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 Snow Angel後編

作・くりっち






「ねぇ、エーコには……好きな人、いる?」
エーコにサユキが見える事がどうしても気になって、エーコにそう尋ねた。
「え?ん〜…お父さんとお母さんに、エリンに、モーグリのみんなに、ジタンに、ダガーに、フライヤに、 クイナに、サラマンダーに、ビビ!世界の人み〜んな大好きだよ!!でもなんで?」
エーコは大好きな仲間たちの名前を次々と述べた。エーコの好きな人は全員言うときりがない。
「サユキはね、誰かに対して愛情を持ってる人にしか見えないんだって。」
「ちょっとダガー!『だって』ってなに!?まだサユキの事信じてないでしょ!!」
ダガーの言葉の一部にサユキが反論した。
「そんな事ないわ、ちゃんと信用してる。」
「ん〜…そうかなぁ?」

エーコのように仲間を大切に想う感情もないという事なのだろうか?
それは……ない。あのジタンに限って、そんな事はまさかないと思う。
じゃあどうして、サユキが見えなかったのか―――。私には……よくわからないわ。

そんなダガーの想いを乗せて、ヒルダガルデ4号はアレクサンドリアの方の空へ向かう。







そして、飛空挺はアレクサンドリア高原に到着した。城下町まで、あと数十メートルといったところだ。
「エーコ、ここでいいわ。」
「でも〜…一人で大丈夫?エーコも行ってあげようか?」
アレクサンドリア女王であるダガーが誘拐でもされたら、これこそ一大事だ。
しかしエーコは変な男に絡まれないように、という方を心配していたようだが。
「大丈夫よ。サユキもいるし、それに私はもう子供じゃないのよ?」
「うんっ!!絶対サユキがダガーを守るんだから!」
サユキは勢い良く返事をして、ダガーと一緒にヒルダガルデから降りた。
「そーだね!じゃあエーコ達は帰るね!また遊びに来てね、ダガー!」
「うん、エーコもたまにはアレクサンドリアにも遊びに来てね?」
そう約束を交わして、エーコはヒルダガルデから手を振った。
「エリン、リンドブルムに帰ろう!」
「ハイッ!それでは、リンドブルム城へ向かいます!!」
そして、ヒルダガルデ4号は来た道筋を再び戻って行った。
「行っちゃったね〜。じゃあ、サユキ達もお城に行こうよ!!」
「そうね。そういえば、サユキは帰らなくていいの?」
そういえば、リンドブルムで会ってから、サユキの両親の承諾もなしにここまで連れて来てしまった。
「だ、大丈夫だよぉ!!早く行こうよ、ダガー!!」
少しおかしく思いつつも、ダガーは気にする事を忘れて城へ帰って行った。






「お帰りなさいませ。如何でしたか?」
ベアトリクスが軽く会釈をしてそう言った。
少し気持ちが落ち着いてきたのに、その言葉で一気に現実に引き戻された。
まあ、ベアトリクスは何も知らないので、しょうがない事だ。
「楽しかったわ、ありがとうベアトリクス。」
また作られた笑顔でにっこりと笑ってベアトリクスに言った。
すると、ベアトリクスは一人の小さな客人に気付いた。
「そちらの少女は……?」
ベアトリクスにもサユキは見えた。という事はベアトリクスも愛情を持っているのだろう。
「べ、ベアトリクス…やっぱりスタイナーの事……。」
「なな、何ですかいきなりっ!?」
やっぱり。意地を張っているけど、本当は好きだったという事がはっきりした。
誰かの幸せはすごく嬉しい。でもその反面、羨ましい感情も隠れている。
「何でもないわ。行きましょう、サユキ。」
「うんっ!バイバイ、おねーさん!!」
サユキはベアトリクスにひらひらと手を振って、ダガーと手を繋いで部屋へ歩いて行った。
何も知らないベアトリクスには、何がなんだかさっぱりわからなかった。





