超リアル LED ランタンの製作 (2012/10/22/〜2012/11/01)

(Last update:2013/01/20)


改造品勢揃い
動作の様子

【きっかけ】

 とある夏の日。「キャンプがしてみたい・・」 とカミさんがのたまった。

 管理人宅の場合、これを「単なる願望」として適当に聞き流すと家庭内冷戦は必至。そう、これは願望ではない。「キャンプに行くぞ」との御神託であり絶対命令なのだ(泣)

 そんなわけで実に 33年ぶり @o@ のキャンプ出撃となったのだが、間に合わせに持参した中華白色 LED ランタンの何と風情の無いことか。白色 LED の色味が実に寒々しく、他のキャンパーが灯すガスランタンやオイルランタンの暖かな光がとても羨ましく思えた。

 その日以降、管理人は理想の LED ランタンを模索することになる。そう、カミさんは迂闊にも光モノ好きの「パンドラの箱」を開けてしまったのだ・・・。


【基本コンセプト】

 キャンプ用 LED ランタンとしては既に GENTOS 777XP という鉄板の市販品がある。コスト・明るさ・持続時間とも文句無く、管理人も入手済みだったり。

 よって今回製作するのは「明るさ」を追求したものではなく、あくまで「風情」を楽しむ LED ランタンとする。


【市販のランタン選び】

 以前こちらで製作記を書いた通り、以前から管理人は sanokiya さんの超リアル LED キャンドル FMC シリーズを愛用している。よって LED キャンドルは文句なく FMC-01 で決定。

 が、しかし。

 FMC-01 は実装の巧拙で印象がガラっと変わってしまう。実際、ヘタな実装では 100円の中華 LED キャンドルとさほど変わらない雰囲気になってしまうことも ^^;。要するに何に組み込むかにそれなりの試行錯誤が必要なのだ。

 そのため管理人はあまたの 100均ショップを徘徊し、はたまたネット通販の商品画像を睨んでは FMC-01 の組み込みに最適そうなものを片っ端から購入・分解し、その効果を確認することとなった。

 今回はその試行錯誤を経てそれなりに満足のいった作品の例と、キャンプ運用に向く追加回路を紹介する。


ベースとなる市販の「スマイルランタン」 改造 FMC-01 の様子
リセット IC を空中配線した
昇圧コンバーターを空き
スペースに配置
電池ボックス内の様子
電源スイッチをホットボンドで固定
基板はホットボンド固定。
本体内にフォトトランジスタを実装。
キャンプ場での様子

(2012/10、@南アルプス
三景園オートキャンプ場)
サイトに大量配備

(2012/12、@つくばね
オートキャンプ場)

凍結上等(爆)

(2013/01、@鹿沼出会いの森
オートキャンプ場)

【実装例その1: FMC-01 in スマイルランタン】


 分解の容易さや実装スペースの広さ、揺らぎ効果、逆さ吊りにすると比較的防水性が高い、ことから FMC-01 を内蔵するには一番オススメの商品。2012/10 現在、ネット実売価格 800円とコスト面もバッチリ。(ただし値段相応で作りが荒いのはご愛嬌 ^^;)

 電源は 単3 x 2 + ストロベリーリナックスの超小型昇圧コンバーター MCP1640 2.0V〜5.5V 可変 DC-DC コンバータモジュールで昇圧する実装とした。この昇圧コンバーターモジュールの良いところは

 (1) 価格(500円強)
 (2) 省サイズ
 (3) 出力電圧可変
 (4) シャットダウン時は負荷を切り離して省電力モードに移行
 (5) シャットダウンコントロール用プルアップ抵抗実装済

 という点。

 この作品では昇圧コンバーターの出力電圧を 3.4V に、LED の電流制限抵抗を 100Ω → 10Ω にし、LED への電流を絞って平均消費電流を 25mA 程度に抑えた。標準 FMC-01(5V, 60mA)より多少暗くなるが、明るさを犠牲にしても単 3 ニッケル水素(2000mA/h 前後)で 70時間の連続稼働時間はキャンプにとって非常に都合が良い。

 なお、出力電圧を 3.4V に設定したのは新品乾電池(初期電圧 1.6V)でも昇圧コンバーターの動作条件「昇圧前電圧 < 昇圧電圧」を満たすよう配慮したため。ニッケル水素電池専用にするなら 3.3V 固定出力の昇圧コンバーターを使用するのもアリ。

