業台がある。二階で運動場側を向いているから、外からは見られない。
 壁の時計を見ながらじりじりして待ってると、予定の時間から三分ぐらいたってから、ドアがノックされた。ぼくは中から少しだけ開けた。
「砂戸……?」
 体操服を来た佐村がいた。ぼくは佐村をひっぱりこんで、急いでドアを閉めた。鍵はかけられない。
 ふりかえると、佐村は予習なしで先生に当てられたときみたいな、緊張した顔で紙くずをぴらぴらふっていた。それはぼくが昼に、ゴミに見せかけて渡したやつで、「放課後 図工準備室」とだけ書いてあった。
「捨てちゃうとこだったよ」
 佐村が言った。怒ったみたいな顔だったから、ぼくはそっと近づきながら聞いてみた。
「いやだった?」
「いやじゃないけど……あたし、陸上部」
「あ、部活だった?」
 うっかりしてた。ぼくは部活に入ってないけど、佐村は陸上部員だった。それも、地区大会に出るぐらいのエースだ。
「ごめん、なら今度でいいから」
「……今度なんて、待てないよ」
 佐村がうつむいて言った。ゆっくり近づいてきて、ぼくの肩にぽすっと頭を当てる。
「いやなら来ない。来たかったの」
「そ、そう?」
「ん」
「来たってことは……えっと……し、したいってことかな」
「ばか」
 佐村がげんこつでぼくのおなかを突いた。えふっ、と息がもれた。
「砂戸がしたいんでしょ。あたし、つきあってあげるだけ」
「う、うん。それでいいから……」
 ぼくがもたもたしてると、佐村は両うででぎゅっと抱きついて、ほっぺたを強くすりすりしてきた。そして、あせってるみたいな声で言った。
「ほら、いいよ。してよ」
 ゴムボールみたいなおっぱいが、やわらかいおなかが、きゅむっと押し付けられる。やっぱりしたいのはぼくじゃなくて佐村だと思ったけど、言うとまたおこるから、だまってぼくは佐村の肩をひっぱった。
「ここだと向こうの団地から見えるよ。そっちのすみで……」
「う、うん。座ろ……」
 ぼくたちは、木工作業台の陰になる部屋のすみにいって、並んで座った。そして、まずあたりをきょろきょろ確かめた。隣の図工室とのドアは何年も前から棚でふさがれてるし、窓からは見られない。
 でも、廊下を誰かがバタバタ走っていく音が聞こえるし、校庭からも部活の大声と笛の音が聞こえる。なにより、ドアの鍵はねじ込み錠で、外からじゃないとかけられないから、誰でも入ってこれる。
 ぼくは、佐村の耳に顔を寄せて言った。
「ここ、どこの部も使ってないから」
「うん」
「だいじょぶ、だれも来ない」
「うん」
「万一来たら、急いではなれよう。落しもの探してるふりで」
「う、うん」
 こくこくうなずいて、佐村が顔をよせてきた。ぼくも目を閉じて、きれいなまるいほっぺたに、ちゅっとキスをした。
 それからお互いに頭をつよくだきしめて、何度も何度も、っていうよりずーっとくちびるをつけたままで、夢中になってキスした。ぼくはすぐにちんちんが硬くなって、ちょっときつい半ズボンのせいで痛くなった。
 佐村は来る前に走りこみをしてきたらしくって、うでにも首にも少し汗をかいてた。髪も、甘い汗のにおいに砂のざらざらがまじってた。それでもすごくいいにおいだった。ちゅっちゅってやったり、強くくちびるをつけたまま舌をれろれろしたり、思いっきりキスをしてから、少し顔をはなして、二人ではーっと長いため息をついた。
 佐村のまゆがゆるく下がって、目がとろんと細くなってる。鼻の頭にぽつぽつと小さな汗がいっぱいういてて、くちびるのなかに真っ白な歯が見えた。かわいすぎて、背中がぞうっとする。思わず、甘えるみたいに言ってしまった。
「佐村、したかったよぉ……」
「あたしも……」
 佐村がかすれた小さな声で言う。
「盆おどりから会えなかったじゃん……電話、待ってたのに……」
「ぼくも。ごめん、かければよかったね」
「あたしかけられなかったもん。前ので、お母さんに聞かれたから……」
 あはははっ! と廊下で大きな笑い声がして、ぼくたちはびくっと抱き合った。もちろん全然関係ない人たちで、すぐいなくなったから、ほっとした。佐村がカタカタふるえながら、もっと小さな声で言う。
「ばれたら大変だね、こんなこと」
「だよね。学校でエッチしてるなんてばれたら……親呼び出しかな」
「こっわ。めちゃめちゃしかられるよ、あたしんち厳しいから……」
「でも、やめたくないよね」
 ぼくが言うと、佐村はしんけんな顔でこっくりうなずいた。
「うん、やめられない」
 それからまたキスしてきた。
 ぼくはさっきから、佐村のかっこうが気になって仕方なかった。綿の白い体操服とブルマだ。おっぱいの感触がすごくはっきり伝わってくるし、日焼けしたむっちりした太ももも丸見え。何度か手を出したり引っ込めたりしてから、思い切ってさわってみた。
 そしたら佐村が、待ってたみたいにさっと手を出して、ぼくの半ズボンをなで始めた。ううん、ほんとに待ってたんだ。先に手を出したくなかったんだと思う。
 ということは全然いやじゃないってことだから、ぼくはえんりょなく佐村をさわることにした。
 体操服のすそから手を入れて、おっぱいをもんだ。佐村のおっぱいって、大人に比べると全然大きくないけど、そんなの気にならないぐらいさわると気持ちいい。指がぷにぷに埋まるみたいで、強く押すと肋骨がこりこり当たる。乳首もかわいい。お母さんみたいに変に大きくなくって、ちょこんと硬くとがってる。それに、喜び方がすごい。別人みたいに高い声で言う。
「んぅ……ひぃ……砂戸ぉ、砂戸ぉ……」
 キスしながら、いや、いや、って首をふって、ぐったりもたれかかってくる。まだ八月が終わったばっかりだしここにはエアコンもないから、とにかく暑い。ぼくも佐村も汗びっしょりになって、おっぱいもおなかもぬるぬるしてる。それでも、はなれようなんて思わない。おたがいに力を入れられるだけ入れて抱きあう。
 佐村は手のひらで、くいくいさわさわちんちんを撫でる。骨みたいに硬くなって熱くなったのが、ぼくのおなかにぴったり張り付いてる。佐村がうれしそうに言う。
「砂戸のこれ、ほんとにかわいいねー……」
「そ、そう?」
「ご主人様よりずっといい子だよ。ほら、入れて入れてーって言ってる」
「んあっ」
 ぐいって握られて、声が出た。佐村が握ったままくいくいしごく。
「……んふ、元気だなあ。かわいいなあ。いい子いい子……もうすぐだからね。気持ちよくしたげるからね……」
「さ、佐村もそうだろ」
 ぼくは言い返して、佐村のぎゅっと合わさった太ももの間に指を突っ込んだ。ちょっと前から、佐村がそこをもじもじこすり合わせてたの、とっくに気づいてた。
 さらさらのブルマの一番下をくいっと引っかいたら、佐村が「んくぅ……」って鼻を鳴らして、はっと口を押さえた。
「……声、まずいよね」
「佐村、しよ。したいだろ」
 ぼくはずきずきするちんちんを早くどうにかしたくって、佐村のそこをやたらといじってみた。ブルマの中のパンツの中の柔らかいあそこに、指の先がぐりぐり食い込む。佐村があごをあげて、「やぁ、だっ、だめぇっ!」と声を出した。そんな佐村のこしに手を当てて、ぼくはブルマを下げようとした。
「佐村、させて」
「え、ちょっと」
 佐村がぼくの手をぐっと押さえたから、反射的ににらんでしまった。
「させてよ、佐村。がまんできない、佐村もしたいだろ」
「したい、したいよ」
 佐村はそう言ったけど、強く首をふった。
「でも、いやだよ。こんなとこで服ぬげないよ。第一、誰か来たら言いわけできないじゃん!」
「じゃあ、どうするんだよ」
「どうって……」
 佐村は泣きそうな顔になったけど、しょうがないって感じで言った。
「中に、手だけ入れて。あたしもしたげるから」
「うん……」
 不満だったけど、仕方なかった。さわりっこなら急いではなれられるけど、入れてる最中に誰か来たら――もうおしまいだ。
