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ひまわりの下の二人


 海には水着ロリータ山には麦わらロリータデパートには家族ロリータ駅には旅行ロリータ、どこへ行っても薄着ロリータであふれかえってやがるくせになんで俺のそばには一人もいねえんだド畜生。
 先坂高雄は岩にあぐらをかいて渓流に糸を垂らしながら、汗だくの仏頂面でぼやいていた。
 N県霞川流域、河口から八十キロの鳶背村。むしろ水源地から五キロと言ったほうがわかりやすいか。要するに田舎のそのまた山奥だ。大学生で自宅住まいの高雄は親の法事で連れてこられた。断ろうにも高雄の親は先祖の供養にやたらと熱心だった。
 法事そのものは一日で終わった。しかし爺ちゃん婆ちゃんが引き止めた。恐ろしいことに親は一週間の休暇を取っていた。そして高雄は足がない。電車などという便利なものはこの村にはないのだ。
 そういうわけで高雄はこれから六日間、コンビニがないどころか携帯電話すらつながらないこの山奥で暮らさなければならないのだった。
 暇つぶしは、ない。というより爺ちゃんの家にいるとコキ使われる。農家というところはその気になればいくらでも人手の使い道があるのだ。だから高雄はうまくもないのに、村の下を流れる川へ釣りに来ているのだった。
 しかしまあ、それはそれで幸運とも言えた。何しろこの季節、町にいると目の毒になる可愛い女の子がやたらとうろついていて、手出しできないもどかしさに喚きだしたくなるのだから。
「まーあれだな、禅寺にでも体験入信したと思えばいいか……」
 つぶやいて高雄はマルボロに火をつけた。麦わら帽子、ランニングシャツ、カーゴパンツという裸の大将のような格好である。それでも観光客はおろか渓流釣りのフライ師すらこない秘境なので、誰にもはばかりはない。
 いや――?
 あまりにも動かない浮きに飽きて辺りを見回していた高雄は、ぶっと煙草を噴き出した。
 三十メートルほど下流に、一人の女の子がいた。長い黒髪、水色のTシャツ、白い半ズボン。小学生か中学生か、ちょっとわからないぐらいの年頃だ。サンダル履きで岩から岩へ飛び移っている。
 なんでこんなところにあんな子が一人でいるんだ。危ねえじゃねえか――いろんな意味で。
 高雄がそう思って見つめていると、その子はいきなりつるりと足を滑らせた。岩の陰に落っこちて、派手な水しぶきが上がる。
「言わんこっちゃねえ!」
 竿を放り出して高雄は駆け出した。一抱えもある岩から岩へ八艘跳び、あっという間にたどりついて飛び込んだ。
 ちょうど流れが曲がって淵になっているところだった。緑の水の中で白いものがゆらめいている。片手を伸ばすと華奢な腕が必死にしがみついてきた。しゃにむに抱き寄せて岸へと水をかくと、ありがたいことに岩の角に指がかかった。
 岩の上に体を持ち上げ、次いでごぼう抜きに女の子を引きずり上げた。ぐしょ濡れの細い体が焼けた岩の上に横たわる。人工呼吸か、心臓マッサージか、とやったこともないのに高雄は考えたが、幸いその子はけほけほと咳き込んで、自力で水を吐き出した。
「大丈夫か!」
「う、うん――げほっ! だいじょぶ……」
 その子は何度か体を震わせてから、ようやくうっすらと目を開いた。間近で見ると思ったよりさらに幼い、愛くるしい顔立ちだった。目は切れ長でまつげが長いが、鼻やあごの造りがまだはっきりしていない。真っ白でつるつるの頬がやや青ざめている。手足の長さから考えたよりももう少し下――十一、二歳だろうか。
 やっべ、と高雄は顔から目を逸らす。もろに彼の好みだった。しかもこんな出会い方だ。よからぬ期待と妄想がすごい勢いで膨らんでいく。
 上ずった声で言おうとした。
「あー、君ね。ここは見た目よりもずっと流れが速いから、一人で遊ぶのは危ない……」
 その時、女の子の半ズボンに目が留まった。濡れて張りついた半ズボンの股間に、小さな盛り上がりがあった。
「……男の子かよ!」
「え?」
 その子が体を起こし、自分の股間に目をやった。顔を上げて、にかっと笑った。
「そだよ? 女の子だと思った?」
「ったりめーだろ、その髪!」
「これ?」
 その子は長い髪を根元でつかんで、きゅーっと先まで絞り上げた。水滴がたっぷりと滴り落ちる。
「ロン毛のつもりなんだけど。今時珍しくもないでしょ」
「ばっかやろ、期待させやがって……」
「あー、お兄ちゃんロリコンなんだ」
 高雄を指差してくすくす笑う。高雄はふてくされて横を向いた。
「うるせえほっとけ。まったく、助けて損したぜ……」
 立ち上がろうとすると、きゅっと指をつかまれた。見下ろすと、その子は打って変わって寂しそうな顔になっていた。
「笑ってごめん。ほっとしたもんだから、つい。……ありがとね、助けてくれて」
「お……おう」
 高雄は思わず顔を赤らめてしまった。どきっとするほど頼りない表情だったのだ。
 しかしすぐに笑顔になってその子は言った。
「ぼく、新沢晴見。お兄ちゃんは?」
「はるみ? 名前まで女の子みたいだな。……っと、新沢ってあれか。岩手の新沢さんとこか!」
「知ってるの?」
 不思議そうに目を丸くした晴見に、高雄は苦笑した。
「法事で来たんだろ。うちは先坂だ、先坂高雄。爺ちゃん同士が兄弟だから、また従兄ってことになるな」
「ああ先坂さん、聞いたことある。そっかあ、マタイトコなんだね。よろしくです」
 晴見が手を握った。よろしくな、とうなずいて高雄は晴見を立たせた。

 翌日朝八時。
「お兄ちゃん早く! 走れ、走れってば!」
「やかましい、こちとら不摂生の代名詞の大学生だ!」
 村から川へ下る林の中の細道を、小柄な姿が跳ねるように駆け下りていく。高雄はゴム草履を下草に滑らせながら必死に追いかける。
 朝っぱらから高雄が追いかけっこをしているのは、晴見の世話を命じられたからだった。
 昨日、晴見をつれて爺ちゃんの家に戻った高雄は、母にいきなり罵倒された。あんたって子は部屋にいかがわしい本を溜め込んでると思ったら、とうとう本物の女の子に手を出したの、と。
 一族の数がやたらと多くて、母が晴見を見たことがないためだった。高雄が晴見を助けたと説明すると、あらまあと態度を変えた。そのうえ晴見の親がやって来て男の子だと紹介したので、ようやく高雄の冤罪は晴れた。
 晴れたどころか、晴見を押し付けられた。爺ちゃんの家には一族郎党二十数名が集まっていたが、四十歳以下は高雄と晴見の二人きりしかいなかったためだ。高雄の母は、男の子同士なら危険もないでしょ、と済ました顔で言ってのけた。実の親にまでロリコンだと思われている高雄は晴見に白い目で見られてしまった。
 それはともかく一夜明けると、朝ごはんを食べるが早いか晴見は高雄を引っ張り出した。沢に下りて岩の上に立つと、澄んだ朝の空気の中でいきなりシャツを脱ぎ始める。
 そばにでれーっと座り込んだ高雄が言った。
「おいおい、朝イチから水泳かよ」
「だって昨日は泳ぐなって言われてたもん。一人だと危ないから」
「言われてたんじゃねえか。親連れてこいよ」
「みんなは朝からどんちゃん騒ぎじゃない! お兄ちゃん来てくれてほんとによかったよ」
 シャツを脱ぎ捨てた晴見が、髪を根元で縛りながら笑う。色白のすっきりした上半身を見つめて高雄はため息をつく。
「これでついてなけりゃなー。百点満点のぺたん子なんだがなー……」
「何の話?」
 髪を縛り終わった晴見は、半ズボンのままで水に飛び込んだ。おい準備体操! とあわてて高雄は覗き込む。
 いったん潜った晴見が、ぷはっと顔を出して手を振った。
「ここは足がつくから大丈夫だよう」
「そういう奴に限って足がつるんだ……」
「あ、うわわっ?」
 いきなり晴見がずぼっと水に沈んだ。またかよ! と高雄はそばに飛び込む。
 助けようと腕を伸ばすと、晴見がぴょこりと顔を出した。満面の笑みで叫ぶ。
「うっそでーす!」
「……こンの野郎」