 管理人はニッケル水素電池運用をメインにするので、過放電防止用にリセット IC(検出電圧 1.8V)を昇圧コンバーター上に空中配線し、さらに昇圧コンバーターを FMC-01 基板上に配置した(写真参照)。もちろん、実装スペースは十分あるので、昇圧コンバーターを電池ボックス内に配置するのも十分可能。

 一方、フォトトランジスタは本体内にホットボンドで接着固定。これでキャンプ初日に設置後、撤収日まで放置可能できるので運用上非常に便利になる ^^v

 さて、このランタン改造の注意点は、この製品にもともと付いているタクトスイッチが秋月で売られているタクトスイッチよりもキートップが低い点。このタクトスイッチを保護するゴムはこの低いキートップに合わせてあるので、秋月のタクトスイッチで代用すると「押しっぱなし」状態になってしまう。

 結局もとからあった基板上のスイッチと IC を繋ぐパターンをカットし、基板をそのまま流用することで解決したが、むしろタクトスイッチを電池ボックス内に設置するといった割り切った実装もアリだろう。

 もう 1つの注意点は、電池カバーの構造上 4本の電池のうち両脇の 2本の固定が甘くなり、それが原因で接触不良を起こす個体がある、という点(ぉぃぉぃ)。そこで真ん中の 2本に電池を、残りの 2本分の空きスペースに電源スイッチをホットボンド固定で設置した(写真参照)。

 このスマイルランタンに FMC-01 を組み込んだ場合、ホヤの大きさに対して発光部が小さく、室内で見る限り非常に地味な印象になるのだが、実際のキャンプ場ではむしろホヤの「余白」部分が素晴らしい揺らぎ感を醸し出してくれた。

 結局、管理人はこのスマイルランタン版を 4台増産。キャンプ場で「炎揺らめくスマイルランタン」が大量配備されたテントを見つけたらそれは恐らく当管理人のテントなので一声かけていただきたい ^^;

 ちなみにこのランタンの外形は「ケシュア」ブランドの LED ランタン「BL100」と同一。こちらはスマイル模様の代りにケシュアのロゴが控え目に入っており、硬派なキャンパーにはそちらの方がオススメかも(ただしお値段は倍)。


ランタン改造の鉄板商品
セリアの 4 LED ルームランタン(100円)
FMC-01 発売初期の
丸基板が何故かぴったりサイズ @o@

本体内にタクトスイッチと
フォトトランジスタを設置
昇圧コンバーターにリセット IC と
フォトトランジスタを空中配線
本体内の様子。
昇圧コンバーターをホットボンド固定 ^^;
仕上がり具合

【実装例その2: FMC-01 in セリア 4 LED ルームランタン】


 多くの先人達の改造ベースとして愛用されてきたポピュラーかつ至高の商品、セリアの「4LED ルームランタン」への実装例。

 このランタンの魅力は価格(たったの 100円!)、分解の容易さ、小型、という点。だが FMC-01 を仕込むには若干のノウハウが必要。

 ハードウエア(回路、定数設定)は前述の「スマイルランタン」と同じで、電池 2本 + 昇圧コンバーターの構成。平均消費電流は 25mA なので単 4ニッケル水素(800mA/h 前後)x 2 本で 30時間以上の連続稼動が可能。

 リセット IC(検出電圧 1.8V)とフォトトランジスタは昇圧コンバーター基板に空中配線し、ケースにまとめて接着している点がスマイルランタンとは異なる(写真参照)。


改造のポイント

 具体的な改造方法はネジを全部外して、本体、ホヤ、底部リフレクタ、円錐形の上部リフレクタ兼上蓋(以降、蓋と略記)、フックに分解する。ここらへんは先人達の改造例がネット上にたくさんあるので、「セリア ランタン 改造」でググってもらいたい(殴)

 FMC-01 は写真の通りホヤ内部への実装となる。写真は FMC-01 発売初期の基板(このランタンに仕込むように設計されたのか、サイズがピッタリ・・・汗)を使用したため綺麗に収まっているが、現行 FMC-01 添付の正方形基板はホヤには入らないので別途ユニバーサル基板で配線する必要がある。