「わあ〜、広い部屋だね〜っ!!」
サユキがダガーの部屋の広さに興奮し、ふわふわのベッドに飛び込んだ。
「そう?ただの心のない部屋だわ。」
「え〜、サユキこういう部屋に憧れてたの〜っ!!」
サユキは仰向けになって、ゆっくりと綺麗な蒼色をした瞳を閉じた。
「ねぇサユキ…本当に帰らなくても大丈夫………あら?寝てるわ。」
まあ、しょうがない事だろう。1日中連れまわしてしまったのだから。
それにしても、一体この子は何者なのだろう?愛情を持つ人にしか見えないなんて――――。
でも……なんだか一緒にいると安らぐ気がするのは気のせい?


コツンッ……!


テラスがある方の窓ガラスに何か、石のような小さな物が当たったような音だった。
サユキの寝顔を覗いていたダガーはその音を聞いてすぐに気付いた。

ジタンだ。

どうして……?私の事なんてどうでもいいんでしょ?
何が本当で何が嘘なんだか……全然わからない………!
いいや、顔さえ合わせなければ。そうすればもうこの想いはなくなるわ。
きっとそうだ。私はジタンなんていなくたって、生きていける。

そう思った瞬間、テラスから差し込んでいた月光が遮られた。
その影には尻尾のような物がゆらゆらと揺れていた。
ダガーは思わず、その影からスッと顔を背けた。
そして鍵が開いたままだった窓を開けて、部屋へと足音を立てて入ってきた。
その足音は、ダガーの方へとだんだん近付いてくる。

「鍵、開けたままだったぞ?気を付けろよ、一応女王様なんだからさ。」
何もなかったかのように話し掛けてきたジタン。
「どうしたんだよ、さっきは?」
もう限界。ジタンの目をはっきりと直視できない。
いっそ自分の気持ちをぶつけてみようか?その方がずっと楽だ。
「だってジタン!私の事なんてどうでもいいんでしょ!?」
「はあ?そんなわけないだろ?」
すぐそうやって誤魔化す。偽善なんてして欲しくない。
「もうジタンなんか大嫌い!!」
子供のような事言ってるのはわかってる……。
本当は大好きなのに――――。

「なんか……あったのか?」
そう言ってから、ジタンは優しい笑顔でそっとダガーを抱き締めた。
冷たい。
ジタンの身体、冷え切ってる。私が帰るまでずっと……待っててくれたの?
「ジタンのバカ……私、あんな事言ったのに……どうして………?」
「そりゃ、やっぱダガーが大好きだからさ。」
この人もバカだけど…私もバカだったみたい。
どうして忘れようなんて思ったんだろう?こんなにも想われていたのに―――――。
「ごめんね……ジタン。」
「な、泣くなよダガー!」
だって、涙が自然に溢れてくるから……止められない。
「どうして急にあんな事言い出したんだ?」
すっかり忘れていた。今気付いた、このジタンの気持ち…嘘じゃないはず。
じゃあ如何してサユキが見えていなかったんだろう?
「あのね、サユキっていう愛情を持つ人にしか見えない女の子がいて……」
「なんだそれ?幽霊か?」
そうか、幽霊っていう説もあるわ。でも…普通に触る事が出来たわ。
「その辺はよくわからないけど、ジタンにはサユキが見えてなかったから……」
「オレよりそんなよくわかんない奴を信じたってわけだ。」
「まあそういう事……かな。」

「ふわぁ〜……。」

サユキが目覚めたようだ。寝ぼけ眼で辺りを見まわしていた。
「あ、ダガーおはよ……ジ、ジタン!?」
「サユキ、起きたの!?」
サユキはまだ眠たそうな瞳をこすって、ジタンとダガーのいる方に走ってきた。
「これが……サユキ?」
ジタンは駆け寄ってきたサユキを凝視して、ぽつりと言った。
するとサユキは満面の笑みを浮かべて嬉しそうに言った。
「サユキが見える様になったの!?」
「お前……頭、大丈夫か?」
目を瞬かせながらジタンはサユキの顔を覗き込んだ。
そんな事をしてても、顔はそこそこ可愛い、なんていう事を思っていたに違いない。
「失礼ね!サユキはいつも本気よ!!」
両手を腰に当てたまま、頬をふくらましてサユキはそう言った。
その動作は、まるでエーコそっくりだった。それに気付いたジタンは少し微笑んだ。


