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約束の貝殻


スコリノらぶらぶと一緒に書いたアーセルらぶらぶ。
青春真っ盛り!!

波の音が聞こえる。
懐かしい潮と香りと、澄んだ空。
真っ青な海は、今日も穏やかだった。
「おっきくなったらまた一緒に遊ぼうね!」
「うん、会いに行くからね。」
「それまでね、この貝殻さんを」
「うん、持ってるよ、ずっと、ずぅーっと持ってるよ。」
「そしたら、ずっと一緒にいようね。約束だよ!」
「約束約束!アーヴィン、忘れちゃ、駄目だからね!」
「うん、なくさないでね!絶対だよっ!」
波の打ち寄せる砂浜を歩く二人、アーヴァインとセルフィの小さな手のなかで純白の貝殻がそれぞれ光っていた。

(なぁんだ、夢かぁ〜・・・)
アーヴァインは寮の一室のベッドの上で目を覚ました。
アルティミシアを倒してから、ずっと授業はバラムガーデンで受けてきた。
今日は休日で授業はない。時計が11時半を指している。
(少し、寝過ぎちゃったかな?まぁ、いいか〜。ちっちゃいころの夢も見れたし〜)
幼き日の思い出、孤児院の浜辺でセルフィと二人で約束したあの日。
たしか、セルフィが孤児院を旅立つ日だった。
(セフィは、覚えてるかな〜?)
アーヴァインはおもむろに立ち上がると、机の引出しを開けた。
(残ってるかな〜?あの貝殻・・・・・・・・あ!・・・)
いろいろなものがごちゃごちゃと入っているその奥にそれはあった。
青いチョコボの飾りが施されたちいさなオルゴール。ふたを開けると懐かしいメロディーとともにチョコボがクルクルまわる。
思わず笑顔がこぼれた。
そして、箱の奥には、小さな白い貝殻がひとつ、入っていた。
あの砂浜で拾った、純白の貝殻。
そして、チョコボのオルゴール。
これはセルフィが孤児院に入れられてきたときに、まま先生が彼女にプレゼントしたもの。それ以来ずっと大事にしてきていたこのオルゴールを、セルフィは孤児院を出ることになり、一対のうちのひとつの貝殻と一緒にお別れに、とアーヴァインにくれたのだった。

「やぁ、スコール、おはよ〜」
「『おはよう』って時間じゃないだろ?」
食堂に行くとスコールがいた。既に時計は12時をまわっていて、食堂も混み合っていた。もちろん、アーヴァインも昼食をとりに食堂へ来たのだが。
「となり、座るよ〜」
やはり、寝起きの胃には昼食のメニューはどれも重すぎた。アーヴァインは水の入ったコップだけを持ってきて、スコールの隣に座った。
「珍しいね、今日はリノアと一緒じゃないの〜?」
冗談めかして言ったら、睨まれた。
「照れてんの〜?」
スコールの顔は表情ひとつ変わらない。
(・・・・やっぱ、照れてる)
スコールは感情をいまだにあまり表に出すことはないが、きっとその分、内に秘める感情は強大なものなのだ。と、アーヴァインは思う。
睨むのは、どう考えても照れ隠し。スコールって照れ屋なんだ?
「そういえば」
その照れ屋(アーヴァイン談)のスコールが口を開いた。
「さっきセルフィがお前を探してたぞ。」
「えっ!?セフィが!?どこで!?」
さっきの夢のこともあってか、今日はセルフィの顔を一度も見ていないし(さっき起きたばっかしだから、当然だけど)すごくセルフィに会いたい気がした。
「食堂には来ていないって言ったら、部屋に行くって言ってた。」
(ガーン、行き違いになったんだ!部屋かたづけてないってのに!)
「スコールありがと!じゃ〜ね〜」
アーヴァインはコップもかたづけずに走り去っていった。