 高雄は晴見の脇に手を突っ込んで高々と持ち上げると、ざばしゃー! と水面に叩きつけた。もがいて起き上がった晴見にさらに水をかける。うわっひどっとわめいて晴見も水を浴びせ返した。
 壮絶な水かけ戦争になった。高雄は本気でムカついていた。だがいつの間にかその気持ちが消えていった。
 しぶきの中で晴見の笑顔が輝いていた。谷に響く歓声が爽快だった。

 ものの一時間もたたないうちに限界になった。沢水は刃物のように冷たかった。
 大岩に這い上がって大の字に横たわる。骨まで冷え切った体が、強烈な日差しと岩の熱気でバーベキューにされた。こりゃ下手なサウナより気持ちいいなと高雄は思った。
 横を見る。晴見が仰向けになっている。目を閉じて高雄と同じように熱気を楽しんでいるようだ。大きく上下する胸を見て高雄は言った。
「シャツ着ろよ。それか日焼け止めがいるな」
「海じゃないんだから」
「おまえ、そんなこと言ってるとイナバの白兎みたくなるぞ。色白いから」
「白くて悪かったね」
 晴見がこちらを見て口を尖らせた。白いと言われるのが気に入らないらしい。高雄はからかいたくなった。
「悪くねえよ、可愛いじゃないか。男にもてるだろ、うん?」
「うるさいなあ、もてたりしないよ。女男ってよく言われる」
「髪切れよ」
「切ったら言われないと思う?」
「……思わね」
「でしょ」
 ほっぺたを膨らませた晴見の腕を、高雄は軽く叩いた。
「ま、男にもてても嬉しくないわな。でも女の子にもウケるだろ」
「女の子はもっと嫌い」
「なんで」
「陰険だもん。靴とか教科書とかよく隠される。なんであんなことするんだろ」
「ああ、そりゃ妬いてるんだ。おまえが可愛いから」
「可愛いっていうな!」
 ぴしゃりと腕を叩き返された。ちっとも痛くなくて高雄は笑った。
 しばらく黙っていた晴見が、んしょっとうつ伏せになって、顔を寄せてきた。
「ねえ」
「ん?」
「先坂のおばさんの言ってたいかがわしい本って、エロ本でしょ」
「それ、忘れてほしい……」
「エロ本だよね。ねえお兄ちゃん、エロ本なんか見て楽しい?」
「楽しいっつーか、なあ……」
「なんでそんなもの見るの? 女のハダカだーうへへへってよだれ垂らすの?」
「エロ本見てよだれ垂らす奴はいないと思うが」
「じゃ何するの」
 高雄が答えずにいると、晴見はさらに近づいて、辺りを見回してから小声で言った。
「おなにー、するの?」
「ぶっ」
 高雄は噴きだして晴見の顔を見たが、彼がものすごく真剣な顔をしていたので笑うのを思いとどまった。
 そーいえば俺もこの年頃は、詳しく知らなくて興味があったなあ……。
 妙に親しみが湧いて、高雄は表情を引き締めた。
「んー、まあ、そういうことだ。おなにーをするのだ」
「それってどういうの?」
「知りたいかなあ。やっぱ男の子だな、おまえ」
「頼むから笑うとかやめてね。かなり恥ずい……」
 日差しを遮って晴見の顔が高雄の上に来た。濡れた前髪からしずくが落ちる。
「あれってすごい気持ちいいんでしょ。クラスの男子が言ってる」
「おまえ何年生だっけ」
「五年生。ね、五年生じゃまだ早い?」
「個人差があるな」
「ぼく、どうだろう。できるかな」
「さあ。やってみないとわかんねーだろ」
 高雄は肘をついて上半身を起こした。晴見と正面から見つめあう。
「やりたい?」
「い、一応。……気持ちいいんでしょ?」
 晴見はうつむき、頬を染めて、気持ちいいのしてみたい、とつぶやいた。すぐに顔を上げる。
「でもエロ本とかないし」
「別になくてもできるって。うし、ちょっと来い」
 高雄は大岩から飛び降りて陰に入った。ここでするの!? と晴見が悲鳴のような声で言う。
「ここなら村から見えねえって。あ、嫌なら別にいいんだぞ?」
「んー……」
 きょろきょろ辺りを見回した晴見は、こくりと唾を飲むと、硬い表情で高雄のそばに降りてきた。顔を背けて言いわけのように言う。
「教えてもらうチャンスって、あんまりないと思うから……」
「ないねえ、確かにない」
 高雄は笑いを噛み殺して言った。そんなもん、教わらなくてもそのうち自然にできるっつの。
「まあ座れ。そこあったかいぞ、日が当たってる」
「う、うん……」
 晴見は大岩を背にしてぺたんと座り込んだ。高雄はその向かいに、弟子に教えを垂れる老師のようにあぐらをかく。
「あー、その、なんだ……おなにーというのは、心の問題である」
「心の問題って?」
「要はどれだけエロいことを想像できるかだな」
「エロいことって、わかんないんだけど……」
「修行が足りん!」
「ふざけてないで真面目に教えてよ」
 晴見は泣きそうな顔で言う。ありゃしまったか、と高雄は頭をかく。こういう教え方では緊張させる一方だろう。リラックスさせないと逆効果だ。
 高雄はわざとぞんざいな口調で言った。
「それじゃ理屈は後回しにして、とりあえずちんちん触れ」
「ちっ、さわっ!?」
「そういうもんだから。それも知らない?」
「……知ってる……」
 耳まで赤くなって、晴見はうなずいた。なんだこいつ可愛いな、と高雄は思わず見入ってしまう。
 晴見はそっと半ズボンの股間に手を入れて、猫の頭を撫でるようにさわさわと撫で始めた。ぎこちない、見るからにやり方を知らない仕草だ。しばらく続けてから、手を止めて上目遣いに高雄を見る。
「……こう?」
「ちんちん硬くなってきたか?」
「あんまり……」
「そういう経験ねーの? 机の角でごりごりとかしたことない?」
「あ、それはある――けど、今はなんか、怖くって……」
「ふむう」
 しばらく考えた高雄は、手を貸してやるか、と思った。
 いや、実を言うと、身を縮めて恥らう晴見に触れたくなっていたのだ。
 立ち上がって晴見のそばに腰を下ろした。な、なに、と後ずさる晴見に笑顔を向ける。
「大丈夫、怖いことねーから。ちょっと貸してみ?」
「貸してって……あっ!」
 晴見がきゅっと目を閉じて身を震わせた。高雄が股間に手を滑り込ませたのだ。
 濡れたごわごわの半ズボンの中に、ちぢこまった晴見の性器があった。片手ですっぽり包み込めそうなほど小さかった。ここも可愛いなと思いつつ高雄はふにふにと手のひらをすぼめる。
「どーだ、気持ちいい?」
「ちょっと、待っ……ち、ちかん……」
 晴見が細かく震えながら首を振る。高雄はさっと手を引っこめた。
「あ、嫌か?」
「え……」
「俺、痴漢じゃねえって。嫌ならやらんよ」
 晴見は戸惑ったように高雄の顔と手を見比べたが、じきに小さくうなずいた。
「ん……いいよ。嫌じゃないから」
「お願いします、は?」
「え? ……うん、お願い。さわって」
 高雄はにやーっと笑ってもう一度手を触れた。高雄も鼓動が速くなっていた。こういうのもなんだか興奮するな、と楽しくなっている。
 その思いは、手のひらの中で晴見のものがトクトクと育っていくにつれ、どんどん強くなった。晴見の興奮がじかに伝わってくる。自分の手で相手を興奮させているという行為が、初めての高雄にはぞくぞくするほど楽しかった。
 晴見のものが、ズボンにはっきりとテントを作るほど勃起した。――彼は両手で自分の太ももをつかみ、目を閉じてはっはっと速い呼吸を繰り返している。高雄はもう一度ささやいた。
「気持ちいい?」
「うん。……じーんってする」
「もっとしてほしい?」
「うん」
 こくんとうなずく。高雄は思わずその頭を胸に抱きしめた。ふっ? と驚いた晴見が、すぐに力を抜いた。ぺたんこの胸が高雄の胸で、呼吸に合わせて薄さを変えていた。
「うん、こうしてて……倒れそう」
「もっとどんどんよくなるぞ」
 高雄は布の上から丁寧に性器をつまんで、小刻みに上下に動かした。輪郭がどんどんくっきりして、こりこりとした感触が伝わってきた。ほんのりとした熱さまで染み出してきた。本気で感じてるなあこいつ、と高雄は感動する。
「んっ……んくぅ……くくっ……」
 晴見は鳩の鳴き声のような声を漏らして高雄の肩にしがみついている。可愛らしい顔にぽつぽつと汗まで浮いている。折っていた両足を、我慢できなくなったようにぴんと伸ばした。小さな指先をきゅっ、きゅっと断続的に閉じる。