 ドアにちらちら目をやりながら、ぼくたちは半ズボンとブルマの中に手を入れて、こそこそさわりっこを始めた。
 佐村のぴっちりしたパンツの中、狭くて手の入りにくいおなかの下。ちょっとだけの毛を越えた先に、むっと熱いあそこがあった。人差し指を押し込むと、もうとろとろにぬれていた。うわあ、思ったけど、人のこと言えない。ぼくなんか最初からピンピンだったんだから。
 ってぼくはえんりょしたのに、佐村はえんりょなく言った。
「砂戸、もう先っちょがぬるぬる……」
「だ、だって……」
「いつもおとなしい顔してるくせに、ここはほんとに元気なんだから……」
 そう言ってちょっとだけ笑ったけど、ぼくがくいっと指を動かしたら、簡単に「やぁんっ!」て声を出した。
 ぼくが佐村の体をドアから隠すみたいな姿勢で、半分向かい合って、指だけ熱心に動かした。二人ともパンツをはいたままだから、ろくに手が動かせない。ぼくは人差し指の先をくちゅくちゅ動かすだけ、佐村は三本の指でちんちんの上のほうをくいくい引っ張るだけ。――それでも、ぼくはものすごく気持ちよかったし、佐村もそうみたいだった。
 大きな声が出そうになる。それをがまんしているから、自然に二人ともしゃべれなくなった。くちびるをぴったり押し付けて、ふっふっと鼻で息をしながら、ただ手の先だけを、一生けんめい動かした。
 佐村に入れるよりは気持ちよさが足りなかったけど、ぼくは神経を集中したから、最高になった。指先にくにゃくにゃからんでくるひだ、グミみたいにちょっぴりだけ硬いクリトリス、とろとろたくさんあふれてくる液……そういうのと、佐村のいつもの元気なかっこうを頭の中で重ね合わせて、いけないところにさわってるってことを集中して考えると、ちんちんがものすごく硬くなって、こしがどろどろにとけそうになってきた。
 そうしていたら、佐村が先にいってしまった。
「すなど……そのまま、そのままね……ひ、ひっ、ひんんっ……!」
 こつっとぼくのおでこにおでこをぶつけて、佐村が体を丸めた。すごかった、指先だけしか入れてないのに、きゅっきゅっとしめつけられて、いってるっていうのがよくわかった。そのとたんに佐村がちんちんをぎゅっと握り締めたから、なんだか本当に佐村の中に入れてもらってるみたいな気がした。それで、ぼくもいった。
「さ、さむらっ」
 びくーっ、びくーっ、とちんちんが暴れたみたいな感じで、すごい量の精子が出た。あっしまったティッシュ、と思ったけど、もちろん間に合わなかった。佐村の手のひらに押し付けて、ぼくは思いっきり出していた。
「はああ……」
 空気が抜けた風船みたいに、ぼくたちはぐったりともたれあった。そのままいつまでもくっついていたかった。
 けれども廊下にぺたぺたとスリッパの足音がして、はっと顔を上げた。児童はシューズをはいてるから、スリッパをはいてるのは先生だ。あわてて手を抜いたけど、服のすそを直して立ち上がるのが精一杯だった。
 がらがらっ、とドアが開いて、ジャージの青木先生がずかずか入ってきた。
「砂戸ー、まだかー?」
「は、はい。ありました」
 工作机の上に置いておいたノートを見せて、すぐにひっこめた。ぬれた指が見られてしまうから。
 佐村の手は見せられるわけがなかった。精子でべたべたなんだから。手を後に回して、できるだけ自然な顔をして立っている。でも、真っ赤になった顔に汗で前髪がはりついてたし、体操服も胸にぴったりはりついてたし、それに、三歩ぐらいはなれたぼくのところまで、佐村の甘いエッチなにおいと精子のやらしいにおいがしてたから、バレバレだ、という気がした。
 青木先生は、あれえ、と変な顔をした。
「佐村、なんでおまえがいるんだ」
「あ、佐村も消しゴム忘れたって言うから、一緒に探してたんです」
「そうか?」
 語尾が上がってて、あやしんでるなって思った。ぼくは佐村を隠すみたいに円を描いて動いて、佐村を出口に行かせた。佐村が出てから、準備室の鍵を差し出す。
「遅くなってすみません、これ、返します」
「んー、そうか」
 廊下に出た佐村が、だっと走り出した。失礼します、と頭を下げて、ぼくも走り出そうとした。
「砂戸ー」
「は、はい?」
「あのなあ……いかんぜ、それは。おまえたちはまだ小学生なんだから」
 バレた。
 そう思ったら頭の中がまっしろになったけど、むりやり足に命令した。走れ、走れ!
 ぴょこんと頭を下げて、ぼくはダッシュで逃げた。
 廊下を曲がったところの水のみ場で、佐村が水道を全開にして手を洗っていた。ぼくも並んで手を洗いながら言った。
「佐村、バレたっぽいよ」
「うそ……マジ?」
「うん。いかんぜって言われた」
「うそお……どうしよう」
 佐村は手を差し出したままかたまってしまった。ぼくは水道を止めてやって、やさしく言った。
「大丈夫だと思うよ。先生怒るときはどなるじゃん。どならなかったから……」
「そ、そうかな」
「でも――」
 その時、別のクラスの男子が三人ぐらい後ろを通ったから、ぼくたちはあわてて顔をそらして、他人のふりをした。そいつらがじろじろ佐村を――ブルマのお尻のあたりとか――見ながら通り過ぎると、また小さな声で話した。
「でも、もう学校ではできないよ。先生に見張られるだろうし、今みたいに、みんなもエッチな佐村には気づくと思うから……」
「あたしエッチじゃないよ!」
「うん、そうだけどね、今みたいな時は……その、見ただけでわかるから」
「……そんなのわかるの?」
「わかる」
 佐村は恥ずかしそうに自分の体を見回して、そんなあ、と言った。ぼくは真面目に心配になった。
「自分で気づいてよ。道で痴漢とかにおそわれるかもしれない」
「そ、そうなの……」
「だから、するときは……どっかよその、人のいないところにしよう」
「うん……」
 佐村はうなずいたけれど、困ったような顔をしていた。
「でもさ、人のいないとこって……どこならいいの。あんたもあたしも、家だめじゃん」
「だよねえ」
「このままじゃ、あたしたちできないよ」
 佐村がくちびるをへの字にしていった。泣きそうなその顔はほんとにかわいかったけど、そんなのんきなことを考えてる場合じゃなかった。
 そんなわけで、ぼくたちはエッチしたいのにできなくなった。したいっていうのはぼくもだけど、佐村もすごくそう思ってるみたいだった。教室でたまに視線が合うと、なんとかしてよっていう感じの、ねだるみたいな悲しそうな顔をするし、一度、たまたま教室で二人きりになったとき、佐村って声をかけただけで、ぎゅっと抱きついてきたから。もちろん、すぐにはなれたけど。
 初体験する前は、何ヵ月もさわらなくてもがまんできたのに、いったんしちゃってからは、見えない糸で結ばれてしまったみたいだった。ぼくも佐村も、毎日が、息ができないぐらい苦しいものになった。
 そんなときに、好奇心おうせいな石川島が、変なことを言い出したんだ。


 それは金曜日の帰り道で、例の学校下のだらだら坂をいっしょに歩いているときだった。ぼくは名前だけは聞いたことがあったから、言った。
「UFOビデオ屋って……UFO山の?」
「そうそう、千畳台の裏のな」
 石川島岳史はぼくと同じ千畳台団地に住んでて、幼稚園からの友達だ。近所でよく一緒に遊んでる。UFO山っていうのは、UFOのある小さな裏山。っていっても本物じゃなくて、団地に水を送るでっかい給水塔が立ってて、それがUFOに見えるからそう呼ばれてる。ぼくは三年生まであれを本物だと思ってた。
 でも、UFOビデオ屋っていうのは、うわさでしか聞いたことがなかった。
「あれだろ、山のどっかにエロビデオのたくさんあるビデオ屋があって、誰でも見ほうだいっていう。六月ごろから聞くけど……そんなのほんとにあるの?」
