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可愛(・∀・)イイ! 彼女
 

「逝ってよし!」
「オマエモナー」
 篠原理梨美と榊原昇平が叫ぶと同時に、周りが静まりかえった。
 クラスメイトたちが、指で眼鏡を直しながら凝視する。
 休み時間の教室だ。数学の授業が終わったばかりのところ。次のテストの問題を予想していた太田順二たちをのぞきこんで、理梨美が中指立てて言い放った。それを聞いた昇平は、条件反射的に突っ込んでしまった。
 逝ってよし、オマエモナー。今や定番を通り越してちょっと古びさえした2ch用語を。
 太田と数人のクラスメイトは、じっと二人を見ている。ここは県下随一の進学校で、彼らは真面目な高校生だ。2ちゃんねるのことなど知っているわけがない。いきなり「いってよし!」などと言われたので驚いているのだ。
 鬱だ、と昇平は胸の中でつぶやいた。
 つぶやいてから、ちっちゃい理梨美を引っ張って後ろに下がった。ひそひそ声で注意する。
「やめろよ、いきなりそういうこと言うの」
「え、まずかった?」
「思いっきり引かれたじゃないか。なんであんなこと言ったんだ」
「問題集の答え、全然間違ってるんだもん」
 大きな瞳をくるくる回して答える。太田がやっていた数学の問題のことを言っているのだ。理梨美は数学だけはできる。
「ただでさえ、おまえはオタだと思われてるのに」
「そーなの? ……小一時間問い詰めたい、のほうが良かったかな」
 理梨美は無邪気に言う。
 昇平はため息をついた。

 学校の帰り道。
「らぶらぶらぶらぶあいらびゅ〜 だって愛してるんだもん♪」
 正体不明の歌――どうせ怪しいアニメかゲームの歌に決まっているのだが――を歌いながら、理梨美がスキップしていく。
 その後をとぼとぼ歩きながら、昇平は真剣に悩んでいた。
「おれ、なんでこいつと付き合ってるんだろ……」
 理梨美は、オタクだった。
 それも筋金入りのヲタだった。
 ヤマト・ガンダム世代の父と花ゆめで育った母の間に生まれて十六年。
 子守唄はアニソンだった。読み聞かせられた本は漫画だった。連れていかれたのはSF大会とコミケだった。ラムちゃんとナウシカと綿の国星とポーの一族で八十年代を成長し、九十年代に入るとパソコンとゲームにまで手を染めた。というか染められた。もちろんこの間、私服は無数のコスプレ衣装である。
 それで、完璧無双なオタ娘ができあがった。
 昇平と会ったのは高校に入ってからである。出会いからしてオタ丸出しだった。入学式の朝、食パンくわえて走っていたところを、角で昇平にぶつかったのだ。きゅ〜☆、と倒れた理梨美があまりかわいそうだったので、昇平は親切に介抱してやった。
 それが運の尽きだった。
 オタにはオタの神がいるのか、理梨美は驚くべき偶然により昇平と同じクラスになり、以来一年半、二人は付きあうことになった。
 他の生徒は、男女を問わず見向きもしない。みんな受験に向けて一生懸命なのだ。それを言ったら昇平もそうなのだが、なし崩しに理梨美と付き合っているうちに、いつのまにかオタスキルをいろいろ身につけてしまい、気がついたら周りに人がいなくなった。
 今日もそうだ。ついにマニアックなネット用語を素で使ってしまった。それ以前に、理梨美の言葉が全部わかる時点ですでにやばい。
「おれ、もう一般人に戻れないのかなあ……」
 考えながら歩いていると、少し先で理梨美がくるんと振りかえる。
「しょーへー! 早く早くっ!」
 手のひらが半分袖に隠れた手をぱたぱた振る。ピクミンのゴムで留めた二つのお下げが、頭の横でぴょこぴょこ揺れる。ギャルゲーも真っ青な短いスカートから白いパンツが見えそうで見えない。商店街の人並みに埋もれそうにちっちゃいが、やたら跳ねるので異常に目立つ。
 オタの神は女の子には甘いらしい。理梨美は、中身がアニメなら外見もアニメなのだった。小動物系の無邪気っ子の可愛らしさを、つむじから靴先まで一分の隙もなく装備している。
