(注)万葉における郎女と女郎(いずれもイラツメと訓むのが通説)の書き分けは、巻二で石川女郎の字(あざな)を山田郎女としている(02/0129)以外、混乱は見られない。例えば家持と歌を贈答した紀女郎は常に女郎と表記され、大伴坂上郎女は常に郎女と称されている。郎女と表記されている人物に共通するのは、大納言以上の大官を輩出している権勢家(藤原氏・大伴氏・巨勢氏・石川氏など)の子女であることであり、一方女郎と表記された女性の出身は、紀氏・笠氏・中臣氏など、主として高卿には至らない五位以上の官吏を輩出している氏族である。同じ大伴氏でも、大伴女郎との表記(04/0519)もあるが、この女性はおそらく傍系の出身なのであろう。例外は家持の妹留女之女郎(父は大納言大伴旅人)であるが、これは家持が自分より年少の親族について謙遜した表現を取ったものかと推測される。
関連サイト:石川郎女(たのしい万葉集)