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in the church・・・

ひがね様

「おはよう」
寒空が広がっている中で、クラウドは目を覚ました。
「あ・・・。」
「どうしたの?もう11時よ。いくら日曜日だからって・・遅く起きるのは珍しいじゃない?」
窓の外は、一面が真っ白だ。空からは見えるか見えないか位の細かな雪が、世界全体を覆うかの様に延々と降り続いている・・・
「朝御飯は?昼食と一緒にする?」
「あぁ・・・うん・・そうする。ありがとう、ティファ。」

「本当にどうしたの?午後近くまで寝てるなんて。」
クラウドはパジャマから私服に着替え終わると、ティファのいる食卓へ向かった。
「何故だろう・・・?俺にもわからないな。昨日は遅くまで起きていた覚えはないし・・・。」
歩きながらティファに答えると、クラウドは椅子に腰かけた。
「そう・・・。あ、もう少し待って。まだ途中だったのよ。」
「なんだか・・頭が痛いな・・何故だ?」
あれから・・・クラウドが夢の中でエアリスと逢ってから、もう三ヶ月が過ぎていた。クラウドは夢を見た3日後、ティファと結婚をし、新たな夫婦となった。あの時からエアリスの事をふっ切ったのだが、やはりまだ少し蟠っている・・・
クラウドは椅子の背にぐっと身をよりかけ姿勢をらくにした。
「ティファ・・・?まだか?」
「ごめんなさい。ちょうど今出来上がったところよ。」
ティファはそう言うと、出来上がった昼食を皿に盛りつけ、クラウドの前に置いた。クラウドは待ってましたとばかりに、昼食にかぶりついた。
「お腹、空いてたの?そんな風に食べるクラウドなんて、始めて見たわ。」
「そ・・そうか?」
確かに、おかしいと思った。
変だと思った。
前にもなんどか腹を空かした事はあったが、今のように食事にかぶりついた事はない・・・。
「あ・・・やだ、くらうど。服・・裏返しに着てる・・・。」
「・・・・!?」

---------変、おかしい、何故?------

「ごめん、ティファ!ちょっと出かけてくる!」
クラウドは、まだ食べかけの昼食を残し、立ち上がった。
「クラウド!」
クラウドはティファの呼びかけを無視して、外へと飛び出してしまった。
いや、彼女の声が一足遅かったのかもしれない
「まだ・・まだ、私じゃ駄目かな・・・?」

辺り一面が真っ白。
雪、氷の結晶。
歩く度に足跡が増えていく。全てが雪に包まれた雪面の中を、クラウドは歩いていた。
足跡にまた雪が降り積もり、足跡を消していく・・まるで、最初から誰もいなかったかのように。
ホーリーとの一件から、緑と共に暮らし始めたミッドガルも、今では雪に彩られていて、緑は、枯れ葉となったのか、雪に埋もれてしまったのか、どこにも姿は見当らなかった。
クラウドはいつの間にか、ミッドガルの前に立っていた。
「ミッドガル・・・か。」
ミッドガルのゲートを探すクラウド。ゲートは雪に包まれていた。そこにはもう5番ゲートの鍵を探していたあの男の姿はなかった。
--それもそうだな、もうあれから結構過ったんだ---
ミッドガルを懐かしく思い出したクラウドは、ゲートの鍵穴に鍵を差し込んだ。

『プッ・・・シュウー・・・・・』
ゲートの扉は痛々しげに開いた。クラウドは雪原のミッドガルに足を踏み入れた。

白。
ミッドガルの中も、雪が降り積もられていた。緑もなく足跡なんかもない。
しかし、クラウドの目の前には大きな雪だるまがあった。
体は雪。鼻はにんじん。目はのり。口ものり。頭にはバケツ・・・
体から伸びた木の枝に手袋をつけた彼は、まるでクラウドに手招きをしているかのようだ。
クラウドは、彼の手招きに誘われるの如く、彼に近づいていった。
ーー誰が作ったんだーーなどといった疑問は、一切湧いてこなかった。
雪だるまに触れられるほど近づくと、彼の頭に一枚の紙が貼られていることに気がついた。

『ーーーPlease in the church!ーーWelcome,my flower garden』

よく見ると、雪だるまの後ろに、古ぼけた、今にも壊れそうな教会が建っていた。
「ここは・・・エアリスと会ったところ・・・。」
幸い、教会のドアは開いたままだった。教会の中へ、クラウドが入ろうとした時、小さな女の子の声が聞こえてきた。
「もう、大丈夫?平気ね・・・」
クラウドは、このミッドガルに子供がいるなんてー・・・と不思議に思い、教会の中へ、一歩を踏み入れた。
その時だった。

『ギシィッ・・』

教会が壊れかけていたためか、床が腐っていたのか・・・床が鳴いた。
クラウドの一歩が教会中に響き渡った。
その音で、彼女を気づかせてしまうなんてークラウドには知る由もなかったのだ。
「誰っ!?」