「アーヴァインいる〜?もしも〜しっ」
コンコン♪
アーヴァインの部屋のドアを叩くセルフィ。しかし、返事はない。
(なんや〜、いないんか。どこいったんやろ〜?)
クルッ
「セフィ〜!」
「あっ!アーヴィンどこいってたの〜?宿題教えてもらおうと思ってたんだよ〜」
セルフィはしっかり、歴史の教科書と宿題のプリントを持ってきていた。
「いれていれて〜。」
ドアノブをガチャガチャと鳴らすセルフィ。
「あ〜っ、だめだよ〜。部屋、片付けてないんだから〜!」
うっかりドアにカギをかけていなかったためにアーヴァインはあわててドアを押さえた。
セルフィが子供っぽく頬を膨らませた。
(う・・・・カワイイ・・・・(爆))
「わ、わかったよ・・・・ちょっと片付けるから、ここで待っててね〜」
セルフィに部屋の中を見られないように素早くアーヴァインは自分の部屋に入った。
(あちゃ〜・・・片付けるも何もないな・・・・・)
散らかっていて、片付けようがなかった。
(うーん・・・・とりあえず・・・・)
アーヴァインは散らかっているもの全てをクローゼットに放り込んだ。
幸い、机の上は散らかっていない。あるのはチョコボのオルゴールだけだった。
セルフィに気づいてほしい気もしたが、なんとなく恥ずかしかったのでテンガロンハットをかぶせて隠してしまった。
「入っていいよ〜。」
「あたしさぁ〜、歴史ってぜんぜんだめなんだよね〜」
アーヴァインが勉強机の椅子をすすめるとセルフィはそれに座ってプリントを出した。
ほぼ全部が空白だった。
「セフィ・・・・よくこれでSeeDになれたね・・・・・・」
「あっ、ひっどぉ〜いっ!それが先輩にたいする態度ぉ〜?」
呆れながらプリントを眺めるアーヴァイン。しかし彼はSeeDではないため、一応SeeDであるセルフィは彼にとって先輩にあたるのだが―――。
「そういうこと言うと教えてあげないよ〜。」
「はいはいっ、ごめんなさいっ!」
そうして宿題をはじめた二人。
「だから、この電波障害っていうのは・・・・・・・」
そのとき、ふとしたことで、セルフィのひじが机の上の、オルゴールを隠しているテンガロンハットにぶつかった。
カチッ
軽快な音と共に、曲が流れ出した。衝撃でテンガロンハットの中のオルゴールのふたが開いたのだった。
「オルゴールだぁ〜。」
セルフィにオルゴールに気づかれてアーヴァインは思わず赤面した。
しかし、
「カワイイ曲だね」
オルゴールの曲を聞いてもセルフィは特別な反応を示したりはしなかった。
(やっぱり、忘れてるんだ・・・)
ちょっと寂しかった。
「ありがと〜、助かったよ〜。」
プリントの空欄を全てうめるとセルフィはいつもと変わらない明るい口調で手を振って帰っていった。
(やっぱし、やっぱし忘れてる・・・・・)
忘れてると割り切っても、やはり、ちょっとは覚えてるのではないかと希望を持ってしまうのが人間の悲しいサガ。
ちょっとした仕草で「やはり覚えていない」と感じるたびに何度でもさびしくなるのだった。
セルフィが廊下の角に消えるとアーヴァインはため息をついた。
再び貝殻を拾い上げてみる。窓から入った光にきらきらと輝いてまぶしい。
「あぁ〜あ」
「おい!アーヴァイン!!!」
「うっわぁ!!!」
ため息をついたと同時に無造作にあけられたドアにびっくりして、あわてて貝をポケットに突っ込んだ。
「なんだよ、そんなにおどろくことかよ。」
ドアを開けたのはゼルだった。
「ところでアーヴァイン、あのさ、ちょっ、ちょっと・・・・」
「なに?口篭もっちゃわかんないよ」
「ちょっと、ついてきてくれねーか?」
なにかいいたそうにゼルはアーヴァインの服を引っ張った。
「どこに?」
「いいからっ!」
半ば強引にゼルの後に付いていくことになった。