「もう、とろとろ歩かないでよっ! 今日はあたしんちに来るんでしょ?」
 駆け戻ってきた理梨美が、ぎゅっと昇平の腕をつかんだ。ブレザーの下のないちちがふにっと当たる。昇平はあわてて腕を引く。
「こ、こら! そんな風につかむなよ、行くから」
 あわてる昇平を見て、理梨美はちょっと大胆過ぎたことに気付いたらしい。自分の胸元に目をやって、ほっぺたを赤くしながら飛びのく。
「やだ、昇平のえっち! なに考えてるの」
「考えてない考えてない」
「今日は一緒におべんきょだよ。えっちなこと考えないの!」
 つん、と鼻をつついて理梨美は走って行く。リスのようだ。かわいい。
 かわいいのだが。
「うーん……」
 昇平は悩みつつ、結局ついていく。

 理梨美の家につくと、母親の佳奈美が現われてにっこり笑った。
「あら、いらっしゃい」
 エプロンをつけて長い髪を三つ編みにしている。下はスリムジーンズだ。そこそこ美人なのだが、どことなくオーラが違う。年はよくわからない。イベント会場でよく見かけるタイプの女性である。
 手の指にたくさんバンドエイドを貼っている。彼女の仕事はお針子、自前ブランドの服飾業である。
「今日はお勉強?」
「そうよ。しょーへーと仲良くおべんきょするんだから。ママ邪魔しないでよね!」
「しないわよ、ちょうどあたしも出るところだったから。待ってて、相方呼ぶわ」
「おじさんいるんですか?」
「あいつがいないわけないじゃない。おーい、行くわよ!」
 佳奈美が階段の上に向かって叫ぶと、やがてトレーナーとジーンズ姿の巨大な影が現われた。のしのし階段を降りてきて、昇平に無言で軽く頭を下げる。
 彼がサンダルをはいて出ていくと、板の間にスクリーントーンの切れっぱしが残った。漫画家なのだ。
「相変わらず人見知りなんだから……」
 くるくると動いて手早く支度を整えると、佳奈美は出しなに、昇平に耳打ちした。
「八時までは、帰ってこないからね」
「どういう意味ですか!」
「二人っきりって意味。ふふ、理梨美をよろしくね」
 ウインクして颯爽と出ていく。昇平はまた赤くなる。
 別に聞かなくても、毎度のことだから佳奈美の考えはわかるのだ。
「ほら、入って入って。今飲み物持ってくるからねー」
 昇平を二階の自室に押しこんで、理梨美は階下に降りていく。部屋の中を見まわした昇平は、首を振る。
「相変わらず徹底してるなあ……」
 壁一面のアニキャラポスター。これは基本である。
 本棚は漫画とCDの絶壁。クロゼットの上はフィギュアの林。カーテンは委員長。ベッドの布団はCCさくら。枕はちゆ12歳。床に畳まれたシャツは先行者。パンツはでじこ。パンツをそこらに置くな。
 空気に混じる女の子のほのかな香りさえなければ、社会不適合者の引きこもりオタ男の部屋と変わらない。
 のみならず、机の周りには、学年六位の成績を誇る昇平ですら正体がわからないような、PC部品が散らばっている。あろうことか理梨美は、自作派なのだ。パソオタスキルもかなり高い。昇平は理梨美に教えられてパソコンを使うようになった。
「はーい、お待ちー」
 にこにこしながら理梨美がやってきて、机に盆を置いた。飲み物はメッコールである。味覚もおかしい。
 顔をしかめながら昇平がメッコールを飲んでいると、理梨美が心配そうに覗き込んだ。
「ねえしょーへー、どうしたの? 元気ないよ」
「なんでもないよ」
「でも、つまらなそうだよ」
「なんでもないってば」
「あずまんがの同人誌見る? それともシスプリのがいい? からサーのもあるよ。ギイ受だけど」
「あのな、理梨美」
 昇平は理梨美の肩をつかんで揺さぶる。頭をかっくんかっくんさせて理梨美は目を回す。
「なにするのよ〜」
「もうちょっと普通の女の子になってくれないか?」
「普通って言われても、わかんない」
 うにゅ〜、と理梨美は人差し指をつつき合わせる。
「しょーへー、あたしのこと嫌いになったの?」
「そうじゃなくてさ」
