評価  ☆☆☆
                                        感動  ☆☆☆
                                        面白さ ☆☆
カナリーズ・ソング  ジョニファー・アームストロング  金の星社
                金原瑞人・石田文子 訳

お話


 どこまでも広がる緑の草原、地平線から昇る朝日。
しかし、オハイオ生まれのスージーのママは、ダコタのこの風景に慣れなくて家から出られなくなってしまう。
 ある日、スージーはパパといっしょにメデフィンスファイアの町へ行く。
町にはたくさんの人がいて、雑貨屋には、いろいろ魅力的な品がたくさんあり、すばらしいピアノもあった。
 しかし、スージーはなぜか沈んだ気持ちになる。
 その帰り道で、アイスランドからもっと西へ移住していくというジギー一家と会う。
 一夜、ジギー一家を泊めて、仲良くなった男の子にスージーはカナリアをもらう。
 次の朝、日が出る前にスージーはママを芝小屋の屋根の上に誘い、太陽の昇るのを見るが、そのとき、カナリアがすばらしい声で歌うのが聞こえる。
 スージーはママの顔に微笑がよみがえるのを見る。

評価と感想

 作者は絵本作家でありノンフィクション作家でもある。
 時は、南北戦争後の西部劇の時代。
 荒涼たる西部の農業、暮らしに適応できない女性像は現代にも通じるものがあるが、その解決が輝く太陽とカナリアの歌では少し矛盾するのではないか。
 あまりにも安易で楽天的な絵本作家らしい結末ではないだろうか。ノンフィクション作家としての冷徹な現実を見据える目ははここにはないように思われる。
 主人公の少女も、普段から心を痛めていたことはわかるが具体的な行動は母親に朝日を見せただけ。
 しかし、父親と母親の関係については現代的な視点が見られる。
 いずれにしても中途半端で、現代アメリカの子供たちにも何をもたらすことができるのか疑問だ。平成14年課題図書。