安都扉娘子 あとのとびらのおとめ

伝不詳。安都氏(物部氏と同祖と伝わる)出身の娘子で、扉は字(あざな)か(『萬葉集古義』)。『萬葉考』はアツミノイラツメとよむ。万葉集巻四に一首のみ。

安都扉娘子が歌一首

み空行く月の光にただ一目相見し人の夢にし見ゆる(万4-710)

【通釈】空を渡ってゆく月の光のもとで一度だけ目を合わせた人が、二度も三度も夢に現れるよ。

【語釈】◇相見し 情を交わしたことにも言うが、ここは「ただ一目」とあるので、「視線を交わした」あるいは「逢った」ということであろう。

【補記】原文は「三空去 月之光二 直一目 相三師人之 夢西所見」と、漢数字を意図的に用いている。大伴家持を中心とした贈答歌群中にあり、家持の交際圏に属した人であろう。

【他出】古今和歌六帖、綺語抄


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成20年09月29日