愛という形(7)
お友達がやっていたので、ちょっとマネ(ごめんね)
この小説は音楽つきで聞いてほしいな、って思いました。
でも、いろいろ著作権の問題とかでMIDIは用意できないのです。
だからもし、FF9のサントラでもお持ちでしたら曲、聞きながら読んでくださると嬉しいです。
(BGM:DISK1 奪われた瞳)
『奴は、おぬしが思うほど頑なな男ではない』
フライヤがそう言っていた。
『アイツ、不器用だし、その上意地っ張りだからさ』
ブランクがそう言っていた。
二人が言っていたことは、どうやら同じことであるらしい。
フライヤが言ったことはわからなかったけれど、ブランクの言うことはなんとなくわかった気がした。
ネズミ族の誇り高き竜騎士は、自分よりずっと大人で、時々自分にはわからない難しいことを言うことがある。
もっと簡単な言い方をしてくれればここまで悩まなくてもすんだかもしれないのに、とダガーは思わず苦笑した。
ジタンが式場に来てくれなかったのは、式を挙げるのが嫌になったからではないかと思った。
ジタンが、女王という遠いところにいる自分を嫌になったから、その後も会いに来てくれなかったのではないかと、そう思った。
なぜ式場に来てくれなかったの?
私のことが嫌になったから?
そうやって、彼を追求することさえが怖かった。
ジタンが自分を嫌になっていたとしたら、その嫌な自分に追及されるのは、彼が煩わしいと思うかもしれないし。
追求した結果が、本当にこうやって予想している通りの結果だったら、つらいから。
それでも、勇気を振り絞って、彼に会いにいって。
そして、そこで、式をすっぽかしたことを彼が言い訳してくれなかったことは、ダガーの予想を裏付ける、極めつけだと思ったのだ。
ところが。
ジタンが式場に来なかったのは、ルビィを助けるためで。
ジタンが、その後も自分に会いに来てくれなかったのは、式をほっぽりだした手前、顔を合わせる器用さがなかったためで。
そのうえ、ジタンがダガーににそのことを追求されるのは、誤解を解くため、むしろ望んでいたことで。
それにも関わらず、ジタンが言い訳をしなかったのは、彼が本当は誤解を解きたいのに、意地っ張りな性格だったせいで。
勘違いの積み重ね。
どうやらそこにあったのは、そんな、無意味な涙や、悲しみ。
「無用心ね。盗賊のくせして」
宿の二階に今度は階段からあがったダガーはジタンの部屋のドアに手をかけて呟いた。
ひんやりとした金属のドアノブは彼女の手の力に逆らうことなくすんなりとまわって開いてしまう。
いくら平和なアレクサンドリアと言えど、夜ほどになれば国民達でさえ家に鍵くらいはかけるものだ。
この宿の部屋には鍵がないわけでもないのに。
彼は一体何を考えているのだろう。
もしかすると、盗賊のくせに無用心なのではなく、盗賊だから無用心なのかもしれない?
自分が盗人だから泥棒を恐れることを知らないとか。
いや、もしかすると盗賊にしてみればこれほどの安宿の鍵など開けるにたやすく、ないに等しいのかもしれない?