 一方、昇圧コンバーター(リセット IC とフォトトランジスタ空中配線済み)は本体内にホットボンドで固定。FMC-01 も基板の裏側をホットボンドで固定している。

 電源スイッチはもとから付いている底面の押ボタンを流用。この電源スイッチは系統 1 → OFF → 系統 2 ON → OFF、を繰り返すので、系統 1 と系統 2 を短絡させて使用する。

 で、肝心のホヤ部分は、FMC-01 がホヤ内部に実装される関係上、もとから付いていた上部リフレクタが使えなくなる。そこで底部リフレクタのネジ用タップをニッパーでカットし、さらに裏返して上部蓋に流用することでスペース問題を解決した。底部リフレクタにもともと空いている穴にはアルミテープを貼っておくとベター。

 最後にホヤの内部にトレーシングペーパーを巻きつけ、パーツ同士を接着。接着後はメンテ不可なのが最大の難点か。

 実際のキャンプ使用ではサイズが小さすぎてインパクト的にはイマイチだったが、テント内でマーカーとして使用すると非常に便利だった。


ガラスのコップをホヤ代わりにしてみた ドライブトランジスタを外付けして
9 LED を実装
電池ボックスの裏側。
FMC-01 初期基板とリセット IC、
スイッチ用に FET を実装。
リセット IC と FET(変換基板に実装)
部分拡大図
最終仕上がり具合

【実装例その3: FMC-01 in 詳細不明ランタン ^^; 】


 数年前に購入したもので詳細不明。2012/11 現在、類似品をネットでたまに見かける。

 この作品の特徴はドライブトランジスタを追加して LED x 9 で光量を増強している点。そのため平均消費電流は 200mA で、単三ニッケル水素電池で 10時間ぐらい点灯した。

 電源は素直に単三 x 4。FMC-01 基板上の三端子レギュレーターを取り払って電源を直結しているので、新品乾電池では 6V over となり PIC が壊れる可能性大。よって事実上ニッケル水素 x 4 (4.8V) 専用となる。乾電池での使用も想定するなら、ストロベリーリナックスの TPS63060 可変型昇降圧DC-DCコンバータモジュールを追加すれば対処可能。

 過放電防止にはリセット IC (3.7V) とスイッチ FET を投入(詳細は回路図参照)。この回路の注意点としては FET に十分 Vth 低いものを使用している点。管理人は秋月で売っている 2N7002K(Vth max = -1.2 typ)を使用。

 肝心の「ホヤ」はスリ入りのガラスコップを採用。基本的にキャンプ用品にガラスは使いたくないのだが、本当に寸分違わぬサイズでランタン内に収まったため、運命的なものを感じて採用。

 で、実際の使用感だが 9 LED でもメイン照明としては光量不足。そこでテント内に吊り下げて常夜灯として使用してみた。LED に sanokiya さんで扱っている炎色 LED を使用したこともあり、外から見るとテント内で本当の火を使っているような雰囲気が出てなかなか良い感じであった ^^


改造のベースになったセンサーライト
ネット価格900円台
現在は廃版となってしまった FMC-Evo。
この縦長基板に合う「入れ物」を見つけるのが
一番大変だった ^^;
Evo 基板の裏には追加 LED と
昇圧コンバーター、リセット IC を実装
基板を立ててホットボンドで固定
スイッチの横にフォトトランジスタを配置

【実装例その4: FMC-Evo in 人感センサーライト】


 震災前に入手したまま死蔵されていた FMC-Evo(現在では廃版)を組み込んだ作品。改造のベースとなったのは人感センサーライト(2012/10 での購入価格 900円台後半)。FMC-Evo の縦長基板が入ること、電源スイッチが流用できること、穴あけ加工がゼロで済むこと、ホヤ不要、からまさに願ったり適ったりの商品。ってか、FMC-Evo の縦長基板が入る「入れ物」がようやく見つかったか、というのが正直なところだったり(爆)

 電源は単四 x 3 でストロベリーリナックスの AS1322A 昇圧型DC-DCコンバータモジュール (3.3V/5V) Ver.2 を使って 5V に昇圧。平均消費電流 200mA で、ニッケル水素電池(850mA/h)で 5時間連続稼動を確認。

