二条太皇太后宮大弐 にじょうたいこうたいごうぐうのだいに 生没年未詳

系譜未詳。藤原北家小野宮家流、若狭守などを勤めた通宗の娘と推定されている。母は一説に大弐三位女とも。「尊卑分脈によれば、通宗女としては、村上源氏の大納言師頼室となり、左中弁師能を生んだ女子の存在が知られるが、あるいはこの人か」(新編国歌大観解題)。
はじめ堀河天皇内裏に仕え、のち斎院令子内親王(白河院皇女)に仕える。斎院退下の後、堀河天皇の皇后となった令子にひきつづき奉仕する。寛治七年(1093)の郁芳門院根合、永久四年(1116)の雲居寺結縁後宴歌合などに出詠。晩年の自撰と推測される家集『二条太皇太后宮大弐集』(以下「大弐集」と略)がある。金葉集に「皇后宮大弐」の名で初出。勅撰入集十九首。

ともし

狩人(かりびと)の夏の夜ふかくいるさ山ともしの影の見えみ見えずみ(大弐集)

【通釈】夏の夜、狩人が深く入って行く入佐山。照射(ともし)の火影が木陰に揺れて、見えたり見えなかったりする。

【語釈】◇ともし 照射。鹿を狩るための篝火や松明。◇いるさ山 入佐山。古くから但馬国の歌枕とされるが、確かでない。「入る」と掛詞。

郁芳門院歌合に

衣手は涙にぬれぬ紅のやしほは恋の染むるなりけり(万代集)

【通釈】袖は涙に濡れて、紅(くれない)になってしまった。紅の八入染(やしおぞめ)というのは、恋が染める色だったのだ。

【語釈】◇やしほ 染色法の名。幾度も染汁にひたして染める。◇恋の染むる 恋(こひ)のヒに緋を掛ける。恋が袖を紅に染めるとは、血涙を流すことを言う。

【補記】寛治七年(1093)五月五日、白河天皇の第一皇女郁芳門院が六条院で催した菖蒲根合に出詠された歌。

堀河院御時、宮うちにさぶらはせ給ひけるに、うへの御琴ひかせ給ひけるを聞きたてまつりて

琴の()はむべ松風にかよひけり千とせを()べき君にひかれて(玉葉1075)

【通釈】なるほど琴の音は松風と響き合うものですね。松と同じように千年のご寿命を約束された陛下に弾かれて。

【本歌】大中臣能宣「拾遺集」
千年までかぎれる松もけふよりは君にひかれて万代やへむ
  斎宮女御「拾遺集」
琴の音に峰の松風かよふらしいづれのをより調べそめけむ


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成20年12月27日