2  次頁へゆくまへがきへ戻る       *                                                                       ひを呼び合つて鶴があちこちで盛んに鳴いてゐる  河口の風が寒く吹きつけるらしい 奈呉の江では 連れ合                                 嬬呼び交はし鶴さはに鳴く 一七|四〇一八                          水門風さむく吹くらし奈呉の江に                            無題                 *                                         休めようといふのか 夜が更けた頃 羽ばたきながら鳴いてゆく 誰の田に羽を  待ちかねた春が来て 何かと切ない気分でゐるところに                                羽ぶき鳴く鴫誰が田にかすむ 一九|四一四一                          春まけて物悲しきに小夜更けて                            翻び翔る鴫を見て作る歌          *                                          十二日は 天平勝宝五年正月十二日 てゐる 居る場所がなくて        川洲にも雪が降り積もつたからか 御所の内で千鳥が鳴い                                千鳥鳴くらし居むところなみ 一九|四二八八                            川洲にも雪は降れれや宮のうちに                                    十二日 内裏に侍ひて千鳥の喧くを聞きて作る歌