「しょーへーだけは別だと思ったのに」
「嫌いじゃないって」
「クラスのみんなには無視されても、しょーへーだけは構ってくれると思ってたのに〜」
 どこかあっちのほうを向いて涙をぼろぼろこぼし始める。「やめんか!」と突っ込んでから、ああオタ会話だ、と昇平は頭を抱える。
「んー、しょーへーに嫌われないためには……」
 いきなり理梨美は部屋を出ていった。取り残された昇平は、手持ち無沙汰にメッコールをちびちび飲む。
 だが、戻ってきた理梨美の姿を見て、ぷーっと吹き出した。
「これなら萌えーってなる?」
 おずおずとドアの影から姿を現した理梨美は、着替えていた。
 ただの着替えではない。コスプレだ。体にぴったりしたムートンのようなふわふわのレオタード。腰の周りにはパレオのようなミニスカ。同じムートンのニーソックス。手には肉球のついた手袋。お下げ頭には二つの三角耳。
 ネコミミコスである。
 昇平は手を五本ぐらい出してわたわたと振り回す。
「おま、りりみ、なんでそんなこと」
「しょーへーが元気出るかと思って」
「勉強は!」
「しょーへーと仲良くするほうが大事だもん」
 理梨美は伏目がちにそう言うと、四つん這いになってぺたぺた近づいてきた。
「ねえ、これ可愛い? それとも普通の服のほうがいい?」
 目を細めると、なーお、と鳴いて頬ずりした。
「う……」
 赤ちゃんのようなぷにぷにしたほっぺたの感触と、甘い髪の匂いを感じた途端、昇平はぷちっと切れてしまった。
「理梨美っ!」
 ぎゅっと抱きしめてから、はっと気づく。
「あ……おれ……」
「わあい、やっぱりしょーへーはこういうのが好きなんだ」
 喜んだ理梨美にぺろぺろ鼻の頭をなめられながら、昇平はるーっと涙を流した。
「おれももうオタなんだなー……」
 無邪気さ全開で甘えてくる理梨美を抱いていると、どうでもよくなってきた。ズボンがむくむく膨らんでくる。
 ねこ手で昇平の体をさすっていた理梨美が、それに気付いた。ぽっと顔を赤くしながら、上目づかいに聞く。
「ねえ、ぺろぺろしてあげよっか?」
「べ、勉強は……」
「すっきりしてからやろうよ。ね?」
 小学生のような童顔をはにかませてそう言うのだ。昇平はこれに弱かった。今までも、この部屋で、自分の部屋で、学校で、公園で、こういう風に誘われて、何回やってしまったかわからない。
「する?」
「……うん」
「じゃあ、あたしが最初にしてあげるね」
 理梨美は顔を下げると、昇平のジッパーを下げた。ぴょこんと現われたものを見て、目を輝かせる。
「わ、もうおっきい……」
 しっぽの生えたお尻を振りながら、理梨美は楽しそうにフェラチオを始める。
 さくらんぼのように赤くて小さな唇には、とても昇平のものは全部入らない。先っぽの丸みだけをかぷっと含んで、舌で先端をつつく。あまった茎の部分はねこ手で挟んでさわさわとこする。毛皮の部分がくすぐったい。
 理梨美は本当に優しく舌を動かす。温かい口の中が気持ちいい。ふと気付くと、理梨美も太ももをもじもじとすり合わせ始めていた。幼い顔にうっとりした表情が浮かんでいる。
 理梨美の可愛らしい興奮ぶりに刺激されて、昇平は聞いてみた。
「理梨美……おいしい?」
「おいしいにゃ」
「おれの好き?」
「好き……にゃ。……熱くて……」
 たちまち昇平はいきそうになる。理梨美の耳に顔を寄せて、熱い息とともにささやく。
「いくよ。……顔にかけていい?」
「だめにゃっ」
 理梨美が上目づかいににらんだ。
「耳が汚れちゃうにゃ。洗濯大変だにゃ」
 それから、あーんと大きく口を開ける。
「だから、あたしのお口に全部出して……にゃ」
 ぬぷーっ、と半分近く飲み込まれた。それが理梨美の小さな口の限界だ。
 勢いよく顔を上下に動かされて、昇平はあっけなくいった。
「出るよ!」
 理梨美の頭を押さえつけて、ドクッ、ドクッ、と射精する。飛び出した粘液を、理梨美は慣れた様子でほっぺたの中に溜めていく。
