雫 「おじいさん、これはやおい本ですね?」 老人 「そうか、お嬢さんはやおいを知っている人なんだね」こうして雫は「宇宙屋」をたびたび訪れるようになった。ある日、「宇宙屋」の階下で老人の孫の少年が何かを作っているのに雫は気づいた。
雫 「ねっ、それもしかしたらガレージキット?」 聖司 「あ、ああ」 雫 「見ていい?あれも全部作ったの?」 聖司 「まさか、ここでガレージキットづくりの教室もやっているのさ」 雫 「あなたのはどれ?」 聖司 「あのやっこちゃんだよ」 雫 「すごいなあ、よくこんなのつくれるねー。まるで魔法みたい」 聖司 「その位のもん誰でも作れるよ。まだぜんぜんだめさ。だから中学を出た らアメリカにガレージキット作りの修行に行くつもりさ。アメリカには おじいさんの知り合いの厳しいガレージキット職人がいるんだよ」雫は聖司が明確な目的を持って行動していることに衝撃を受け、自分もなにかしなくてはならないと考えるようになった。
雫 「私も何かしなくちゃ。そうだ、同人誌を作ろう!」こうして雫は勉強を投げ捨て、来る日も来る日もやおい本を作る日々が続いた。
雫 「おじいさん、同人誌を作ったのでもって来ました。約束です、最初の読 者になってください」 老人 「これは大長編だ」 雫 「何時間でも待っていますから、今すぐ読んでください」 老人 「・・わかりました。すぐよませてもらいます」老人はとにかく雫の最初の作品を読み終えた。
老人 「雫さん、よみました。ありがとう、とてもよかった」 雫 「うそ、本当のことを言ってください。描きたいことがまとまってません。 自分でわかってるんです」 老人 「そう、あらあらしくて、すなおで、未完成で、聖司のガレージキットの ようだ。雫さんの切り出したばかりの原石をしっかり見させてもらいま した。あなたはすてきだ。時間をかけて自分を磨き、コミケで売ってご らんなさい」こんな話だったらイヤすぎる(笑)
雫 「ねっ、それ、もしかしたら空中浮遊しているの?」 聖司 「あ、ああ…」 雫 「凄いなぁ〜、良く、こんな事出来るね〜。まるで魔法みたい」 聖司 「お前な〜、良くそう云うハズカシイ事、平気で云えるよな」 雫 「あら、いいじゃない。本当にそう思ったんだから」 聖司 「これ位のもん、誰でも出来るよ。まだ全然ダメさ」 雫 「天沢クン、超能力が上手だね、そっちの方へ進むの?」 聖司 「俺くらいの奴は沢山居るよ。それより俺さ、ハルマゲドンから世界を救 済したいんだ。或る所に聖NOVA教団の聖地が有るんだよ。中学を出た ら出家したいんだ」 雫 「高校行かないの?」 聖司 「家中が大反対!だからまだどうなるか判らないけど、おじいちゃんだけ が味方してくれてるんだ」夕子の部屋にて。
雫 「俺くらいの奴、沢山居るよ。あいつが云ったの。あいつは自分の才能を 確かめに行くの。だったらあたしも試してみる。決めたっ!あいつがや るならあたしもやってみる」ラストシーン。
聖司 「雫、あのさ、オレ、今すぐってワケには行かないけど…俺と結婚してく れないか?」 雫 「え…」 聖司 「俺、きっと教団の幹部になるから、そしたら…」 雫 「うん」 聖司 「ほんとか」 雫 「嬉しい。そうなれたらいいなって思ってた」 聖司 「そうか、やった」 雫 「待って、風冷たい…」 聖司 「雫、大好きだっ!」その少年は「人間を救いたい」と書き残していった…。
実際に有りそうな話で恐いっす。
司朗 「そうか、お嬢さんはドワーフを知っている人なんだね?」 雫 「はい。RPGは大好きです。ドラクエも、FFも全部やりました」そのあと。話はすすんで。
●夕子の家にて。
雫 「決めた!わたし、ゲームソフトをつくる。やりたいジャンルがあるの! 夕子、ありがとう。わたし、なんだか力がわいてきた」●司朗をたずねて。
雫 「バロンをゲームのNPCにしたくて。おゆるし、いただけますか?この 人形がおじいさんの宝ものだって、きいたので」 司朗 「いいですとも。そのかわり、ぼくを、雫さんのゲームの、最初のテスト プレーヤーにしてください。」」 雫 「でも、ちゃんと納期を守れるかどうか、わからないし」 司朗 「ははは、それは、私たちプロもおなじです。はじめからかんぺきにやろ うなんて思ってはいけない」 おじいさんは、そういって、雫に一つの石をさしだしました。 司朗 「石の表をのぞいてごらん」 雫 「わぁーっ、きれい!」 司朗 「PROMといってね、ゲームソフトのコードが含まれているんだよ」 雫 「これがカートリッジのなかに?」 司朗 「そう、雫さんも聖司も、その石みたいなものだ。まだ書き込まれていな い、工場出荷のままのPROM・・・。わたしは、そのままでもとても すきだがね。しかし、イベントをプログラミングしたり、シナリオを書 いたりするのは、違うんだ。自分のなかにアルゴリズムを見つけて、時 間をかけてコーディングすることなんだよ」●11月の、あるゆうぐれ。
司朗 「雫さん、プレイしました。ありがとう。とてもよかった。」 雫 「うそ!うそ!ほんとうのことをいってください。イベントの流れがまと まっていません。後半なんてめちゃくちゃ。自分でわかってるんです!!」 司朗 「そう。バグばかりで、単調で、未完成で、聖司の格闘ゲーのようだ。」 司朗 「雫さんの、あがったばかりのバイナリをしっかり見せてもらいました。 よく、がんばりましたね。あなたはすてきです。あわてることはある。 納期は迫っています。」 雫は泣きだした。 雫 「私、やってみてわかったんです。徹夜するだけじゃあがらないってこと。 もっと、勉強しなきゃ駄目だって。でも、聖司くんがどんどんノルマ あげちゃうから、無理にでも入力しようって・・・ほんとうは、眠くて、 眠くて・・・」・・・恐い考えになってしまった。