美しく輝いた、
淡い、エメラルドグリーンの瞳・・・
クラウドはその瞳に吸い込まれそうになった。ーー誰かの瞳に似ているからーー
彼女は、まるで何かにおびえるかのようなその瞳で、クラウドをただ見つめていた。
「悪い・・・。君を驚かせるつもりはなかった。」
「ふうん。・・・」
一瞬おびえた彼女の瞳は、クラウドの一言を聞くと、すぐに緊張が解け、安心した瞳になった。
「ねぇ、外に雪だるまなかった?」
彼女は、クラウドに手招きをした雪だるまのことを語った。
「あぁ、あったよ。頭に貼り紙があったな。確かー・・・」
「 『Please in the church! Welcome,my flower garden よ」
クラウドは、それだ。とばかりに彼女を見た。彼女は突然しゃがみこみ、せっせと何かの手入れをし始めた。
「あの雪だるま、私が作ったの。・・・もうみんな、ここの教会なんて忘れているから・・・。」
クラウドは少し、俯き加減になった。ーーここの教会なんてーークラウドは忘れていなかった。エアリスと、初めて会話らしい会話をしたこの場所・・・。ここで始めてエアリスの名を聞いた。タークスからも守った。二人で戦った・・
エアリスとのあらゆる思い出が、クラウドの中を過っていく・・・。
「でも、貴方が一番最初のお客さん。いらっしゃいませ。私の花畑へようこそ。
「いらっしゃいませ?花を売っているのか?」
「うん。どぉ?一本1ギルだけど・・・。」
1ギル。
一瞬、クラウドはドキッとした。エアリスとの思い出の中で、一番最初に思い出したのは、
ーー一本、1ギルよーーその言葉だったからだ。
「不思議でしょう?めったに花の咲かないこんな場所に、ここだけ、咲くの。」
彼女はまた、花の手入れをし始めた。クラウドは、彼女を、エアリスと重ねてみてしまっていた。
よく見ると、彼女はコート一枚に長ズボン。頭には、コートについているフードをかぶっている。
教会の中が、薄暗いためか、彼女の顔がはっきりと見えない。ただ見えているのは、彼女が熱心に花の手入れをしている様子だけだった。
−−ここの花、踏んづけちまったんだっけ・・・


それでもエアリスは、俺をかばってくれた。「この花、結構強いし。」
でも、俺はあの時見たんだ。ちゃんと咲いたままになっている花は、数えるくらいしか残っていなかったこと・・踏み潰されていた花がほとんどであったこと
俺が踏み潰したのに。俺が悪いのに。
エアリスは治していた。ーーレノがくるまで、花をーー熱心に、心配そうに。あの美しい瞳で眺め治していた。
ごめんよ。エアリス・・・

「前はね、お姉ちゃんがここの手入れをしてたの。」
「お姉ちゃん・・・?」
「そう。でも、名前知らないの。聞こうと思って教会へ行ったその日から、お姉ちゃん・・・この教会へ来なくなったわ。」
お姉ちゃん・・・ーエアリスークラウドはそう思った。実際に、エアリスが手入れをしている場面は見ていたわけだし。
花は、少しも変わっていなかった。前と同じ、クラウドがエアリスから買ったコスモスの花と同じだった。ただ、少し変わっていることは、色があせてきているだけだった。

「その花、一輪もらおうか・・・」
「ありがとう!」
クラウドは、ポケットに突っ込んでいた財布を取り出すと、面倒くさそうに手袋を外し、1ギルを取り出して、彼女の目の前に差し出した。
すると彼女は、首を横に振り、クラウドに笑顔を見せた。
「いいわ。貴方はお客様第一号だから・・」
クラウドは微笑した。
「ありがとう。」

香りも変わっていなかった。
前に買ったコスモスと同じ香りがした。
クラウドは、そのコスモスの花に安心感を覚え、只、ほっ・・としていた。
「あ・・、もう帰らなきゃ。」
「俺もそろそろ帰るか・・・。」
二人は、教会の入り口まで一緒に歩いていった。

光。
雪がやんでいた。
今は、太陽が世界全体を見つめている。
冬の季節にしては、妙に温かく光を放っていた。
彼女は、フードを脱いだ・・・。まだ、彼女の顔がよく見えなかった。
多分、太陽の光にでも反射しているのだろう。
クラウドはそう思った。
「ねぇ、またここへ来てくれる?」
クラウドの目の前には、フードを脱いだ、後ろ向きの彼女と、手招きをした雪だるまがいた。
「あぁ。今度、俺の嫁さんも連れて、ここに来るよ。」
「へぇ、結婚してるんだ。きっとよ。絶対連れてきてね!」
彼女は、そう言い終わると、クラウドがうなずく間もなく、走り出していた。

「君の名前、まだ聞いてなかったよね?」
クラウドがそう叫ぶと、彼女は走るのを止めた。
「俺の名前はクラウド。クラウド・ストライフ。君は?」
彼女はゆっくりクラウドに振り向いた。彼女の顔が
「・・・エアリス。エアリス・アースカイ・・・」

ーーAerithーー 見えた。

太陽の光は、強さを増した。
雪だるまが・・・、彼が、一瞬、崩れかけた。
そんな気がした。

「ただいま。」
「・・おかえりなさい・・・」
クラウドが家に帰ると、ティファは優しく迎えてくれた。
しかし・・、声は少し、ぎこちなかった。

「ごめんよティファ。また、心配をかけさせたね。」
「・・いいのよ。クラウド・・・」
クラウドはエアリスに会った。
「ティファ。」
夢ではなく、
「何?」
確かに、この瞳で。
「今度、一緒に来てもらいたい所がある。会って欲しい人がいるんだ。」
in the church・・・
「えぇ、是非行きましょう。二人で・・・」


end・・


あとがき(・・とゆーか、感想?)
はぉ♪ひがです。えーと、「in the〜」シリーズも(シリーズだったのか!?)第2作目を終えることができました。今回は終わり(ラスト?)がもう、ぐちゃぐちゃですね(^^;自分でもよくわからん・・・(謎
ちなみに「エアリス・アースカイ」ちゃんは、「エアリス」は絶対つけようと思っていた人物でした。「アースカイ」は、「地球」と「空」をくっつけました(^^;次のはどんな話になるのやら・・・(笑 みなさん、名探偵コナン16巻は読みましょう♪



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