 そういうのは、友達の友達の友達の話、って感じでよく聞く。他にも、幽霊図書館とか、手のトンネルとか、死体の木とか、笑う信号とか。ぼくはあんまり信じてない。
 ところが石川島の話はそういうのとはちがうみたいだった。
「それがさ、おれの中二の兄ちゃんの友達が、ほんとに見つけたんだって。古い小屋の中にエロビデオとテレビとデッキがあって、誰もいないの。地図書いてもらった」
「マジで? なんでそんなのあるの?」
「知らねー。でもうそじゃないって。兄ちゃんの友達が、パチってきたビデオ見せてくれたもん。いや、それでさ……ここからさき、一生の秘密な」
「う、うん」
 石川島は軽い性格のやつだけど、口はかたいから信用できる。そういう大事な話モードの顔になって、石川島はひそひそ言った。
「おれさ、こないだから白院とつきあってる。知ってた?」
 女子と付き合ってるってはっきり言うやつは初めてだった。ぼくはびっくりしたけど、自分もそうだから大声出したりせずに、うなずいた。
「あ、告ったんだ……おめでと」
「サンキュ。でさ、その……したいわけ」
「え?」
「したいの。白院と。あいつもいいって言ってるから」
「したいって……セックス?」
「声でけーよ!」
 石川島は給食袋でぱこんとぼくの頭をたたいた。
 エッチな話のときには真っ赤になって逃げ出す、あのお人形みたいにかわいい白院麻衣美が、そんなことOKしたなんて信じられなかった。でもそれを言うなら佐村もそうだよな。
 石川島は赤くなって言った。
「でも、やりかたわかんねーから、ビデオ見たいの」
「兄ちゃんに聞いたら?」
「聞けねーよ! あいつ前にいっぺん麻衣美見て、紹介しろって言ったんだぜ。せ、セックスのことなんか聞いたらぜってーじゃまされる!」
「名前で呼んでるんだ……」
「わ、悪いかよっ」
 石川島はぷいとむこうを向いたけど、顔はおこってなかった。すぐにこっちを向いて、麻衣美と岳史だぜ、とでれでれ笑いで言った。
「だから、UFOビデオ屋に勉強しに行くの。おまえも来てよ、一人じゃなんかこえーし」
「なんでぼくが」
「おまえも佐村と付き合ってるだろ。来なきゃバラすぞ」
 う、とぼくは詰まった。そういえば、こいつにはバレてたんだった。
「うーん……まあ、それなら行くけどさ。ぼくとおまえが行くのって、なんか違くない?」
「なにが」
「だって、するのはおまえと白院なんだろ。白院が勉強しなきゃ意味ない」
「つっても、麻衣美だけつれて行くんじゃこえーよ。『店長』出てきたらどうすんの」
「あ、そうか……いや、待ってよ」
 ぼくはあることを思いついた。
「そんなら、四人で行こうよ。佐村もさそって」
「え、あいつも?」
「うん、佐村強いしさ、それに……佐村にそういうビデオ、見せてみたいし」
「……それ面白そうだな」
 ぼくたちは顔を見合わせて、にやにや笑った。
「四人なら、班行動ってことにすればいいな。誰かに見つかっても」
「そうだよ、ほらあれ、理科の自然観察。秋の生き物探しって言えば」
「いいねいいね。それでいこう」
 石川島はうんうんうなずいたけど、そのあとで真面目な顔になって言った。
「でも、夕方までには帰らなきゃな」
「……『店長』出るしね」
 それも、UFOビデオ屋の伝説だった。日ぐれすぎまでそこにいると、化け物みたいな『店長』が出てきて、ひどいことをされるんだって。
「それじゃ、さっそく明日でいいかな」
「うん、土曜日だね。佐村に話すよ」
「よーし、やるぞー!」
 石川島が運動会みたいに、空に向かってグーを上げた。こいつが白院と付き合ってるって言うのは、やっぱり信じられなかった。


 次の日、ぼくたちは授業が終わると、いったんうちに帰って昼ごはんを食べてから、UFO山のふもとに集まった。
 UFO山は全体が木でおおわれた小さな山で、登山道なんかいない。ぐるっとフェンスで囲んであって、てっぺんの給水塔へいく、けもの道みたいな細い道が一本だけある。地元のぼくと石川島が先についてそこで待ってると、しばらくして、二人の女の子が自転車をこいでやってきた。
「来た来た」
 佐村はMTBに乗ってて、いつもみたいに、赤いタンクトップとカットジーンズっていう動きやすいかっこう。夏に比べてまた少し伸びた髪を、頭の両横でおちょんぼにしてる。ぼくはちょっと腹が立った。佐村はどんどんかわいくなっていくのに、ちっとも自分でわかってないから。
 白院は正反対。自転車はフランス人が乗ってそうな銀と白のおしゃれなやつ。水色のひらひらのワンピースを着て、麦わら帽子をかぶってる。ほんとに、だらだらTシャツとカーゴパンツの石川島とは全然つりあわないお嬢さまスタイルだ。さすがに、靴はスニーカーだったけど。
 道の脇に自転車を止めると、二人はぼくたちからちょっとはなれて並んだ。佐村が言う。
「お待た。リスがいる山ってここ?」
「そうだよ」
「へえ、あたしリス見たことないんだ。会えるかなあ」
「多分ね。行こうか」
 ぼくは石川島といっしょに、フェンスの間の道に踏み込んだ。石川島がぼくに、不思議そうに言った。
「佐村、何言ってんの」
「自然観察だと思ってるんだよ。UFOビデオ屋のこと言ってないから」
「マジで? 着いたら逃げるんじゃねー?」
「どきょうあるから大丈夫だと思うけど……って、おまえは白院に言ったの?」
「言った。見たいって」
 ぼくは振り返った。二対二だから、自然に男二人と女二人って組み合わせになってる。元気よく歩く佐村に手を引かれて、白院はちょっぴりとろい歩き方でついてくる。あの子がビデオ屋を見たがってるなんて……人間ってわからないなあ。
 左右から木と草が張り出して、顔にぴしぴし当たるような山道を、ぼくたちは登っていった。草の匂いとコオロギの鳴き声。顔を汗が流れて何度もふく。秋は来てるけど、まだまだ夏もいすわってる。
「あ、ここだ」
 測量用のひょうしきみたいな鉄の棒のところで、石川島が地図をのぞきこんで、横におれた。そのまま、百歩ぐらい歩く。
 そこで、いきなり道が終わった。木の葉のたまった小さな空き地がぽっかり開いてて、くさった木と拾ってきたトタンでつくったみたいな、おんぼろの小屋があった。
 ぼくたちはぽかんと突っ立った。
「ほんとにあった……」
「あったね」
「なにこれ?」
 横に並んだ佐村が、まだ全然気がついてない感じで言った。ぼくはこわくないふりをしながら言った。
「UFOビデオ屋」
「UFO……って、やだ、マジ?」
「ちょうマジ。おい砂戸、まわり見よう」
 そう言って石川島はずんずん歩いてく。きっと、白院が見てるからカッコつけだ。
 佐村はなんだかあわてて叫びだした。
「ちょっと石川島、やめてよ! よそ行こうよ、リス見にきたんでしょ?」
「佐村、あのね……これがほんとの目的」
「ええっ?」
 びっくりしている佐村に、ぼくは顔をよせて言った。
「佐村、エロビデオ見たことないでしょ」
「え……あるわけないじゃん!」
「見てみたくない?」
「ないよそんなの! ねえやばいって、逃げようよ。『店長』出るって!」
「『店長』は夜だってば。大丈夫、みんないるし」
「みんなってねえ、男子はいいかもしれないけど、あたしたちはこんなとこ――」
 そのとき、白院が後から、ちょいちょいと佐村の手をひっぱった。振り向いた佐村に、恥ずかしそうな小声で言う。
「わたし……見たいな」
「っへ?」
「一美ちゃんは……えっちに慣れてるんだろうけど……わたし……お母さまもお父さまもきびしいから……見たこと……なくて……」
「……白院、えろー」
「じゃなくって砂戸、なんで麻衣美が知ってるの、あたしたちのこと!」
 佐村がぼくにずいっと近づいて、赤い顔で言った。
「しゃべったの?」
「ま、まさかあ」
「一美ちゃん、違うの……ほら、神社のとき……あの時から、一美ちゃんすごくきれいになったから……」