 はあっ、と口を開けて、とうとう熱いささやきを漏らした。
「きもちいー……すごい気持ちいいよぉ。ちんちんが、じぃーんってぇ……」
「いったらもっとすごいぞ」
「いくって、しゃせー? ぼく、しゃせーできるの?」
「なんか出てくる感じする?」
「するっ、するぅ! びくびくしてる、漏れちゃいそう……っ!」
「いいよ、出しちゃえ。川で洗えばいい」
「出る、出るぅ……い、いっぱい、いっぱい出そうっ!」
 ますます手の動きを速めていた高雄は、親指を晴見の先端にきゅっと当てた。軽く押し潰すようにくりくりと揉む。たまらず晴見がギリッと高雄の二の腕に爪を立てた。
「ひぅ……っ♪ で、出ちゃ……ぅーっ!」
 きつく歯を食いしばってうめきながら、晴見がぐいっと腰を突き出した。高雄は指の中のものが一瞬膨らみ、ぷるるっと震えたのを感じる。
「おおー……いったか」
「っく、っ、くんっ!」
 半ズボンから伸びた晴見の内腿がぎゅうっ、ぎゅうっと引き締められ、腱がはっきりと浮かび上がった。高雄も興奮のあまりかすれた声でささやく。
「ほら出せ、思いっきり出せ! 気持ちいいだろ? 最高だろ?」
「いいっ……♪」
 一回一回が高雄の手を持ち上げるほど激しい痙攣を繰り返して、やがて晴見はくったりと力を抜いた。幸せそうな顔で、はーっ、はーっ、と高雄の胸に息を吐きかけた。
「でちゃっ……たぁ……」
「どんなだった?」
「最高……真っ白なので……体中びりびりした……」
「ありがとうは?」
「あり……がと……こんなにきもちーとは思わなかったよ……」
「よしよし」
 なんだかとても満足して高雄は晴見を抱いていた。少しして、ほら起きて洗え、と立ち上がらせようとした。
 晴見はゆっくりと首を振った。
「足、溶けちゃってる……力入んないの」
「ああ……そっか、初めてだもんな」
 まどろんでいるような晴見の顔を見つめながら、最近そんなに気持ちいいオナニーってしてねえなあ、と高雄は思った。

 水に入った晴見の行動は面白かった。半ズボンとパンツの前を押し開けてしげしげと中をのぞき、手でちょいちょいと触って、指を見つめていた。
 大岩の上から高雄は言った。
「それが精液」
「せーえき……」
 つぶやいた晴見が振り返って、なんかすごいたくさん出てる、と言った。
「そりゃ初めてだもん。俺も初めてはすごかった」
「こんなにいっぱいどこに入ってたんだろ……」
 晴見はまだパンツを覗いている。高雄は叫んだ。
「心配すんな。すぐまた溜まるから」
「そうなの?」
「あーもう、うっとうしいぐらいな。よーく洗っとけー」
「はあい」
 晴見がじゃぶじゃぶやり始めると、高雄はごろりと仰向けになった。
 しばらく迷ってから、今夜のおかずはこいつにすっか、と思い切って決めた。

 それで、予定通り高雄はその晩晴見で抜いたのだが、実はその必要もなかった。
 翌日、二人の一族郎党は、村の神社に虫送りをやりに行くとかで、朝から揃って出かけてしまった。そんなものは名ばかりである。村中の人間と宴会をするに決まっている。
 だだっ広い爺ちゃんの家には、高雄と晴見二人だけになった。虫送りを断った以上は留守番をしろ、という厳命である。遊びに出るわけにもいかない。
 テレビは三局しか入っていなかった。衛星はない。ビデオもない。おもちゃも本も何もない。縁側からは山の向こうにまぶしいほど白い入道雲が見える。庭のひまわりの向こうの木立でセミがじゃんじゃん鳴く。
 そんな家の中でごろごろ転がって新聞を読んだり日曜版のクロスワードを解いたりしていたが、すぐにやることがなくなった。
 晴見がやってきて、仰向けで新聞を読んでいた高雄の腹にぽすんとまたがった。
「むぎゅ」
「ねえ」
「んだよ」
「ひまだね」
「ひまだねえ」
「なんかすることない?」
「なんかって……」
 ばさりと新聞を置いて、高雄は見上げた。今日の晴見は青のタンクトップに白いショートパンツである。その色の組み合わせが好きらしい。またしても高雄はため息をつく。
「乳首見えろ! とか期待するんだがなー」
「見たいの?」
「……女の子だったら」
「昨日さんざん見たじゃん」
 そういって晴見は両手で胸を押さえた。んむ、と高雄は顔を起こす。
「いや……その、ちょっといいかも」
「何がー?」
「ちょっとそこ座って」
 晴見が畳に降りてぺたんと女の子座りする。高雄はその横に回って、タンクトップのわきを指でちらりと持ち上げた。
「なんなの……?」
「いや、ちょっと」
 不思議そうな顔の晴見の横から、高雄は胸を覗き込んだ。――薄い胸にぽつりと乗っかった乳首が見えた。
 ふむー、と高雄は鼻息を荒げる。
「ここだけ見れば、ろりっ子と変わらんよなー」
「んと……見たいんだったら脱ごうか?」
 晴見がタンクトップの裾をつかむ。いやいや、と首を振って高雄は言った。
「このまま! これがいいの! 見てていいよな?」
「い、いいけど……」
 高雄はきゅっと布を引っ張って、横ちちを思うさま眺めるという至福を堪能した。本物のろりっ子なら金輪際不可能だしなー、と何か間違っていることを考える。
 そのうちに思わぬ変化が起こった。――晴見が両腕で胸を抱いて、隠してしまったのだ。
「なんか、恥ずかしくなってきた……」
「おまえ、その反応おいしすぎ」
 調子に乗った高雄は晴見の後ろにどっかと座って、さらに言った。
「な、さわっていい?」
「えー……」
「ええやろ? ええやんか?」
「いいことはいいんだけど、そのおっさん臭いのやめてよ」
「はいはい、わかりましたから」
「ん。はい……」
 おずおずと万歳をした晴見の胸に手を回して、高雄はふにふにと揉んだ。揉んだといっても、つかめるような膨らみはまったくない。薄い肉の下で肋骨がころころするだけだ。――が、小さな乳首だけは指でつまめた。しかもそれが、心なしか硬くなってきた。
 自然に声を低めて高雄は言う。
「……もしかして感じてる?」
「んん……ほんわりするよ」
「気持ちいいのな?」
「いいのかなあ……いいかもしれない」
「じゃ、ひょっとすると」
「あ」
 高雄はショートパンツの股間に手をやった。思ったとおり、そこは膨らみ始めていた。
 含み笑いして言う。
「立ってんじゃん」
「だって……どきどきして……」
 うっすらと頬を染めて晴見はうつむいた。高雄は思わず、きれいな黒髪の垂れた背中ごと、がばっと抱きしめてしまった。もう、性別などどうでもよくなっている。
「おまえってほんと可愛いなあ」
「可愛いって言うなよー……」
「気に入ったってこと。な、また昨日のしてほしいか?」
「……うん」
「よしよし、素直でよし。でもな、今日はちょっと条件がある」
「条件?」
 振り向いた晴見の尻に、高雄はぐっと腰を押し付けた。うわ、と晴見が目を丸くする。
「お兄ちゃんも立ってんの……」
「おまえにむらむらしてきた。だからさー、頼むから抜いてくんない?」
「ぬ、抜くってなに?」
「俺と同じことするの」
 晴見は体ごと振り返った。目が真ん丸になっている。
「それって、ぼくがお兄ちゃんにおなにーするってこと?」
「それをオナニーとは言わんと思うが……まあ、そゆこと。嫌?」
「う、うー……」
 晴見は難しい顔になる。頭を抱えてつぶやく。
「男の人のちんちん触るって……なんか気持ち悪い」
「俺はおまえにやってやったんだけど」
「そうだけどさあ」
「してくれたら凄い嬉しい。な、頼む」
 高雄は今度は優しく晴見を抱きしめた。頭を何度も撫でてやる。
 すると――晴見はぽっと頬を赤らめた。おっ脈あり、と高雄はさらに手を動かす。胸をさわさわと撫で回し、ひんやりした二の腕に指を這わせる。
 ふる、ふるるっ、と身を震わせた晴見が、細い声でつぶやいた。
「ぼく、変かも……」
「どした?」
「そうやってされると、なんか嬉しくなる。……なんでかなあ? お兄ちゃんのこと、好きになってくみたい……」
