第1章 総則

第1条 (目的)

この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。

第2条 (定義)

この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

2 この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。

3 この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。

  1. 物の発明にあっては、その物を生産し、使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為
  2. 方法の発明にあっては、その方法を使用する行為
  3. 物を生産する方法の発明にあっては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物を使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為
第3条 (期間の計算)

この法律又はこの法律に基く命令の規定による期間の計算は、次の規定による。

  1. 期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
  2. 期間を定めるのに月又は年をもってしたときは、暦に従う。月又は年の始から期間を起算しないときは、その期間は、最後の月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

2 特許出願、請求その他特許に関する手続(以下単に「手続」という。)についての期間の末日が行政機関の休日に関する法律(昭和63年法律第91号)第1条第1項各号に掲げる日に当たるときは、その日の翌日をもってその期間の末日とする。

第4条 (期間の延長等)

特許庁長官は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で、第108条第1項、第121条第1項又は第173条第1項に規定する期間を延長することができる。

第5条 (同前)

特許庁長官、審判長又は審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。

2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することができる。

第6条 (法人でない社団等の手続をする能力)

法人でない社団又は財団であって、代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において次に掲げる手続をすることができる。

  1. 出願審査の請求をすること。
  2. 特許異議の申立てをすること。
  3. 第123条第1項又は第125条の2第1項の審判を請求すること。
  4. 第171条第1項の規定により第123条第1項又は第125条の2第1項の審判の確定審決に対する再審を請求すること。

2 法人でない社団又は財団であって、代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において第123条第1項又は第125条の2第1項の審判の確定審決に対する再審を請求されることができる。

第7条 (未成年者、禁治産者等の手続をする能力)

未成年者及び禁治産者は、法定代理人によらなければ、手続をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができるときは、この限りでない。

2 準禁治産者が手続をするには、保佐人の同意を得なければならない。

3 法定代理人が手続をするには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。

4 準禁治産者又は法定代理人が、その特許権に係る特許異議の申立て又は相手方が請求した審判若しくは再審について手続をするときは、前2項の規定は、適用しない。

第8条 (在外者の特許管理人)

日本国内に住所又は居所(法人にあっては、営業所)を有しない者(以下「在外者」という。)は、政令で定める場合を除き、その者の特許に関する代理人であって日本国内に住所又は居所を有するもの(以下「特許管理人」という。)によらなければ、手続をし、又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により行政庁がした処分を不服として訴えを提起することができない。

2 特許管理人は、一切の手続及びこの法律又はこの法律に基づく命令の規定により行政庁がした処分を不服とする訴訟について本人を代理する。ただし、在外者が特許管理人の代理権の範囲を制限したときは、この限りでない。

第9条 (代理権の範囲)

日本国内に住所又は居所(法人にあっては、営業所)を有する者であって手続をするものの委任による代理人は、特別の授権を得なければ、特許出願の変更、放棄若しくは取下げ、特許権の存続期間の延長登録の出願の取下げ、請求、申請若しくは申立ての取下げ、第41条第1項の優先権の主張若しくはその取下げ、第121条第1項の審判の請求、特許権の放棄又は復代理人の選任をすることができない。

第10条 (代理権の証明)

手続をする者の代理人の代理権は、書面をもって証明しなければならない。

第11条 (代理権の不消滅)

手続をする者の委任による代理人の代理権は、本人の死亡若しくは本人である法人の合併による消滅、本人である受託者の信託の任務終了又は法定代理人の死亡若しくはその代理権の変更若しくは消滅によっては、消滅しない。

第12条 (代理人の個別代理)

手続をする者の代理人が二人以上あるときは、特許庁に対しては、各人が本人を代理する。

第13条 (代理人の改任等)

特許庁長官又は審判長は、手続をする者がその手続をするのに適当でないと認めるときは、代理人により手続をすべきことを命ずることができる。

2 特許庁長官又は審判長は、手続をする者の代理人がその手続をするのに適当でないと認めるときは、その改任を命ずることができる。

3 特許庁長官又は審判長は、前2項の場合において、弁理士を代理人とすべきことを命ずることができる。

4 特許庁長官又は審判長は、第1項又は第2項の規定による命令をした後に第1項の手続をする者又は第2項の代理人が特許庁に対してした手続を却下することができる。

第14条 (複数当事者の相互代表)

二人以上が共同して手続をしたときは、特許出願の変更、放棄及び取下げ、特許権の存続期間の延長登録の出願の取下げ、請求、申請又は申立ての取下げ、第41条第1項の優先権の主張及びその取下げ並びに第121条第1項の審判の請求以外の手続については、各人が全員を代表するものとする。ただし、代表者を定めて特許庁に届け出たときは、この限りでない。

第15条 (在外者の裁判籍)