 佐村は白院を振り返って、信じられないって言うように見つめた。
「麻衣美まで、見ただけでわかるの」
「女の子の……カンかな?」
 そういうと、てへっと白院はべろを出した。あ、すっげかわいい。
 そのまま白院は佐村のうでにしがみついて、おねがいしはじめた。
「だから……ね。……いっしょに、見ましょ……?」
「ま、まいみー……」
 佐村、困ってる困ってる。笑えてきたけど、小屋の裏からすなどーって声が聞こえたから、ぼくはそっちに行った。
 石川島は垂れ下がった電気のコードを指差していた。コードにそって上を見たら、ずっと上の空を横切る電線に、先がちょいと引っ掛けてあった。石川島が言う。
「電気来てる」
「ほんとだ……」
「うん。それで、こっち」
 石川島はぼくをひっぱって、小屋の戸口を差した。戸口って言うか、トタン板を立てかけただけの入り口だ。すきまから中が見える。
「あの中、見たんだけどさ」
「見たの? こっわ」
「こわくねーって。横がでかい窓だから暗くない。中も誰もいないよ。入ってみようぜ」
「いいのかな?」
「いいわけねーだろ。でも、何も取らなきゃおこられないって」
「住居不法しんにゅうだと思う」
「こんなの住居じゃねーよ。ほら」
 カラ元気もここまでくればりっぱだと思う。石川島はトタン板をどけて、二歩ぐらい中に入った。
 そこで、うえーっ、と変な声を上げて立ち止まった。それきり何も言わない。気になることするなあ。
「どしたの」
 つられて、ぼくも入ってみた。
 くつを四つぐらいおくといっぱいになりそうな小さな土間があって、その先はまっきっきに焼けたふるい畳の床になってた。広さは四じょう半ぐらいで、その奥に21インチのテレビとビデオがあった。そして、窓のないほうの壁が本棚になってて――
「うわああ……」
 ぼくも、立ち止まってしまった。
 すぐに後ろから、どうしたの砂戸、と佐村の声がした。ぼくはあっとうされてて、ひとことしか言えなかった。
「ある」
「ある? なにが?」
「そういうビデオ」
「……マジ?」
 佐村が、それから白院が入ってきて、横に並んだ。そして二人とも、うわあ、と言った。
 石川島がロボットみたいな声で言った。
「……『女教師緊ばく十二時間』『ぬらしてください』『おしゃぶり姫』『女子こう生飼育』『のう厚めぐみルク』『ち漢電車はとまらない』『純情カップルの夜』『緊急盗さつ八十連発』」
 本棚のビデオの題名を読んだんだ。すごかった。そこには、ざっと見て二百本以上のエロビデオがあった。ぼくはとても口に出して言えずに、赤くなった。白院もまっしろなほっぺをきれいなピンクにして、すごぉい、と言った。
 佐村が一番あわててた。
「や、やだもう、なにこれ……早く行こうってば! 誰か来たらどうすんの!」
「来ないと思うよ」
「なんで?」
「そこのトタンの下の靴あと、草が生えてる」
 ぼくは佐村の後ろの地面を指差して、それから部屋の中も指差した。
「こっちもけっこうほこりがたまってる。大丈夫、ここは使われてないよ」
「じゃ、なんでこんなのがあるの?」
「それはわからないけど……」
 言い合ってると、石川島が背伸びして、天井のはだか電球のスイッチをひねった。ぽっと薄暗い明かりがついた。
 石川島は、八段とび箱にちょうせんするみたいな顔で、ふりむいた。
「電気来てるよ。見れるぜ」
 すると、今まで佐村の隣にいた白院が、すっと前に出て、石川島の隣に並んだ。石川島と同じような顔でこっくりうなずく。石川島は本棚に行って、多分ろくにえらばずに、てきとうなビデオを一本抜いた。
 それからたたみにひざをついてテープをデッキにいれて、となりにハンカチをしいた。白院が麦わら帽子を横において、ハンカチの上にちょこんと足をまげて女の子座りした。
 二人は、さっさとビデオを見始めてしまった。
 佐村が困りきったみたいな顔でぼくを見る。
「ねえ、これどういうことなの」
「石川島がね、白院とあれしたいんだけど、やり方わかんないから、ここで勉強しようって……」
「なんでこんなとこで」
「他にエロビ見られるとこなんかないじゃん。レンタルビデオ屋だって18歳以下禁止だし」
「でも……ほんとに麻衣美が?」
「現に見てるじゃん」
 ぼくは白院を指差した。いつのまにか二人は、肩が当たるぐらいよりそって座って、手をつないでる。なんだかうらやましかった。ぼくと佐村はあんなこととてもできない。 
 と思ったら、佐村も似たようなことを思ったみたいだった。ぽつりと、「いいな……」と言った。
 そっか、それだ。ビデオ見ようってさそうから、佐村はいやがってるんだ。ぼくはひそひそ声で言った。
「佐村、それじゃあさ、見なくていいからいっしょに座ってて」
「え?」
「二人でゆっくり座れることってないだろ」
「……うん」
 とうとう佐村も、小さくうなずいた。
 ぼくたちは石川島たちの少し後ろに並んで座った。

 画面に目をやると、いきなりセーラー服の髪の長いお姉さんがおっぱいをもまれていて、ちょっとドキドキした。ぼくは石川島に聞いた。
「これ、なんのビデオ」
「えーと確か、『そじん女子高生リエカ』」
「そじん? ……ああ、しろうとね。なんで」
「一番おとなしそうだったから。それとも、緊ばくとか盗さつとかのほうがよかった?」
「ああ、一応選んだんだ……ううん、盗さつはまずいんじゃないの」
「だろ」
 そういうと、石川島は画面に目を戻した。ぼくもこのときは知らなかった。――エロビデオは、素人なんとかのほうがずっとエロいってことを。
 知らなかったけど、見ているうちにだんだんわかってきた。
 立ったままのお姉さんの体を、黒いパンツいっちょうの男の人の手がなでまわす。お姉さんはおっぱいもお尻も佐村や白院よりずっと大きくて、セーラー服を持ち上げるみたいにふっくらしてる。そのおっぱいとかお尻を、男の人の手が服の上からぎゅむぎゅむつかむ。お姉さんは目を閉じて、はあはあ言い始めてる。
 そのうちに男の人が、やけに甘ったるい猫なで声で、どう、気持ちいい、と聞いた。うん……とお姉さんがいうと、スカートをまくりあげて、パンツのあそこをじかにいじり始めた。んん、んんっ、ってお姉さんがほっぺたを赤くして首を振る。
 エロビデオって、男と女が裸でだきあってるぐらいに思ってた。映画のラブシーンだけ抜き出したみたいなやつ。
 でも、これって違う。ものすごくいやらしい。映画みたいなきれいな感じがしない。なんていうか、ほら……ムードが全然ないんだ。
 これって、エロさだけを感じさせるものなんだ。
 ぼくは思ってたよりずっと恥ずかしくなって、笑ってごまかしたくなった。石川島の肩をたたいて言おうとした。
「ねえ、なんで立ったままなのかな。さっさと寝たほうがずっとやりやすい――」
「うっせ」
 石川島がパシッとぼくの手をはたいた。はっと気づくと、石川島は画面なんか見てなかった。白院の手を強くにぎって、白院の顔を見てる。
 白院は、あいてる手を胸の前できゅっとにぎって、まっすぐに画面を見てた。くちびるを閉じていたけど、ふーっ、ふーっと息の音が聞こえた。ほっぺが赤くて、黒目がきらきら光ってた。ひとりごとみたいに言う。
「あれ……気持ちいいのかな……」
「いいんじゃねーの」
「あんなに……さわられて……それなのにじっとして……いやじゃ……ないのかな」
「ないんじゃねーの」
「いやじゃ……ないんだ……」
 白院がこぶしを下げた。そして、スカートのおなかの下、足の間にぐっと押し込んだ。
 石川島が、ごくっとつばを飲んだ。肩ごしにちらっと石川島のあぐらの間が見えて、ぼくはさっと目をそらした。石川島のカーゴパンツが、三角にもりあがってた。
 二人がにぎってる手が、ますますきゅっと強くなった。