どちらにしても、ダガーにとっては幸運だった。
彼に会おうにも、彼の部屋の鍵が閉まってしまっていたら、ダガーには忍びこむことなど出来ない。
そっとドアを開けると、既に部屋の明かりは消えていて、耳を済ませば微か静かな寝息が漏れていた。
少し、むっとした。
こちらは彼との事を悩んでいて城に帰るのがこんなに遅くなっていると言うのに。
自分は泣きながら彼の部屋を飛び出して、彼が追いかけてきてくれることを望んでいたと言うのに。
当の彼が御休み中とは、これはこれは、、、。
まぁ、ブランク曰く『ガキっぽくて意地っ張りで不器用な』ジタンのことだから、不貞寝でもしてしまっているのだろう。 一瞬だけ肩をすくめると、ダガーは少々むっとしたことも忘れることにした。
木製のドアがキィときしむ。安宿の扉のとめ具は、何年も使われ、既に錆びついてしまっているようだ。
ジタンがその音で目を覚ましてしまうのではないかと、心配したが、耳を済ませば変わらず規則的な寝息が聞こえたので安心した。
職業病とでも言うべきか、今までのジタンの眠りは、どうやら常に浅いようだった。
城を飛び出しての数年前の旅で、野宿の際も安心していられたのは、彼のおかげといっても過言ではない。
もちろん、彼だけではなく、誇り高き竜騎士や、トレノの高額賞金首もなのだが。
彼らは、夜中にモンスターの気配にいち早く気がつくことが出来る。
それだけ、彼らの眠りは浅いに違いない。
そんなジタンが自分の気配に気がつかないなど驚くべきことなのだが。
旅が終わり歳月がたち、安心して眠れる日々が続き、彼のそんな特性もなくなってしまったのかもしれない。
「トライバルさーん?」
ちょっとした悪戯心。それは、自分はもう腹を立ててはいないのだ、という主張。
ダガーは暗闇の中で子供っぽい寝顔に手を伸ばしていた。
「ふ、ふが、、、、っ」
かなり間抜けである。
唐突に鼻呼吸が出来なくなり、苦しくなって夢の中を歩いていた彼は強引に現実に引き戻されたのだ。
喉を鳴らして苦しがるジタンの姿は、滑稽だった。
険悪な仲になっていたことをも忘れ、ダガーは思わず吹き出していた。
行動や言動と言うものは、意図的に工作されたものより、無意識による産物のほうが面白いことが多い。
「な、なんだぁ、、、?」
寝込みに何故か鼻をつままれた彼は苦しさに目を覚ました。
部屋は暗かったが、夜目の利く彼には見えていた。 何がおかしいのかベッドの元で腹を抱えて笑っている姫。
自分の置かれている状況がだんだんわかってきて、彼は唖然とする。
さきほどまで、泣きそうな顔をした彼女と、気まずい関係になっていたはずなのだが。
彼女は、非常に機嫌がよろしいように見えた。
喧嘩のような状態になっていたのは、ただの夢だったか?
それとも、目の前で笑う彼女は、ただの幻影か?
「あ、起きちゃった?」
「『起きちゃった?』ってのは寝てる人のそばを静かに通ったときに言う言葉じゃないかな、、、、?なにすんのさ」
「だって面白いんだもの」
「いやいやいやいや、そういう問題じゃないだろ」
「怒ってるの?」
「寝起きだからそう見えるだけだよ」
「ほとんど見えてないわ。声が怒ってるように聞こえただけ」
「目悪いんだ?」
「ジタンよりはね」
ようやく笑いのおさまったダガーは潤んだ目を擦った。
悲しみに泣いたわけではない。
眠くてあくびをしたわけでもない。
ただ、笑いすぎた。
ジタンはベッドから降りようとしたが、ダガーは、その必要はない、として自分もジタンのベッドに腰掛けた。
寝起きの彼もダガーの隣に座るにとどまった。
「ちょっとだけお話したかっただけだから」
ジタンは、ベッドサイドの小さな灯かりをつけた。
彼にとっては、部屋の中がさほど暗いとは感じられない。
ある程度、月明かりも入ってくるし、視界も充分である。
しかし、ダガーにはほぼ何も見えていないらしい。
明かりをつけてくれと頼んだのは彼女だった。
もともとベッドサイドの灯かりは読書などをするとき用。
ぼうっと暗闇に浮き上がった灯は、彼ら二人が互いの顔を確認できるのがやっとくらいの明るさしかない。
「、、、、、、、」
つい余計なことを口走りそうになったジタンは、頭を掻いて誤魔化した。
『暗い』よりも『薄暗い』ほうが妖しい、と。
薄明かりがついたとたん、いらぬことを思いつく自分を、ジタンは仕方ないと思いつつも心の中で叱咤した。
だが、そもそも、乙女が夜中にやってきて野郎のベッドに腰掛けると言うのは、いかがなものかと思う。
悪いのは、自分ではない。
ジタンはそう納得することにした。
「ジタンってさ、子供っぽいのよね?」
「はい?」
「それでもって不器用さんなの」
「なんだよ、それ」
ダガーが意味深に、笑う。
ジタンは訝しげに彼女の顔を見た。
薄明かりに照らされたその表情が、何故か楽しそうだった。
「ブランクが言ってたわ」
「はぁ?なんだよそれ、、、、。あの野郎一体何話してんだ、、、、」
「ねぇジタン」
「なに?」
「私に何か言うことってない?」
「え」
突然ダガーが切り出した事が何を意味しているのかすぐにわかった。
が、ジタンは何故かわからないフリをしていた。
ほぼ無意識に。
ルビィにも不器用と言われた。
ブランクには意地っ張りと言われた。
今回この問題を大きくしたのは二人の言う自分の性であったとしたら。それは認めたくはないが、恥ずべき事だと思う。
「言うことって?」
「まぁ☆こんなとこまで来てもしらばっくれる気なのね?」
「何の話しだよ?」
「強情ね、わかってるくせに」
「、、、、、、、、」
「私、知ってるんだから。ジタンは子供っぽくて不器用で、意地っ張りだから、謝りに来たくても来れなかったんだって事」
自分が、不器用で、意地っ張りであるか否か。
タンタラスのバカップルの前では否定できたものが、彼女の前では何も言えなかった。
彼女に対するこれまでの言動に関し、正当な説明が出来る自信がなかった。
自分の勝手が、彼女を振りまわしているから、それが申し訳なくて、彼女にあわせる顔がないとしていた。 でも、このまま彼女が会いに来てくれなかったら、自分はもっと彼女を振りまわしつづけることになっていたのではないだろうか?