 昇平が鎮まると、最後にちゅーっと先っぽから吸い出して、理梨美は顔を離した。昇平の前で細いのどをそらして、コクリと飲みこむ動きを見せつける。
「ぷはあ……たくさん出たにゃ」
「あー、気持ちよかった……」
「しょーへーは満足?」
「うん、最高だった」
 昇平が答えると、理梨美はにっと薄く笑った。小悪魔めいた色っぽい顔になる。
「しょーへーが満足でも……」
「理梨美はまだ?」
 昇平は、ムートンのレオタードに包まれた理梨美の小さな胸を軽くつつく。にゃん! と理梨美が小さく跳ねる。
 にゃん、にゃん、と何度も鳴いてから、理梨美はとろけるような可愛い笑顔でおねだりした。
「発情期にゃあ……しょーへー、ぺろぺろしてえ……」
 昇平は、ノースリーブのレオタードをひきずり下ろした。手のひら一枚分ぐらいの小さなふくらみが顔を出す。すべすべしたミルク色の肌の先端にぽつんと咲いたピンクの乳首に、昇平は吸いついた。
「にゃあああ……きもちいー」
 嬉しそうに叫ぶ理梨美を押し倒して、昇平は甘い肌を味わっていく。なめればなめるほど理梨美は喜ぶ。小さな乳首がこりこりと堅くなっていて、感じているのがよくわかる。
「ああん、下もぉ……」
 フリルのスカートをめくり上げると、理梨美は両足を大きく開いた。股の細い部分がうっすらと変色している。指をくりくり揉み込むと、すぐに布目から粘液が染み出してきた。
 昇平は布を指でかきわけた。へこんだ内ももの間、ぷっくりと盛りあがったつるつるのふくらみの狭間に、透明感のある綺麗な桃色のお肉が見えていた。
「ぺろぺろして……」
 理梨美がねこ手で昇平の頭を押しつける。言われるがまま昇平は唇をつけて、たっぷり唾液を出しながら舌を押しこみ始めた。
「ああん……そこ、最高にゃ……」
「理梨美はぺろぺろ好きだもんな」
「うん。あったかいのぉ……」
 とろとろとおつゆがあふれ出して昇平の唾液と混ざる。そのエッチな蜜を飲み下しながら、昇平はちゅうちゅうと吸い立てる。
「にゃん……ひあん……」
 陶然とした顔で理梨美はおなかをひくつかせていたが、じきに追い詰められたように言った。
「舌じゃ……舌じゃだめにゃ……もっと奥を、昇平のでつんつんして……」
「エッチだな、理梨美」
「エッチなのぉ……あたしは今にゃんこなの。ケモノなのぉ……」
 理梨美は体を起こすと、ぐるりとうつぶせになって、お尻を突き上げた。レオタードのすそを引っ張って、秘密の部分をじかに見せる。
「にゃんこだから……後ろから……」
「わかったよ」
 昇平は膝立ちになると、小さなお尻の間のとろとろに溶けた花びらに、復活した自分のものを押し当てた。
「入れるよ」
「来てぇ……」
 ずぬっ、と昇平は理梨美の中に押し入った。蒸したように熱い粘膜の中に、堅いものを潜りこませていく。
「はにゃあああ……」
 奥へと押しこむに連れ、理梨美がぐうっと背筋をそらせる。理梨美の幼い体の中に三分の二ほど入ったところで、いったん止めた。
「理梨美、どう?」
「と……届いてるにゃ。昇平のがこつんって当たってる……」
「でもまだ入るんだよな」
「や、やめ……にゃあんっ!」
 先っぽに当たるぐにぐにしたものを、昇平はさらに押し上げた。ずぶりと全て入ってしまい、締め付けがきゅーっと強くなる。
「は……あ……子宮が上がっちゃった、にゃ……」
 口をぱくぱくさせながら、うつろな目で理梨美がつぶやく。昇平は気持ちよさのあまり身震いしている。思いきり引き伸ばされた理梨美の管が、昇平のものをぴったりとくるんでいる。
「動くよ」
「やあっ……にゃっ!」
 昇平は理梨美のお尻に腰を打ちつけ始めた。ぱんぱんぱん! と音が上がり、あふれたおつゆがしぶきになって飛ぶ。
 百七十五センチの昇平が百四十八センチの理梨美にのしかかっているのだから、昇平の体が理梨美をすっぽり覆ってしまっている。
 理梨美がもがいても、どこにも逃げ場がない。胸と首を抱きしめられて、おなかに突き込まれるサイズオーバーのものを受けとめるしかない。