 ぼく男の子なのにー、と困惑した顔で晴見は言う。戸惑う顔がたまらなく可愛らしくて、高雄はとうとう、その頬に軽くキスしてしまった。ひゃん! と驚く晴見にささやく。
「好きでいいじゃん、もう。俺も晴見のこと好き」
「好き……?」
 晴見は目を閉じ、その言葉を味わうように小さくうなずいた。
「いいや、もう……頭が熱くってよくわかんない。お兄ちゃんに触られるのは好き」
「よし、オッケーな」
 高雄は晴見の手を取り、薄い手のひらを自分の股間に押し当てた。最初だけ驚いてこわばった指が、やがて優しくそこをこすり始めた。
 目を開けて晴見はまじまじと高雄の顔を見る。
「すごい、おっきー……。ぼくの倍ぐらいある?」
「大きけりゃいいってもんじゃないだろ。おまえのも可愛いよ」
 高雄は晴見のショートパンツの上から、中に手を差し込んだ。パンツのゴムをくぐって下腹に手を滑らせる。熱を持ったものが手のひらに収まった。
 じかに触れるのは想像以上に淫らな感じだった。愛撫を求めて脈動するしっとりとした肉の幹の感触は、高雄の晴見に対する欲求をかっと燃え上がらせた。それまでは漠然と、可愛い女の子によく似た子供と思っていただけだったが、これではっきり、少年の晴見がほしいと思うようになった。
 晴見も驚いたようだった。触れた途端に性器が跳ね上がり、その後こするとますますびくびくと震えたのでそれがわかった。ためらいがちだった顔がいっぺんにとろけ、瞳が閉じかかってまつげが揺れた。
「す、すごぉ……っ♪ ぴりぴりするぅっ!」
「電気みたい、だろ?」
「うん、電気っ……こ、こんな感じっ」
「ふお?」
 突然自分の性器をするりと撫でた感触に高雄はうめいた。晴見もトランクスの中に手を入れてきたのだった。小作りな指がきゅむきゅむとつかむ。高雄もそれは初めてで、期待以上の鋭い快感に腰を震わせた。
「ほ、ほんとな。すげーきもちー……」
「でしょ? いいでしょ? ふあっ!」
「いいよ。すごくいい。な? 二人でこれやろうな?」
「うん、うんっ!」
 こくこくと晴見が懸命にうなずいた。
 お互い同じように気持ちよくなっている、ということが二人の結びつきになった。晴見に教えてやる必要はなかった。高雄が手を動かしてやると、晴見はすぐにそれを飲み込んで同じようにこすってきた。晴見の包皮を剥いてやることは痛がるのでまだできなかったが、根元からそっとしごき上げ、その下の小ぶりな袋も揉みしだくようにしてやると、晴見は体全体を引きつるように震わせ、次に同じように高雄のものを愛撫してくれた。
 二人のその共同作業は、すぐに終わりが近づいてきた。晴見はまだ全然慣れていなかったし、高雄も普段よりはるかに興奮していたからだ。張り裂けるほど膨らんだ二つの性器が、互いの手の中で大きく脈打ち、高雄は手のひらをかぶせるようにきゅっと包んでやり、晴見もそうしてくれた。
「晴見、出せっ!」
「お兄ちゃんもぉ……っ!」
 次の瞬間、二人は同時にくうっとうめいて抱きしめあった。包んでくれる手の中に、思う存分精液を吐き出した。
 びくっ、びくっ、と同じように震え続けると、やがて二人はほーっと息を吐いてもたれあった。高雄の手のひらにたっぷりと粘液の感触があった。自分の性器を包む手の中にも。
 晴見が得意げに言った。
「お兄ちゃんも……出しちゃったね」
「おお、すげー出た」
「ぼくも。……一人の時よりよかったよ」
 それから二人は、ふと同じことを考えて見つめあった。
「これ、どうしよう?」
 ティッシュティッシュ、と辺りを見回した。こぼさず取りに行くのはちょっとした難事だった。

 それからの数日は、日課のようになってしまった。
 セミ取りに行った神社の境内で、ほこりの積もった農機具のある納屋の二階で、桑畑の片隅で、二人は触りあい、放出しあった。お兄ちゃんお兄ちゃんとどこへでも高雄についていく晴見を見て、なついたわねー、と一族郎党はのんきに笑い合った。
 高雄としては得した気分が八割で、困った気分が二割である。思う存分べたべたできてお風呂まで一緒に入れる、ろりっ子の代用が手に入って嬉しいのが八割。でも男の子だからちょっとどうもアレだな、と思う気持ちが二割。しかしこの二割はどんどん減少中である。男くささの全然ない晴見とじゃれあっていると、どうしてそれがいけないのか自分でもわからなくなってくる。
 それより気になるのは晴見の気持ちだった。高雄は特別脂ぎったヒゲダルマではないが、煙草も吸えばすね毛も生えた野郎である。あまりべたべたすると嫌がりだすのではないかと気になってしまう。
 そんな懸念はある日吹っ飛んだ。その日は雨で、例によって一族郎党は爺ちゃん家の居間でNHKのオリンピックを見ながら大盛り上がりだったが、二人はよその部屋で昼寝をしていた。湿気がこもるので冷房を強めにしたら、しばらくたって寒くなった。
 連日の遊びでいささか疲れていた高雄が、寒いなあでも止めるのめんどいなあと考えてうとうとしていると、隣に転がっていた晴見も同じ思いだったらしく、ぱたぱたと手を動かした。リモコンを探したらしい。それが見つからないとわかると、今度は高雄の隣にごろんごろんと転がってきてくっついた。
「んしょ……っと」
 高雄の両腕を自分の体に回して、自分から高雄の胸に収まってしまう。小さなお尻をもぞもぞ動かしてぴったり押し付けると、ん、と安心したようにうなずいた。
「はるみぃ……俺好き?」
「うんー、たばこのにおい……」
 高雄の二の腕に鼻を押し付けてすんすん嗅ぐと、しばらくしてすうっと穏やかな寝息を立て始めた。
 そーか好きなのかと高雄はにやける。そして、少しくしゃけた晴見の髪に顔を突っ込んで、甘酸っぱい汗の香りをかぎながら目を閉じる。

 カブトムシを取る! と宣言した晴見にまたもや駆りだされた。
 カブトムシは夜明け前の森にいるものだ。主にクヌギの樹液に集まっている。これを取るには早起きして山に行かなければならない。だから目覚まし時計は五時にセットした。
 しかし五時の目覚ましがぴきぴき鳴って高雄が起き上がっても、晴見はちっとも目覚めなかった。高雄が呼んでも肩を揺すってもんあー眠いーとぶつぶつ言うだけである。
 いくら広い爺ちゃんの家でも一族郎党全員分の個室はない。高雄たちは男五人で一部屋に押し込まれている。あまり騒ぐと起こしてしまう。なんとかならんか、と高雄は考えた。
 晴見はTシャツとパンツ一枚でおなかにタオルケットを乗せている。だいぶ日焼けして赤らんだ手足を半分丸めて横を向いている。高雄のほう向きだ。他の三人はその向こう。
 ふと晴見のおなかを覗くと、白いパンツが軽く盛り上がっていた。つまり朝立ちである。ほほー五年生でも朝立ちするかとつぶやいて、高雄はそこに手を伸ばした。
 柔らかいパンツの上からきゅっとつまんで、くしゅくしゅしごく。ぴくっと体を震わせて晴見が鼻息を漏らす。
「んふ……?」
 指二本でごく弱くしごき続けただけで、晴見のものはこりこりになった。丸めていた足が次第に伸びていき、息が荒くなる。目を閉じたまま鼻の頭にきゅっとしわを寄せて、何か難しいことを考えているような顔になる。
「お……おにいちゃ……?」
「さー、いつまで我慢できる」
「が、がまんって……ふあぁ……」
 まるく盛り上がったパンツのてっぺんに、じわりと染みが浮いてきた。そこをくりくり撫でながら、高雄は思い切って棒のところをきゅっと引き下げた。
「きひっ!」
 びんっ、と一息に晴見が足を伸ばす。あ、剥けたな、と高雄は察した。剥けたばかりだとかなり敏感なはずだ。染みでてろてろになった部分で先端を包んで、ねじを回すようにきゅりきゅりとくすぐった。
「おにい……!」
 きうーっ、と晴見が高雄の腕に爪を立てた。爪先までピンと伸ばして小刻みに震える。もう秒読み段階、という感じだった。しかし発射まで持っていったら大変だ。
「晴見、起きる?」
「え……起きるの?」
「起きねえからやってんじゃん。起きねえとこのまま最後までやっちゃうぞ」
「やって、お願い、出させてっ……」
「ばか、こんなとこで出したら後始末どうすんだよ。おじさんたちにモロバレするぞ?」