本当に彼女に悪く思っていたならば、こんなに長い間ほうっておくことなどなかったのではないか?
自分は意地など張っていない、と。
そう否定できない以上は、認めざるを得ないのではないだろうか?
「ね、そろそろ素直になったら?それともまだ意地を張る?」
「、、、、、っ、、そ、、」
「ねぇ?」
ダガーは詰め寄るように問う。
ジタンが『不器用で意地っ張り』であることを知っている時点で、ここではダガーのほうが優位だった。
どんなにジタンが知らん顔をしてみても。
どんなにジタンが口先で否定してみても。
それは、無駄だった。
真夜中と言うことで、自然と他の部屋の客に迷惑をかけんと二人の声は、ささやき声だった。
「ごめん」
ジタンは、ついにポツリと呟いた。
「降参」
いろいろ頭を回っていたことが、突然ふいに吹っ切れた。
そこにあったのは、
最高の笑顔。
絶対的に自分が優位であることを悟ったダガーは、表情を曇らせることがなかった。
にこにこにこにこ、笑っていた。
久々にこの、眩しい笑顔を見たような気がした。
もう、なんでもよくなった。と、いうか、どうして今までこの笑顔を見に、彼女の元を訪れなかったのか、わからなくなった。
彼女のこの笑顔があれば、それでもういい、なにもいらない。
もし、自分がこの笑顔を奪ってしまったと言うなら、それをとり返すのに没頭すればいい。
「降参だよ」
「こーさん?」
「負けた、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、負けたよ。君には負けた!」
「別に何か勝負をしてた覚えはないわよ?」
「オレが悪い!全部オレのせい!ごめん!結婚式、行けなくてマジごめん!ホントはすっげぇ行きたかったんだけど、ルビィがさらわ」
「知ってる」
ダガーの一言に、ジタンがキョトンとした。
「何を知ってるって?」
「全部」
ダガーは得意げな顔をして座りなおした。
「全部知ってる。ルビィが攫われて、結婚式場にこれなくて、でも謝りに来るのはちょっと気が引けちゃって、私が会いに行ったときにも意地張っちゃって謝れなかったジタン君」
しょうがない子ねぇ、とダガーはからかってジタンの頭をよしよしと撫でた。
「……え〜と、、、、、、、」
なぜか子供扱いされてジタンは何もいえなかった。
だんだんと闇になれてきた彼女の瞳の中にぼうっとうつるサイドのライトを唖然として見つめているのみ。
そのせいで、彼にはなんだかダガーが目をきらきらと輝かせているみたいに見えた。
そのきらきらの瞳がまた、ほんの少しだけ切なそうな輝きを見せた。
また彼女の機嫌を何か損ねてしまったのかと思い、ジタンはちょっと焦った。
「…………たん…だからね」
「え?」
ジタンは大事なところを聞き逃して、さらに焦った。
慌てて誤魔化すように笑顔をつくるが、彼女はジタンが一回で聞き取れなかったことに不満そうな顔をした。
「悪い、もう一回言って?」
「……ったの………」
「………え?」
どうやらなかなか聞き取れないのはジタンが悪いわけではないらしい。
なにやら切な顔のダガーは照れているようだ。
声が小さいのもそのせいだろう。
ジタンには彼女がどうして何に照れているのか分からないが。
二回も言わせておいてそれでも聞き取れず、彼は困った顔をして、片手は頭の後ろを掻いてしまう。
しかし、次の刹那には、鈍感の彼にもその理由がわかるようになる。
「、、、、、ぅお」
彼の声には意外と喜びが入り混じっていた。
「それはもしかしてぇ、、、、、、、、、」
猫のような尻尾のジタンの猫撫で声。
隣にちょこんと座っているお姫サマが広げた両手をジタンの方に伸ばしていた。
ダガーの切なそうな照れ顔は、あまりの恥ずかしさに不機嫌に崩れ始めていた。
ジタンは、彼女が自分に何を求めているのかを彼女自身の口から言わせたかったが、これ以上ほぅっておくと、自分に向けられた細い両腕が引っ込みかねないのであきらめた。
「はいはい。ほら、おいで。オレの胸にドーンと!」