「ねぇ、こっちってさ、女子寮じゃないの?」
連れてこられたのは女子寮のほうだった。
「あ、いや、そ、そうなんだけどさ。」
(女の子に奥手そうなゼルがぁ・・・・?意外ぃ・・・・)
「あ、ここだ。頼むから、ここで待っててくれよ!絶対だかんな!」
ゼルが緊張した面持ちで言う。
(そっかぁ、一人で来る勇気がないから僕を誘ったってワケか)
アーヴァインは一人納得しながらにやにやと笑みを浮かべる。
ゼルが部屋のドアを叩くと三つ編みの女生徒が出てきた。
(あぁ、たしか、図書委員の・・・・・・・・・そういえば、最近ゼルはいっつも一緒にいるよねぇ〜♪)
再びくつくつと笑いをもらしそうになったアーヴァインはゼルから顔を背けて笑った。
笑ってるとバレると、後で恐いから。
「あ」
そのとき、ちょうどアーヴァインの顔が向いたところに『セルフィ・ティルミット』という表札が。そして、ポケットに白い貝殻が入っていることを思い出した。
「はぁ・・・」
知らず知らずのうちにため息がでる。
『ズット一緒ニイヨウネ』
貝殻にこめられた約束は忘れられている。
仕方ないし、当然のことだけど、

『忘レチャ駄目ダヨ』といったのはセルフィのほうなのに・・・・。

懐かしみにも似た愚痴。どうしようもないことなのに

起きたのが遅かったためか、一日が過ぎるのははやい。
今は起きた時間の12時間後である。
コンコン

はいはい、最初はセルフィ、次はゼル、今度は誰?

「開いてるよ〜」
三度、この日に開かれた寮のドア。
訪問者の姿が現れたとき、アーヴァインの心臓が飛び跳ねた。
「セルフィ!?」
こんな夜遅くに女の子が部屋を訪ねてくるなんて、まさかっ、まさかっ・・・!!
とは思わなかったが(−−;)、昼間の「覚えてくれているかもしれない」が蘇ってきた。
「そんなに驚くことないじゃ〜ん」
外はねの髪によく似合う元気な笑顔を見せると、セルフィはツカツカとブーツの音を立てて、部屋に入ってきた。
そして、そのまま向かったのは机の上の・・・
「あっ・・・・!」
アーヴァインは慌てて少女の手が届きそうだったオルゴールを取り上げた。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「なにしてんの〜?」
しばらくの沈黙の後、セルフィが吹き出した。
「それ、あたしがあげたやつでしょ〜?」
「・・・・・」
なんと言っていいかわからなかった。

オルゴールのこと、忘れてたんじゃないの?

混乱、こんらん、コンラン、konran
「違うの?」
セルフィがにやにやしながら顔をのぞき込んでくる。

違くない。

「そ、そっ・・・・・っ・・・」
情けない、言葉はうまく出てこなかった。

駄目だ、やっぱり本番には・・・・・・

ふいに、ぽんぽんと肩を叩かれた。
「まぁまあ、そないに緊張せんと」
少女は、まだ笑っている。
自分よりずっと小さい女の子にそう言われると、なんだか、悔しい。
「そ、そうだよ〜」
そして、ひょい、と目の前に出されたのは、約束の純白の貝殻。
思い出した。
笑顔がよく似合う少女。
「約束も、覚えてるよ〜」
いたずっらっぽい笑顔に、どきりとした。
そうだ、覚えてる。
「じゃあ、一緒にいてくれるんだね?ずぅ〜っと。」
この笑顔を、素敵な笑顔を。
「なにいってんの〜?いっつも一緒にいるじゃ−ん」
いつまでも、その笑顔を僕に。
貝殻によってつながれた約束は、いつまでも、忘れられることはないだろう。

たしか、コレを書いたのは受験前・・・。
高校入学後ちょっと修正してのっけ。
成長してない、ぶんしょーりょく。




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