「……んうー!」
 ささやく高雄を恨めしそうににらんでから、こくこくと晴見はうなずいた。
「起きるよ……それなら、もうやめて……」
「うーん、いくところが見たい」
 最後にきゅきゅっとこすり上げてやると、晴見は切なげにのけぞった。しかし高雄はそこで切り上げた。
 服を着てたも網と虫かごを持って外に出る。外はもう明るかったが熱気はまだ来ていなかった。湿った涼気の中を山へ向かう。
 林に入ると期待以上だった。木のこぶに光る蜜に、カブトムシだのカナブンだのクワガタだのガだのハチだのが盛りだくさん。これは小さいからいらないや、と選り好みまでできるほどだった。
 小一時間乱獲を続けてそろそろ切り上げようかというときに、本日最大の獲物を見つけた。三メートルぐらいの高さにあるこぶに、高雄の拳ほどもあるクワガタがいた。おーうミヤマだ、とため息を漏らす高雄の腕を、肩車肩車! と晴見が引いた。
「よし、乗っかれ!」
 しゃがんだ高雄の首に晴見がまたがった。立ち上がり、うんとたもを伸ばす。ゲットする寸前、残念ながらミヤマはぱっと飛び立ってどこかへ行ってしまった。
 残念無念、と高雄はつぶやいて晴見を降ろそうとした。
 ちょっと待って、と晴見が言った。
「ん、なに?」
「ちょっと……」
 高雄の首がきゅっと締め付けられる。頭の後ろにもぞもぞと何かが当たった。髪の毛がくしゃりとつかまれ、んん……と心地よさそうな声が聞こえた。
 高雄は面白くなった。晴見は股下ですっぱり切り落としたカットジーンズである。ふにふにの太腿が頬に当たっている。それを外から両手でがっしりとつかんで、頭を後ろにぐいぐいと逸らした。
「このエロ少年! 気持ちいいか、おら、気持ちいいか?」
「だ、だぁってぇ……朝お兄ちゃんがあんなことするからぁ……」
 晴見もすっかり乗り気だった。ジーンズのふくらみをぐりぐりと高雄のぼんのくぼに押し付ける。
「もうちょっとで出るとこだったんだよ。なのに途中でやめるから、なんか溜まっちゃってて……」
「ちゃんとするか?」
「うん……♪」
 高雄は晴見を降ろして木にもたれさせた。期待に瞳を潤ませる晴見に覆いかぶさるようにして股間をおさえる。ジーンズごとぐるぐると手のひらで揉み回すと、目を閉じてうめいた。ただ、嬉しいような困ったような顔だった。
「お、お兄ちゃん、ちょっと痛い」
「痛い? あーそっか、剥けたからか……」
「ね、もうちょっとそっとやって?」
「んー……」
 高雄はしゃがんで、晴見のジーンズのホックを外した。なに、と見つめる晴見の前でジーンズを足首まで下げる。中からぱんぱんに突き上げられた小さなパンツが現れる。
 さらにそれに指をかけて、太腿まで引き降ろした。ぴんっ、と可愛らしい性器がはねあがる。まだうぶ毛も生えていないし、黒ずんでもいない。ピンクに染まって細い血管を浮かせている。ただ先端だけはつるりと皮が剥けて、いかにも顔を出したばかりという感じで真っ赤に光っていた。
 晴見がそこと同じぐらい赤く顔を染めて、そんなに見るなーと手で隠そうとする。その手を簡単に押し戻して、高雄は息を吹きかけた。
「ふうっ」
「ひゃんんっ!」
 ぴくん! とはねた性器がしずくを一滴振りとばす。それが高雄の鼻に当たった。高雄は胸のどきどきを押し隠して、それを指ですくってなめた。
 かすかな塩味。――そして、鼻にツンとくる匂い。
 晴見がやや呆然として言う。
「お、お兄ちゃん……汚いよ?」
「そりゃそーなんだが、結局ろりっ子でも男の子でも変わらんよな、と……」
 高雄は視線を上げて、無理に笑ってみせた。さすがに後ろめたくて屈託のない笑顔とはいかない。
「気持ち悪かったら、目、閉じてな」
「え? ……う、うん」
 高雄が何をする気なのか見当はついただろうに、晴見はおとなしく目を閉じて、ぎゅっとシャツの裾を握った。
 あーこれで変質者決定だなあ、と思いながら高雄は顔を進め、晴見の性器に吸い付いた。
「ひゃああ!?」
 つるりと口に含んだだけで、晴見が数回も腰をびくつかせた。細い性器が暴れる。それは小さくて簡単に根元まで飲み込めた。舌と口内でそっと包んで、高雄は優しく舐めまわしてやった。
 くびれたところに溜まっていたにちにちしたものはさすがに気色が悪かったので、最初に舐めとると口を離して吐き捨てた。しかし、一度舐めてきれいにしてやったものだと思うと、次から平気になった。おしっこの味も匂いもなくなって、ただ先端からとろとろと漏れるしずくの塩味だけになった。
 それは、高雄もびっくりしたのだが、本当にいとおしく感じられた。熱い血でいっぱいに膨れ上がってけなげに反り返ったもの。舌で押し潰すとはずむような弾力があって、歯を当てるとこりこりと硬い。晴見の全神経が集まっているのがわかる。このまま食っちゃいてーな、と危ないことを高雄は考える。
「ひんっ、だっ、だめっ! おちんちん溶けちゃうぅ!」
 晴見が悲鳴を上げて、ずるずると腰を落としそうになる。高雄は両手で尻をつかんで支えてやる。じゅるじゅると音を立ててすすってから見上げると、晴見は言われたとおり固く目を閉じて、舌を突き出している。
「気持ちいい?」
「めちゃくちゃ……いいっ! だめだよこんなの、普通じゃないよっ!」
「だいじょぶだいじょぶ、世間の女はみんなやってるんだから」
 男でやってるのは変態だけどなと思いつつ、晴見相手なら誰だってやりたくなるよと自分に言い訳して、さらに高雄は可愛い性器を吸いたてた。いくらもたたないうちに晴見が限界に達した。
「もうっ、いいからっ! 手にして手にっ!」
「いーよ、このまんま」
「だめっ、だめだめだめっ、が、がまんするからぁ――」
「するなって」
「くうぅ〜っ! ……も、もう知らなぁいっ!」
 晴見が自分からぐいっと腰を突き出した。同時に射精した。ぴんと張りつめた先端から細く絞られた液流が飛び出し、舌をびゅるっとへこませた。
「はぁっ! はぁんっ! はあぁぁーっ!」
 幸せそのものといった感じの甘い悲鳴が耳を打つ。湧き出る奔流も止まらなかった。どくん! どくん! と膨らんだ性器が後から後から口内に精液を送り込む。よしよし好きなだけ出していーぞ、と高雄は晴見の尻を強くつかむ。
 じきに絶頂を終えると、晴見は声もなく脱力した。高雄は顔を離し、彼を木の根元に座らせてやった。
 口の中にはねっとりとした液が大量に溜まっている。その始末まで高雄は考えていなかった。ただ、この無邪気な少年に最高の気持ちよさを教えてやりたいと思っただけだったのだ。
 まあ飲んでみるか、と開き直る。毒食らわば皿までだ。うんこ食えと言われたら願い下げだが、精液を飲むだけならスカトロの範囲にも入らない。それに……晴見が出したものだ。何の根拠もないが、汚いという感じがしない。
 飲んだら難しかった。マヨネーズをそれだけで飲み込んだようなもので、口の中にたっぷり残った。味はほのかな塩っぽさだけでまずくなかったが、まずいかとうまいとかいうより、後に引く。帰る前にゆすぐか、と思った。
 一部始終を見ていた晴見が、泣きそうな顔でうつむいた。
「飲んじゃった……お兄ちゃん、ぼくのせーえき飲んじゃったぁ……」
「ああ、ええと、すまんごめん。気味悪かったな」
「気味悪いっていうか、なんか、ぼくのでお兄ちゃんが……ぼくがお兄ちゃんにおしゃぶりされて、気持ちよくなっていっぱい出して……全然逃げたりしなくって……」
 顔を上げて涙顔で言う。
「ぼく、すごい変態ってことじゃん。気持ちいいことならなんでもしちゃうってこと……」
「いや変態は俺だから。おまえはこんなことやるつもりなかったんだよな、な? だから泣くなって」
「なんか悪いんだってばぁ……」
 うーん参った、と高雄は腕組みする。晴見のことだから怖がって逃げたりはしないと思っていたが、罪悪感で泣き出すとは。やっぱりちょっと早すぎた。
 しばらく座って見つめていた高雄は、やがてぽつりと言った。
「もう、やめようか。こういうこと」
「なんで?」