在外者の特許権その他特許に関する権利については、特許管理人があるときはその住所又は居所をもって、特許管理人がないときは特許庁の所在地をもって民事訴訟法(明治23年法律第29号)第8条の財産の所在地とみなす。

第16条 (手続をする能力がない場合の追認)

未成年者(独立して法律行為をすることができる者を除く。)又は禁治産者がした手続は、法定代理人(本人が手続をする能力を取得したときは、本人)が追認することができる。

2 代理権がない者がした手続は、手続をする能力がある本人又は法定代理人が追認することができる。

3 準禁治産者が保佐人の同意を得ないでした手続は、準禁治産者が保佐人の同意を得て追認することができる。

4 後見監督人がある場合において法定代理人がその同意を得ないでした手続は、後見監督人の同意を得た法定代理人又は手続をする能力を取得した本人が追認することができる。

第17条 (手続の補正)

手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。ただし、次条から第17条の4までの規定により補正をすることができる場合を除き、願書に添付した明細書、図面若しくは要約書又は第120条の4第2項若しくは第134条第2項の訂正若しくは第126条第1項の審判の請求書に添付した訂正した明細書若しくは図面について補正をすることができない。

2 第36条の2第2項の外国語書面出願の出願人は、前項本文の規定にかかわらず、同条第1項の外国語書面及び外国語要約書面について補正をすることができない。

3 特許庁長官は、次に掲げる場合は、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる。

  1. 手続が第7条第1項から第3項まで又は第9条の規定に違反しているとき。
  2. 手続がこの法律又はこの法律に基づく命令で定める方式に違反しているとき。
  3. 手続について第195条第1項から第3項までの規定により納付すべき手数料を納付しないとき。

4 手続の補正(手数料の納付を除く。)をするには、次条第2項に規定する場合を除き、手続補正書を提出しなければならない。

第17条の2 (願書に添付した明細書又は図面の補正)

特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書又は図面について補正をすることができる。ただし、第50条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。

  1. 第50条(第159条第2項(第174条第2項において準用する場合を含む。)及び第163条第2項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第50条の規定により指定された期間内にするとき。
  2. 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第50条の規定により指定された期間内にするとき。
  3. 第121条第1項の審判を請求する場合において、その審判の請求の日から30日以内にするとき。

2 第36条の2第2項の外国語書面出願の出願人が、誤訳の訂正を目的として、前項の規定により明細書又は図面について補正をするときは、その理由を記載した誤訳訂正書を提出しなければならない。

3 第1項の規定により明細書又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書又は図面(第36条の2第2項の外国語書面出願にあっては、同条第4項の規定により明細書及び図面とみなされた同条第2項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文又は当該補正後の明細書若しくは図面))に記載した事項の範囲内においてしなければならない。

4 前項に規定するもののほか、第1項第2号及び第3号に掲げる場合において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。

  1. 第36条第5項に規定する請求項の削除
  2. 特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
  3. 誤記の訂正
  4. 明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)

5 第126条第4項の規定は、前項第2号の場合に準用する。

第17条の3 (要約書の補正)

特許出願人は、特許出願の日(第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、同項に規定する先の出願の日、第43条第1項又は第43条の2第1項若しくは第2項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、最初の出願若しくはパリ条約(1900年12月14日にブラッセルで、1911年6月2日にワシントンで、1925年11月6日にヘーグで、1934年6月2日にロンドンで、1958年10月31日にリスボンで及び1967年7月14日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約をいう。以下同じ。)第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日、第41条第1項、第43条第1項又は第43条の2第1項若しくは第2項の規定による二以上の優先権の主張を伴う特許出願にあっては、当該優先権の主張の基礎とした出願の日のうち最先の日。第64条第1項において同じ。)から一年三月以内に限り、願書に添付した要約書について補正をすることができる。

第17条の4 (訂正に係る明細書又は図面の補正)

特許権者は、第120条の4第1項及び同条第3項において準用する第165条の規定により指定された期間内に限り、第120条の4第2項の訂正の請求書に添付した訂正した明細書又は図面について補正をすることができる。

2 第123条第1項の審判の被請求人は、第134条第1項、同条第5項において準用する第165条又は第153条第2項の規定により指定された期間内に限り、第134条第2項の訂正の請求書に添付した訂正した明細書又は図面について補正をすることができる。

第126条第1項の審判の請求人は、第156条第1項の規定による通知がある前(同条第2項の規定による審理の再開がされた場合にあっては、その後更に同条第1項の規定による通知がある前)に限り、第126条第1項の審判の請求書に添付した訂正した明細書又は図面について補正をすることができる。

第18条 (手続の却下)

特許庁長官は、第17条第3項の規定により手続の補正をすべきことを命じた者が同項の規定により指定した期間内にその補正をしないとき、又は特許権の設定の登録を受ける者が第108条第1項に規定する期間内に特許料を納付しないときは、その手続を却下することができる。