「ねえサユキ、これってジタンが今愛情を持ったっていう事なの?」
ずっと頭に引っかかっていた疑問をダガーはサユキに尋ねてみた。
すると、答えは意外にもあっさりと返って来た。
「そうだ!ごめんね、言うの忘れてたよ!これって、ひとつの『試験』なの!」
『試験?』
ジタンとダガーが声に出した疑問符がぴったりと重なった。
「うん!アレクサンドリアの姫は、次国王になるべき人を決めたら、試験をしなきゃならないの!」
「それが今日の事だったってこと?」
サユキの言葉によると、アレクサンドリア王女は、好きな人と試験をしなくてはならないらしい。
何とも不思議な伝統である。一体いつからこんな事が決まっていたのだろうか?
「でね、サユキが今回の試験官なのっ!!」
「こんな小さいのが?」
「ホント失礼ね、ジタン!!」
確かにジタンの言う通りだ。5〜6歳の少女が試験官だなんてふざけているとしか思えない。
「何でそんな試験なんてするの?」
「国王の地位だけを狙って、姫に言い寄る男が多いからね、アレクサンドリアの未来とその姫のためにも、こういう試験をして姫を本当に愛する人を選び出すの!」
なんだろう、この作り話のような現実は。
まあ、でもこういう事があるからこそ生きているのが楽しいって事なんだろう。
「あら?それじゃあ愛情を持つ人にしか見えないっていうのは嘘だったの?」
「ううん、ホントだよ!試験だから、ジタンには見えない様にしてただけだよ!」
なんだか一気に力が抜けた感じがした。さっきの気持ちは嘘みたいに思える。
でも………本当に良かった。


「で?その試験にオレ達は合格したんですか、お嬢さん?」
ジタンはふざけ半分で、サユキに目線を合わせながら言った。
「そりゃもう!前代未聞の満点以上よ!!」
サユキのその言い方を変えれば、過去のどの先祖よりも愛情が深かったという事だ。
「おっと、そろそろ帰らなきゃ怒られちゃう!」
サユキが腕の時計をちらっと見てから、そう言った。
しかしその時計は、どう見ても文字盤が通常と違っている。
なんというか……数字がバラバラに散らばった感じだ。
「…誰に怒られるの?」
「そりゃあ神……ううん、何でもない!!」
サユキはダガーの問い掛けに答えようとしたが、途中で慌てて止めてしまった。

「それじゃあ、サユキはそろそろ帰るよ!お幸せにね!!」
そう言ってサユキはテラスの方へと走って行き、ひょいっと手すりから飛び降りた。
「ちょ、ちょっとサユキッ!?ここ何階だと思って…………あら?」
ダガーが急いでサユキを止めようとした時には、もうどこにもサユキの姿はなかった。
しかしその代わりに、空から真っ白い純白の雪が降ってきた。
「ジタン、雪が降ってきたわ………。」
「雨が雪に変わったんだな。」
ジタンがそう言った途端に、白い羽根が1枚、ひらひらとゆっくり2人の元に舞い降りた。
「サユキの羽根……?やっぱり天使だったって事?」
「バレバレだったよな?」
そう言って羽根を見つめていた2人は、顔を見合わせて笑い合った。



雪の日の少女は、悪戯な天使の少女―――――。







++++あとがき++++
なんだか意味不明ですいません〜!!(>_<;)
でも、自分的にはジタガネ小説書くの大好きだったりします☆
なので、書いててすっごく楽しかったです!(笑)
ヘタクソな小説ですけど、読んでくれてありがとうございました!
機会があればまたこういうものを書きたいと思います♪


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