 なんだかじゃまものみたいな気分になって、ぼくはそうっと後ろに下がった。そうだ、佐村は――
 横を見ると、佐村はぼくを見てた。あのかっこいいまゆを軽くあげて、ぼくをにらむ。
「なに麻衣美見てるの」
「え……」
「ビデオ見たら?」
「で、でも」
「……じゃなかったら、あたし見てよ」
 ぼくは思わず、目をみはった。佐村がうっすら顔を赤くして、片手をこっちに出した。ぼくもそれをにぎって、それだけじゃなくて、もっと佐村に近づいて座った。
 佐村がぼくだけに聞こえるような声で言った。
「麻衣美たち、こっち見てないから」
「……佐村?」
「見られたら、はずかしいでしょ」
 そう言って、肩をぴたっと押し付けてきた。ええと、それじゃやっぱり、佐村もビデオみてエロい気分に……
 そうじゃないな。佐村はずっと、ぼくだけを見てる。
 ビデオを見てエロい気分になった白院を、見てエロい気分になったぼくを、見てエロい気分になってる。
 佐村はビデオなんかどうでもいいんだ。ぼくとくっつけることがうれしいんだ。
 それがわかったとたん、ぼくもうれしくなって、ぴったり佐村にくっついた。佐村はニッと目を細めて笑った。背中がぶるってふるえて、ちんちんがびんかんになってきた。
 やっぱりぼく、佐村がいちばんほしい。
 ぼくたちは頭をすりすりくっつけながら、こっちを見ていない前の二人を見た。
 二人も、だいぶん気持ちが盛り上がってきたみたいだった。画面では、男の人がお姉さんのスカートの中に頭を突っ込んで、パンツの上からべろでれろれろくすぐってる。白院はそれをじいっと見つめながら、確かめるみたいに言う。
「あの人……下着なんかなめて……へいきなんだ……」
「おれもたぶん平気だよ」
「女の人も……ぜんぜんいやがらないで……」
「されたいんじゃねーの」
「わ……わたしも……気持ち……いいのかな……」
「試そうぜ」
 石川島は目をぎらぎらさせて、白院に身を乗り出してる。白院はそっちを見ずに画面だけを見てたけど、そのうち、石川島の手をそっとひっぱって、かさぶたひとつないきれいなひざから、長いスカートの中に入れた。誰も見てないよ、見られてることなんか知らないよ、っていうみたいに、前を向いたまま、小さな声で言った。
「……試して……」
 待ってました、って感じで石川島が手を奥につっこんだ。ひゃふ、と白院が肩をふるわせた。
「……岳史くん、そうっと……」
「ん、うん」
「……うん……ああ、ほんとう……きもち、いい……」
 白院が感動したみたいに言って、長いつやつやの髪ごと、ぱさっと頭を石川島の肩に乗せた。もう二人の前は見えない。でも、細かく動く肩ですごくよくわかる。白院のパンツを、石川島がいじってる。
「麻衣美、すご……」
 佐村もそれを見てた。ぼくの肩の上で、はあはあ深い息をしてる。こっちを向いたから目があった。大きな目が、して、って言ってた。
 ぼくはどきどきしながら、佐村のぷくっとしたくちびるにキスした。こんなとこでエロビデオを見てること、白院が白院じゃないみたいにエロくなってること、それを石川島がさわりはじめたこと、そのそばで自分たちもエロいことをし始めたこと、全部が信じられないぐらい変なことで、夢の中みたいだった。
 石川島は、ぼくが聞いてもはずかしくなるようなことを言う。
「麻衣美、あったかいよ、ぷにぷにだよ。麻衣美のこんなとこさわれるなんて、おれ、おれ……もう死んでもいいよ」
「気持ち……いいの? ……さわりたいの?」
「うん、すげーさわりたかった」
「男の人も……さわるの楽しいんだ……うれしい……」
「麻衣美、さわって。おれもさわって」
「うん……あ、あんな感じかな……」
 画面では、男の人の黒いパンツのもっこりした大きなところを、お姉さんがしゃがんで横からはむはむしていた。白院の肩が動いて、石川島が「ほぅっ!」とすごく変な声を出した。白院がさわったんだ。二人でさわりっこしてる。
 ぼくはぴくっとふるえた。佐村が目を細めて見下ろしながら、ぼくのちんちんを半ズボンの上からさすっていた。してほしいんでしょ、と小声で言う。ぼくもうんうんうなずいて、自分の手を佐村の少し開いた足の間に持ってった。
 カットジーンズがすごく短くて、座ってるとすきまからパンツが見えた。その白いところにぼくはそうっと指を入れて、こしゅこしゅいじり始めた。
「んふ……砂戸ぉ……」
 佐村が、アニメの女の子みたいに高い、やらしいモードの声で言って、ちんちんをこすって、あそこをじわじわ湿らせる。こういうさわりっこって、すごく楽しい。ぼくのがどんどん硬くなって女の子に入りたがるのと、佐村のがどんどんぬれて男の子をほしがるのが、同じこと考えてるんだって気持ちになるから。
 その時、石川島がいちだんとすっとんきょうな声をあげた。
「麻衣美、麻衣美っ、はぉ、ほぉふっ!」
 そういって座ったままカクカクってはねた。あ、とぼくは思った。まさか……
 少したって、石川島がなさけないふるえ声で言った。
「麻衣美……出ちゃった……」
「え……出た、って……せ、精液……?」
「あふん」
 これがふつうの場合だったら、おなかをかかえて笑ったと思うけど、今はひとごとじゃなかった。好きな女の子にちんちんをさわられるのって、ほんとにめちゃくちゃ気持ちいい。石川島がいきなりいっちゃったのもよくわかる。石川島が落ちこんだり、白院がけいべつしたりしなければいいんだけど。
 でもこの二人は、ほんとに仲がいいみたいだった。
「岳史くん……ごめんね……下着、ぬれちゃった?」
「うん……」
「ふいてもいい?」
「あ、うんうん。ふいてふいて」
 白院が背中からポシェットを前に回して、ごそごそやりはじめた。なんだかしらないけど二人がいっしょに、うわあーって言ったから、どうしたのかと思った。
「ま、麻衣美が見てるー……」
「す、すごい……ほんとの精液……でるんだ……」
 別々のことに感動してる。初めての二人っておもしろい。
 佐村もおもしろそうに言った。
「精子、大変なんだよね。手にくっついちゃうから……」
「う、うん。佐村もティッシュお願い。そろそろ……」
「あたしはもっと上手にしてあげる」
「え?」
 任せてって感じで笑うと、佐村はぼくのおなかの前に顔を下げて、ジーッとチャックを開いた。もぞもぞやってパンツからちんちんをひっぱりだす。それから、盆おどりの時のお返し、って言った。
「あっ、佐村ぁ!」
 はぷ、って佐村がちんちん飲んじゃった。
 前の二人が、さすがにびっくりしたみたいにふりむいた。でもぼくはそんなの気にしてられなかった。佐村の可愛い口が、ぼくのちんちんなんかを――
 そんなのだめだ、いやだっていう気持ちと、わけのわからない乱暴な気持ちが頭の中でぶつかりあって、乱暴なほうが勝った。苦労してつくったプラモデルをたたきつけてこわすみたいな、すかっとした気持ちよさといっしょに、ぼくは思い切り精子を発射した。
「さむっ、らあっ! ああっ! あーっ!」
 かちかちに立ったちんちんが、ぶるるっ、ぶるるっと佐村の口の中でふるえて、すごい勢いで精子を出した。うす目を開けたままだったから、佐村の顔がぼんやり見えた。ほっぺたの片方がぷっくりふくらんでて、そこに中からちんちんが当たってた。精子が出るたびに、そこがぷくっ、ぷくっと動いた。
 佐村は片目を閉じて、片目でぼくに向けてやさしく笑ってた。しゃべってなかったけど、たくさん出してね、っていう声が聞こえるような気がした。その通りにぼくは出しまくった。
「ああっ、あー……」
 すごく気持ちのいいばくはつの時間がすぎて、ぼくはへなへなと倒れそうになった。佐村はちゅぽっと口をはなすと、こっちに釘付けになっていた白院に片手を差し出した。白院があわててティッシュを渡すと、そこにもごもご精子を出した。