 でも、これが初めてではない。
「にゃああ……ピリピリするぅ……」
 理梨美が、それこそ動物のように舌を出して、はあはああえぎ始めた。
「イイにゃあ……しょーへーの堅いの、すっごくいいにゃ……」
「ゾクゾクが来た?」
「来たにゃっ。壊れちゃいそうなゾクゾク、背中に、来たにゃあっ!」
 昇平はやにわに理梨美の体を抱いて、引っ張りあげた。床に腰を下ろして、ひざの上に理梨美を抱えこむ。小さな理梨美は、体育座りの格好で抱えると、コンパクトに昇平の腕の中に収まってしまう。そのほうがずっと激しく動ける。
 まるく抱えた理梨美の体を、昇平は思いきり上下させて、堅いものの上に打ちつけた。
「最高にゃあっ! もっとがくがくしてっ、ずぷずぷしてっ!」
 昇平にすべてを任せ切った状態で、理梨美が泣き叫ぶ。興奮は最高潮で、あそこはゼリーのように溶けている。
 昇平も二回目の絶頂を迎える。
「理梨美、いくよ、いくよっ」
「うん、来てっ! 理梨美のおなかに、いっぱい出してぇっ!」
「理梨美、理梨美っ!」
「しょーへーっ!」
 叫ぶと同時に昇平は、理梨美のお尻を自分の腰に堅く引きつけた。理梨美の子宮口に堅く食いこんだものが、どぷどぷっと精液を吐き出す。
 それを感じた理梨美も、固めた全身をさざなみのように震わせて叫ぶ。
「で、出てるにゃあっ!」
 絶頂に達してひくひく震えつづけるネコミミ少女の体内に、少年は何度も何度も粘液を注ぎこんだ。

「あー、気持ちよかったあ」
 一息付いてメッコールを飲みながら、ほやほやと理梨美が言った。
 その横では昇平が顔を押さえている。
「結局やっちゃったよ……おれってほんとにダメだな」
「あ」
 理梨美がつぶやいて、おなかを押さえた。立ちあがる。
「トイレ?」
「うん、ちょっと中から出てきちゃった。……しょーへー、いっぱい出すんだもん」
 ちょっぴり照れ気味に言うと、理梨美は出ていった。昇平は複雑な顔でうなる。
「うーん……喜んでくれるのはいいんだけど……」
 理梨美とはいつも生だった。出来てしまうかもしれないのだが、当人は気にしていない。卒業したらすぐ結婚すればいいよ、と呑気なことを言っている。
 そして恐ろしいことに、理梨美の両親もそれを承知しているのだ。以前昇平は佳奈美に直接言われたことがある。
 ――理梨美はあたしたち夫婦に負けないぐらい濃いオタクだから、ほっといたら同じオタとしか結婚できないわ。昇平くんみたいなフツーの男の子を捕まえたのはあの子にしては上出来。あたしも応援するからね。
 理梨美は、罠の中に置かれた甘い餌なのだった。
「でも、その餌ほんとにおいしいんだよなー……」
 可愛らしさでは学校一なのだ。オタクでなければ、人気者になっていただろう。そこが昇平の悩みどころだった。
「うーん……」
 考えていると、理梨美が戻ってきた。まだしつこくコスプレを続けている。
「お待たせ。すっきりしたことだし、マターリおべんきょする?」
 これだ、と思いながら昇平は突っ込んだ。
「その服、気が散るからもうやめろよ。なんでまだ着てるんだ?」
「えーっ、これ昇平に見せようと思ってわざわざ自作したんだよ」
 瞬間、昇平は思わず言ってしまった。
「(・∀・)ジサクジエーン 」
 ぺたんと座って面白そうに見上げる理梨美の前で、昇平は脱力しながらつぶやいた。
「は、反射的に出てしまった……」
「しかも微妙に意味違うし。逝ってよし!」
「マジ逝きたいよ……」
 落ちこむ昇平に、理梨美がちゅっとキスする。
「いいってば。あたし、そんな昇平好きだよ」
「……そーだな。まあいいか、はっはっは」
 お似合いなのかもしれない。やけっぱちで昇平は笑ったのだった。



 モエケイネライデ、サケノンデオモイキリヴァカニカイテミマシタ。
 キニイラナカッタラアボーンシテクダサイ。ツーカデフォルトデアボーンダロコンナノ。

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