そしてジタンもまた、真っ赤な顔のお姫サマに両手を広げたのだった。
そっと時計を見上げると時間は真夜中を過ぎていた。
外に出ても、もう見上げる家々の明かりは片手で数えるほどしかないだろう。
時間としてはもう今にもうるさいがしゃんがしゃんとした鎧の音が忙しなく遠くから聞こえてきそうな嫌な予感がしたが、今だけは忘れることにした。
首にくるりと回された彼女の細腕の体温は低く、そのひんやり感にどきどきとした。
こんなわずかなサイドライトにも、天使の輪が出来る鼻先の黒髪の頭。
女の子らしいほのかな花のような甘い香り。
あぁ、幸せだ、、、、、などと久々なぬくもりに呟きかけたが、それは雰囲気をそこないかねないので我慢した。
それだけでなく、彼はダガーの背中に回している手が意思に関係なくもぞもぞと動きそうになってしまうのも我慢しなければならなかった。
しかしもぞもぞしているのは彼の手だけではなかった。
ダガーはジタンの腕の中でもぞもぞと動いてのぼっていき、彼の肩に顎を乗せると唇を耳元に寄せてきた。
さっきは聞き取ってもらえなかった言葉を、彼女はそこでもう一度呟くように言った。
「寂しかった」
言葉と一緒に熱い吐息までもが耳にかかり、ジタンは思わずぞくぞくした。
腰掛けているベッドが思わず気になり、余計なことをせぬようにと心がけるのが大変だった。
「ならなんでもっと早く会いにこなかったんだよ」
「悪いのは、誰?」
「、、、、、、、、、、、オレでした」
いやに時計の秒針の音が大きく聞こえる。
彼は会話が途切れるのは非常にマズいと思った。何か話さなければ、非常にマズいと思った。
いや、本気で。
「私、いろいろ考えたの」
彼女の、いつもより少し低めの声。
それが心地よかった。
ただ、安宿の薄い壁を隔てた他の客を気遣っているだけだろうが。 ジタンには、余計なことを考えぬよう、ひとまず真剣な彼女の声に全神経を注ぐことしかできなかった。
「私ね、幸せなの。今のままで、凄く幸せ。あなたに出会えて、本当に良かったと思ってるの。」
「ん、それで?」
それはオレも同じだよ、なんてそんなことは言う必要ないと思った。
ジタンは彼女の真似をするかのように声を低く細めて艶やかな黒髪を撫でた。
指先を、するりと滑らかな感覚が通り抜ける。
「でも、今回ね、しばらく一人になってみて、思ったの。私は、どうしてあなたに出会えたんだろうって」
「なに」
「うん、ジタンは女の子好きだしね、沢山回りにいたと思うの。でも、どうして、私だったの?」
『女の子好きだしね』の部分がちょっと刺々しいのはいつものとおりだ。
そして、これもいつもどおりなのが、深すぎてわけのわからないところを疑問に思うことだ。
返事をするのに、ジタンはしばらく考えなければならなかった。
「不満だったのかい?」
「違う!」
彼女がびっくりしたように飛びのいたので、ジタンもびっくりした。
飛びのいた拍子にダガーはストンとベッドから落ちた。
「違うよ、そんなことが言いたいんじゃないわ」
床にぺたりと座り込むようになった彼女はベッドに腰掛けたままのジタンを睨むように見上げた。
「私、今の私は、、、もし、あなたがいなかったらって考えると、ぞっとする。あなたに出会えていなかったら、きっと、きっと、、私、駄目だった。全然、駄目だった、、、」
彼女のぬくもりが離れてしまったことは残念だったが、少し、ほっとしたジタンが首をかしげる。
必死の訴えを彼が理解できなかったような顔をしたので、ダガーは更に怒ったようになった。
「だから!、、、、、、、だから、、、、あなたと会えたのが、偶然なんかじゃなくて、、、あなたと仲良くなれたのが偶然じゃなくって、ちゃんと理由とか、運命とか、、、間違いなくあなたと出会えていたっていう確証みたいなものがあったらいいなって、、、」
自分ならそこまで考え込みはしないことを聞かれて、ジタンはう〜んと唸った。
