ベッドサポート・カンパニー 後書き
今確認してみたところ、BSCシリーズの総量は、400字詰め原稿用紙に換算して465枚にも達していました。これは薄い文庫本2冊分に当たります。
私はごく軽い気持ちでこのシリーズを始めましたが、たった一ヵ月でこんなにも膨れ上がってしまいました。それはやはり、登場人物に与えた強力なパワーのおかげだと思います。私に内在する性欲だけでは説明がつかない。
頼れる姐御の倫子、ハイパーダッチワイフの愛美、COOL&BEAUTYのなずなの三人はもちろん気に入っています。特に愛美は、まだ出番が少なすぎた。彼女についてはいまだに外見のイメージが固まっていなくて、便利ツールとしての使い方ばかりしてしまいました。それが惜しい。
皆よくやってくれましたが、やはり一番のお気に入りは歩と攻造です。この二人なくしてこのシリーズは生まれなかった。中間部分で彼らをほっといてしまったので、最終話ではめいっぱい頑張ってもらいました。
では、彼らについて。
今回、濡れ場の直前まで迷ったことがひとつあります。小さなことですが、女装美少年ものを書く上ではかなり重要なポイント。
「歩を女にするかどうか」がそれでした。
友菜は、あれは男性器のついた女です。設定上はともかく、イメージはそういうもので書いています。しかし、歩を同じものにする気はありませんでした。「彼女」ではなく「彼」のまま、攻造と結び付けてやりたかった。
すると問題になるのが攻造のメンタリティで、ノーマルの彼は、思ったとおり土壇場まで私に抵抗してくれました。それを理詰めで説き伏せて、やっと「最高のパートナー」と言わせるところまで持っていったわけですが……。
私の想像では、友菜はよくても歩はだめ、という人が出てくるのではないかと思います。だめなのは当然で、歩たちのやってることはきっぱりホモです。ホモは私も嫌いだ。
嫌いなんですが、彼らがくっつくプロセスを構築するうちに、実際のホモセクシュアルの成立過程がかなり追跡できたような気がします。攻造が歩にオナニーについて聞くところや、彼が歩にフェラチオをする前の屈託など。
それが今回最大の収穫かもしれません。
ふたなり少女系擬似ホモ
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砂々塚的女装美少年ホモ 萩尾望都・竹宮恵子系美少年ホモ
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レッツ&ゴー系ショタホモ レディースコミック系耽美成人ホモ
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薔薇族系ガチンコホモ
ホモ好きにはこのような深度分布があると思いますが、私は砂々塚とふたなりの中間あたりに位置しています。しかし、今回歩たちを書くためには、やはり一番下の階層まで考えざるを得ませんでした。盛りあがった筋肉がぶつかりあう汗臭い世界について考えるのはかなり苦痛でしたが、なんらかの含蓄があるのも確かで、うまくその中から見栄えのいいところを拾ってくれば、歩と攻造をくっつけてやれる、と狙いをつけました。
その結果が7話です。いかがでしたでしょうか?
もう少し女装美少年のことを。
私が最初にこの種の存在を意識したのは、おもしろいことにまったく逆の事件があったからです。
「戦国自衛隊」という映画があり、その中で、自衛隊員の男が戦国時代の少年武士に槍で刺されるシーンが出てきます。この少年が目のぱっちりした丸顔の可愛らしい美少年で、目に焼きついて消えなかった。
おれはホモなのか? そうなのか? と苦悶していた時に、「戦国自衛隊」の資料を見て驚きました。その少年は女の子、若き日の薬師丸ひろ子だったのです。つまり男装の美少女。
そうか、やっぱりおれはホモじゃなかったんだ、とほっとしましたが、オルタナティヴ美少年について意識してしまうようになったのは、この時からですね。
日出処の天子、ポーの一族、パタリロなどからも影響を受けましたが、初めて女装美少年のエロ小説を書いたのは、「ここはグリーンウッド」のネタでです。瞬。
瞬&蓮川です。ホモパロが得意な女性作家は、まずジャニ顔の光流と忍、及び蓮川兄に走ってしまうようなので、この組み合わせは珍しいのではないでしょうか。出来が悪くて見せられませんが、15本ほど書きました。
以後レズやロリなどを書きつつ、友菜に続き、グラディナが出てきて、現在に至ります。
BSCの話に戻ります。
ベッドサポート・カンパニー第1期シリーズは終了しました。第2期のネタはありますが、始めてしまうとまた一ヵ月間戦争になるので、次に大きなひまが空いたときに書くことにします。数ヶ月後か、数年後かはわかりません。第一、キスクラスの続きも書きたい。
しかし、BSCの5人は本当に愛しい連中でした。私としては男の攻造なんかどうでもよかったんですが、書いているうちにどんどん情が移って、いいやつに思えてきました。これは次でもしっかり書かなければいけない。
愛美もです。本来私は女装っコ好きである前にロリコンだったはずなのに、この娘を書ききれなかった。もったいない。次ではぜひいろんな体験をさせてやらねば。
なずなはほっといても出てくるでしょう。設定的にも濡れ場的にも、彼女を出さなければこのシリーズは動かない。多分苦境に陥るでしょうが、最後には最大の報酬を考えてあります。
倫子は一同の後見人的存在、というより背景に近いキャラクターで、4話でも彼女の視点が存在しませんでした。ですが、彼女にだってドラマはあります。酒と涙と十年の想い。大人の話になるでしょうね。
そして歩。歩と攻造については、7話の最中にいろんなシチュエーションが浮いたので、これを全編にちりばめたい。しかし最後が問題です。どうしようか……。
また、BSC社の業務自体も、第1期ではそれほど使っていません。これを前面に押し出した、5人の絡まない話も考えています。
それやこれやで、構想だけはあと2冊分ぐらいはあります。が、まだまだ先の話です。本当にいつになるかわかりません。
どこかの出版社で拾ってもらえれば、仕事になるので専念できますが。
無類に気に入った話なので、こんなに長々と後書きを書いてしまいました。申しわけありません。
最後になりましたが、今まで読んでくださった方々、ありがとうございました。1話仕上げるたびに、掲示板の感想などで駆動力を補給していました。
このシリーズが皆さんのお役に立てば幸いです。
それでは。
2001.3.20 扉 行広