 びっくりしたように晴見が顔を上げる。高雄はばつが悪そうに頭をかく。
「やっぱり普通じゃないしな。お互い、彼女作ってやるのが普通だよ」
「なんで? お兄ちゃん、ぼくとするの嫌なの?」
「いや全然好き。でもおまえは変態になるの嫌なんだろ?」
「へ、変態は嫌だけど……お兄ちゃんが嫌なわけじゃなくて……」
 晴見はうつむいて、そっか、変態かお別れかどっちか選ばなきゃいけないのか、とつぶやいた。
 しばらくしてから、うんと一つうなずいて顔を上げる。
「決めた。……変態でもいい。これからもお兄ちゃんとしたい。変態でも我慢する」
「そんな妙な決心せんでも」
「でもしたいもん!」
 真剣に言うと、晴見はやにわに高雄の股間に手を伸ばした。カーゴパンツの紐をほどこうとする。
「あれ、こら、何すんだ、はうっ」
「決めたからやっちゃうもん。ぼくもお兄ちゃんの、おしゃぶりする」
「そっ、それはすごい嬉しいけどな! 待てっやめとけ!」
「なんで? おばさんたちに怒られるから?」
「いやそれはとっくに。おい、言ったらだめだぞ?」
 そんなことわかってる、と晴見はこわばった顔でうなずいた。すると今まで悪いとわかっててやってたのか、と高雄は少し感動した。感動するとよけい良心が咎めた。
「あのな、俺がおまえにするのはいいの。おまえのは汚くないから。でも俺のをおまえがするのはだめなの。俺のはほんとに、みっともいいもんじゃないから」
「なにその理屈。なんでぼくのがきれいでおにいちゃんのが汚いの?」
「いや、やっぱり大人になると匂いとか見た目とかな……」
「そんなのぼくが気にすることでしょ? ぼくがいいって言ってるんだからいいの!」
 暴走気味に晴見が迫る。そう言われても高雄は耐えられない。この子を汚したくない。ああ俺はほんとにこいつを綺麗だと思ってるんだな、と高雄は自覚した。
 思ってはいるものの、それゆえに生まれる欲情というものはある。決してされたくないわけではないのだ。両者の板ばさみになるところ、高雄はとうとう折衷案を下した。
「わかった。それじゃ、洗ってからしてもらう」
「いいの?」
「いいも悪いも、本音を言うと大歓迎だよ。すげえ楽しみ」
 高雄がにやっと笑うと、晴見も上気した顔でうなずいた。
「ぼくも……してる時のお兄ちゃん、ほんとに楽しそうだった。楽しいことって、楽しみ……」

 それで二人は爺ちゃんちに戻り、石鹸を盗んで川に下りた。家の風呂でそんなことをしていたら一発でばれる。
 沢に下りてから、さらにいつもはいかないような上流まで上った。両岸からせり出した木陰が頭上で天井になるほど流れの細いところまで来ると、手ごろな岩の上に陣取った。
 下を脱いだ高雄が自分のものを念入りに洗い、振り向いた。晴見がやって来て、物珍しそうに、面白そうに、ちょっと後ろめたそうに、それを両手で支えてキスした。
 たちまち高雄は大興奮して勃起し、晴見の頭を持ってゆっくりと押し下げた。唇は高雄のものでいっぱいになるほど狭かったが、晴見は少しも抵抗せずにおとなしくそれを受け入れた。
 温かい粘膜がくっぷりと全体を包む。――高雄はのけぞり、腰の奥でざわざわとうごめく快感に息を荒げる。どう? と見上げる晴見に笑いかけた。
「最高。おまえと同じ、ちんちん溶けるみたい。晴見はだいじょぶ?」
 くぽっと口を離して晴見がうなずいた。
「全然だいじょぶ。なんにも味しないもん」
「苦しかったら言えな?」
「気にしないでいいよう、お兄ちゃんが痛いことするわけないもん……」
 再び唇で包まれて、高雄を目を閉じてうめいた。
 じゅぷ……じゅぷ……と晴見がゆっくり顔を上下させる。単調な刺激だったが興奮度は最高だった。晴見の愛くるしい顔が自分の股間にあるのは信じられないような光景だった。こうなったらとことん味わってやろ、と高雄は決めた。
 晴見の体を引いて、向きを変える。しゃぶらせたまま岩の上に横にならせた。腰を晴見の顔にかぶせて、高雄は晴見の足に顔を近づける。カットジーンズを脱がせて、パンツだけにした。
 晴見の足は美しい。――最初遠くから見た高雄が女の子だと信じたように、すらりと長い骨格にたとえようもなく柔らかな筋肉がついている。特にお尻のあたりは絶品だった。しなやかに張った太腿の上に、くっきりと境目のついたつるつるの丘が並んでいる。半ズボンの時はその裾に指を突っ込んでむにむにしたくなったし、風呂に入ってじかに見たときは両手でくいっと開きたくなった。――もちろん爺ちゃんやおじさんがいたのでやらなかったが。
 その可愛いお尻が、白パンツに包まれて高雄の目の前にある。いてもたってもいられず高雄はパンツをTバックにずり上げて噛み付いた。といっても甘噛みだが、歯をむき出しにしてはむはむと噛み締めた。んふぅ♪ と晴見がくすぐったそうに鼻を鳴らす。
 思ったとおりふわふわして素敵な感触だった。肌は日が映るほどつるつるで、当てた舌がきゅちきゅち鳴る。さらに太腿にも、お尻の谷間にも唇を滑らせる。どこもかしこも温かく柔らかくて、いつまででも味わっていたくなる。
 しかしそれはそれとして――高雄は次のステップに移った。パンツも下げて抜き取り、下半身裸にさせる。それから両足を大きく開かせて、股の間に顔を近づけた。
 互いの尾を噛む二匹の蛇のような姿勢。高雄の前に晴見の股間すべてがある。先ほどたっぷり出した袋はちょっと柔らかく垂れていたが、その中から性器はまっすぐに起き上がっていた。それに向かってささやくように高雄は言う。
「やっぱ興奮する?」
「ふん……♪」
 袋の下に、お尻の肉に挟まれた小さなすぼまりがあった。高雄は舌を突き出して袋の中心を突いてみた。勃起した性器の根元がこりっと当たり、途端にびくっとその辺り全体が引き締まった。
「ここ、気持ちいいんだなあ……?」
「ふくっ、くぅーん!」
 高雄がその辺りをめちゃくちゃに舐めまわしはじめると、晴見は嬉しそうに鼻を鳴らして口の動きを速くした。ぞくぞくとしびれが背筋を駆け上がる中、高雄も夢中で愛撫を速める。
 身長差のせいで高雄が体を曲げていて、ぴったり抱き合うことはできなかったが、それを補うように二人は互いの股間を抱き寄せていた。晴見はひたすら懸命に唇と舌で高雄を包み、高雄は舌と唇で晴見の先端からお尻の穴まで、行ったり来たりくすぐり立てた。特にお尻は凄い反応があった。そこを舌先でこちょこちょしてやると、晴見はおしゃぶりどころではないというように動きを止めてきつく抱きつき、きゅうきゅうと下半身を痙攣させるのだ。
 この分だと、ここに突っこんじゃってもこいつ感じるかも……
 それはものすごく魅惑的な考えだったが、現実が高雄を思いとどまらせた。口でさえきつきつなのに、こんな小さなところに高雄のものが入るわけがなかったから。
 それに口でしてもらうだけで十分心地よかった。高雄は迫ってくる射精感を少しずつこらえながら、晴見を可愛がることに熱中した。
 やがて期待通り、晴見が今日二度目の絶頂に近づいた。袋の下の畝のように盛り上がったところがぴくぴくと動いていた。そこを舌でちろちろしながら高雄は聞いた。
「晴見、いきそう?」
「んん、んんっ!」
「いっちゃっていいよ、俺もいくから。……どうしてほしい?」
 言いながら片手で小さな性器をしごき、畝のところにキスし、もう片方の手でお尻をつむつむといじる。ぷはっと息継ぎした晴見が激しく首を振る。
「そっ、そのままぁ! それいいの、その辺全部びくびくじんじんしてるのぉっ!」
「よーし、わかった!」
 痛ませないようにと細心の注意を払いながら、高雄はできる限りすべての動きを激しくした。あっという間に晴見が絶頂した。
「くむぅぅっ♪」
 高雄の顔を挟む内腿がぎゅっとひきつり、舌の上で畝がきゅぅっとへこんだ。それとともに先端からぴゅうっと白いものが飛び出した。見る前で畝がきゅぅっ、きゅぅっと何度もへこみ、精液が飛んだ。高雄は絶頂に近い焦りの中で感心した。
 そーか、ここがぎゅうぎゅう縮んで精液飛ばすんだな……俺もっ!
