清江娘子 すみのえのおとめ 生没年未詳

伝未詳。持統太上天皇の難波宮行幸の時、長皇子に詠進した歌が万葉集巻一にある。摂津国住吉に居住した女性であろう。宴席に侍った遊行女婦(うかれめ)かともいう。

太上天皇の難波宮に幸せる時の歌

草枕旅ゆく君と知らませば岸の黄土(はにふ)に匂はさましを(万1-69)

右の一首は、清江娘子の長皇子に進(たてまつ)りしものなり。姓氏未詳。

【通釈】ご旅行中のあなたさまと存じておりましたなら、断崖の赤土であなたさまの魂を染めてさしあげましたのに。

【語釈】◇太上天皇 持統太上天皇。◇岸の黄土 断崖の赤土。赤や黄に発色する物質は霊力を持つと考えられた。◇匂はさましを 「あなたの衣に色を染め付けて差し上げたかったのに」と解釈するのが普通だが、「断崖のそばにご案内して、黄土の霊威をあなたの魂に付着して差し上げたかったのに」ということであろう。

【主な派生歌】
白浪の千重に来よする住吉の岸の黄土ににほひてゆかな(*車持千年[万葉]巻六)
馬の歩み押へ止めよ住吉の岸の黄土ににほひてゆかむ(安倍朝臣豊継[万葉]巻六)
かへす田にまかする水も住よしの岸のはにふににほふ春風(三条西実隆)
住の江の岸の埴生にけふもかも袂匂ひて君が行くらん(鵜殿余野子)
住の江の松の緑の春は来ぬはにに匂はせ妹が衣を(千種有功)


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成21年04月05日