第17条第3項の規定により第195条第3項の規定による手数料の納付をすべきことを命じた特許出願人が第17条第3項の規定により指定した期間内にその手数料の納付をしないときは、当該特許出願を却下することができる。

第18条の2 (不適法な手続の却下)

特許庁長官は、不適法な手続であって、その補正をすることができないものについては、その手続を却下するものとする。

2 前項の規定により却下しようとするときは、手続をした者に対し、その理由を通知し、相当の期間を指定して、弁明を記載した書面(以下「弁明書」という。)を提出する機会を与えなければならない。

第19条 (願書等の提出の効力発生時期)

願書又はこの法律若しくはこの法律に基く命令の規定により特許庁に提出する書類その他の物件であってその提出の期間が定められているものを郵便により提出した場合において、その願書又は物件を郵便局に差し出した日時を郵便物の受領証により証明したときはその日時に、その郵便物の通信日付印により表示された日時が明瞭であるときはその日時に、その郵便物の通信日付印により表示された日時のうち日のみが明瞭であって時刻が明瞭でないときは表示された日の午後12時に、その願書又は物件は、特許庁に到達したものとみなす。

第20条 (手続の効力の承継)

特許権その他特許に関する権利についてした手続の効力は、その特許権その他特許に関する権利の承継人にも、及ぶものとする。

第21条 (手続の続行)

特許庁長官又は審判長は、特許庁に事件が係属している場合において、特許権その他特許に関する権利の移転があったときは、特許権その他特許に関する権利の承継人に対し、その事件に関する手続を続行することができる。

第22条 (手続の中断又は中止)

特許庁長官又は審判官は、決定、査定又は審決の謄本の送達後に中断した手続の受継の申立について、受継を許すかどうかの決定をしなければならない。

2 前項の決定は、文書をもって行い、かつ、理由を附さなければならない。

第23条 (同前)

特許庁長官又は審判官は、中断した審査、特許異議の申立てについての審理及び決定、審判又は再審の手続を受け継ぐべき者が受継を怠つたときは、申立てにより又は職権で、相当の期間を指定して、受継を命じなければならない。

2 特許庁長官又は審判官は、前項の規定により指定した期間内に受継がないときは、その期間の経過の日に受継があったものとみなすことができる。

3 特許庁長官又は審判長は、前項の規定により受継があったものとみなしたときは、その旨を当事者に通知しなければならない。

第24条 (同前)

民事訴訟法第208条、第209条第1項、第210条、第211条、第212条第1項、第213条から第217条まで、第218条第1項、第220条、第221条及び第222条第2項(訴訟手続の中断又は中止)の規定は、審査、特許異議の申立てについての審理及び決定、審判又は再審の手続に準用する。この場合において、同法第213条中「訴訟代理人」とあるのは「審査、特許異議ノ申立ニツイテノ審理及決定、審判又ハ再審ノ委任ニ因ル代理人」と、同法第217条中「裁判所」とあるのは「特許庁長官又ハ審判長」と、同法第218条第1項及び第221条中「裁判所」とあるのは「特許庁長官又ハ審判官」と、同法第220条中「裁判所」とあるのは「特許庁」と読み替えるものとする。

第25条 (外国人の権利の享有)

日本国内に住所又は居所(法人にあっては、営業所)を有しない外国人は、次の各号の一に該当する場合を除き、特許権その他特許に関する権利を享有することができない。

  1. その者の属する国において、日本国民に対しその国民と同一の条件により特許権その他特許に関する権利の享有を認めているとき。
  2. その者の属する国において、日本国がその国民に対し特許権その他特許に関する権利の享有を認める場合には日本国民に対しその国民と同一の条件により特許権その他特許に関する権利の享有を認めることとしているとき。
  3. 条約に別段の定があるとき。
第26条 (条約の効力)

特許に関し条約に別段の定があるときは、その規定による。

第27条 (特許原簿への登録)

次に掲げる事項は、特許庁に備える特許原簿に登録する。

  1. 特許権の設定、存続期間の延長、移転、消滅、回復又は処分の制限
  2. 専用実施権又は通常実施権の設定、保存、移転、変更、消滅又は処分の制限
  3. 特許権、専用実施権又は通常実施権を目的とする質権の設定、移転、変更、消滅又は処分の制限

2 特許原簿は、その全部又は一部を磁気テープ(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録して置くことができる物を含む。以下同じ。)をもって調製することができる。

3 この法律に規定するもののほか、登録に関して必要な事項は、政令で定める。

第28条 (特許証の交付)

特許庁長官は、特許権の設定の登録があったとき、又は願書に添付した明細書若しくは図面の訂正をすべき旨の決定若しくは審決が確定した場合において、その登録があったときは、特許権者に対し、特許証を交付する。

2 特許証の再交付については、通商産業省令で定める。