 ほとんど噛み付く寸前の晴見の締め付けが、高雄の引き金になった。晴見と同じように縮み上がる自分の畝を想像しながら、両足を強く伸ばして射精する。
「ふぅっ、ううっ、んぉっ!」
「ふむぅっ!?」
 晴見の驚きを感じたが、手加減できなかった。悪い今だけ勘弁、と心の中で謝りながら、高雄は晴見の喉に思うさま精液を注ぎ込んだ。
 びゅうっ、びゅうっと音がしそうなほど激しい流れを存分に吐き出すと、高雄はすっかり満足して晴見の太腿枕に顔を寝かせた。同じように弛緩した晴見が、ふーっ、ふーっ、と鼻で息をしている。そのすっかりふにゃふにゃになった内腿が可愛くて、高雄は何度もキスを繰り返した。
 やがて二人は体を離し、向かい合った。
 そしてどちらからともなく、しっかり抱きあった。
「あー、よかったわ……超すっきりした。おまえにしたいこと全部しちゃったよ」
「んー、んんん」
 見れば晴見は口を閉じて目を細めている。高雄は目を剥いた。
「なにおまえ、溜めてるの。ぺっしろ、ぺっ」
「んー……んくっ」
 見ている前で晴見は喉を動かしてしまった。ぷはー、と青臭い匂いの息を吐いて笑う。
「へへ、これでお兄ちゃんも変態」
「飲ませたら変態、ってのは定義としてどうかと思う」
「てーぎってなに」
「まあいいやどうでも」
 抱き合ったまま二人はごろんと横になり、次いで両腕を開いて、高雄の腕枕で並んだ。
 ざあっと梢が風に揺れ、木漏れ日のモザイクが二人の上でちらちらと踊った。山鳥の鳴き声が交錯し、さらさらと沢水が鳴る。そのほかには何もなかった。それだけで十分な、二人だけがここにいた。
 晴見がぽつりと言った。
「ぼく、女の子だったらよかったのにね」
「なんで」
「ずっと付き合えるじゃない。お兄ちゃん、ぼくがおっさんになって、背広でうーっすって挨拶しても、今みたいなことしてくれる?」
「……すまん、無理だ」
「あはは、いいよ。ぼくだってそんなのやだ」
 晴見はあっけらかんと笑った。高雄は彼の横顔を見た。
「おっさんが嫌なら、なんで俺はいいの?」
「ぼくが女の子っぽいから、かな? ……そうとしか見えないって、ほんとは自分でもわかってる。今だけぼくは女の子――そう思ってると、お兄ちゃんにどきどきできるの」
「そっか……」
 それで高雄は納得がいったような気がした。自分に言いわけしてまで高雄を受け入れてくれていた晴見が無性に痛ましかった。
「今だけなんだよね」
「そうだなあ……でも、俺は忘れないよ。おまえは最高に素敵だった」
「お兄ちゃんもね。ぼくがおっさんになっても忘れないよ」
「そうなったら一緒に飲もう。ビールうまいぞビール」
「苦いからやだ」
 もう一度声高く笑うと、晴見はふと真面目な顔で高雄を見た。
「お兄ちゃん、明後日に帰るんだよね」
「うん」
「じゃあそれまで、目いっぱい女の子してあげる」
「ん?」
 突然晴見は立ち上がり、手早く服を着たかと思うと駆け出した。おい、どうした? と聞く高雄に、小鹿のように岩を渡りながら手を振る。
「楽しみにしててー!」
 なんだありゃ、と高雄はふてくされた。先のことよりも、今ここで日が暮れるまで一緒にいたかった。

 しかし、大事な時間を犠牲にしただけのことを、晴見はやってのけたのだった。
 翌日の夕方は村の盆踊りだった。一族郎党は無論出動予定で、高雄にも命令が下っていた。若いもんが少ないから絶対こい。晴見くんも一緒にだ。
 それは言われるまでもない。しかし当の晴見が昨日の夜から見えないのが気になった。
 夕方現れた晴見は、高雄の度肝を抜いた。
「お兄ちゃん……これ、どう?」
 恥じらいながらくるりと回った晴見の姿は――浴衣だった。
 それも、白地に薄桃の朝顔を散らした、見るからに愛くるしい女物だった。帯は古風な紺の縮緬だが、そこに差した団扇はお茶目な金魚の柄。下駄も白木で鼻緒は赤。あまつさえ、ぬばたまの黒髪を派手な黄色のリボンで、高々とポニーテールに結っている。
「おばさんの昔の、詰めてもらったんだ。このうちならきっと残ってるだろうと思って……」
 手にした団扇に顔の下半分を隠して、可愛い? としなをつくる。よく見ればほのかに白粉まではたいている。どこからどう見ても完璧無双の浴衣ろりっ子だった。
「ほえー……」
 高雄はもはやコメントもない。類人猿のようにあごを落として見つめるだけだ。すると、晴見の着付けをした高雄の母親が、じろりとにらんだ。
「あのね高雄、仮装よ仮装! 年寄りばっかりで花がないから、晴見くんが女の子役買って出てくれたの! これをよーっく見ておきなさい!」
 そう言うといきなり晴見の前をがばっとかき分けた。すらりとした太腿の上に前開きパンツの膨らみがぷっくり。――あう、と晴見は硬直する。
 母親は手を離して、ふん、と意地悪な顔で高雄を見た。
「わかった? 女の子じゃないからね」
「……はあ、よっくわかりましたさ」
 高雄は深々とうなずいたが、意味はまったく逆である。
「よし、行ってきなさい」
 二人は手をつないで家を出た。
 道を歩くと虫が鳴く。コオロギ、スズムシ、キリギリスが畑の中で合唱している。月明かりの下に白い道がうねくっている。道の先からは鎮守の森の笛太鼓が聞こえてくる。
 じゃりじゃりと石を踏む音に、小さな声が混じった。
「ね……どうなの?」
「あん?」
 見下ろすと、幼い顔が不安げに見ていた。
「まだ、なんにも言ってもらってない……」
「ああ……最高。最高の百倍。可愛すぎて俺アホになった」
「そっかあ……」
 嬉しくてたまらない、という風に晴見は身を縮める。その頭に顔を寄せて、高雄はささやく。
「祭りが終わったら、な」
「うん……♪」
 盆踊りの場では晴見はスターだった。卓球少女愛ちゃんでもこうはいくまいと思われるほど爺さん婆さんおっさんおばさんからもてはやされ、櫓の上で三曲も踊らされた。高雄はラムネ瓶片手に、娘を嫁に出した父のような顔でうんうんと見守っていた。
 祭りが終わると、月見と称して脱け出した。月がとっても青いから〜と歌って去る高雄たちを、実の兄弟みたいねえと一族郎党は例によってのんきに見送った。
 あぜ道を歩いて、どの家からも遠い畑についた。ひまわり畑だった。高雄の背よりも高い黄金の大輪が月明かりににょきにょきと突っ立っていた。太陽の似合う花だけど、と高雄は思った。夜は夜で風情があるじゃないか。
 楽しそうな震え声が言った。
「ねえ……?」
 見下ろすと、高雄のひまわりが咲いていた。黒髪を、頭からはみ出すほど大きな黄色のリボンで縁取られた少年の顔。――高雄はものも言わずに彼を抱き上げ、近くの農機具小屋まで歩いて、壁に押し付けた。
「手、ついて」
「ん」
 晴見は従順に壁を向き、手をついて背をこちらに向けた。その手からゴムヨーヨーとりんご飴を取って地面に置くと、高雄は興奮を隠しきれない震え声で言った。
「お尻、こっち出して」
「ん」
 晴見が頭を下げて、くい、と小さなお尻を突き出す。高雄は影のように静かにその背に覆いかぶさった。
 背中から両手を胸に回して、さわさわ、さわさわと撫でる。合わせ目から差し込んで肌に触れると、驚くほどはっきりと鼓動が伝わってきた。ぴこっと硬くなった乳首の下で、あばらがとくとくと揺れていた。
「ぼく、もう立ってる」
 熱い声がささやいた。
「家を出てからずっと。この格好って不思議。なんか男の人意識しちゃうの。今のぼく、すっごい女の子だよ……」
「俺がほしい?」
「うんー……♪」
 鼻を鳴らす晴見の細い体を、高雄はぎゅうっと力をこめて抱きしめた。
 ゆったりした布に隠されたお尻のきれいな丸みを、ズボンの中の勃起で左右になぞる。中央で止めて、谷間にぎゅっと押し付ける。晴見が顔を持ち上げて吐息を吐く。
「あ、あ、おちんちん……」
「うわーやべー……セックスしてー」
「せっくすって……男同士でできるの?」
「できるけど、おまえじゃ多分無理。まだ全然ちっさいし、お尻初めてだし……」
「おしりだったら……頑張るよ?」
「座薬入れるときのこと思い出せよ。あのちっさいの。あれでもすごいきついだろ?」
 う、と晴見は眉根を寄せた。俺のが入ると思う? と高雄が聞く。
「む……無理だね、あはは……」
「調教とかすればできると思うけど、そんなひまねーしな。無理して入れることもないだろ」
「で、でも、お兄ちゃんはそれでいい……?」
 心配そうな顔で振り向いた晴見に、前髪をかき上げておでこに軽くキスした。
「俺、おまえが感じてるの見るの好きなんだもん。痛がっても嬉しくねー」
「……ありがとお♪」
 ぽうっと目元を赤くした晴見が、それならまたおしゃぶり? と聞いた。高雄は首を振った。
「もっといいこと。浴衣まくるぞ」
「うん……」
 晴見が期待に満ちた顔でうなずく。高雄は浴衣の裾をつまみ上げる。ぴんと張ったふくらはぎに続いて、くっきり腱の浮いた膝、そして滑らかな太腿が現れる。その上にパンツに包まれた形のいいお尻。