 捨てるかと思ったら、白院にそれを見せ付けたから、ぼくははずかしくて死にそうになった。
「ほら、砂戸の精子」
「うわあ、いっぱい……待ってね、はい」
 白院ってば、お返ししなくてもいいのに……自分もティッシュを出して、石川島の精子を見せる。
「岳史くんも……いっぱい出たのよ」
「砂戸のほうがすごいよう、こいつエロエロだもん」
 ぼくと石川島は、顔を見合わせてうつむく。女の子ってなに考えてるんだろ。ぼくも石川島も、友達の前でちんちん出してることがはずかしくて、あまりおたがいを見ていられなかった。
 ぼくは佐村をちらっと見て言った。
「やめろよ、そんなの」
「えーっ、なんで?」
「なんでって……」
 ちょっと考えて、ぼくは言った。
「佐村がおしっこふいたトイレットペーパー、ぼくが石川島に見せたら、どんな気がする?」
 佐村と白院はぼくと石川島をみくらべた。それから、一気にまっかになった。白院が今さら気がついたみたいに、わたしたちすごいことしてるのね、って言った。
 ぼくはもうちょっと二人をからかいたくなった。
「二人とも、パンツぬげよ」
「な、なんでよ!」
「ぼくたちといっしょにしてやるよ。佐村も白院もパンツぬいで、あそこ見せろよ。ぼくたちも見せてるんだから」
 そう言ったとたん、まさか石川島がどなるとは思わなかった。
「だ、だめだそんなの! 麻衣美のは誰にも見せねーぞ!」
「石川島……」
 石川島は、見たこともないぐらいしんけんな顔でぼくをにらむと、白院の肩を持って、くるっとまた前を向かせた。二人でひそひそ話す。
「だめだかんな、麻衣美はおれのだ」
「……うん……」
「おれなら、見てもいいよな」
「……うんっ……」
 そういうと二人でぼくのほうを見て、あっち向け、と言った。白院はすごくうれしそうな顔をしてた。
 ぼくはくやしかったから言い返した。
「いいよ別に。佐村のもぜったい見せないから。佐村はぼくだけのだ。……あいたっ」
 佐村が横から、べしって頭をたたいたんだ。耳をひっぱられる。
「なんであたしがあんたのなの」
「いた、いたいって、佐村」
「あたしが見せるかどうかは、あたしが決めるの!」
「わかったってば。ごめん」
 ぼくはあやまりながら佐村を見たけど、佐村はおこってるくせにおこってなかった。にーっ、と笑ってぼくのほっぺたにキスした。
「あたしが決めたのは……砂戸にしか見せないってこと」
「佐村……」
「ほら……いいよ、見ても」
 佐村はぐるっと体を回して、ちょっと背中かしてね、と白院に言った。二人で背中にもたれあう。ぼくは佐村の前に回って、開いた足の間に四つんばいになった。
 カットジーンズの左右のすきまからパンツが見える。指でジーンズの布を横にどけると、パンツの下が灰色っぽいしみになってた。もっと見たくて、ぬいで、って言った。
「……それ、やっぱりいや」
「なんで?」
「スカートはいてくればよかったなあ。ぬいだらお尻も見えちゃう。……しょうがない、指でどけて。ちょっときついけど……」
 言われたとおりに、ぼくはパンツのまたのところを寄せて、中を見た。くちゅくちゅになったピンクのひだが見えた。どきっとした。女の子って、他のところはすべすべでつやつやなのに、ここだけはすごくふくざつな形をしてる。隠さなきゃいけないところなんだ。それに、明るいところで見るのも初めてだ。
 そのとき、石川島の小声が聞こえた。
「麻衣美……すげーよ……」
「んく……ど、どうして……?」
「なんていうか……めちゃめちゃきれい。きれいの百倍きれい。言い方わかんねーよ。心臓ばくはつしそう……」
 佐村の横からそっちを見たら、石川島も、ひざを立てた白院のスカートに頭をつっこんでた。ぼくは思わず言った。
「佐村のがきれいだよ。ぷにぷにで、おつゆでとろとろになっててさあ」
「す、砂戸っ」
 佐村がくちびるをかんでにらんだけど、ぼくはかまわずに、指でくちゅくちゅいじりながら言いつづけた。
「足、日焼けしててさ、その上のおなかはパンツで日焼けしてなくて白くてさ、真ん中だけ縦長にぽわーっとピンクで、ちょっとだけ赤いのがぴらって……」
「言うな、言うなー!」
「麻衣美のほうがきれいだぞ」
 石川島が負けずに言い返す。
「足もおなかもアイスみたいにまっしろで、全然でぶじゃなくて細くって、おへそも小さくて、そのずっと下にちょっとだけピンクのへこんだとこがある。ピンクっていうか、マックのイチゴシェークっていうか、桃の色っていうか……とにかくきれいで、おしっことか全然ついてないぞ」
「た……岳史……く……」
 白院の黒い髪の中の耳が、すごく赤くなってる。ぼくは楽しくなってきた。石川島もみたいだった。二人でどんどん、女の子のあそこを声に出して言い合う。
「へーんだ、佐村はもうおつゆが出てるんだぞ。愛えきだぞ。まわりまでとろとろになって、まだちょっとずつ出て来るんだ。ぼくがさわるのが気持ちいいんだ」
「やっ、やだって、そんなに言うなら、もうさわらせて……んはっ……」
「ま、麻衣美だって……あ、出てる、ほんとに出てる。透明なのがちょっとだけ出てきらきらしてる。ほらみろ、麻衣美のほうが気持ちいいんだ」
「で……出ちゃうの……それ、止まらないの……」
「初めてのくせにえらそうに言うなよ。ぼくのがうまいよ、ね、佐村。ここ……ぷにぷにの中、赤くなってるよ。クリトリスも出てる。これ、いいよね?」
「ばっ、ばかぁ、ちかん、へんたいぃ……」
「麻衣美のは……ある、あるって。すごい小さいけど……これそうだよな。もうちょっとお尻上げて……あっ、ちつもある。見える。赤くってひくひくしてるっ」
「……いやあぁ、ごめ、ごめんなさい……見せて、ごめんなさいぃ……」
 すごい発見したみたいな気分だった。ぼくも石川島も、おたがいに好きな子のあそこを人に見せるのはいやだけど、じまんはしたいんだ。それで、そうやって口に出して言うと、女の子たちもすごくこうふんするみたいなんだ。ぼくも石川島も、ちんちんをピンピンにして犬みたいにはあはあ言ってるし、佐村も白院も、泣いてるみたいにいやいやしながら、それでも足を閉じないんだ。
 もう、四人とも、セックスしたくてたまらなくなってた。ぼくは佐村のむちっとした太ももをかぷかぷ噛みながら、顔を上げて頼んだ。
「佐村、させて。したいよ、しようよ」
「うん、うん。あたしも……砂戸の、石川島なんかよりいいもん」
「岳史くんのだって!」
 白院がきっとふりむいて言ったけど、なんとなく自信がなさそうだった。そりゃそうだ、白院たちはしたことないんだから。
 ぼくと佐村は、やったねって感じで笑いあってから、ぼくがずるずる佐村のタンクトップをよじのぼって、向かい合ってキスした。キスしながら畳に押したおして、足をじょうずにからめて、ちんちんとあそこをぐりぐりこすりつけ始めた。もう、どうやってすればいいかわかってる。
 石川島と白院はしばらくじっと見つめあっていたけど、そのとき、テレビの画面から、「あああんっ」て大きな声が聞こえた。そっちを見ると、セーラー服のお姉さんが、あぐらをかいた男の人の上にまたがって、ぐーっとお尻をおろしていた。スカートの下から見えるはずのちんちんとあそこには、なんでか変なちらちらする四角い模様がかぶさってて見えなかったけど、セックスを始めたってことはよくわかった。
 それを見ていた白院と石川島も、ワンピースとカーゴパンツだからちょうどいいって思ったみたいだった。石川島があぐらをかいて、その上に、白院がお上品にスカートのすそをつまんで、そーっとまたがった。
「……こう、かな……?」 
「う、うん」
「んと……あ、当たった。岳史くんの、あつい……」
「麻衣美のも、ぷにってなって……ううぅ……い、入れてーよぉ……」
「い、今するから……ここかな? す、するね……」
「ん、んんぅあああ……」
「や、やああぁぁん……」