なんと答えるだろうと不安げな彼女の表情が妙に艶っぽくて、また夜の健全男子にはよくない。
なるべく彼女の顔を見ないように心がけながら彼はいたずらっぽく笑って見せた。
「全く、わがままなお姫様ですねぇ」
「何よ。理由があったらいいなって、自然な思想でしょ?」
わがままなお姫様の顔は、まだむっとしていた。
「そっかな?」
「そうよ!」
「オレは、、、、、」
ジタンがダガーに手を伸ばした。
早く答えてほしいという顔丸出しのダガーは、しぶしぶ彼の手を取る。
ちょっとごつごつした大きい手に導かれ、彼女は彼のひざに座らされていた。
頼れる腕が腰に回され、大きな両手はダガーの腹のあたりで組まれた。
「オレはね、偶然でも何でも、ダガーに会えてよかったと思ってるよ?確かに、一歩どこかが違ってたらオレたちは出会ってなかったかもしれない。でもね」
ジタンが、後ろからダガーの肩に顎を乗せた。
腰周りの腕がぎゅっとなってダガーはどきりとした。
「ほら、今は、こうやって出会えてるんだ。出会えなかったかもしれない過去を心配する必要なんて、ないと思わない?」
背中と肩と、彼に触れていると、暖かい。
ジタンは今、間違いなく自分のそばにいる。
「でも、、でも、もしね」
「その『もし』は今後起こる可能性があるのかい?」
「・・・・・・・・・」
なんとなく、納得は、いかなかった。
いつもへろへろへらへらしているジタンを見ていると、どうしても自分が一緒にいられる理由をさがしたくなるのに。
理由なんて必要ない、とそう言われてしまうとなんだか掴み所がなくてなおのこと不安になる。
「ダガーは、バカだなぁ」
「失礼ね!」
加えてバカ、とはなんとも。
むっとして、ダガーはジタンの顔を見ようと振り返った。
だが、近すぎて彼の顔には焦点が合わなかったのである。
唇が、触れ合った。
偶然、ではなくて。
にっこりいたずらっぽく笑っているジタンに、ダガーはもう何もいえなかった。
恥ずかし過ぎて。
彼女はジタンのごまかしの策略に、まんまと引っかかってしまったのだ。
出会えた理由なんてそんなもの、ジタンにはどうでもよかった。
大切なのは、今自分の膝の上に彼女が座って恥ずかしそうに頬を染めているということである。
ガーネット姫に始めてであった時点から彼女と仲良くしようと心がけてきたのは彼の意思であり、事実であり。
彼女のために生きたい、と生きよう、と思うことがあるのも彼自身であり事実であり。
理由を問われても困るのだ。
はたから見た誰かが、それを運命だと言おうとも、偶然だと言おうとも、彼にとっては同じことなのである。
どうでもいいことなのである。
彼は今、膝の上の彼女が愛しくてたまらないというだけで。
そんな彼の考え方は、膝の上の彼女には分からないようではあったが。
「もう!帰ります!」
あまりに急なことに怒ったようなダガーがジタンの手を払うようにどけて立ち上がった。
彼女は振り返ることもせず部屋のドアへ向かおうとする。
が。
「おっと。」
月明かりの中で白く、華奢な彼女の腕が不意に少し強めに掴まれた。
ダガーは怪訝そうに振りかえった。
ジタンはベッドに座ったまま彼女の腕を放さない。
「何よ?」
「今夜は、帰さない」
「は、、、?」
「子供っぽいっていったろ?だからたまには大人っぽいとこみせるよ。」
翌朝、仲直りは出来たのか、と尋ねにブランクがジタンの部屋を訪れると、ジタンが一人ベッドにノビていたとかいないとか。
彼は貴き召喚士の力を些か見くびっていたようである。
To
be
continued
わぉ!
こかられだけ待たせてこれだけかよ!
と、どうか怒らないでやってくださいm(TT)m
ごめんなさい。なんっていうか、、、、かけなくなるとかけなくなるもんなんです!(反省の色が見えん!)
いや、ほんとごめんなさい。
書いてて、「なんっか違うな〜?」と思い始めると何もかも気に入らなくなったりするんですね〜;;;
ごめんなさい(涙)
次回も、遠い先になりそうな予感と共に、今回は失礼させていただきます。