 こちらにもリセット IC(2.7V)とフォトトランジスタを投入しており、過放電防止と自動 ON/OFF が可能になっている。

 FMC-Evo 基板はケース中心にホットボンドで固定。この位置に固定すると基板裏面がまったくのデッドスペースとなってしまうので、もともとセンサーライトに付いていた電球色 LED x 4 を基板から部品取りし、基板裏側に追加実装してみた。その結果、表面と裏面で 2 色の異なる揺らめきが楽しめる不思議なモノに仕上がった(汗)。カミさん曰く、「横から見るとホームランバーみたい」。確かにアイスキャンデーに見えます、はい(汗)。

 で、最終的に問題発覚(爆)。平均消費電流が 200mA なので安価なマンガン電池ではすぐに電圧降下して停止するし、ニッケル水素電池でも連続 5時間程度しか電池が持たない。正直、キャンプには向かないものになってしまった。どうしてもキャンプで使うならモバイルバッテリから給電するのが正解か。


過放電防止回路、明るさ検出回路など

ハードウエア関連追加情報

【低電圧検出回路、明るさ検出回路】

 キャンプ運用で便利なように、過放電検出回路と明るさによる自動 ON/OFF 回路を追加してみた。

 いずれも昇圧コンバーターの SHUTDOWN 端子を L にするだけの簡単回路で、リセット IC とフォトトランジスタを、自分に必要な方(あるいは両方)実装すれば良い。

 ただしフォトトランジスタについては本来コンパレーター等を使って CMOS 入力に対して中間電位を取らないようにすべき。今のところ問題は発生していないが、心配な御仁はマネしない方が良いかも ^^;


【リセット IC】

 一般的な Active Low でオープンドレイン出力のものを使用する。リセット出力のプルアップ抵抗は昇圧コンバーターに実装済みのものをそのまま利用できるので、3本足パッケージのリセット IC なら昇圧コンバーター上に空中配線が可能(写真参照)。

 検出電圧はニッケル水素電池 2 本なら 1.8〜2.0V、3本なら 3.6〜3.8V。管理人は 2.7V 用は手持ちにあったが、3.7V 用は持っていなかったので、秋月で購入できる電圧可変設定タイプの M51957B を使用した(回路図参照)。

 なおリセット IC を投入しても、電圧低下検出 → 電源 OFF → 電池電圧回復 → 再度電源 ON、を繰り返して点滅動作となり完全な電源断にはならない。点灯しっ放しよりは確実に過放電までの時間を稼ぐのが目的になる。


【フォトトランジスタ】

 秋月で売っている JRC の NJL7502L を使用。

 ケースにピッタリサイズの穴(3φ)を開けて固定する場合、モールド側面からの光がカットされてしまいより指向性が高くなるので実装には注意が必要。


【FMC-01 改造の注意点】

 電源ラインのコンデンサはちゃんと実装すること(最低でも 10μF 以上、パスコン定番値の 0.1μF ではダメ)。管理人は実装をサボったところ異常電流(500mA以上!)が流れて PCI が昇天(泣)。結局原因を突き止めるまで FMC-01 のファームが焼きこまれた PIC を 2個も昇天させてしまった(逝)。まさにバスコン侮り難し。まったく何年電子工作やってんだか・・・>ワシ


【余談】

 基本的にキャンパーは炎が大好き。焚き火がしたくてキャンプしに行く、といっても過言ではなかったり ^^;

 しかしテント内は基本的に火気厳禁なので、テント内で使用する「揺らぐ LED 照明」のニーズは大きく、キャンプ用品界の高級ブランド「Snow Peak」からも「揺らぎ」を実装した LED ランタン「ほおずき」が発売されていたりする。

 この「ほおずき」、結構なお値段するのだがキャンプ場で案外見かける @o@。今回は「実装例その3」でそこそこ「ほおずき」に近いものが製作できたので、次作では「ほおずき」を超えるものに仕上げよう、と早くも目論む管理人であった


【最後に】

 2012/11 現在、偶然にも sanokiya さんで FMC-01 の電池運用バージョン「FMC-01B」を開発中とのこと。発売されればさらに FMC-01 in 市販ランタンの製作が容易になるし、ファームウエアも電池運用に便利なように改良される模様で、発売が待ち遠しい管理人であった。


2012/11/15 追記:

 無事、電池仕様版 FMC-01B が発売された。

 電池版ファームウエアでは消灯モードが追加され、スイッチを1つ実装するだけで電源の ON/OFF と揺らぎパターンの変更が可能となった。この仕様なら市販ランタンへの組込みがより容易になるので大歓迎 ^^;

 管理人は早速 PIC を電池版に交換した。


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