 向かい合った二人が、きれいにそろった声を上げた。それを見ていたぼくと佐村もがまんできなくなって、ジーンズの布をぎゅっと横に押しのけて、あそことちんちんを押し付けた。目を合わせて、口には出さずに、しようって言い合う。
「佐村」「砂戸……」
 ぎゅうううっ、てぼくは佐村に入っていった。
 佐村はちゅぷちゅぷにぬれていたけど、やっぱりきつかった。たれで煮こんだ熱いこんにゃくみたいなもので、ぎゅうっとしぼられてる感じだった。抜いたり出したりすると、ちんちんからごりっごりっと音がするみたいだった。それにジーンズの布が横から食い込んでよけいせまかった。
 それでも佐村は、じょうずに力を抜いて、痛くないようにしようとがんばってるみたいだった。大きく開けた口から、ふぁぁって息を出して、まゆをきゅっとつりあげていた。
「砂戸の……やっぱりすごい……」
「痛い?」
「ううん、大丈夫。……でも、口の中にグーの手つっこまれてるみたい……むりやりあけて、ぐりぐり入ってくる……」
「ぼくは、ぼくはね、それすごい気持ちいいんだ……」
「そうだよね、砂戸の元気だもんね。よくわかるよぉ、きもちぃきもちぃって言ってるよぉ……」
 はぁん……って、佐村はすごく色っぽい顔で、片手で髪の毛をくしゃくしゃにする。
 すっかりやらしいモードになってしまった佐村にみとれながら、ちらっと横を見ると、石川島たちはあまり動いてなかった。こっちから見ると、石川島を白院の水色のワンピースの背中がちょうど隠していて、見えるのは石川島のあぐらのつま先だけだった。お尻がぴったり石川島のこしのところに押し付けられてるから、入ってるっていうのはわかる。でも、ぶるぶるふるえるだけでほとんど動かないで、しっかりだきあってた。
「麻衣美……だいじょぶか?」
「……待って……もうすこしだけ、待って……」
「痛かったらやめるからな」
「それは……だめ……やっと岳史くんにあげられたんだもの。……うれしいから……もっと包んでいさせて……」
「おれもうれしいよぉ……麻衣美と、麻衣美とセックスぅ……」
「うれしい……よねぇ……」
 胸がぽかぽかあったかかった。ぼくは佐村の耳たぶをぺろぺろなめながら言った。
「ほら、石川島たちうれしそうだよ。ぼくたちも初めてのとき……」
「……んはぁ、思い出すね。初めてって、うれしかったよねえ……」
 神社の夜を、はっきり思い出してた。あのときみたいに幸せな二人を見ながら、あの時といっしょの佐村とセックスしてるなんて、最高だと思った。
 あん、あん、あん、とビデオの声が大きく聞こえる。画面の中では、横にされておっぱいをむきだしにされたお姉さんが、ぐいぐいちんちんを入れられていたけど、ベッドにだらんと両手を広げていて、なんとなく投げやりに見えた。男の人の顔はうつってない。ぱんぱん音を立てるこしのところだけがうつってる。
 男の人が、筋肉むきむきのこしをぐるーっ、ぐるーっと回す。んああん、とお姉さんがさけんで、おなじようにこしをふる。ぐりぐり筋肉が動いて、大きなおっぱいがたぷたぷゆれる。すごく声を出してるけど、二人とも名前を呼ばない。
 砂戸、砂戸、って佐村が何回も言って、ぼくの頭を抱きしめて、ちゅむちゅむキスする。ぼくはビデオの人みたいにうまく動けない。でも佐村が大好きで、佐村とぴったりくっついてひとつになりたいと思うから、佐村、佐村ってやっぱり何回も言って、ぎゅうって体をだきしめて、ちつの奥をていねいにちんちんでつつく。
 白院は痛くてとても上下に動けないみたいだったけど、なんとかがんばって、くっ、くっ、とお尻を回してる。そのたびに石川島がはおぉぉ、って声を出して、白院のむねに顔を押し付けて、麻衣美、麻衣美、って呼ぶ。岳史くぅん、って白院もお母さんみたいにやさしく呼ぶ。
 ぼくも石川島も子供だから、ビデオの人みたいにたくましくないし、上手にセックスもできない。佐村も白院も子供だから、おっぱいもお尻もたぷたぷしてないし、いやらしくこしをふったりもできない。
 でも、絶対ぼくたちのほうが気持ちいいって思った。
 はぁはぁ言ってた佐村が、最後にこれだけはって感じで、手を伸ばして白院の腰を軽くたたいた。
「麻衣美っ、あんたせっ、せいりはっ?」
「ない……ないの、まだぁ……わたし、まだ岳史くんの赤ちゃん……」
「いいの、それでいいのっ。石川島、安心してっ」
「た、たすかっ、おれ、もう……」
 それから佐村はぼくのほうを向いて、いっぱいに開いたうででぼくを強くだきしめて、安心したみたいに言った。
「あたし昨日終わったから……ね、砂戸ぉ?」
「うん、佐村っ」
 もう玉の根元がきゅんきゅんにつってた。ぎりぎりまで出かかった精子のせいで、ちんちんがびくびくしてた。佐村もよくわかってるみたいで、そのびくびくのたびに、いつ出してもいいよっていう感じで、ぎゅ、ぎゅってぼくをだきしめた。
 ぼくはタンクトップの中の佐村のおっぱいを、ぺたんこにつぶすぐらいだきしめて、最後に三回ぐらい、ずるっずるっずるって大きくこしをぶつけた。三回目の一番おくで、ぶるるっと精子がちんちんを走りぬけた。
「いくよぉ!」
「いいよっ!」
 お尻と足をまっすぐにつっぱらせて、佐村の開ききった太ももの間、ぐちゃぐちゃのジーンズとパンツのすきまの、ぴっちりしめ付けるあそこに、ぼくはぐいぃっ、とこしを押し込んだ。びゅーっ、びゅーっ、とシャンプーのびんをふみつぶしたみたいな勢いで、ちんちんから精子が飛び出してた。あはっ、あはっ、と佐村が笑い声だかひめいだかわからないような声を上げて、びくん、びくん、と腹筋を動かした。
「中に……かかってるうぅ……」
「かけてる……よぉ……」
 びゅうっていう感じのたびに、ぱあっと頭の中が白くなった。それが何回もはじけて消えると、ぼくはあったかい佐村の上にぱたりと横になった。
 横を見ると、石川島が首をぶんぶんふって声を出した。
「麻衣美っ、あっ、ああーああ!」
「岳史くんっ」
 石川島は白院に力ずくでだきついて、がくっがくっとこしを動かしてた。白院は動かなかったけど、石川島の首に回したうでの指が左右に出ていて、細い指先がぐいっ、ぐいっと石川島の肩にくいこんだ。石川島が動くタイミングと、白院の指の動きがぴったりいっしょだった。見えてないのに、白院の中の石川島のしゃせいが見えるみたいだった。
 それから二人はそのままのしせいで、すーっと力を抜いた。
「はああ……」
 四人で同時にためいきをついた。それからくすくす笑って、好きな人とほおずりしたりおでこをつついたりした。
 その頃ようやく、ビデオのお姉さんが、「いくいくいくーう!」とすごい声を上げた。ぼくたちがそっちに目をやった。――お姉さんの声のせいで、足音が聞こえなかったんだ。
 とつぜん、ぼくはぐいっとおなかを持ち上げられて、横にごろんと放り出された。佐村がなんでそんな乱暴なこと、って思って顔を上げたら、ひゅっと息がつまった。
 そこに、ねずみ色の汚い服を着た、ひげもじゃのおじさんが立っていた。そのおじさんがくつ先でぼくをけとばしたんだ。おじさんが近づくと、ぷん、とくさいあかの匂いがした。
「て……『店長』だ!」 
 ぼくのひめいで、ぽやんとしてた佐村と、ビデオを見てた白院と石川島が、いっせいにふりむいた。でも、何かする時間はぜんぜんなかった。
『店長』がかがみこんで、佐村をだきかかえた。そしてぐーっとうでを伸ばして、白院も反対側にかかえこんだ。二人ともなにがおこったのかわからなくて、ひっ、て言っただけで固まってた。
『店長』は二人をかかえたまま、くるっと回れ右して、のそのそ外に出て行った。ぼくと石川島は、ちんちんを出したままで、ぽかんとしていた。ぼくは『店長』が回ったときに、ズボンのところを見ていた。そこは、三角に大きくもり上がってた!