 浴衣の裾を晴見の背中にかけて、高雄はお尻に目をやった。わずかに開いた太腿の間から、袋のぷっくりしたふくらみが覗いている。そこに手を差し込んで、下からきゅむきゅむと揉んだ。晴見の目がとろんと溶け始める。
「はふ……」
「気持ちいい?」
「うん……そこはじわじわした感じ……」
「こっちはじんじんなのな」
 さらに手を潜らせると、腹に張りつくほど反った性器があった。きゅっと一度触れてから手を引き抜く。
「さー始めるぞ……」
 パンツをくるくると膝まで下げて、高雄は自分のジッパーを下げた。こちらもすでに準備完了で、先につやが浮くほど反っていた。
 それを押し付けた。――晴見の袋の下の畝に。敏感に感じ取った晴見が、ひっ、と震える。
「おちんちん、さわったぁ……」
「こういうの、どうだ……?」
 そのまま高雄は腰を進めた。晴見の股間を持ち上げるような形で、ずるるっ、と性器が滑り込んだ。あはぁ……と、感極まったような声を晴見が上げる。
「お、お兄ちゃんのおちんちんが、ぼくのにぴったり……♪」
 浴衣の陰の暗がり、晴見の白い腹の下で、小さな性器を大きな性器が支えていた。
「わかる? びきびきに勃起してんの」
「わかる、わかるぅ♪ お兄ちゃんもわかるでしょ、ぼくのもぴんぴん……」
「よーくわかるぞ。ほれ……」
「っ、くくぅっ!」
 高雄の先端が、晴見の裏側をずるっとこすり上げた。晴見が大げさなほど鋭く身を震わせる。その耳に触れるほど唇を寄せて高雄がささやく。
「手のほうがいい?」
「ううんっ、これいいっ! 気持ちが来るの、お兄ちゃんのびんびんがじかに来るのっ!」
「そーかあ。でもな、その上こんなこともしちゃうんだぞぉ」
 高雄が晴見の左手を取って、二つ重なった性器を握らせた。それをさらに、自分の右手で包み込む。
 きゅっと握って、くいくい動かした。ふひぃ……っ! と晴見が唇をわなわな震わせる。
「結局おまえにオナニー教えてねーだろ?」
「んっ、んうっ」
「こーやるの。手でつかんで、優しくしこしこ……」
 晴見の手ごと、高雄は右手を前後させる。さらにその狭い空間の中で性器も前後させる。
 指の規則的な刺激と、裏側をごりごりこすり上げる熱い刺激が重なって、晴見の興奮を最高まで引き上げた。
「こ、これいいよぉっ! おちんちんぎゅっとされてる、こすられてる! お兄ちゃんのがじんじんさせてるぅっ♪」
「俺もいいわあ、おまえのちんちん犯してるみたいで……」
「そっ、そおっ! お兄ちゃんのおちんちんがぼくのおちんちんおかしてるのっ!」
 一言一言を、ぞくっぞくっと背筋を震わせて晴見は叫ぶ。それがいとしくてたまらないというように、左手をぎゅっとすぼめて二つの性器をくっつける。
「いっぱいおかして、めちゃくちゃにおかしてっ! ぼくっ、お兄ちゃんにおかされたいよぉ!」
「おう犯すぞっ、めちゃくちゃにしちゃるっ!」
 きゅちきゅちと激しく動く手の輪が、先走りの液ですぐにてろてろに滑り出す。その輪の中に高雄はじゅぷじゅぷと性器をねじ込む。大きく腰を引いて、ぐいっと晴見のお尻を押し潰し、お尻の穴から性器までまんべんなくこすれるようにずるっずるっと突き上げる。
 晴見が目をつぶり、いやいやをするように首を振る。
「ああふっ、いぃっ、ぼくのお尻とろとろっ、お尻溶けちゃう、おちんちんもっ、どろどろになっちゃうぅ!」
「なれっ、どろどろになれっ! 俺もいいっ、晴見のいいっ!」
「はっ、はあっ、ぼくっ、ぼくっもっ」
 はあはあと過呼吸のような激しい息をしていた晴見が、突然ぴんと爪先立ちになって、全身を引きつらせた。細い性器がしゃくりあげるように痙攣するのを、高雄は自分の性器で感じた。
「……お?」
「はっ、はああっ――」
 晴見の左手だけが熱に浮かされたようにきゅちきゅちと動き、溜まったものを絞りだしていた。二つの手の中から白い筋が飛んで、農機具小屋の壁にたぱっ、たぱっと飛び散った。
「晴見、いった……?」
「つ、続けっ、てっ」
 快感にかすんだ瞳で見つめて、晴見が懸命に訴えた。
「お兄ちゃんまだいってない、お兄ちゃんがいくまでっ!」
 その言葉どおり晴見の左手は高雄のものをしっかりと包んで動き続けている。いった直後は動きを止めて余韻に浸りたいだろうに。高雄は胸にじーんとしたものを感じつつ、さらに興奮を強められて動きを再開した。
「それじゃいかせてもらうかなっと」
「いって、いってぇっ♪」
 やや硬さを失った晴見のものを削り取るように、高雄はぐちぐちとこすり上げる。垂れてきた晴見の精液で指も性器もとろとろになる。それが、逆に晴見に犯されたような気分を高雄に催させる。犯し返してやる、と高雄は股間に力をこめる。
「は、晴見ぃっ!」
 びゅくん、びゅくんと噴き出したものを高雄は手で受け止め、すかさず握ったものになすりつけた。晴見の華奢な指も性器もたちまち粘液まみれになる。それを感じたのか、晴見がぶるるっと背筋を震わせた。
「ひゃふぁ、お兄ちゃんの、お兄ちゃんのせーえきっ!」
「続けろっ、おまえも、またっ」
「うん、うんんっ!」
 晴見のものが力を取り戻していた。とくっ、とくっ、と鼓動しながら急速に伸び上がる。高雄は焦りのような思いを抱いた。今度は、今度こそは――
「おにいちゃっ、次いっしょにいこっ? 待ってるから、我慢するからぁっ」
「……晴見っ、おまえ……このやろっ!」
 高雄はあふれだす愛情のままに晴見の開いた唇を奪った。んぷぅ♪ と嬉しそうに晴見も吸い付いてくる。
 それからは一度目の盲目的なぶつけ合いとは違う、互いの呼吸を計るような丁寧なしごき合いになった。くちくち、くちくち、と断続的に左手を動かした晴見が、これでいい? 早すぎる? と何度も振り向いた。高雄はそのたびキスするだけで、右手の動きでそれに答えた。じきに高雄のものも再び固くなって、力強く晴見のものを押し上げ始めた。
 もう二人は体を動かしていなかった。背に胸をぴったり重ねて、男女のそれと変わらない一体感を心ゆくまで味わっていた。小刻みに動かす手の中で、互いの鼓動をはっきりと感じ取っていた。やがて二人は、お互いの根元にとくりとくりと満たされていく熱い流れを感じあった。
「晴見、いい? もういける……?」
「うんっ、いくっ、たまってきたぁっ……」
「俺っ、俺もっ、上ってきたっ、で、出るぅっ」
「いひぃっ、いぃよぉっ♪ いっしょ、一緒にいこぉっ♪」
 くちゅくちゅくちゅくちゅ、と完全に揃った動きで二人はしごき上げた。合わせようとし、合わせようとする動きを感じ、互いの体に満ちた興奮の高まりまでわかりあった。
 最後の一瞬前の空白、二人はきゅうっと体と指を引き締めあい、ささやいた。
「いく、ね……?」
「いくぞ……ぉっ」
「はぁん……っ!」
 びくんっ! と同じ震えが二人を貫いた。触れ合う性器を駆け抜けた流れが、自分のもののように感じられた。ぎゅいっ、ぎゅいっ、と同時に引き絞られた指が、きれいに並んだ二筋の奔流を壁に叩きつけた。
「ひゃは……ぁ……♪」
 恍惚の顔で崩折れかけた晴見を、高雄が抱きしめて後ろへ引いた。どさっと尻もちをついた高雄の胸に、晴見はくったりと力を抜いてもたれかかった。
 はあ、はあ、はあ、と星夜に吐息が昇っていく。燃え尽くした炎が鎮まっていくと、晴見がそっと振り向いて言った。
「今ぼくたち……ひとつになってたよね?」
「うん。おまえの全部がわかった」
「ぼくも……お兄ちゃんと心まで一緒だったよ……」
 ささやいた晴見の頬に一筋のしずくが流れる。高雄はそっとそれを吸う。
 それきり言葉はなく、虫の音だけが響いていた。

 入道雲が高くそびえ、セミがじゃんじゃん鳴く爺ちゃんの家の庭に、じゃりじゃりと石を踏んで車が止まった。
 トランクに荷物を放り込んで高雄が後席に入ると、母屋から青と白の小さな影がすっ飛んできた。窓の外にばん! と顔を貼り付けて喚く。
「お兄ちゃん待ってよ! 黙って行くなんてひどい!」
 苦笑して窓を開けると、高雄はうつむいて言った。
「いやほら、寝てたから。昨日疲れたんだろ」
「起こしてよ! これっきりなんだから!」
「いやいや、待ちな少年」
 顔を上げると、高雄は人差し指を晴見の額に押し付けた。
「また会えるって。……な?」
 晴見は目を丸くした。その前で高雄が窓を閉じた。だがもううつむかず、笑って晴見を見つめていた。
 車が走り出す。一族郎党が声を上げて手を振る。
 その声全部を圧倒するような叫びが、夏の終わりの空に突き抜ける。
「絶対だよーっ!」
 車のリアウィンドウで、もちろんだ、という風に手が振られている。


―― おわり ――



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