 はっとぼくたちはわれに返って、あわててちんちんをしまって、立ち上がった。石川島と目を合わせて、うなずいた。
「佐村が!」
「うん、麻衣美が!」
 転びそうになりながら急いで外に出ると、意外だったけど、『店長』はすぐ近くの木の根元にしゃがみこんでた。そして、ひざの上に乗せた二人の女の子を、手でごそごそいじってた。二人ともこわさのあまり、身動きもできないみたいだった。
 ううん? 佐村は――
『店長』が右手で白院のおっぱいをワンピースごとくしゃくしゃもんで、左手で佐村のあそこをジーンズの上からくにくにいじる。そのせいで、二人がキレた。
 佐村と、石川島。
「な……何すんだよくそじじいっ!」
「麻衣美をはなせーっ!」
『店長』は頭がわるかった。ていうか、運がわるかったのかな。佐村は知らない人にさわられてだまってるような子じゃないし、石川島は白院のためなら死んでもいいってやつなんだ。
 佐村のエルボーが『店長』のまたのところに落っこちて、石川島のフライングドロップキックがひげもじゃの顔のど真ん中にぶつかった。……技の名前あってるかな、ぼくは石川島ほどかくとう技にくわしくない。
 でもとにかく、それはぜつだいなききめがあって、『店長』はうーんとうめいてひっくり返ってしまった。


「リストラされたんだよ。すまんね、むしゃくしゃしてて」
 目を覚ました『店長』は、そういってくっさい頭をかいた。ううん、『店長』じゃなくて、原田さんっていうおじさんだ。殺しちゃったかもと思って心配しながら囲んでたら、すぐに目を覚まして、あやまったんだ。
「春の異動でポストがなくなってね。日雇いになって流れ流れて、五月ごろこの町に来た。この山は給水塔の配管から真水がとれるし、前の仕事で高圧線から電気をかすめとる方法も知っていたし、はやりの親父狩りのやつらもこないような田舎だから……小屋を作ったんだ」
「じゃ、ここはおじさんの」
「うん、ねぐらだ。もっとも、街から遠いから、平日は駅前のホームレス援助施設に泊まってる。休日はひとりになりたいからここへ来るんだ」
 そういえばUFOビデオ屋のうわさがたったのは六月ごろで、今日は週末の土曜日だった。一週間に一度しか人が来ないから、ここはうわさになって、でも草が生えてほこりがつもってたんだ。
 ぼくたちは、その辺で拾った木の枝をゆだんなくかまえて、もっと聞いた。
「あのビデオは?」
 原田さんは、ますます頭をがりがりかいて言った。
「男一人だとね……中古屋で買ったのや拾ってきたものが、いつのまにかあんなに。デッキとテレビも粗大ゴミだ」
「エロおっさんめ!」「そうだ、エロざる!」
 ぼくたちはこわさを打ち消そうと、大声を上げた。エロざるかあ、と原田さんはにがわらいした。
「そう言われても仕方ないかな。小屋の外まで来たら、君たちがあんまりかわいらしく愛し合ってるのが見えたから、つい理性が飛んで……」
「ついじゃねーよ、麻衣美はおれのなんだぞ、あやまれ! おれと麻衣美にあやまれ!」
「そうだ、佐村だってぼくのだ!」
「うん、すまん。ほんとに悪かった」
 原田さんは、時代げきのさむらいみたいに、両手をついてあやまった。大人にそんなことさせたの初めてだったから、ぼくたちは勝ったって気がした。
 ぼくたちが木の枝を下げると、動いていいかな、と原田さんは言って、小屋に入っていった。なんだろうと思っていたら、ボストンバッグを一つ持って出てきた。そして、びっくりするようなことを言った。
「ここは君たちに明け渡そう」
「え?」
「今のできごとで目が覚めたよ。気づかないうちに、獣になりかけてた。このままだと俺は腐ってしまう。くにに帰って、まともな仕事を探すよ」
「はあ……」
「それに」
 原田さんはぼくたちを順番に指差して、にやっと笑った。
「秘密基地のほしい年頃だろう?」
 そういうと、あいさつもせずに行ってしまった。
 ぼくたちは、またぽかんとして立っていたけど、そのうちに白院がすすっと動いて、佐村の手をちょいちょいひっぱった。なんか二人でひそひそ話してから、小屋の中に入ってく。
「佐村、どうすんの」
「ちょっと待ってて」
「待っててって……」
「いいから待ってろ!」
 すごい顔でにらんで、小屋に入ってしまう。おこるなんて思わなかったから、ぼくはびっくりして突っ立った。
 小屋の横の窓をのぞいた石川島が、わは、と声を上げた。ぼくものぞいてみた。
 佐村と白院はむこう向きにすわって、うつむいてごそごそやってた。振り向いた佐村がぼくたちに気づいて、ぶん! とビデオテープの箱をぶんなげた。
 ぼくと石川島は、窓の下にすわってかべにもたれた。
「不思議だね」
「なにが」
「さっきはあんなに見せてくれたのに、今はだめなんだね」
「それが女じゃねーの?」
「あ、でも、ぼくだったらやっぱり見せたくないかな……」
「すっげえ出たしな」
 石川島が言ったひとことで、ぼくは笑い出した。笑いながら、精子魔人だ、って石川島をどついた。石川島も笑いながら、ごうかん魔、ってぼくをどついた。
 そのうちに女の子二人が出てきて、すました顔で、帰ろっか、と言った。ぼくたちはまだくすくす笑いながら、好きな子のそばにいって、並んだ。
 石川島と白院は、もうぼくと佐村なんかがん中にないって感じで、幸せそうにみつめあいながら、歩いていった。佐村も歩き出したけど、少し行ってふりむいた。
「どうしたの、砂戸」
 ぼくは、戸口のトタン板をしらべていた。
「鍵、買ってこようかなと思って」
「なんで? あたしもういやだよ、こんなとこ」
「そう?」
 ぼくは佐村のそばにいって、顔をのぞきこんだ。
「ここなら、誰にも気がねなく、できるよ」
「う……」
 佐村はつまった。ぼくは佐村の手をそっとにぎって、やさしく言った。
「また来ようね」
 佐村が、ほんのり赤い顔で、こっくりうなずいた。やっぱり佐村はかわいい。
 それからぼくたちも、仲良く手をつないで、帰り道についた。


―― おしまい ――



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